アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」 作:ムテキング
「おお、有栖たん今晩も来たでござるか」
「ええ、今晩も失礼しますね」
今晩も坂柳はDクラスのオタクである外村秀雄の部屋に来ていた。
目的はひとえにアニメ、とりわけガンダムについて学ぶためである。
5月末の堀北会長との対談。
まさにあれは屈辱の極みでした。
幾ら準備期間が短いとは言え、天才たる私が討論でやりくるめられるなんて。
幾らポイントが足りないとはいえ、ファーストガンダムやZガンダムを劇場版だけで知った気になっていた私を叱咤したいです。
しかも同じ劇場版だからと、ZZも見ずに逆襲のシャアだけみて、それでガンダムをマスターした気になっていたのですから。
アムロとシャアの戦いが終わったのだから、あれでガンダムは一応完結した、そう勘違いしていました。
実はあの後も戦いは続いていき、更に世界が何巡もする程の時の流れがあるなんて。
なんて壮大なドラマなんでしょうか。
「お付きの人は居ないんでござるね」
「ええ、彼女はやはり合わないそうなので毎晩付き合わせるのは悪いですから」
「それは残念でござる」
彼女もこの良さが分かればもう少し仲良くなれるのでしょうか。
ですが何事も向き不向きがありますから、仕方ありません。
それに私の日常生活を支えてくれたりしてくれていますし、何より外村君を紹介してくれたのも彼女です。
それだけでも感謝しないといけませんね。
「では0083の続きから見でござるか」
「ええ、星の屑の成就がなるか、見届けましょう」
この0083も素晴らしい。
08小隊やポケットの中の戦争も良かったですが、この0083はまた違った良さがあります。
敵側のアナベル・ガトーやデラーズの信念。
確かに冷静に見ればただのテロリストでしょう。
終戦を受け入れられず、いたずらに被害を増やしているようにしか見えません。
なのに彼らの台詞がこんなにも心に響くのは何故でしょうか。
恐らく日本人に刻まれた敗戦の記憶が、彼らジオン残党に共感を感じさせるのではないでしょうか。
ああ、星の屑は成就し、それでもガトー、貴方は散ってしまうのですね。
それでも貴方の戦いは、貴方の想いはアクシズへと受け継がれるのです。
ですが皮肉にも、彼の戦いが、後の更なるスペースノイドへの迫害、ティターンズの台頭に繋がっていく。
歯痒いものですね。もし私があそこにいたのなら何が出来たでしょうか。
このような作品に巡り合わせてくれるなんて堀北会長には感謝しかありませんね。
あの会談は確かに私の知識不足が敗因ではありましたが、それでも知識以上に彼の思考の深さには感服させられました。
私が知っている範囲を的確に把握した彼は、その部分を中心に討論を展開してくれましたし、それでもなお私は彼にはかなわなかった。
史上最高の生徒会長という名は伊達ではないのですね。
もし彼が同じ学年だったら。
そうすればもっとこの学校を楽しめたのでしょうか。
葛城君では力不足で退屈すぎてしょうがありませんからね。
「新しい紅茶、置いておくでござるよ」
「あら、申し訳ありません。考え事をしていました」
外村君もこう見えて気遣い上手なのですよね。
普段は確かにオタクっぽいですが、色々とガンダムや他のアニメの話をしていると分かることがあります。
言い回しなどに確かな知性が感じられるのです。
勉強はあまり得意ではないと言いますが、彼の書棚には英語で書かれた情報分野のかなり高度な専門書が並んでいます。
きっと一般的な授業には興味が無いだけで、知能はかなり高いと推察されます。
Dクラスは特殊な能力を持った生徒を所属させているとお父様から聞いたことがありますが、彼がそうなのでしょう。
ただ、Aクラス卒業特典やクラス闘争には興味がないそうなので勝負ができないのは残念です。
ですが今はそんな生臭い事は忘れて、彼にアニメを教えて貰う事を楽しみましょう。
4月は本当につまらない学校に入ったものだと少し後悔していましたが、今はお父様にこの出会いを与えてくれて、ありがとうの気持ちで一杯です。
坂柳学。坂柳秀雄。
意外にどっちもしっくり来ます。
今度お父様に会わせてみましょう。
なぁに、幾らお父様や彼たちが反対しようが、いざとなったら既成事実を作れば良いだけですし。
乙女ゲーなので攻略対象はこれからも増える模様。
この坂柳さん、このままガンダムにハマっていくと綾小路君に対峙するときには「しょせん強化人間のあなたが、真なるNTたる私に勝てるとでも思っているのですか」とか言いそうですな。
モチベ維持の為にも感想、評価お待ちしております。