アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」 作:ムテキング
「・・・お前らは本当に愚かな生徒達だな。見捨てられて当然だ」
私の言葉を聞いてもまだDクラスの生徒達は何を言っているのか欠片も理解していない顔をしている。
いや、星野の仲間達は苦笑しているし、高円寺もやれやれと肩をすくめている。
星野アクア。恐らく歴代最速の初日でSシステムを解明したであろう生徒。
奴がクラスに情報を共有さえしていればAクラスも夢では・・・いや、やはり無理であろうな。
どうせ堀北辺りが無能の妄想と断じて、3馬鹿がそれに乗っかり騒いで有耶無耶にされたであろう。
だからこそ、星野はクラスを見捨てて、知り合いや見込みのある生徒だけを集めてプライベートポイントを稼ぎだしたのだろう。
奴はこのクラスがAクラスになれるなど、欠片も思ってはいないだろう。
だろうだろうと推測ばかりだが、実際に奴の4月の動きを観察していれば大体想像がつく。
Aクラスの黒川あかねと一緒に動いているのは、恋人だから理解できる。
だが、黒川あかねとMEMちょや佐倉を連れてボードゲーム部と外国語研究会でポイントを巻き上げたのには驚いた。
5月からなら、部活の賭けをやる奴は毎年いるが、4月初日からは星野が初めてだ。
ポイントは全て黒川あかねが預かっているが、監視カメラなどの映像や音声から主導したのは星野で間違いない。
Sシステムを理解していなければ賭けで稼ぐなど考えつかないだろう。
特にAクラスの坂柳の行く手を悉く潰していたのは高評価だ。
恐らく、同じクラスの黒川から坂柳がチェスが得意なのと語学が堪能なのを自己紹介で言っていたのを伝え聞いたのだろう。
放課後直ぐに動いたことから、障害で足が遅い坂柳より先んじて行きそうな部活を全て潰そうとしたのは明らかだ。
その甲斐もあってか、坂柳は4月は最初の10万ポイントから増やすことは出来ていない。
恐らく今日も放課後は直ぐにボードゲーム部などに行くだろう。
本当ならDクラスに納得のいかない堀北が私に文句を言いに来るだろうから、綾小路と一緒に呼び出してプギャーしてやろうかと思ったが、ここはAクラスの坂柳の財源を潰す方がDクラスのためになる。呼び出すのは綾小路だけにしておこう。
だが、結局、星野はDクラスに貢献など考えてなどいまい。
クラスに情報を共有することなく、櫛田、王、外村と特異な能力を持つ生徒を集めてAクラスの黒川あかねと『芸能部』などという部活を始めた。
そこでかなりのポイントを稼いでいるらしいが『芸能部』の内部情報は上層部から秘匿されていて、一教師の権限では閲覧が出来ない。
真嶋の奴も、あそこまで振り回されているにも関わらず、堅く口を閉ざしていることから、深入りすると危険な気がする。
そもそも、星野の推薦者が鬼島総理って時点で厄ネタ確定だ。
部活の稼ぎでのクラス移動は禁じられてはいるが、“あの”外村がいる時点でそれもどこまで信頼できることか。
動くとしたら3年の最終試験後だろうから今から心配してもキリがないが。
恐らく真嶋の首はハレー彗星並の勢いで吹き飛ぶのは確定だな。
チエの奴なんてすぐさま真嶋から距離を取って飲みの誘いにも来なくなったし、私も精々巻き込まれないようにせねば。
さて、現実逃避はそろそろ終わりにして、こいつらに説明してやらねば。
はぁ・・・毎年のことだが本当に面倒だ。
一瞬でも今年こそはと期待した私が馬鹿だった。
だが、まだ綾小路や高円寺が実力を発揮してくれれば・・・高円寺は流石に無理か。
「ポイントは振り込まれた。これは間違いない。このクラスだけ忘れられた、などという幻想、可能性もない。分かったか」
いや全く分かってないわ、やっぱり。
ただ、高円寺だけが我が意を得たりと高笑いして0ポイントが支給されたのだと説明してくる。
はいはい、毎年お決まりの「毎月10万ポイントが振り込まれるって」頂きました。
言ってないだなぁこれが。
Dクラスは毎年面白いように引っかかってくれる。
そしてこれまたお決まりの、Dクラスの中でも良い子ちゃんからの「理由を教えて下さい」発言。
大量の欠席、遅刻、授業の妨害などの生活態度で減点されて最低評価になった旨を伝えても、「説明を受けた覚えがない」と、これまたお決まりの返しがくる。
説明されなきゃ分からない時点で終わってるんだよ、お前達は。
そんなだから見捨てられるんだ。
星野達を見てみろ、チベットスナギツネみたいな顔してお前らを見て居るぞ。
もはや呆れを通り越してへんな笑いがこみ上げてきてはいるが、教師の威厳と危機感を煽るために厳しい顔を維持せねば。
笑うなよ、まだ笑うなよ。幾らプギャーしたくても笑うじゃないぞ。頑張れ私の表情筋。
後で学内掲示板で生徒のふりして「今どんな気分」と幾らでも煽れるんだから。
そして、最早最低値の0ポイントだが、“遅刻・欠席・授業態度”では0ポイント以下にはならないことを伝えて、お待ちかねのクラスポイントの発表タイムだ。
