アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」 作:ムテキング
炎天下の中、船から降ろされた俺たちは浜辺にて待機を命じられた。
他のクラスが楽しげにしているのを尻目に、Dクラス(ただしホモ部を除く)は少しでも体力の消耗を防ぐため、ジャージの上着を頭からほっかぶり、直射日光から身を護りながら座り込んでいる。
浜辺では船から下りた職員達がテントを設営し、何やら機械類を設置している。
島の状態とあれを見て未だに良い意味でのバカンスだと考えられる他のクラスが信じられないとDクラスのみんなは囁き合っている。
そんな中、ジャージ姿の茶柱先生がやってきて強めの言葉が飛んでくる。
「今からDクラスの点呼を行う。名前を呼ばれた者はしっかりと返事をするように」
俺たちは整列を指示され、全員が揃っているかを確認された。
「ジャージのサエちゃんせんせー最高っす。ジャージの胸元から見えるおっぱいデケー! あんなのに挟まれてーよ。なあ、お前もそう思うだろう綾小路!」
脳天気な山内の声が響く。
女子達は嫌悪感露わにした視線で睨んでいて、そんな山内を池が恥ずかしがって見ている。
「池、お前、4月まではアレと同じだったんだぞ。最近はサバイバル講義などで株を上げてきているが、油断をしたらすぐ逆戻りだからな」
俺がコッソリと池に耳打ちしてやると、顔を青くして「気をつける」と言って表情を引き締めた。
各クラスの点呼が終わると、真嶋先生が前へと出てくる。真嶋先生、なんか最近痩せた気がするんだよな。以前はプロレスラーの様な立派な身体だったのに、最近は彼の筋肉が窶れて泣いているように見える。何でだろうな。今度プロテインでも差し入れるか。
真嶋先生は俺と目が合うと、一瞬顔を引き攣らせ、胃を押さえながら目を逸らし、一度深呼吸をしてから口を開いた。
「今日、この場所に無事につけたことを、まずは嬉しく思う。しかしその一方で1名ではあるが、病欠で参加できなかった者がいることは残念でならない」
その言葉にDクラスからざわめきが走る。
「おいおい、病気や怪我でも引きずってでも連れて行くって茶柱が言ってたのに」
「絶対参加なんじゃないのかよ」
その言葉が聞こえたのだろう、茶柱先生の顔が引き攣り、真嶋先生がまたもや胃を押さえ呻き声をあげる。
「ああ、そのだな。今回の場合、非常に特殊なケースで、本当に遺憾ながらドクターストップが掛かってしまった。誠に遺憾である」
どうやらいないのはAクラスの特徴的な銀髪の杖を持った少女、坂柳有栖のようだ。
たしか理事長の娘だよな。
そりゃ、あんな子をこんな魔境に連れてきたら確実に死ぬだろうが、身内びいきがすぎるんじゃないか?
こりゃ鏑木プロデューサーなら喜んで深堀り指示をだすだろうな。
深掘れワンチャンか・・・ふむ。
「ではこれより・・・本年度最初の特別試験を行いたいと思う」
やはり。
他のクラスがどういうことか分からず混乱している中、俺たちDクラスは想定通りとばかりに顔つきを厳しくしている。
「うへ! どういうことっすかサエちゃんせんせー! 俺たち何も聞いてねーよ!」
「ど、どういうことですか、茶柱先生。僕と綾小路と山内君のトライアングルバケーションはどうなるんです!」
「責任者を出しなさい! 納得のいく説明を求めるわ!」
いや、山内とホモ部だけは聞いてないと騒いでいる。
綾小路は、もうどうにでもなーれ、とでも考えていそうな顔で天を仰いでいるな。
そんな中、無情にも真嶋先生の説明が続く。
これから1週間かけてこの島でサバイバルを行うとのことだ。
これに池が胸をなで下ろしている。
最長夏休み明けまでを想定していたし、終了期限を教えられない事すらありえたからな。
今のDクラスなら1週間ならば通常の無人島であれば問題ないだろう。
問題はここが通常では考えられない形状の島ってことだが。
支給品はテント2つ、懐中電灯2つ、マッチ箱を1つ支給されるそうだ。火起こしに苦労しなさそうで良かった。問題は枯れ枝が手に入るかだな。この夏場の島では何時雨が降るか分からない。濡れた枝だと火がつかないからな。場合によっては斜面まで探しに行くことになりそうだ。
他のクラスやホモ部が騒いで先生に諭されている間、俺たちは池を中心にしてそのようなことを話し合っていた。
そんな中、真嶋先生が、この試験のテーマは『自由』だと言ってきた。ああ、命を捨てるも逃げるも自由なのかな?
