アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」 作:ムテキング
「今週ももう残り3日、週明けには中間テストだ。最後まで気を引き締めて励むといい」
ベーコンベーコン言いながら勉強をするクラスメイト達に発破をかけるように茶柱先生が言ってくる。
もう水曜で土日を入れても残り5日。
今日から動かなければ流石に間に合わないだろう。
「ああ、あと山内。友人との良い想い出、作っておけよ」
「サエちゃんせんせー、なんか最近俺に優しいっすよね。惚れたんですか」
「ははは、バカ者め」
茶柱先生の山内に向ける目は最早屠殺所に送られる前日の豚に対する菩薩のような目であった。
彼女の中では山内の運命は既に決定済みなのだろう。
櫛田や王、幸村も山内に次々と別れの言葉をかけたりしている。
あの人見知りの佐倉ですら「挫けないでね」と励ましていて、山内は何言ってるんだ此奴らみたいな顔をしているな。
「フランシス・ベーコンは重要ポイントね、絶対に試験に出るわよ綾小路君」
堀北はそんな事にも全く気にかけず、またもやひとり黙々と自習をしている。
だが、俺に声をかけるだけ、多少はお兄様の言葉に影響を受けているのだろう。
今の流れ、結構重要な所だったのに見逃していたとはやはりこいつはポンコツだな。
そして、お昼休み。
さて、櫛田はいつも通り、王と佐倉を連れて出て行ったし、幸村にも頼れないだろう。
他には・・・
「松下。ちょっと頼みがあるんだが、いいか?」
頭の回転が速そうで人を見る目もありそうな松下に声をかけてみるが、彼女はチラッと星野に目をやって・・・
「ごめんね、今日のところはパスするね」
やはり優秀だな。
まだ手は付けられてはいないだろうが、このままだと時間の問題だろう。
こちらがそれなりに力を見せなければ自分からあっちに行きそうだ。
となると、もう人がいないな。もう人がいないな。後ろに誰か立って俺に熱視線を向けている気がするが人がいないな。
「やあ、綾小路君」
ガシッと肩を掴まれる。
「ど、どうした、平田」
「君が助けを求めている目をしていたからね」
「残念だが、ここはヒーローアカデミーではないぞ」
「大丈夫。僕が来た」
「来なくていい、帰れ」
やたらフローラルな香りを漂わせて奴が来た。
確かモールで売っていた『男を惹きつける魅惑の香り』とかってキャッチコピーの香水だな。
堀北に荷物持ちで連れ回されたときに見たぞ。
これでお兄様もイチコロね、とか言ってカートンで買っていたのが印象的だった。
だが先日の邂逅の感じでは効果が無かったようだがな。
「何故背中にぴったりと身体を密着させる?」
「君の背中が泣いていたからだよ」
「何故俺のケツを揉みしだく?」
「坊やだからさ」
ヤバい、なんだか分からないが、本能的に恐怖を感じる。
こんなこと、あそこでは教えて貰っていないぞ。
ありとあらゆる恐怖耐性をあそこで獲得したはずなのに、こんなに容易く恐怖を感じるとは、流石高度育成高等学校。奥が深いな。
平田にケツを揉みしだかれる度に、何故か俺のケツの穴がキュッとすぼまるのが分かる。
教えてくれ、父よ。こんな時はどうすればいいのだ。カリキュラムでは習っていないぞ。
やはり俺にはまだ外は早かったのだろうか。
「いい加減にして貰えるかしら」
堀北が割って入ってくれた。
「何かする気なのでしょう。さっさと行くわよ」
「助かった。平田、一緒に学食まで来てくれ」
「うん、続きはまた今夜だね」
そんな今夜なんて訪れないぞ。
こうして、俺は堀北と平田を連れて3人で学食に向かった。
堀北以外と学食に行くなんて初めてで、例えその相手が平田でもちょっと心が弾む気がした。
今の構成は無表情系武道家(山内を殴るなら任せろ)、氷系魔法使い(
味方の攻撃対象が全部俺な気がするが、本当に味方なのだろうか?
