アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」 作:ムテキング
キャラが踊る踊る。ノリノリだぜ。
予想外な展開はあったが、部活動紹介は終わり、俺たちは体育館を後にした。
そういえば同じクラスの名無しの権兵衛が「流石です、お兄様」とか言いながら顔を紅潮させハァハァと息を荒げていたが、何かあったのだろうか。
隣に綾小路がいて、何やら助けを求めている顔をしていたが、もし一緒に帰って友だちに噂とかされると恥ずかしいので、伝説の樹の下で待っていてくれ。俺は行かないけど。
そういえば、外国語研究会の受付テーブルでAクラスの坂柳有栖が涙目で地団駄踏んでいたな。
何やら語学力で勝負を仕掛けたらしいが、部員が賭けるポイントがもうないからって断ったらしい。
誰だ、あんな幼い子どもを泣かせるような真似をしたやつは。可哀想じゃないか。
「アクたん。あかねちゃんは今日は来ないの?」
体育館を出た後、MEMちょが聞いてきた。
「さっきメールを送ったんだが、今日は用事があるらしい。夜に部屋で落ち合う予定だ」
「あかねちゃんって確かAクラスの黒川あかねちゃん? そういえばガチ恋でカップルになってたんだっけ」
流石櫛田。クラスまでしっかり把握している。
「あかねにも色々手伝って貰っているから後で紹介する。今日は学校内を回ってみよう」
俺たちは昨日行けなかった特別棟を見て回った。
「アクたん。ここってなんか監視カメラが全然見当たらないんだけど」
「ああ、理科実験室とかパソコンルームとかあるのにな」
特別棟は危険な薬品を保管している部屋など、盗難被害に遭うと問題になりそうな場所も多い。
流石に薬品保管庫などは鍵が掛かっているが、普通のドアなので力任せに破ることも可能だ。
だが、俺たちは天井を見ているとある事に気付いた。
そして、それを裏付けるために手分けして調べた後、他のクラスの連中が特別棟に入ってきたので、鉢合わせしないように撤収した。
特別棟を後にした俺たちは図書館へと来た。
「結構広いな。蔵書もかなり多そうだ」
「映像資料とかもあるみたいだよ、アクたん」
「ふむ、自習スペースもあるし、勉強するのにも良いだろう。星野、参考書のコーナーを調べてみたい。良いだろうか?」
幸村の提案で俺たちは参考書コーナーに来たが、参考書も種類が豊富で、同一の参考書も複数冊用意されているので勉強会をする際にクラス間で参考書を取り合うようなことを避けることが出来るだろう。
「だが・・・やはり受験関連の書籍はないか」
「確かに。赤本というヤツは見当たらないな。こんなことなら実家から持ち込むべきだったか」
「やっぱり、受験勉強とかさせたくないんだね」
「ああ、普通に勉強して受験をするからAクラスを目指さないとなったら困るって事だろう」
「だが参考書の方には教科書に載っていない本来学ぶべき部分も掲載されてあるから、これで勉強すれば高卒認定も取れるだろう。ただ、この事にどれだけの生徒が気付いているか不明だがな」
幸村と櫛田が先行きの不安で顔色を悪くしている。
王にも部屋に戻ったらこの話をすることにして、幸村と櫛田は今後の自習用の参考書を確保しにいった。
佐倉はカメラや写真関連、MEMちょはアイドルの映像資料などを漁りにしばらく別行動になったので俺も趣味の本を探すことにした。
「アガサ・クリスティーやエドガー・アラン・ポー。こっちには江戸川乱歩。古典ミステリーが大分揃ってるな」
俺は趣味のミステリー本を漁っているが、品揃えが良い。
著名な名作から、マイナーな本まで網羅されてある。
「お、京極夏彦。こっちには今村昌弘もある。現代ミステリーも揃ってるのか。おいおい、赤川次郎のコーナーもあるぞ。600冊超えてるのに全部揃えてあるのか」
とりあえず去年出た京極の新刊を借りていこうと本を取ろうとしたら、俺の手に別の手が重なった。
慌てて手を引っ込めて隣を見ると、そこには銀髪の美少女が本へと手を伸ばしていた。
「あ、申し訳ありません。貴方が先に取ろうとしたのですね」
「いや・・・こちらこそ。どうやら目当ての本が被ってしまったようだな」
その少女は、芸能界の美男美女を見慣れた俺でも目を見張る程に可憐で、またどこかおっとりとした雰囲気が俺の荒んだ心を浄化するように感じられ、思わず素で言葉を返してしまった。
「貴方も、本、好きなのでしょうか?」
「あ、ああ。ミステリーが好きでな。特に京極は俺が子どもの頃から愛読しているんだ」
「まあ、そうなんですね! 私もミステリーが好きで、勿論京極夏彦さんの本も凄く好きです」
彼女は柔らかな笑みを浮かべて喜んでいる。
「この学校に来て本が好きな人にはじめて会いました。 私のクラスではどうも本が好きな方がいらっしゃらないようで、寂しい思いをしていたんです。どうか私とお友達になってくれませんか」
「え・・・いや、だが・・・」
「お嫌ですか?」
安易に他のクラスとおぼしき彼女と繋がりを持つのはどうなのかと一瞬躊躇うと、彼女は悲しげな顔を浮かべてしまい、俺はいたたまれなくなった。
「いや、そうじゃない。大丈夫だ、問題ない。俺は1年Dクラスの星野アクアだ」
「あら、私ったらあまりに嬉しくて先走ってしまいました。私は1年Cクラスの椎名ひよりです。これからよろしくお願いします、アクアくん」
「ああ、椎名。こちらこそ・・・」
「ひより、とお呼びください。もうお友達なんですから」
「いやいきなり名前呼びは・・・」
「うぅ・・・やっぱりお友達と思っているのは私だけでしょうか」
「・・・・・・・・・ひより。よろしくな」
「はいっ! よろしくおねがいします!」
俺はひよりに押し切られるままに、連絡先も交換してしまった。
その後、MEMちょに見つかるまで、俺はひよりと京極サイコロ本談義を続けてしまった。
「ああーー! またアクたんが新しい女の子誑かしてる!」
「人聞きの悪いことを大声で叫ぶんじゃねえ!」
櫛田や王には白い目を向けられ、あかねからは大量のメッセージが来るし、本当に不本意な出来事だった。
だが今後、椎名ひよりとの付き合いは俺にとっての唯一の癒やし、心のオアシスになっていく。
「椎名には他の女達にはないバブみを感じる。もう何もかも忘れてオギャりたい」
アクア「椎名ひよりは俺の母になってくれるかもしれなかった女性だ。そのひよりを退学させたお前に言えたことか!」
綾小路「お母さん? 椎名が?」
そんな感じでアクアと綾小路が虹を渡るような展開は“現段階では”ありませんので安心してください。
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