私は持ってきていた紙を張り出す。
Aクラス 1040
Bクラス 650
Cクラス 490
Dクラス 0
これがクラスの成績であることは流石に理解できたようで、そして綺麗に順番に並んでいることに生徒達が気付く。
一部本物の馬鹿が生活が出来ないと喚いているが、他クラスは問題なくポイントが残っている。
「段々理解してきたか? 何故Dクラスに選ばれたか」
そう私は言うが、私自身、何故星野がDクラスに選ばれているのか、これが分からない。
面接官のコメントはなんか私情に溢れまくっていたし。
人間性に非常に問題があるのはお前じゃないかとボブなら訝しんだだろうな。
私も星野の戸籍などを確認して芸能界の闇が垣間見えて流石に背筋が凍った。
中学生なのに枕営業で孕まされて、それが原因でストーカーに殺されるなんて怖すぎるだろう、芸能界。(茶柱先生の勝手な解釈です)
私が懇切丁寧に、どうしようもないクズで落ちこぼれだからDクラスになったんですよ(意訳)と説明したが、やはり納得はしていないようだ。
いやさ、流石に0ポイントはないだろう。
星野達が芸能部を立ち上げたから、情報共有されなくても部活の評価で500ポイント近くは行くと思ってたんだよ。
例年なら300ぐらいは残ってるからな。
これなら最悪Cクラス行けるかって一瞬期待したのにな。
できの悪い桜木花道、須藤が他のクラスに馬鹿にされると憤っているが、本物の馬鹿なんだからしょうがないだろう。
元不良の花道だってバスケしてからは喧嘩をしなくなったというのに、こいつときたら。
その頭はスラダンリスペクトしてるんじゃないのか?
私の心のバイブルを汚すな。今すぐ黒髪に染め直してやろうか。
いかんいかん、少し落ち着かねば。
気を取り直して、私はクラスポイントでのクラスの格付けの変動、そして卒業特典がAクラスのみに与えられることを伝えた。
教室に阿鼻叫喚の声が響く中、やはり星野と愉快じゃない仲間達は無表情。
これも想定通りといった感じだ。
少しぐらい動揺してくれても良いんだぞ。
これだと説明している私の方が滑稽に見えるじゃないか。
生徒の怨嗟の声を聞き流しながらそんなことを考えていると堀北が手を上げて質問してくる。
「先ほど、先生は不正はなかったと言いますが、そのポイント一覧を見る限り不正がされたことが一目瞭然。あまり私を馬鹿にしないで貰えないかしら」
は?
「Aクラスが1000ポイントを超えているのが何よりの証拠。減点方式であるならば1000ポイントを超えるなんてありえないでしょう。これは学校側の明らかな不正行為です。この程度も見抜けないと思っているのですか? だとしたらやはり先生方の見る目がないということでしょう。やはり私が不良品などというのは間違っています。今すぐ私をAクラスに所属変更をしなさい。それで今回の不正については目を瞑ってあげるわ」
「正真正銘の馬鹿がいる」
ボソッと星野が呟いたが、私も同意だ。
あのクラスの中ではいつもニコニコ鉄仮面な櫛田ですら、口をオーの字にして驚いている。
「堀北。さっき言ったとおり、不正は一切ないぞ。そして授業態度などは減点方式で採点しているが、何も加点がないとは言っていない」
「どういうことかしら。もし加点項目があったのだとしたら、この優秀な私がいるのだから0ポイントということはないはずだけれど」
どうしてここまで自分のことを優秀だと疑わないでいられるのだろうか。その無限大の自己評価の高さはある意味尊敬する。もしかして山内と同じ理由で一芸特化合格をしたのか、こいつは。
「加点についてはAクラスもそうだが、Dクラスはそれ以上に加点されている。一部の生徒がとある部活で活躍した為、Aクラスに100ポイント、Dクラスに250ポイント加点された。また、その部活は今後も同様に活躍が見込まれるため、ここまでの大量の加点は今回のみだ。そしてDクラスはその加点された250ポイントも物の見事に吹き飛ばしたんだ。これについては流石の私も唖然としたんだぞ。例年通りの出来なら今頃お前達はCクラスになっていただろうからな。間違いなく今年のDクラスは超弩級の不良品の集まりだよ。ギネスに申請したくなるレベルだ」
私の説明で流石に堀北も顔色を悪くしてたじろいでいる。
最初の週で1250ポイント全てが吹き飛んだと知ったときの私の絶望を少しは感じてくれ。頼むから。
その後、中間テストで赤点を取ったら退学な事を伝え、私は足早にクラスを後にした。
私も胃薬貰ってこよう。
茶柱「推薦者が鬼島総理? まさか星野の父親は・・・いけない、こんな事がどっかに漏れたら本気で消されかねん」
馬鹿に説明するのって大変だよね。
それを毎年行っている茶柱先生。
これじゃメンタルおかしくなってもしょうがない気がしてきました。
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