どうやらマニュアルが用意されていて、その中にカタログとして載っている物を、各クラス配布される300ポイントを消費して購入出来るようだ。
それを使って本当にバカンスを楽しむのも自由とのことだ。
だがその300ポイントで残っている分は、クラスポイントへと加算されて夏休み明けに反映されるということ。
つまり、耐久をしてクラスポイントを増やすか、遊んでクラスポイントを増やさないかということだ。
更に体調不良“など”でリタイアした者がいるクラスには30ポイントがマイナスされ、そのためAクラスは270ポイントスタートだそうだ。
ちなみに現在の各クラスのクラスポイントはこうだ。
Aクラス 1100
Bクラス 663
Cクラス 300
Dクラス 148
こうである。
Cクラスが暴力事件でDクラスへの100ポイント移動、そして4人停学で100ポイント減少になっている。
そのため、Dクラスとの差は約150である。
俺は茶柱先生より渡されたマニュアルを池と精査する。
「うーん、女子もいるし、ある程度安全性や衛生面を考えるなら最低でも100ポイントぐらいの消費は覚悟しないといけないな」
池が素早く必須な物にチェックを入れていく。
やはりこういうこと関しては本当に役に立つ。
となると、200ポイントか。
悪くない稼ぎではあるな。
そこで茶柱先生から試験専用の腕時計を渡される。
これにはGPSや生体反応を感知する機能が搭載されていて、外すとペナルティが科せられるが、緊急時にはボタンを押すと救助がくるそうだ。
だが、この島の場合、緊急時には押す暇が無く死んじゃいそうではある。
船にヘリが搭載されている理由もなんか分かった。
浜辺のテントの側や、救助用ヘリの側でやたら姿勢良く直立不動で立っている斑模様の服を着たガタイのいい方達、間違いなく自衛隊の方だろう。
嘘であって欲しくて目を逸らしてはいたんだがな。
周りの皆も目が虚ろになっている。
他に、追加ルールとしてリーダーを決めたり、スポットがどうたら、リーダーを見破るとどうたら、そしてポイントはマイナスにはならないとか。
茶柱先生が丁寧に説明してくれている。
さて、ではDクラスが取るべき最適解はなんでしょうか。
答えはCMの後に。
「さあ、綾小路君、行くわよ。あんな愚鈍な人達より先に拠点を確保してどっちが優秀か証明してあげるわ」
「お、おい。待てよ堀北!」
他クラスが既に移動していなくなって焦ったのか、堀北は俺からマニュアル本を奪い取り、ホモ部を連れて颯爽と島の中へ消えていった。
「さて、お前ら。Dクラス最初の試練の時だ。覚悟は良いな」
俺が皆に声をかけると、皆は覚悟を決めた目をして頷いてくれる。
「では茶柱先生」
俺は手を上げる。
それに伴い、皆も一斉に手を上げた。
「俺たち、腹が痛いのでリタイアします」「「「「しまああーーーーす!!!!」」」」
こうしてDクラスの無人島試験はホモ部を除き、全員無事に終わることができたのだった。
試験2日目、急勾配の坂道を転がり落ち、緊急搬送されて堀北がリタイア。
試験4日目、まともな食事にありつけず栄養失調で倒れ、緊急搬送されて山内と平田がリタイア。
そして最終日に何故かピンピンしている綾小路が船に戻ってきた。
無人島試験終了後のクラスポイント。
Aクラス 1100+ 0-1100= 0(Dクラスに降格)
Bクラス 663+190 =853(Aクラスに昇格)
Cクラス 300+ 0+ 400=700(Bクラスに昇格)
Dクラス 148+150+ 100=398(Cクラスに昇格)
こうして晴れて俺たちDクラスはCクラスへの昇格を遂げるのだった。
綾小路スゲーな、リーダー当てを全問正解させて一人で150ポイント稼いで来やがった。
今回でサバイバル試験終了です。
長い間お疲れ様です。
次回からはまた優雅な豪華客船の旅が始まります。
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