アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」 作:ムテキング
なんか思いついたので短いですが書きました。
前話を読んでいない方は、そちらから読んでください。
4月の水泳授業にて。
「俺、中学の時は機敏なトビウオって呼ばれてましたから」
「いやいや、池、俺なんてもっと凄いぜ。大海原のブラックタイガーとは俺のことだぜ」
調子に乗っている池に対し、山内がいつも通りに大嘘をついていた。
ちなみにブラックタイガーとは海老である。
意味も考えず語感からなんとなくかっこよさそうと口にしたこの男、やはりいい加減すぎる。
そんな中、体育授業の先生、通称ゴリ吉が男女別50M自由形の競争をすると言い出した。
「なあ、山内。そんなに自信があるんだから、それこそ凄い早いんだろう」
星野が山内に煽りをいれて、それに山内が一瞬挙動不審になりつつも結局胸を張り大声で叫ぶ。
「おお、俺ぐらいになると、そうだな、調子が良いときは10秒切れるぜ、たしか世界記録が9秒ぐらいだっけ」
残念ながら、その世界記録は陸上100メートルの記録で、正確には9秒58だ。
「だが、あれだ。普通の高校生相手にそんな全力を出すなんてみっともないことはしないからな。みんなのレベルに合わせてやるよ」
山内の口からはペラペラと大言壮語が吐き出される。
彼の虚言は詐欺師の親に鍛えられていたため、知らない人にとっては本当のことなのかと信じてしまいそうなほど堂に入ったものだ。
だが周りで聞いている生徒達は常識的なタイムを知っているため、いつものこととばかりに直ぐに関心を失う。
そんな中1人、綾小路は動揺したように山内にコソコソと話しかける。
「山内。ちょっと聞きたいけどいいか?」
「おう、なんだ綾小路。水泳のことならなんでも俺に聞いてくれ」
「あのだな、あまり俺は詳しくないんだが、だいたいみんなどれぐらいの早さで泳げるもんなんだ」
「(いやいや、俺、本当は全然泳げねーよ。遅すぎてタイムなんて覚えてねーし)そうだな。俺の全力はさっき言ったが、普通の奴は15秒切れれば速いほうなんじゃねーか」
それを聞いた山内は内心で嘘がばれないかビクビクしながらも適当な事をいう。
勿論、そんなことを信じる奴は誰もいないだろうが、ここに一般常識を知らない男が約一名いた。
「(マジか・・・俺がまだあそこからだされなかったのは、まだまだ未熟だったからということか。これは気合いを入れないといけないな)そうか、ありがとう山内。俺、頑張ってみるよ」
「ああ、期待はしてねーけど、それなりに頑張れよ」
その後、正真正銘、気力の限りを尽くした綾小路は19秒という、世界記録を1秒以上塗り替えるタイムを叩きだした。
そして、疲労困憊でプールサイドに倒れ伏す綾小路に熱心に水泳部へと勧誘するゴリ吉先生と小野寺少女の姿がそこにはあった。
「ぜひー、ぜひー・・・やまうちぃ、後でぶんなぐる」
綾小路の心に『怒り』の感情が芽生えた貴重な瞬間であった。
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