アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」   作:ムテキング

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夏と行ったら夏フェスだろう、そんな安直な考えで初投稿です。


MEMちょが夏フェスに出るってよ

「夏フェスをしよう」

 

 

全ては生徒会長のこの発言から始まった。

 

 

なんでも折角の夏季休暇だというのにこの閉鎖された環境から出ることができない生徒達のストレスを緩和することを目的としている。

実際は怪我で碌に出歩けない妹を慰撫するためだろう。

何故なら、生徒達への慰安の名目でこの夏に行われた特別試験で怪我を負った生徒、若しくは入院中の生徒は最前列の特別席で見られる特典が付与されているからだ。

生徒で出演者を有志で募るだけではなく、外部からも歌手やバンドなどを多く招致するそうで、予算も大規模な物になるため、本来なら即座に却下されるところであろう。

 

だが、高度育成高等学校の運営陣はこれを世間と生徒への信頼回復のチャンスと二つ返事で飛びついた。

 

 

その理由は、特別試験終了後に放送されたネットTV番組『深掘れ☆ワンチャン!!』にあった。

 

 

今回取り上げられた深堀り案件は『高度育成高等学校』である。

 

鬼島総理の対立派閥が後ろ盾になり、GOが出たこの企画。

その内容だが、それはそれは酷い物だった。

高度育成高等学校の秘匿された内部情報がどこからともなく流出しており、Sシステムこそ漏れてはいないが、生徒の安全性を考慮しない学校運営体制や教師による露骨なまでの拝金主義などが赤裸々に放映された。

具体的な事件として、敷地内店舗店員による人気グラドルへのストーカー事件ではストーカーが白昼堂々刃物を振りまわしあわや大惨事になりかけ、夏合宿では生徒が崖から転落して重症を負ったり、2人の生徒に食事を与えず餓死させかけて病院送りにし、更に生徒による詐欺及びいじめが発覚し2人の退学者を出していることなど、1年生だけでもスキャンダラスな事件が多発していることが暴露され、更に極めつけが『坂柳理事長による学校の私物化』問題である。

自身の娘を裏入学させ“特進クラス”へと配属させたという噂(生徒達へのインタビュー映像有り)が流され、他にも金回りの良い娘の散財風景(アニメショップで顔にモザイクが入った男性とDVDを買い漁る映像)など、まるで直ぐ横で密着取材したかのような映像まで流れ、最後には坂柳理事長への不審な金の流れと鬼島現総理との関係性を匂わせて締めくくった。

 

この放送に選挙を控えている鬼島総理は大激怒し、坂柳理事長の首は見事に冥王星へと旅立ってしまった。

 

 

その後粛清の嵐が巻き起こり、新たに再編された運営陣は鬼島総理からクリーンな運営を厳命され、日々鳴り響く外部からのクレーム電話に対応しながら世間への信頼回復のチャンスを待ちわびていたのだ。

 

今回の情報流出について、当然芸能部がいの一番に怪しまれたが、どれだけ調査しても証拠が出ず、TVに放送された坂柳有栖が男性とアニメショップで散財していた場面の監視カメラには何故か坂柳が虚空に向かって話しかけながらDVDを買い漁る心霊映像しか映っていなかった。

そうこうしているうちに、運営陣の上層部達が揃って顔を蒼くさせ、芸能部への調査は打ち切られることになった。

彼らに一体何があったのであろうか。

 

 

それはともかく、そう言うわけで今回の生徒会長の提案は瞬く間に可決され、他に類を見ない速さで実行へと移される。

 

こうして高度育成高等学校で初めての音楽フェス、A.N.M.F.Advanced Nurturing Musical Festival、が開催されることになった。

 

 

 

 

 

 

 

『今日は俺のライヴにようこそー!!! エヴァバディセイヘイ!!!』

 

 

オープニングアクトは司会進行を兼ねる生徒会副会長南雲雅によるDJ演奏であった。

 

自慢の金髪をポマードでトサカ状に固め、黒い革ジャン姿でサングラスをかけた南雲副会長がノリノリでジョグっている。

 

これが終わったら最初のゲストである新人アイドルグループ『新生B小町』の出番だ。

 

アイドルフェスの後にも細々としたライブなども経験しているが、今回は観客がほぼ全員高校生という異色のフェスである。

それも普段音楽など流行り物しか聞かず、フェスどころかライブやコンサートすら行ったことのない生徒も多い。

ただ、日々代わり映えしない退屈さを紛らわすために参加している生徒が殆どであろう。

 

今の観客席を見れば、どうやって楽しめば良いのか分からずに苦笑いしている生徒やただぼーっと見ているだけの生徒達が多い。

しかも今演奏しているのはプロでも何でもないただの高校生だ。

曲目も南雲副会長が自己満足で選んだ海外のダンスミュージック。

歌詞も分からなければ聞いたことすらない曲にどう反応して良いのか分からない生徒が大多数である。

一部のダンス好きも周りの生徒達の反応を見て、楽しむことが出来てない。

 

