アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」   作:ムテキング

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新タイトルが決まりました。
ありがとうございます。


フランシス・ベーコンって早過ぎね?

クラス分けの真相を知った幸村は昼食の間、無言で考え込んでいたようだ。

俺は皆が食べ終わるのを待って、彼らに話しかけた。

 

 

「幸村、今日の授業どうだった? 俺やMEMちょの席だと教師の声が聞こえないし、黒板も全く見えなかったんだが」

 

 

授業中、教師達が全く注意しないので、他の生徒達は好き勝手騒いでいた。そのおかげで教師の声が後方まで届かなかったのだ。

前の席の名無しの権兵衛など、般若のような顔をして怒っていた。

その上、軽井沢達、名前通り頭の軽そうな女子達がスマホでダンスミュージックを流して机をお立ち台にして踊っていたりしたので、黒板すら見えない状況で、一体何の授業をしているのかすら定かではなかった。

 

 

「流石にあれはないよね、アクたん。前の高校に通って頃はビー・バップ・ハイスクールのツッパリブームで荒れてたけど、あそこまでじゃなかったよ」

 

「MEMちょは喋る度に年齢詐称疑惑が深刻になるから、ちょっと黙ってような」

 

80年代かよ。

 

「俺は最前列だったからな。授業は問題なかった。確かに騒いでる奴らに注意しないのは困ったが、授業内容については凄く丁寧で分かりやすかったぞ」

 

「ほう、ちなみに教科書を持ってきているんだが、どのぐらいまで進んだんだ?」

 

 

俺は持ってきた教科書をそれぞれだして、教科ごとの進み具合を聞いた。

やはり丁寧というだけあって、一つ一つの項目を凄くかみ砕いて何度も分かりやすく教えていたそうだ。

数学も、同じ公式を使う様々な例題をだして、ちゃんと聞いていればどんな生徒でも理解できるように工夫がされていたという。

それを聞いて、俺はやはりと確信した。

 

 

「これは・・・不味いな」

 

「不味いって? 分かりやすくて私は良いと思うけどな」

 

 

櫛田が不思議そうに聞いてくる。

 

 

「授業が丁寧すぎるんだ。恐らく、どんなに頭の悪い生徒でも一定以上の学力まで押し上げようとしているんだろう、何しろこの学校は定期テストで赤点を取ると退学らしいからな」

 

 

この情報は外国語研究会の部長から聞いたことだ。

勿論直接ではなく「定期試験が終わると頭の悪い生徒を見かけなくなることがある。平均点の半分も取れないような頭の悪い生徒だ」と言った感じでだ。

 

 

「休み時間に赤毛猿にそれとなく話をしてみたんだが、中学数学どころか、分数の割り算すら出来ないらしいぞ。方程式を食い物のことかと聞かれたときは本当に人類に進化できてない猿なんだな、と感慨深く感じたよ」

 

 

俺の赤毛猿呼びに櫛田は苦笑を浮かべている。

 

 

「他にも池や山内もどっこいどっこいで方程式が半分も理解できてないようだった。そんな奴らが定期試験で赤点回避が出来るとおもうか? 直近だと5月に中間試験があるんだぞ」

 

「恐らく無理だろうな。勉強ってのは積み重ねだ。中学の勉強すらまともにやってないやつが暗記科目ならともかく数学で点が取れるはずがない。纏めて退学だろうな」

 

「ああ、だがそれではあいつらを入学させた意図は? 恐らく須藤は運動能力、池はコミュニケーション能力、山内はあの虚言癖が評価されたんだろう。だがそれをあっさり退学にするのはこの学校の意義に反する。だから、馬鹿でも分かるように指導してるって事だ。そのためには授業の進行ペースを極力スローにせざるを得ないんだろう」

 

 

 

 

「だが・・・そんなペースでは本来の高校学習内容は網羅できない。だからこそ、この教科書なんだ」

 

 

 

 

「MEMちょ、お前はこの教科書を見て何か気付かないか?」

 

