マガトロさん観察記録   作:mimimimi

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 白玉楼と西行妖。

 転生を待つ亡者の遊園庭。友人を囲い込むためだけに作られた“箱庭”
 理をねじ曲げた代償を払うのは本人とは限らない。

 箱庭に守られた者が、従順であるとも限らない。

 かくしてココに、綻びが生まれ。哀れ妖怪の賢者が気がついた時は、全てが終わっていた。

 されど幻想郷は続く……それはそれで、残酷なほどに美しく……。

 「斬ればわかるのよ、と庭師さんは言うけどさ……。
  切られる方としちゃたまったもんじゃ無いよ!

  そんな事だから閻魔様に叱られるんだろうに……まあ、悪い子じゃないのは、わかるけど……ねぇ?」

                            白玉楼給仕係



マガトロさんと妖々夢

 ここは博麗神社。

 

 幻想と現実の境にある鏡写しの古い神社。

 

 “博霊”の名を冠する幻想郷を支える一柱である巫女が管理する聖域である。

 

 そしてソコでは、地元の人里から妖怪神社と揶揄されるに相応しい光景が広がっていた。

 

 スキマ妖怪に、祭主の巫女。その友人の白黒を始めとして、亡霊姫とそのお供の半霊、吸血鬼と従者のメイド、聖人、邪仙、風祝、花妖怪、文屋、竜宮の使い、夜雀、蛍、山彦、騒霊、小人の末裔、幸運兎と月兎、毒人形に厄人形、河童に土蜘蛛、火焔猫、青と緑の妖精に、三体セットの妖精……と、個性豊かと言うより闇鍋じみた面子が集まった。混沌とした宴会場。

 

 そんな百鬼夜行さながらな場に、マガトロさん達は来ていた。

 

 「全く、なんで置いていくのよ!」

 「悪いなアリス、この箒3人乗りなんだぜ」

 「……計算がオカシイわ」

 

 軽い口調のすました顔で文句を言っているが、私には分かる。今、マガトロさんは涙目になっている。

 マガトロさんを悲しませるとは良い度胸だ、白黒よ……己の罪の数を数えるが良い。それがお前に残された今生の寿命となろう。

 

 「いいやあってるぜ? そいつらも乗せたら定員オーバー、墜落する」

 「……それを言うなら重量オーバーでしょうに」

 「失礼ね! 私もこの子たちも重くなんて無いわよ!!」

 

 言い訳など……む?

 

 「……そうね。人形は飛べる。重さなんて関係ないし、箒の長さなら3人でも問題なかったはず。

  それなのにアリスを乗せなかった……()()()()()()()のは、なぜかしら?

 

  ねえ、魔理沙……ちょっとその帽子取ってくれる?」

 

 「な、なんのことなんだぜ?」

 「ああ、そういうこと……盗癖はあまり褒められたものじゃないわよ?」

 

 「蒐集家の性は止められないぜ」

 「……そう、なら息の根を止めれば良いのね」

 「死んだら返すと言ってたし……いいんじゃない?」

 

 宴会の賑やかな喧騒とは別に盛り上がる三人の魔女。

 

 「あんたたち! なに来て早々暴れようとしてるのよッ!!」

 

 マガトロさんと紫もやし、そして白黒がそれぞれ呪文符(カード)を取り出したところで、制止の声がかかる。

 

 「よう霊夢! 元気そうでなによりだぜ」

 

 「その元気も、酔っ払い共の相手で無くなりそうよ」

 

 「ふうん巫女も大変ね。……あ、これ、お土産のクッキーと、残り物だけど火炎茸のシチューよ」

 

 「……アリス。息の根を止める相手が違うわよ?」

 「紅天狗茸ならともかく、火炎茸は色んな意味で不味いのぜ……」

 

 「大丈夫よ、人間用に毒抜きしてあるわ」

 

 「まあ食べられるなら、なんでも良いわよ……さ、こっちにきて」

 

 霊夢に連れられ社務所に向かうマガトロさん。

 マガトロさんは豆腐メンタルだが、切り替えが早い。今泣いた烏がもう笑う。

 

 ガラスは割れたら終わりだが、豆腐なら砕けても味は変わらない。それなりに逞しくて何よりだ。

 

 「あら霊夢、調度良かったわ。そこのお皿から持って行ってちょうだい」

 「私は給仕じゃないわよ」

 「それを言うなら咲夜さんはメイド。私も庭師であって、料理人じゃないです」

 「霊夢、シチューはココに置いておくから、後で温めて食べるといいわ」

 

