アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」 作:ムテキング
「ヘイ、ロック。例の荷物届いたぞ」
「確か現地で入手したの一昨日だろう。さすがバラライカさんだ、仕事が早いな」
ここはタイ南部にある港町ロアナプラ、そこでしがない運び屋家業を商うラグーン商会である。
そのラグーン商会の倉庫にトレーナーが横付けされ、厳ついロシア人達が厳重に封のされた箱を爆発物でも扱うかのような丁重さで何箱も運んでくる。
これはロアナプラを牛耳る複数の組織からなる『黄金夜会』にとって重要な人物の一人である通称プロフェッサーへと届ける大事な荷物である。
もし手を滑らせ破損でもさせようものなら、そいつは頭部に鉛玉で穴が空く程度なら喜ぶぐらいは酷い目を見るだろう。
「これが品目の名簿になります。万が一抜けがありましたら至急連絡をおねがいします」
顔面を斜めに横断する大きな傷がある厳つい男性が車から降りてきてロックへと分厚いファイルを渡してきた。
「ボリスさん、お疲れ様です。では確認させていただきます」
次々と運び込まれて積み上がっていく大量の箱達。
それを見てロックは徹夜の確認作業を覚悟する。
「すげー量だな。これだけ集めるの大変だったんじゃないか」
へそが見える黒のタンクトップにホットパンツと露出の多い服装をした女性がロックに話しかけてきた。
彼女はロックの同僚のレベッカ・リー、通称レヴィである。
「はい。今回の任務はとても過酷でした。大尉が現地で陣頭指揮を執り、遊撃隊が全員駆り出されてなんとか全部入手に成功しました」
「マジかよ。姐さんが現場に出たのかよ」
「敵軍は総数100万。3日に渡る壮絶な戦いでした。現地はロアナプラよりも暑く、湿度も高い過酷な環境で、熱中症で仲間が次々と倒れる中、最前線で戦線を維持した大尉はまさに鬼神のような戦いぶりでありました」
ボリスはその戦いを思い出したようでブルリと身体を震わせた。
「所詮まともな戦いも経験していない素人共。そう油断していた我らが現地にて相対した敵達は百戦錬磨の強者ばかりでした」
ボリスは顔に狂気の笑顔を浮かべ話し続ける。
「死をも恐れず我先にと駆け出し、過酷な環境ですら物ともせずに狂気の如く戦い続けるあの者らに奇しくもアフガンの戦いを彷彿とさせられました。まさかこの私が気押されるとは思いもしませんでしたよ」
「噂には聞いていましたが・・・そこまででしたか」
ロックは過去にテレビジョンで特集されていた光景を思い出す。
「ええ、重い装備を持って戦場を駆け回るのは慣れているつもりでしたが、あそこは例えるなら深いジャングルの中をかき分けながら進むような物でした。前も後ろも分からず、群がる敵兵達の前に一人、また一人と仲間とはぐれ、部隊は散り散りになっていきました。更に電波状況も酷く、連絡を取るのにも一苦労でしたよ」
「ひゅー、まるでベトナム戦争だな。バオの奴に聞かせたら懐かしがるんじゃねえか」
「いや、きっと思い出させるんじゃないって怒るんじゃないか」
「ですが、正直な話、こんな戦いは今回ばかりにして欲しいんですがね」
「契約ではあと3年でしたっけ」
「ええ、次の戦いは12月になります。大きな戦いは年に2回あるそうで、それ以外にも規模が小さいものが何回かありますね。戦死者こそ出なかったのですが、負傷者が多く、大尉も安請け合いしてしまったとぼやいていました」
「ご苦労様です」
「いえ、プロフェッサーからの仕事ですからね。断れませんよ。彼にどれだけ我々が助けられているかを考えると」
「プロフェッサーって今、トーキョーのプリズンにいるんだよな。アンクルサムに喧嘩売ってラングレーに捕まったとか。それで良く連絡取れるよな」
「いえ、正確には外部へ出入りできない国営のハイスクールです。本来なら連絡も出来ないそうなのですが、それでもやりとりが出来るのがプロフェッサーの凄いところでしょう。今でも仕事をしてくれていますし」
そんな話をしていると作業員から全ての荷物を運び終えたことが伝えられた。
「では荷物の件、よろしくお願いします」
「はい。バラライカさんによろしくお伝えください」
見ると既に同僚のベニーが箱を開けて狂喜乱舞していた。
どうやらかなりのお宝が入っているらしい。
だが、それらは全てプロフェッサーの物だ。結局自分には手に入らないことを知り、落胆するベニーへと同じく同僚のダッチが元気づけていた。
「届け先は、日本の高度育成高等学校。宛先はいつも通り真嶋智也宛で、か」
ロックは書類を確認しながら呟いた。
「おい外村。真嶋先生経由で荷物が届いているぞ」
高度育成高等学校の芸能部部室外の廊下。
そこに部室へと入りきれない量の箱が積み上げられていた。
「おお、届いたでござるか。待ちわびたでござる」
「一体こんな大量に何を買ったんだ」
「フフフ。お宝でござるよ」
「お宝!? 見たい見たい!」
その言葉に櫛田が目の色を変えて飛び出し、箱を開封していく。
「な、何よこれ! エロ本じゃない!」
「フフフ、ただのエロ本ではないでござる。これは先週行われた同人誌の祭典、コミックマーケットで配布された至高の同人誌達でござる!」
「コミックマーケットってあのコミケか」
「そうでござる。いやはや3年間も参戦できずに悩んでいたのでござるが、ダメ元で知り合いの業者へと代理購入を頼んだでござるよ」
完璧な仕事で満足でござると、外村は上機嫌で同人誌を取り出して読みだしたのだった。
ちなみに三合会の張維新はプロフェッサーから受けた『コミケのコスプレ写真撮影』の依頼を達成するため、炎天下の中をいつもの格好で参戦したことを死ぬほど後悔したという。
バラライカ「シンカン、ゼンブクダサーイ。グッズ、ゼンブクダサーイ。ゲンテイジョウゲン、カイマース。スケブ、オネガイシマース(徹夜でアダルトビデオチェックの方が百倍マシだ)」
張さんはブラック・ラグーンのコミックス13巻表紙の格好で銃をカメラに持ち替えて夏コミの屋上展示場に出没したようです。
コミケが近くなったので書きたくなりました。
オタクにとって3年もコミケに参戦できないのは地獄ですからね。
代理購入してくれる良い業者が見つかって外村君もさぞ嬉しいことでしょう。
基本的にロアナプラな方達は裏でネタ的に扱うだけで本編に絡んでくる予定はないので安心してください。
モチベ維持の為にも感想、評価お待ちしております。