 

俺はそれぞれの国語、数学、英語、社会、理科の5冊の教科書をMEMちょに渡した。

 

 

「何かって何? 私、そんなに頭良くないよ」

 

 

そう言いつつも教科書をペラペラ読んでいくMEMちょ。

そのうち何かに気付いたようで、「あれ? あれれ?」と困惑した声を出し始める。

 

 

「アクたん、確かにおかしいよこの教科書!」

 

 

MEMちょはやたらと薄い教科書を握りしめながらワナワナと震えている。

 

 

「内容が歯抜けばかりだよ! なんなのこれ!」

 

「歯抜け? どういうこと?」

 

「俺は授業が全く聞き取れなかったからせめて教科書で自習でもしようと思ったんだがな。この教科書、本来習わなければいけない項目がいくつも抜け落ちているんだ。それこそ今のペースでも全部終わるようにな」

 

「そうだよ! あと、今気付いたんだけど、高校って5教科じゃないよね。国語だって現代文と古文漢文に分かれてるはずだし、他も全部ごっちゃになって薄められてるし」

 

「ああ、社会とか酷いな。最初の数ページでフランシス・ベーコンとか出てきたぞ。この学校に中世以前は存在しないらしい。逆に日本史部分は江戸時代まででそれ以降については全く記載がない。公民など一行すらない。高育にとってよっぽど身につけてほしくない知識なんだろうな」

 

 

行政や法律なんて学ばれたらこの学校の違法性が明るみになるだろうし。

 

 

「そんな・・・それじゃ俺たちこのままここにいても」

 

「この学習内容では高校卒業資格は取れないだろうな。進路は卒業特典で確保しろってことだろう」

 

「さっきのクラス分けの話から考えて、卒業特典も全員に貰えるわけはない・・・そういうことだろう」

 

「ああ、恐らくクラスごとの評価で争うことになり、最高評価のクラスのみ卒業特典が付与とかそんな感じだろうな」

 

 

それを聞いて幸村と櫛田は絶望に満ちた表情をしている。

 

 

「後は、自力で勉強して高校認定資格を取るしかないな。ちなみに昨日モールの本屋によったが、受験関連の赤本を一切置いてなく、取り寄せすら断られたぞ。受験に関しては学校が全部取り仕切ってるようだな」

 

 

卒業生の進路はAクラス卒業とおぼしき生徒以外は碌なものじゃなかった。

恐らくBクラスや頭の良い一部の生徒は高卒認定試験を取ったんだろう、大学に進学はしていた。

だが、受験対策が追いつかなかったんだろう、現役合格したのは大抵Fランばかりだった。

殆どが浪人してそれなりの大学で妥協していたようだ。

流石に高育を卒業して何年も浪人するのは世間体が悪かったのだろう。

 

 

「だったら、授業後に先生に教えて貰うとかできないかな?」

 

 

櫛田が妙案とばかりに言うが、残念だ。

 

 

「それも既に確認済みだ。質問は1問辺り1000ポイント。時間での補講は1時間2万を要求された。家庭教師のアルバイトでも雇った方がマシかもな」

 

「そんな! 2万なんて高すぎる!」

 

「恐らく補講に関してはクラス単位で受けることが前提なんだろう。40人で割れば500ポイントだからな」

 

「だけど、アクたん。今のDクラスじゃ補講受ける生徒なんて居ないだろし、来月には補講受けるポイントがなくなってそうだね」

 

「だな。だから結局は自分たちでどうにかするしかないってことだ」

 

「今から皆にちゃんと授業を受けてもらえば」

 

「恐らくちゃんと授業を受ければ評価が下がることを防げるだろうからポイントも貰えるようになるだろう。だが賭けても良い。そんなことは実現不可だ」

 

 