 たどり着いた厨房では、半霊庭師と瀟洒なメイドが宴会のツマミを作っていた。

 付いた早々、騒ぎ始める紅白巫女と紅魔の犬に半人半霊、姦しい三人に加わらずマイペースなマガトロさん。

 

 瀟洒なメイドで、時と空間を操る。紅魔の犬が“十六夜咲夜”

 半霊を連れた庭師で護衛の、剣術指南半人前は“魂魄妖夢”

 能天気で容赦の無い“博霊”を冠する楽園の巫女“博霊霊夢”

 

 マガトロさんと仲の良い、貴重な知人(・・)である。

 

 三者三様な彼女たちと、マガトロさんの出会いと再会は、寒風吹きすさぶ冬景色の中だった。

 

 それは幻想郷縁起に綴られた“春雪異変”

 

 開けない冬、訪れない春。

 

 夏にはしゃぎ、秋に黄昏、冬に死に、春に蘇る。それは自然の理であるが故に、それらを捻じ曲げるような異変は許されない。

 

 マガトロさんは善人ではないが、目の前で倒れてる人を見捨てるほど悪人でもない。

 

 ならば死地に向かわんとする“人間”を危機から遠ざけようと考えるのも不思議では無いだろう。

 

 

 

 ―――――

 ―――

 ――

 

 「この辺で春を奪った奴か、冬をばら撒いた奴を知らないかしら?」

 「大体、心当たりはあるけど……」

 

 春も半ばに五月晴れ……とは縁遠い、白銀世界となった魔法の森上空で、マガトロさんと紅魔の犬は対峙する。

 

 「どこに居るの?」

 

 「そんな瑣末な事は、どうでも良かったのであった」

 「どうでも良くない」

 

 マガトロさんが思うは危険性。

 季節をねじ曲げるような異変を起こした黒幕の力は想像するまでもなく強大だ。

 

 ましてや冬は、死の季節であり。それを司る雪女は、凍死者を生み出す黒幕と言っても良い。

 

 紅霧異変は茶番だった。

 “事故”の可能性はあったが、それは杞憂に終わったので、マガトロさんも気にしてない。

 

 気にかけてるのは……今そこにある危機だ。

 

 予想される相手は“死”そのもの。

 

 かつて“死の少女”と呼ばれたマガトロさんには、それが分かった。

 

 ……なのに、脆弱な人間に任せて良いのか?

 

 八雲紫と相談したかったけど、連絡がつかない。どうやら冬眠してるらしい。

 

 そのまま永眠すればいいのに……と心で悪態を付きながら、マガトロさんは動き始めた。

 

 そして出会ったのが、白黒と紅白の二人だった。

 

 白黒は兎も角、旧友だと思っていた紅白に、友人であることを否定され地味に深く傷ついたマガトロさんが、次に出会った人間に八つ当たりしたのも仕方がないと思う。

 

 「瑣末な事に拘るから悩むのよ……“操符 乙女文楽”ッ!」

 「瑣末な事に拘るのも淑女の嗜み…“幻符 インディスクリミネイト”」

 

 呪文札(スペルカード)を互いに掲げ、両名ともに決闘宣言を歌い上げる。

 

 

 掲げられた札も、告げられた呪文(スペル)名も、それ自体に意味は無い。

 

 札はタダの紙切れであり、宣言はタダの言葉に過ぎない。

 

 だが、双方が“同意”しているならば話は変わる。

 

 宣言は“誓い(アンオース)”と成り、札は“契約書(コントラクト)”として機能する。

 

 放たれる力は、体術、奇術を問わず、カードに指定された範囲に留まり。微調整は出来ても、変更は効かない。

 

 “直撃しても、人間が死なない程度”に制限される。

 

 これによって、命がけの決闘(デュエル)は、命ではなく矜持(プライド)を賭けた戦いにすり替わる。

 

 ソコで求められるのは、強さ(ストロング)ではなく、美しさ(ビューティフル)

 

 弾幕ごっこ……少女たちを魅了する。幻想郷に敷かれた新しい価値観であった。

 

 「包囲殲滅! 数は力よ!」

 「一騎当千……量より質がメイドの心得」

 

 マガトロさんの意に従い展開される十を数える武装人形。

 それを迎え撃つは、無数に閃く白銀のナイフ。

 

 乙女文楽と称された脳内操作盤(コンソール)を叩き、十体の武装した人形を手足のごとく操り、死角から死角へと動かして包囲を狭める。

 

