アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」   作:ムテキング

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長くなりそうなのでまたもや途中で切ったので初投稿です。


綾小路清隆は傍観者に徹したい

「こんな所にいたのか、鈴音。探したぞ」

 

 

堀北兄は直立不動に立ち、両手を後ろに組む。

 

 

「15年ぶりだね」

 

「2年ぶりです。お兄様」

 

 

堀北。恐らくポーズから推測するに“ああ間違いない。使徒だ”とか言って欲しかったんだと思うぞ。

それにしてもさっきの堀北の思い出話から思っていたのだが、お兄様はとんだアニオタのようだな。

 

 

堀北は流していた涙を拭い、顔を上げ、兄を見つめる。

 

 

「それにお兄様、“鈴音”などと他人行儀に言わずとも、どうぞ家にいた頃のように“鈴音たん”と呼んでください」

 

 

鈴音・・・たん?

 

 

「む、いや、そのだな。ここは学校故にだな、公私というものを付けるべきかと思うのだ」

 

 

堀北兄は、チラチラとこちらを見つつ言う。

 

 

おい、お兄様。流石に“鈴音たん”は無いだろう。

あとそんな他人の目を気にする様な愛称などつけるべきではないだろう。

 

そんなにションボリするな堀北。

もし校内でそんな呼ばれ方されたら恥ずかしすぎて悶え死ぬぞ。

 

 

「それでお兄様。どうしてこちらに・・・」

 

「それは・・・いや、生徒会長として全ての学生が問題なく過ごせているか目を常に目を光らせていてな。それで、たまたま、そうたまたまなのだが、鈴音が泣いて男と一緒に教室を出て行ったと、そうたまたま聞いたから、巡回ついでに探したのだ、たまたまだぞ」

 

 

そんなたまたまを強調するなよ。

つまりお兄様は妹が可愛すぎて悪い虫がつかないように監視の目を光らせていたということか。

 

 

あれ・・・この場合、悪い虫というのはもしかしなくても俺のことか?

 

 

「先ほどお前を泣かせた赤毛の猿は生徒会長権限で退学処分にしておいた。明日にはいなくなるから安心してくれ」

 

「え? いえ、お兄様、須藤君は特に悪いことなどしていません。彼はクラスへ貢献しようと頑張っていただけです。ただ私は自分で彼を変えることが出来なかった、そんな不出来な自分に憤りを感じただけなのです。なので、彼の退学は取り消してください」

 

「ふむ、そうなのか。だが、あのゴミ虫が今後鈴音を害する可能性も「お願いします。お兄様」・・・分かった」

 

 

堀北兄は社会の窓から端末を取りだし、どこかに通話を繋げた。

 

 

「・・・・・・・・・橘秘書官か。例の蛆虫の退学だが・・・無理だったので取り下げておいた? 仕事が速いようで何よりだ。ではよしなに頼む、ラ・ヨダソウ・スティアーナ・・・取り消しておいたぞ、鈴音」

 

 

取り消しておいたも何も却下されてるじゃないか。

一瞬ヒヤッとしたが、流石に生徒会長でも生徒を無理矢理退学にすることは出来ないようだ。

 

 

「ところで、君は確かスケコマシ小路君だったかな? 鈴音と随分と仲が良いようではないか。先日は鈴音たんと食堂でイチャイチャとランチを楽しんでいたのだったか? どうやら、この世に未練は無いようで結構毛だらけ猫灰だらけ。さあ、辞世のハイクを詠め」

 

 

堀北とイチャイチャ? 誰だそいつは。

そんな世界線には俺はまだ辿り着いていないぞ。

もしやこのツンツンの堀北はα世界線の話で、β世界線にはデレデレの堀北がいるのだろうか?

羨ましいぞ、そっちの俺。

俺にリーディングシュタイナーがあるかどうかは定かではないが、この場を生き残ったら電子レンジとIBM製の古いパソコンを購入しよう。

 

 

不動の構えを取った堀北兄は、息吹と呼ばれる特殊な呼吸法を行いながら、闘気を高めている。

 

 

「綾小路君、貴方がどうしてお兄様を怒らせたのか分からないけど、すぐに謝りなさい。お兄様は空手5段、合気道4段の達人よ。勝てっこないわ」

 

 

怒らせた理由はお前のようだがな堀北。

どっちにしろ、お前のお兄様は引く気が無いようだぞ。

 

 

「大丈夫だ、堀北。俺もピアノと書道なら得意だ。小学生の時、全国音楽コンクールで優勝したこともあるぞ」

 

「それならお兄様もピアノは得意よ。お兄様が弾き語りしてくれる『ビギニング』や『暁の車』はとても素敵なの」

 

 

のろけているのか心配しているのかどっちかにしてくれ。

 

堀北兄は両手を回すように動かす。回し受けか?

