アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」 作:ムテキング
「欠席者は無し、ちゃんと全員揃っているみたいだな」
とうとう試験当日がやってきた。
俺たちは須藤と池を拾い上げて山内を切り捨てる予定だったが、綾小路は山内を救うことにしたようだ。
出会った初日から危険な印象を受けていたが、自分の利にならぬことはしない主義だと感じ、触らぬ神に祟りなしとばかりに避けてきたが、ここにきて動くとはな。
どうやら名無しの権兵衛に絆されたみたいだな。
また、佐倉が言うには平田ともラブラブとのことだが、それはどうだろう。あいつはたまに妄想の世界で生きているからな。
万が一本当だとしたら、やるときは男同士でもちゃんとゴムは付けた方がいいぞ。HIVだけでなくB型肝炎など、感染症になる可能性があるからな。
いや、別に経験談ではなく、前世の医者としての知識だ。勘違いするなよ。おい、佐倉。なんで期待に満ちた目で見てきやがる。お前、実は他人の思考を読めるとかそういう超能力があったりしないよな?
産婦人科だからホモは関係ないだって?
たまにホモカップルが子どもが出来なくてって妊活相談しにくる事があるんだよ。出来るわけねーだろうが。出来たらノーベル賞取れるわ。
男同士で子どもが出来るのはBL同人誌の中だけの話です。ここ大事だからな、佐倉。やおい穴なんてねーんだよ。
「お前達落ちこぼれにとって、最初の関門がやって来たわけだが、何か質問は?」
「僕たちはこの数週間、真剣に勉強に取り組んできました。このクラスで赤点を取る生徒は居ないと思います」
「随分な自身だな、平田」
「これが愛の力です」
平田が綾小路へとサムズアップしながら言うが、綾小路は全力で顔を背けている。
どうやらその愛は一方通行のようだな。
だが今後はしっかりヘイト管理して平田の愛がこっちに向かないように注意しよう。綾小路、タンク役は任せたぞ。
「ふむ、これはなかなか。だがここでお前らに報告がある。実はうっかり伝えわすれたことがあってな。実は3週間前にテストの範囲が変更されていたんだ。いや、すまんすまん。本当にうっかりしていたよ。おっと、どうしたんだ? 先ほどまでの勢いは・・・笑えよ平田」
自習中にみんな必死にベーコン焼いていたのでおそらくはと思っていたが、やはりテスト範囲変更に気付いていなかったのか。
Dクラス生徒の大半は絶望的な顔をしていて、それは平田や名無しの権兵衛も例外ではなかった。
だが、俺や櫛田達は既に知っていたこと。勿論、それを周りに教えなかった事を責められないように櫛田は驚いたような表情をして上手く演技をしている。
そんな中、3馬鹿は何のことか分からないように戸惑っている。須藤と池には過去問を中心に勉強を教えていたし、そもそもきっと元のテスト範囲なんて覚えてないのだろう。
「お前達が大好きなフランシス・ベーコンは範囲外だ」
「なんですって! 私のフランシス・ベーコンは不滅なのよ! 帰納法で何度だって蘇るわ!」
名無しの権兵衛が自身の信頼するフランシス・ベーコンが出題されないことに憤っている。
所で、なんでこいつらこんなにフランシス・ベーコンのことを信仰しているのだろうか。他にも学ぶところはあるだろうに。まさか、フランシス・ベーコン以外のテスト範囲が分からなかったわけじゃあるまいし。(フランシス・ベーコン以外のテスト範囲ってどこなんですかね?)