 それを放射状に広げた銀のナイフで難なく迎撃するメイド長。

 

 驚きながらも、迎撃され撃ち落とされた人形を送還して、新しい人形を召還するマガトロさん。

 

 「やるわね……転移(テレポート)? 念動(テレキネシス)?」

 「貴方も離れた人形を動かしてるし、出したり消したりもしてるじゃない……そちらの方がよっぽど危険な手品師よ」

 

 「私のは糸も仕掛けもあるけど……手品とは違うわ」

 「こちらも、タネも仕掛けも御座いません」

 

 メイド長は、時間と空間を操る。ソレは人間が持つには過ぎたる力。されどそれ故に、脅威と成らないのもまた事実……。

 

 「そこッ! “幻符 殺人ドール”ッ!」

 「く、避けきれなっ……!? きゃあ!?」

 

 だが、弾幕ごっこに限定するなら、十二分に凶悪な力だと云えよう。

 

 再召喚した人形たちを再起動する直前。時と意識の狭間に割り込むようにナイフが出現する。

 

 時を超えて置かれたナイフを、マガトロさんが認識した時は手遅れだった。

 

 ナイフに刃引きは無く。退魔封滅の理を込められた白銀のナイフがマガトロさんの身体に突き刺さる。

 

 本来ならば、人を超越した魔法使いであっても致命傷(クリティカル)に至る攻撃。

 されど、マガトロさんは服をボロボロにしながらも、項垂れただけで目立った傷は無い。

 

 「あいたた……今のはなんなの?

  何の前触れもなくナイフが現れたとしか思えないのだけど……まさかの時間停止?」

  

 「私の世界は私のモノ……それが淑女の嗜みです。

  

  ―――さぁ、今回の騒動の張本人は、一体どこのどいつ?」

  

 「風下に寂れた神社があるわ。

  そこに頭が春っぽい巫女が住んでるから、そいつに違いないわ」

 

 「多分、それは違うと思います」

 

 「冗談はさておき……あなたが桜を集めるたびに春が近づいていることに気が付かない?」

 

 「向うは風上ね」

 

 「まだ何も言ってないのに……残機(ストック)も切れたし、帰ろっと」

 

 幻想郷には春度がある。

 

 霊力、魔力、妖力、神力などの“力”も有れば、地水火風の基本属性。変わり種として刻符や桜点などが挙げられ。

 春度とは、桜点の数を表すと同時に“陽気”類する属性を帯びている。

 

 属性とは元素であり、万物を構成する要素を分類したものである。

 

 これは外の世界で言う物理学とは全く異なる理論によって定義され。

 命名決闘方(スペルカードルール)を制定する際に組み込まれた(プログラミング)、博麗大結界の術理(システム)によって具現化したものである。

 

 そのため、本来有り得ない“霊撃(ボム)”や、Pアイテム、点アイテムなどと称される謎のカードが存在し得る事となった。

 

 残機と呼ばれるシステムもそれに含まれる。

 それは、ヤル気や気力など精神的な疲労と、体力や替えの服などの物理的な消耗を総括したものである。

 

 纏めるならば、弾幕ごっことは、互いに用意したカードや体術を持って、相手の残機を削り合う遊びと言える。

 

 勝負の基準は美しさ。そして、真剣勝負は須らく美しくなくては意味が無いのが理。

 

 美しく勝つことで、妖怪の矜持は保たれ。

 美しさに負けることで、妖怪もまた敗北を受け入れる。

 

 運悪く事故死することあっても、意図的に殺される事の無い。人間にとっても、妖怪にとっても都合の良い遊び。

 

 それが、弾幕ごっこ。

 

 物理法則(フィジカル・ロウ)に上書きされた幻想郷の独自法則(ローカルルール)には誰も逆らえない。

 

 それは裁定者であるスキマ妖怪も同じである。

 

 「幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ」

 「それが負けた言い訳?」

 

 「……霊夢は天才よ」

 「天災の間違いでしょ?」

 

 白黒、紅白、メイド長と三連続で敗北したマガトロさんは、自宅で黄昏れながら繕い物をしていた。

 

 元々、勝ったのなら自分で異変解決。負けたとしても異変に関われるだけの実力があるならば任せても問題ない……と、緩く考えていた結果がコレである。

 

 マガトロさんは負けず嫌いだ。

 負けても良いからといっても、わざと負けるような真似はしないが故に……まさかの三連敗に、ショックを受けていた。

 

