アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」   作:ムテキング

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本日2話目です。
なんか書き終わったので待つのもアレだし初投稿です。
前話を読んでいない方は、そちらから読んでください。


綾小路清隆は今日も振り回される

「ごめんね、協力はしたいんだけど、私、部活があるから」

 

「いや、少しだけでも」

 

「あ、もうこんな時間。急がなきゃ。じゃあ、そっちも頑張ってね」

 

 

俺の言葉を遮るようにマイスイートエンジェル櫛田は鞄を持って教室から出て行ってしまう。

今日も笑顔が可愛いかった。頼みを聞いてくれなかったのは残念だが、やはり彼女みたいな純粋な天使に、あのエロ小僧共に関わらせるのはいけないよな。

後ろにはコンパスを手に般若のような顔をした堀北がいるし、もう一度俺からあの3馬鹿に声をかけるしか無いか。

全く、俺が一体何をしたというんだ。

 

 

事の起こりは5月1日。

この学校の真の姿が露わになったことからだ。

 

 

茶柱先生が教室から出て行ってから、隣の堀北から絶え間なく怒りの波動とコンパスの針が飛んできて辛かったな。

 

 

それにしてもまさか俺が『悲しみ』という感情を獲得できるなんてな。

先月の山内からは『怒り』の感情を学べたことから、やはり俺がこの学校へと来たことは間違いでは無かったようだ。

この調子なら夏頃にはきっと真面な人間になって・・・いや、何で俺、負の感情しか学べていないのだろう。

 

これが涙。 泣いているのは俺?

ダメ、“怒り”君が呼んでる。

 

先日博士に見せて貰ったアニメの台詞が何故かリフレインしている。

 

 

この思考はダメだ。このままでは俺は理由もなく山内をフルボッコだドンしてしまう。

太鼓の達人から逮捕の達人にランクアップしてしまうでは無いか。

ちなみに逮捕される方な。

 

 

その日の放課後も茶柱先生に呼び出されて堀北の相談を盗み聞きさせられて酷い目に遭ったし。

 

 

そして極めつけは先日。

お詫びということで昼飯を奢って貰ったんだが、それが完全な罠だった。

 

 

 

 

ここで挟まれる唐突な回想シーン。

 

 

「先日は取り乱してしまって、貴方には酷いことをしてしまったわ」

 

 

おれはこのとき、これが『ツンがデレる瞬間』というやつなのかと、感慨深くなって警戒心を解いてしまっていた。

 

 

「あの日のお詫びがしたいの。ごめんなさい。それで今日お昼・・・どうかしら? もちろん私が出すわ」

 

 

いつも俺が後ろの席の星野に誘ってくれアピールをしているが、それを袖にされている事を知っていて言っているなら、堀北はとんだ悪女だろう。

 

 

あの時の俺はもう少しで何か新しい感情を学べる予感がしていたんだ。

あれが博士がいつも言っている“心がぴょんぴょんするんじゃあ”っていう奴のなのか?

いや、あんな気持ち悪い事を考える奴なんて外村以外にいないだろう。

だがたしかに俺の心臓の鼓動がいつもより高鳴っていたのは確かだ。それとも不整脈かな?

 

 

だからこそ、俺は何の疑いもなく堀北にお昼を奢って貰ったんだ。

 

 

だというのに、「食べたわね?」と堀北の冷たい言葉が俺の胸を貫いた。

 

 

どうやらお詫びとは、その直後の“ごめんなさい”のことで、お昼を奢ることではなかった。

そして俺はお昼の対価として彼女に顎で使われる事になったんだ。

 

 

やっぱり山内のこと殴ってこようかな。寮の裏手だったら監視カメラが無いし、記憶がなくなるまで殴ればワンチャンバレないかもしれない。

 

 

その晩、俺は初めて布団の中で泣いた。

 

 

話を戻そう。回想シーン終了だ。

 

 

 

 

とにかく、初めての感情に俺の心は振り回されてばかりだ。

 

 

だが禍福は糾える縄の如し。

今までこれだけ負の感情ばかり想起される事が起きているんだ。きっとこれからは正の感情が芽生える出来事だって起きるはず。

俺はこの学校で殺伐とした綾小路清隆からラブコメ王道の浦島景太郎になるんだ。

堀北だってそのうち成瀬川みたいにデレてくれるはず。声優さんとちょっと名字似てるし。一文字だけ。

だが、どちらかといったら俺は前原しのぶ派だ。

あの家庭的なところが良いと思う。

朝起きたらキッチンで味噌汁とか作ってくれてる女の子、どこかにいないものだろうか。

 

 

「綾小路君。そろそろ良いかしら」

 

 

現実逃避もここまでか。

俺は斜め45度の角度から振り下ろされるコンパスの針が刺さる直前に瞬間的に頭部をスウェーして致命傷を防ぐ。

我ながら職人芸の域にあると自賛してしまう妙技だ。

これならいつだってかませ犬のトップを取れるぜ。

ともかく、これ以上堀北の機嫌が悪くなると困るので、なんとか3馬鹿に勉強を教える手立てを考えねば。

 

 

こうして数日俺と堀北は試行錯誤を重ねることになる。

 

 

 

 

 

 

 

そして試験まで残り10日、事態は急変した。

 

 

「悪ぃ、黙ってたけど俺、実は星野に勉強を教わってるんだよ、池と一緒に」

 

「は? なんですって?」

 

 

ばつが悪そうな顔で謝ってくる須藤の言葉に対し、堀北の顔がこわばる。

 

 

「あいつにバスケで勝負を挑まれてよ。もちろん俺が勝ったんだが、それでも俺なんかの将来を真剣に考えてくれるあいつの想いに答えたいってなってさ。部活が終わった後の夜にあいつの部屋で少しずつ教えて貰ってたんだ」

 

「なら最初から言ってくれれば良かったんじゃないか」

 

「いや、なんていうか、恥ずかしくてな。実は俺、小学の頃から全く勉強してなかったからさ。こんな俺が今更勉強なんてってな。それに星野の奴も同時に教えるのは2人までで手一杯らしくて、山内だけハブっちまう事になってよ。それで言い出しにくかったってのもある。だから、山内にはお前らが教えてやってくれると助かる。ああ、もう部活の時間だから俺行くわ、じゃあな」

 

 

そう言って、どこかスッキリした顔の須藤は走って教室を出て行った。

 

 

「星野・・・星野アクア・・・ああ、あのアイドル顔のクソ男ね」

 

「堀北?」

 

 

堀北は俯いて肩を震わせている。

 

 

「どうせ・・・あんな無能な男に勉強なんて出来るわけ無いわ。アイドルなんて皆、クソ! クソ! クソなのよ! 特にB小町なんて大っ嫌いだわ! あんなものを復活させた苺プロなんて、絶対私が潰してやるわ! 須藤君も馬鹿ね! あんなのに関わって、きっと赤点で退学になるんだわ!」

 

「ちょ、ちょっと落ち着け堀北。皆が見ているぞ」

 

「ああ、お兄様、お労しやお兄様」

 

 

いきなり激高したかと思ったら、今度は泣き出しやがった。

情緒不安定にも程があるだろう。

 

 

俺は堀北の肩を掴み、遠巻きに見ている訝しげな顔のクラスメイト達から逃げるように教室から出て行った。




さて、綾小路君が外村から借りたアニメは何と何でしょうか?

モチベ維持の為にも感想、評価お待ちしております。
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