ゼノブレイドクロス短編置き場   作:kaneda,i9

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とあるインターセプターの憂鬱

インターセプター。

それはBLADEに8つあるユニオンの中で、NLAの防衛を主目的とするユニオンだ。

 

 地球からの移民船、白鯨が惑星ミラに不時着して3カ月……俺達地球人はしぶとく生き残っている。これまでは危険な原生生物を相手にしてきたが、最近は様々な異星人の存在が確認されている。地球を襲ったグロウス……原住民の小さくて丸っこいノポン人……グロウスに追われていたピザ好きのマ・ノン人……他にも未確認の異星人がいるとかいないとか。地球を滅ぼした異星人がこの惑星にも来てるのなら、NLAの平和を守るのは俺達……そんな意識が否応にも高まるって物だ。

 俺は誰かって? 俺はトマス。NLAの出入り口の1つ、イーストゲートを守っている……いわば門番だ。

 

「ようコロンダス隊長。また険しい山を登るのか?」

「おう! 今回も秘境を見つけてやるぜ!」

 

「でっかい街だも! 早く入れるも!」

「待ってくれよ。まずは検疫をだな……」

 

「この星はベリーベリーデンジャラスね! ミー達の作った武器で、しっかり守ってチョーダイ!」

「あ、ああ……こんなのと一緒なんて、アームズの連中も大変だな……」

 

 おかしい。俺はNLAを守る事に誇りを持ってたはずだ。それなのに最近は……戦うより挨拶してる時間の方が長いじゃないか!

 

 

「そういうのはコンパニオンの仕事じゃねえのか……?」

「お疲れ様、なんだか大変そうだね」

 

 ぼやいていると、どこからか帰ってきた女性が俺に話しかけて来た。白い髪に赤い目、整った顔の美人だ……少しくらい愚痴に付き合わせてもいいよな?

 

「ああ……俺は戦うのが仕事のはずなんだが、最近はそれ以外の事に気を使ってばかりでな」

「へぇ……例えば?」

「そうだな、ノポン人やマ・ノン人がフラフラ出てくのを止めたり、初めてここに来るやつを登録したり、不審な奴がNLAに入らないように……」

 

 そこで俺はようやく気付いた。目の前の女、その耳が……長くて羽毛に覆われている事に。地球人ではない。咄嗟に銃を向ける。

 

「お前は何者だ! 地球人じゃないな……!?」

「そうだよ? 今気づいたって事は……私の事、その地球人に見えてたって事? 君は男性みたいだけど……確かに似てそうだね」

 

 その女は気さくな笑顔で、フレンドリーに接してくる。調子が狂っちまうな……俺は彼女を睨みながら、通信端末に手を伸ばす。通話機能をオンにしてから、彼女に話しかける。

 

「名前と目的を言え」

「私はニール・ネール。クリュー人だよ」

「クリュー……聞いた事ないな」

「だろうね。私はいろんな星を巡っては、各地にある遺跡を調査しているんだ。この星にもそういう遺跡があるんだけど……そしたらこんなところに街があるじゃないか」

「遺跡の調査……? 考古学者だって言うのか」

「考古学……君達はそう言うんだね。なら私は、さしずめ宇宙考古学者かな」

 

 嘘を言っているようには見えなかったが……それは地球人基準の考え方だ。星が違えば常識も違う……俺はそれを何度も思い知らされた。

 

 

『このせなおしマシーン、とっても貴重なノポンのお宝も! 大特価の10000Gで売ってやるも!』

『どう見てもガラクタだろ……』

 

『ミーの助けが欲しければ、ピザを持って来てください!』

『……どこもマ・ノン人がいっぱいで買えそうにないんだが』

『仕方ありませんね。ならこの話は無かったことに』

『わかった! 何とか用意するから待っててくれ!』

 

 それで今俺の握っている銃は修理ついでに強化されたが、ピザ屋に何時間も並んだ甲斐があったかは……微妙だ。差を実感できるような大物は最近見ていない。

 

 

 話を戻そう。ニールと名乗った女は、腕を組んで首を傾げ……いかにも困っている素振りを見せる。

 

「それで観光ついでに部屋を借りて、活動拠点にしようと思っているんだけど……どうすれば中に入れてくれるかな?」

「……少し待ってろ、上と話を付ける」

「なるほど……君みたいな仕事熱心な門番がいるなら、ここはきっといい街なんだろうね」

 

 ……やはり悪い奴には見えない。しかしその判断をするのは俺ではない。さっき通話をオンにしたから、今までの会話は全て上にも伝わっているはずだ。俺は改めて判断を促そうと、端末に手を伸ばした……その時だった。ぞろぞろと重装備のBLADEがやってきたのは。

 

「これは……穏やかじゃないね」

 

 ニールがそう呟くのも頷ける。たった一人の異星人を相手にこれは……

 

「いくら何でも大げさすぎないか……?」

 

 俺のその言葉が聞こえたのか、隊長格の男が俺の方を見た。頭からつま先までサクラバの最新式だ。

 

「銃を下ろせトマス」

「え? ああ……」

 

 俺は疑問に思いながらも、おとなしくその指示に従った。そうしている間に、重装備の隊員がニールを取り囲む。銃口こそ向けていないが、歓迎という雰囲気ではない。そして隊長が慎重にニールの前に立った。

 

「ニール・ネール……クリューの人間と名乗ったのは貴君だな」

「そうだよ。私が正真正銘のニール・ネール、クリュー人の宇宙考古学者だ」

 

 堂々とした答えに、隊長は耳元に手を当てる。通信で何かを確認しているようだ。すると彼は何度か頷き……ニールへと向き直る。

 

「司令から、貴方を丁重に案内しろ、と命令が下った。我々について来ていただけないだろうか?」

「へえ、熱烈な歓迎だね。いいよ。君達についていくよ」

「ご協力感謝する」

 

 そしてニールは重武装の隊員達に囲まれながら、NLAの中へと入って行く……俺は目の前の光景が信じられなかった。こんな簡単に見知らぬ異星人を入れていいのか……?

 

「クリューって……何なんだ?」

 

***

 

 それから数日後……どうやら彼女は無事にNLAの住民になったようだ。エルマチームの新人と一緒にゲートをくぐるのを目撃した。すると彼女は、俺に笑顔で声をかけて来た。

 

「やあトマス君、行って来るよ」

「……無事に戻って来いよ」

「ふふっ、ありがと!」

 

 どうやらクリュー人というのが何なのか、上は知っていたらしい。そりゃ上と一兵卒じゃ知っている情報に差はあるだろうけどさ。もし彼女が、クリューが特別待遇だって知ってたら……

 

「口説いたのになぁ……」

 

 元気な笑顔と共に走り去る彼女の背を、俺は黙って見送った。




セントラルライフのバリアがアレだから、司令部はクリューの名前だけは知ってるんじゃないかな? そう思いながら書きました。
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