 白黒は、弾幕ごっこでは強者だった。

 紅白は、普通に強い上に、精神的動揺が尾を引いていたから仕方がない。

 メイド長は……あれは反則に限りなく近い初見殺しだった。

 

 負けるに足る理由はある。理屈では納得しても、心情的に納得しきれない辺り……マガトロさんもまだ子供だと言うことだろう。

 

 そこに、同じく人生の敗北者となったスキマ妖怪が訪ねてきた。

 

 「ところで森羅結k……じゃなくて、幽明結界はまだ直らないの?」

 「直す予定は無いわ」

 

 「生と死の境界を曖昧にして置かないと拙いと言うことかしら?」

 「今回は色々と勉強になったわ……」

 

 「西行妖の死の誘いに霊夢が被弾したのね……」

 「白黒もそうだけど、それ以上に封印が解けかけたのが想定外過ぎたわ」

 

 「結界に使う力を封印に回している。だから、幽明結界は壊れたまま……って事かしら?」

 

 「問題ないわ。

  もうすぐ夏だし、溢れた幽霊で涼しくなるから良いのよ」

  

 「リリーが聞いたら泣くようなセリフね」

 

 ゲーキョ・ゲーキョ……と松蝉が遠くで鳴いている。

 春の終わりと夏の訪れ。

 

 春告精に追い立てられ、冬の黒幕が姿を消し。告げるべき春が終わったことを悟った妖精もまた姿を隠した。

 

 幻想郷はすべてを受け入れた。

 

 

 

 

 

 ならば“私”もまた、受け入れられたのだろうか?

 

 移り変わる季節に思いを馳て、共犯者と語らう彼女(アリス)が愛おしい。

 

 彼女(アリス)は平穏を望みながらも、変化を求める。

 

 彼女(アリス)は戦いや争いを忌避しない。

 

 彼女(アリス)(いや)うのは、危険(リスク)である。

 

 そこには自身だけではなく、他者も含まれるのが彼女(アリス)らしいと私は思う。

 

 彼女にとって、友人と知人の境は無い。

 

 親しいか、親しくないかだけであり。親しくないと言う程度では、見捨てる理由にはならない。

 

 これは彼女(アリス)の美徳であり、欠陥でもあると私は考えている。

 

 故に彼女(アリス)に“友達”は、いないのだ。

 

 ならば私は、彼女(アリス)の何なのか?

 

 知人では無い。

 友人でも無い。

 恋人でも無ければ、家族でも無い。

 

 ……無為な思考は止めよう。

 

 関係(ソレ)を決めるのは私ではなく、彼女(アリス)である。

 

 願わくば、より良い関係に成ることを望みながら、私は彼女(アリス)幻視力()を偽り、こっそりと側に寄り添い潜み続けている……。

 

 

 ああ、やはり“私”は性根が悪い。

 

 




 昨日、近所の白玉楼行ったんです。白玉楼。
 そしたらなんか幽霊がめちゃくちゃいっぱいで座れないんです。
 で、よく見たらなんか垂れ幕下がってて、西行妖-八分咲-、とか書いてあるんです。
 もうね、アホかと。馬鹿かと。
 お前らな、反魂蝶如きで普段来てない白玉楼に来てんじゃねーよ、ボケが。
 反魂蝶だよ、反魂蝶
 なんか親子連れとかもいるし。一家4人で白玉楼か。おめでてーな。
 よーしパパ弾幕撃っちゃうぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。
 お前らな、桜点やるからその席空けろと。
 白玉楼ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
 枯山水庭園の向かいに座った奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、
 撃つか撃たれるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。BBAと男は、すっこんでろ。
 で、やっと座れたかと思ったら、隣の奴が、難易度Lunaticで、とか言ってるんです。
 そこでまたぶち切れですよ。
 あのな、Lunaticなんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。
 得意げな顔して何が、Lunaticで、だ。
 お前は本当にLunaticをクリア出来るのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
 お前、Lunaticって言いたいだけちゃうんかと。
 白玉楼通の俺から言わせてもらえば今、妖々夢妖夢通の間での最新流行はやっぱり、phantasm、これだね。
 藍様ゆかりんちぇぇぇぇぇえん!。これが通の頼み方。
 phantasmってのは弾幕が多めに入ってる。そん代わり残機が少なめ。これ。
 で、それに減速ツール。これ最強。
 しかしこれを使うとと次から神主にマークされるという危険も伴う、諸刃の剣。
 素人にはお薦め出来ない。
 まあお前らド素人は、アイシクルフォール-easy-でも食ってなさいってこった。
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