「もし、今回の中間テストと7月に実施される期末テスト、この二つで誰一人赤点を取らなかったら、お前ら全員夏休みにバカンスに連れて行ってやる。青い海に囲まれた島で夢のような生活を送らせてやろう」
「 ひいいいいいいいいい 」
茶柱先生の馬鹿みたいな発言を聞いて、池が魂から絞り出すような恐怖に満ちた悲鳴をあげる。
「ど、どうした池?」
茶柱先生も流石にその反応は予測していなかったのか、狼狽えている。
「も、もしかして、そのバカンスって、青い海の島って、夢のような生活って・・・もしかしなくても無人島に放り出されてサバイバルって事ですよねえええええええ」
「ばっ、いや、言っただろうバカンスだと。バカンスだぞバカンス」
「だから、そのバカンスって“長期の休み”って意味で別に良い意味じゃねーんだよ! その言葉にどれだけ俺が親父に騙されたと思ってるんだ! バカンスに連れて行ってやるって親父の言葉を信じたら、南国の島に放置されて夏休み中、飢えに苦しんだり、原住民に殺されそうになったり。毎年酷い目にあってるんだよ、こっちは!」
センチネル族恐いセンチネル族恐いと顔を青くして震え上がる池に、周りで聞いている俺たちの背筋も寒くなる。
幾ら何でもそんなこと・・・あり得そうだし、確認しておくか。
「茶柱先生、確かに、バカンスとは本来は“長期休暇”という意味で、日本の旅行代理店が使っているような良い意味とは限りませんが、無人島に俺たちを連れて行ってサバイバルという事は無いと保証して頂けますか?」
「・・・・・・・・・バカンスだ」
「良い意味でのバカンスという保証を頂けますか?」
「・・・・・・・・・その質問には今の段階では答えられないし、保証もできない」
「つまり、そういう事だと覚悟して準備しておけということですね」
俺の言葉に池はこの世の終わりとばかりに悲痛な叫びを上げ、クラスの生徒達からざわめきが起きる。
「各種装備の持ち込みは許可できますか? まさか裸一貫で放り出すわけはありませんよね? 装備を購入してから持ち込みは不可だった場合はポイントの無駄になるので保証して貰えませんか?」
「荷物の持ち込みは最低限の下着の替えだけだ。端末は島に入る際に回収される。他の私物に関しても島に入る際にボディチェックを行い、もし私物が見つかれば回収される。それ以上は現段階では回答は出来ない」
「マジかよ。殺す気か、この学校は」
「安全面については最大限配慮はする」
「そのバカンスをクラス全員で辞退することはできますか」
「参加は強制だ。辞退は許可できない。また、これ以上は私の権限では答えられない」
「つまりそういうことですね」
「ふん、馬鹿馬鹿しいわ。国立の学校がそんな危険な事をするわけがないのは少しでも考えれば分かることだわ。これだからアイドルなんて。脳がバラエティに毒されてるのかしらね。あんな戯言信じる方が可笑しいわ」
名無しの権兵衛がこちらを嘲るように言ってくる。
ここまで聞いてその発言が出ることに驚きだ。
それとも単に俺の事を罵りたいだけか?
あまりの馬鹿さ加減に隣の綾小路も頭を抱えているぞ。
「まぁまぁ、堀北さんもそんなに意固地にならないで。今の話だけど、本当かどうかは分からないけど、他クラスにはまだ黙っていた方が良いと思うの。あと一応みんなもサバイバルとか調べておこう。怪我とかしたときも応急手当の方法を知ってるかどうかで違うと思うし」
櫛田のフォローの言葉に、みんなが応じてくれる。
やはりこういうとき、櫛田は役に立つな。
「そんな無駄なこと、私は調べないわよ」などと言って腕組みしてふんぞり返っているどこぞの馬鹿と比べると天と地ほどの差があるな。
「私は料理部だし、野外で出来る料理とか調べておくね」
あれは篠原さつきか。
「なら、篠原、池と一緒に調べてくれるか? あいつはサバイバルに詳しいし、食べられる野草やキノコの見分け方、あと野生動物の狩りなども出来るそうだから」
「さっきのお父さんの話だね。確かに詳しそう。だって生き残ってるんだし。池君よろしくね」
「お、おう。よろしくな、篠原」
篠原は苦笑しながら了解してくれた。
池もまだ顔を青くしていたが何とか立ち直ったみたいだ。
「さて、お前ら。無駄話はここまでだ。もう時間になるからテストを開始するぞ」
無駄話どころかかなり有意義な会話だったが、確かにもう試験開始時間だ。
さて、夏のバカンスについてを議論するには、先ずはこのベーコン抜きの中間試験を突破してからだな。
Q そういえばMEMちょってどこ行った?
A 空気になっています。
モチベ維持の為にも感想、評価お待ちしております。