 

 

「貴様に武の神髄を見せてやろう」

 

 

堀北兄の雰囲気が明らかに変わるのを感じる。

 

来るか?

 

こちらに向けられた殺気で肌がピリピリするのを感じる。

確かに、あそこでもここまでの相手はいなかった。

これなら久々に楽しめそうだな。

 

 

ジリジリと、お互い間合いを調整するように少しずつ動く。

 

 

そして、堀北兄が両手を上に上げ、そして左右に広げ大きく円を描くように下へと動かしていき・・・おもむろにジッパーを下げて、ズボンを足首までズリ下げた。

 

 

「は?」

 

 

俺の目の前には、堀北にどこか面影が似ている幼い少女の写真がプリントされたトランクスを丸出しにして立っている生徒会長の姿があった。

それを見て、俺の思考はフリーズした。

 

 

堀北兄は、固まってしまっている俺に向かって、走ってきた。両足首にズボンを引っかけながら、不格好に足を小刻みに揺らしながら。

 

 

「あれは、合気の神髄、相手の虚を衝く技法。流石ですお兄様」

 

 

そして俺の懐まで飛び込んできた堀北兄は拳を握りしめ、叫びながら俺へ鉄拳を繰り出してきた。

 

 

「必殺! ラブ・ミーぷげらっちょ「ああ! お兄様!!」」

 

 

だが、あまりに見え見えなテレフォンパンチだったため、俺は首を軽く横にずらして避け、全力でカウンターパンチを叩き込んでいた。

 

 

お兄様はそれはそれは、見事なまでに芸術的な回転をしながら宙を舞い、車田落ちで地面へと叩きつけられた。流石ですお兄様。

 

 

「ああ、お労しやお兄様」

 

「だ、だいじょうぶだ、問題ない」

 

 

心配のあまり駆け寄った堀北を振り払い、堀北兄は何事もなかったかのように立ち上がる。

妹を心配させまいとするためか、それとも大物ぶりたいのか分からないが、なかなかの根性とタフさだろう。

だが、顔は平然としていても、足がプルプルしているのが隠せていない。

 

 

「ふ、南雲ですら指を差して腹を押さえながら無抵抗のまま喰らったこの俺の奥義を、よもや初見で破ってくるとは、なかなかだな、綾小路清隆」

 

「お兄様の合気の奥義を破るなんて・・・まさか書道の無の精神?」

 

 

いや、それ結局笑われただけじゃ。勝負に勝っても品格で負けてねーか。

あと、合気道なのか、それ?

ただの無防備な馬鹿にしか見えなかったのだが。

そして書道は適当に言っただけなので関係ないと思うぞ。

 

 

「そんなことは今はいい。それよりも鈴音、ここまで追ってくるとはな、父上は反対したのではないか」

 

「お兄様を認めようとしない父の事なんてどうもいいのです。もうお兄様の知っている頃の何も出来なかった私とは違います。追いつくために来ました」

 

「追いつく、か」

 

 

堀北兄はたじろくように言葉を詰まらせる。

そして顔を背けてから口を開いた。

 

 

「Dクラスになったと聞いたが、2年前と何も変わらないな。ただ俺の幻影を見ているだけで、お前は今もまだ自分の欠点に気付いていない。この学校を選んだことも直に後悔するだろう」

 

「幻影なんて・・・お兄様は誰よりも優秀です。それを認めようとしない有象無象共の方が間違っているのです。私はそれを証明するためにここに来ました。直ぐにAクラスに上がって見せます。そしたら・・・」

 

「無理だな。お前はAクラスにはたどり着けない。それにもはやクラスだって既に崩壊している。お前はそれにすら気付いていない。昔と同じように目を瞑り耳を塞ぎ自分の理想の世界だけで生きている。そんなお前がAクラスになれるほどこの学校は甘くはないぞ」

 

「絶対に、絶対にたどり着きます・・・絶対に・・・」

 

 

堀北は地面にへたり込み、虚ろな目で地面を見つめながら繰り返し口にした。

 

 

堀北兄はそんな堀北へと一瞬手を差し伸べようとしたが、思いとどまるように手を引いて、唇をかみ、空を見上げた。

 

 

それにしても“既に崩壊している”か。

それは中間試験程度の話ではないんだろうな。

堀北が知らないところで何かが動いている。

彼女がこのまま何も気付かずに過ごしていたら、そう遠くないうちに致命的な事態に陥るレベルの事が。

 

 

だが俺はAクラス特典に何も価値を見出していないので、あんな面倒くさいことに関わるのはごめんだ。

だから堀北にはこのまま“彼らの事”には気付かずにいてくれることを望んでいる。




誤字脱字報告助かります。
幾ら推敲してもどんどん出てくるんですよね。
なんですかね、あれは。
一つ見つけたら百はいるお台所の天敵みたいな存在ですよね。


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