恐らく櫛田が言っても、一部女子から反発が来るだろうし、逆に平田や俺が言った場合、池達の男子が反発するだろう。

勿論クラスのポイントの事なんて誰も信じないだろうな。人間、信じたくないものからは目を逸らしがちだ。

逆にそれに気づけるような生徒ならこちらとしても仲間に引き入れたい人材と言うことだな。

そういう意味で幸村は及第点だ。

 

 

櫛田もその事に思い至り、うつむいて落ち込んでいる。

だが内心はかなりイライラしているんだろうな。想定外の事態に仮面が少し剥がれかけている。

 

 

「星野は、これからどうするつもりなんだ」

 

「俺か? クラスについては俺はこのまま何もしないつもりだ」

 

「それじゃみすみすポイントを減らしてしまうだけじゃないか」

 

「そうだな。だがこのクラスを変えるなら一度ドン底まで突き落とさないといけないだろう」

 

 

中途半端にポイントを残しても何も変わらない。

節約すればある程度過ごせると分かったら現状を維持するので満足して努力すらしなくなるだろう。

だから、最低限まで落とす必要がある。

それでも変わらないようなら、その時はもう見捨てて、最初の中間試験で不快な奴らを全部処分する予定だ。

後は居心地が良くなったDクラスで3年間ノンビリするのも良いだろう。

何しろポイントは支給されているもの以外でも入手手段はあるしな。

 

 

そう伝えると何故か全員ドン引きした。

 

 

「俺の卒業特典は貰えれば助かるが、なくても最悪どうにかなるからな。MEMちょは2000万払って最後にAクラスに押し上げてやるから安心しろ」

 

 

MEMちょ的にはその方がレッスンに3年間集中できるから良いだろう?

 

 

それにしても3年後は41歳アイドルか。そういえば居たな、青い珊瑚礁な熟年アイドルが。

他にも娘より若い永遠の17歳な女性声優も。

 

 

「後は、他にも使え・・・ゴホン、優秀な生徒がDクラスにいるか、観察して仲間に引き入れよう。あの中国人の王とか、優秀そうだと思ってるが」

 

「使えるって・・・それにしてもみーちゃんか。確か3カ国語出来るんだよね。口下手な感じだけど頭は良いし優秀だと思うよ」

 

「女子は俺は分からんが、男子のことは俺も注意してみよう。だが、星野。お前やっぱりかなり黒いな。いつの間にか口調も変わってるし。それが素か。役者ってのは怖いな」

 

 

俺なんかで怖がっていたらあかねとかどうなるんだ。

初対面の頃はあんなに優しくて真面目な女の子だったのに、いつの間にか陰の実力者みたいになって暗躍しまくってるんだぞ。

 

 

そして、昼休みの時間が終わるまで、今後について節約や情報収集、他にも注意すべき点を話したのだった。

櫛田は念のために授業態度について改善できないかクラスで提案すると言ったが、期待はできないだろうな。

恐らく、来月のために生徒への印象操作だろう。なんか承認欲求高そうだしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに佐倉は話し合いの間、アクアの斜め後ろでずっと置物に徹してた。

 

 

 

(アクアく~ん、わたし、いつまでこの『不敵な笑みとフリーザポーズ』をしてればいいの~。もう疲れたし、ご飯全然食べれてないよ~。ラーメンも全部伸びちゃったよ~)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追記として・・・クラスに戻った後、綾小路経由で名無しの権兵衛に山菜定食を食べている生徒が多いことについて聞いてみたのが・・・。

 

 

「自業自得ね。貴方たちみたいなバカな生徒は後先考えずに直ぐに無駄遣いしてそんなものしか食べられなくなるのよ。それ以外何が考えられるというのかしら? それに貴方たちアイドルとかなんですってね。どうせ枕営業で仕事とか貰ってるのでしょう。そんな汚らしい下賎な人間が優秀な私に話しかけないで貰えるかしら、同じ空気すら吸いたくないのよ」

 

 

などと罵倒された。

 

 

うん、こいつはダメだな(ニッコリ)

 

 

絶対許さないリストがまた1人分埋まった。




教科書や学習内容などについては独自設定になります。


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