俺は3人分の山菜定食を頼み、それぞれで持ちながら平田に頼み事をする。
平田は快諾してくれ、同じように山菜定食を食べている女子生徒を探して向かう。
「やあ、ちょっとここいいかな」
「えっ・・・まぁいいですよ」
平田の爽やかイケメンフェイスで微笑みかけられた女子生徒は顔を少し赤くしながら了承する。
しばらく平田が女子生徒ととりとめのない会話をしてある程度心が開いたところで、こちらに合図を送ってくる。
そして俺たちもそこに合流する。
「悪いな、食事中に。ちょっと頼みたいことがあるんだが」
「んーまあ、内容によるかな。言ってみて」
平田と仲良くなって機嫌のいい女生徒は寛容的になっている。
「実は、俺たちテストの事で困ってて・・・」
「あー、分かったわ。過去問でしょ。だったら1万ポイントでいいわよ」
どうやら彼女は3年生らしく「こんなの毎年の事よ」と教えてくれた。
受け取ったのは4月に行われた小テストと今度の中間テストの問題の画像だ。
その二つは毎年同じ問題が使い回されているが、期末テスト以降はそうじゃないから気をつけるように言われた。
彼女に1万ポイントの受け渡しをするのは平田に指名された。
どうやらポイントを受け渡す口実で平田の番号を知りたかったらしい。
食事を終えるまで彼女は上機嫌で平田に寄りかかったりベタベタとボディタッチをしていたが、平田はあまり嬉しくなさそうで困った顔をしていた。
どうやら平田は二刀流剣士ではなさそうだ。
一本の刀を俺の尻に向けて構えている新撰組の隊服を着た平田の幻影が浮かんできて背筋に寒気が走った。
「今宵の菊一文字は血に飢えておるぞ」
どこからかそんな幻聴まで聞こえてくる。
夜は忘れずに鍵をかけて寝よう。
ただし、平田が既に綾小路の部屋の鍵を購入済みな事をこのときの俺はまだ知らなかった。
翌朝、何故かズボンがズリ下ろされてケツ穴が若干痛み、フローリングの床には下半身を曝け出し、顔面を殴打されたのか歪に変形させた幸せそうな顔の平田が倒れていたりいなかったり。
そこは読者の想像に任せるとしよう。
まさか、寝込み襲撃対応の訓練がこんな所で役に立つとは。あの厳しかった教官のしごきにこれほど感謝する日が来るとは思わなかった。
そんなわけで、俺たちはこの中間突破の切り札となりうる過去問を手に入れた。
平田は直ぐに全員に共有しようと言ってきたが、それは止めさせて貰った。
何故ならそれを配ることで全員が高得点をとることになれば、平均点が上がってしまい、赤点候補が危なくなるからだ。
赤点候補の理由としては今まで真面目に勉強してこなかったのもあるだろうが、他にも勉強の効率が良くなかったり、記憶力が悪かったりといった理由もあるだろう。
そんな赤点候補がこのギリギリのタイミングで過去問を渡されても当日までに全て覚えれるか、かなり怪しいだろう。
と言うことで、俺はまずは赤点筆頭の山内に渡し、他には須藤と池を除いた数人の赤点候補に絞って配ることを提案した。
最初は渋っていた平田も、理由を聞けば納得してくれた。
もしクラス全員を掌握しているなら、全員で中間テストを白紙で出せば平均点が0になって退学なんて出ないんだけどな。
今の状況ではリスキーすぎるので口には出さなかった。
ちなみにこのやりとりの間の堀北は後方腕組み師匠面をしているだけで全く役に立たなかったことをここに記す。
やはりポンコツすぎるわ、こいつ。
追伸、今回手伝ったお礼としてテスト明けにデートに誘われた。平田に。
どうしよう助けてホリえもん。
「あなた、さんざん恋人が欲しいと行っていたでしょう。丁度良いんじゃなくて?」
俺は彼氏じゃなくて彼女が欲しいんだ。
ちなみに、櫛田が勉強会に参加していないため、図書館での勉強会はありません。
つまり未だに試験範囲が変更されていることにDクラスの生徒は星野組以外は知りません。
堀北や綾小路も過去問は使わなくても問題ないため気付いていません。
これで更に平均点が下がるから山内君の生存率は上がったぞ。
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