南雲副会長は見事に滑り倒しているわけだ。

 

 

この演奏が終われば、氷点下まで冷え切ったこの観客達の前に出て行かなければならない。

これが有名なバンドならばこういうときでも上手く盛り上げるのだろうが、B小町はまだそこまで知名度も経験もない。

 

参加したのは失敗だったかな。

 

アクアはそのように考えながら、舞台袖で待機している妹達の様子を見た。

 

 

「おっしゃー久々の3人揃ってのライブ! テンション上がってきたーー」

 

「ルビーもやる気満々だね。会場も良い感じに冷え切ってるし、ここはMEMの盛り上げ術を披露するっきゃないね」

 

「あんた達、張り切りすぎてとちるんじゃないわよ。ここはこの程度の逆境なんて幾らでも乗り越えてきたあたしに任せておきなさい」

 

「さすが、観客1人のリリイベを決行した大先輩は面構え違うね」

 

「思い出させないでよ、泣けてくるじゃない。いいもん、あの時のお客さん、まだファンで握手会とか毎回来てくれるしグスン、今日だってわざわざこの敷地内のお店に就職してまで参加してくれてるし」

 

 

有馬が泣き出してメイクの人が慌てて駆け寄っていく。

 

心配して損したな。あいつらタフすぎるわ。

 

いつも通り、いやそれ以上にはしゃいでいる彼女達に毒気が抜かれていく。

 

 

 

そしてB小町の出番がやってきた。

 

観客は南雲副会長の次は新人アイドルかとガッカリした様子を見せていたが、音楽が流れ出し、彼女達のパフォーマンスが始まるとその様子も激変した。

 

私を見ろとばかりに太陽のような魅力を放ち観客を惹きつける有馬。

まだ拙いところもあるが見るものを離さない漆黒の輝きを放つ瞳で魅了するルビー。

ヘタウマな歌すらも魅力に変え、客の笑顔を引き出していくMEMちょ。

 

3人のパフォーマンスはそれぞれが独自の魅力を持ち、それでいて3人揃っても破綻しない調和性をも併せ持ち、会場全体のボルテージを一気に上げていく。

 

最早先ほどの南雲副会長の演技を憶えている観客など一人もいないであろう。

観客の顔はみんな熱に浮かされたように紅潮し、歌にあわせて身体を跳ねさせている。

たった数曲のパフォーマンスだが、確実にお客達の心にB小町の存在が刻み込まれただろうな。

 

また、MCでも大盛り上がりだった。

 

特に同じ高度育成高等学校の生徒であるMEMちょは大人気で、生徒の歓声も特に多い。

 

 

「ババァーーおれだーー結婚してくれーーーー!!!」

 

 

客席前方にいる男子生徒からMEMちょを揶揄うような声があがる。

 

 

「誰がババァじゃあい! あとアイドルは結婚しないんだよっ!」

 

 

MEMちょもそれに笑顔で返す。

それに爆笑がおきる。

 

更に、MEMちょは少しモジモジしながら続ける。

 

 

「でもぉ、引退したらぁ少し考えても良いかなぁ」

 

「え、いや流石に40過ぎてると無理です」

 

 

その男子生徒のマジトーンな返しにMEMちょはずっこけ、先ほど以上の大爆笑が湧き上がり大いに盛り上がった。

 

この後、会場の外でCDやグッズの物販もあるが、これなら十分な売り上げを上げることが出来そうだな。

 

 

B小町の次に出演する、最近人気の上がっている三十路アイドル馬場静枝がMEMちょを大先輩と呼んで笑いを誘い、このフェス限定のコラボを披露したりなどもあった。

 

生徒の有志バンドも、南雲副会長と同じ轍は踏まないとばかりに人気曲のカヴァーを披露していた。

 

そして一番衝撃的だったのが生徒会長である堀北学の出演だろう。

 

披露したのはどれもアニソンばかりだ。

だが、歌うだけならともかくピアノ演奏やギター演奏、果てはドラムまでたたき出して、それら全ての完成度がプロレベルで高いのだ。

 

 

『俺の歌を聴けえええええええええええええ』

 

 

ギターをかき鳴らしならFireBomberを演奏したときなど、他グループでフェスに出演している熱気バサラの歌の人が飛び込みで参加して、会長とデュオで歌い出し、会場は大興奮。最前列では名無しの権兵衛が折れた足の痛みなど感じないとばかりに飛び跳ねながら熱狂していた。

会長の演奏は2回ものアンコールの果てに大団円で幕を閉じた。

 

 

舞台の袖では会長が降りてくるのを様々な芸能事務所のマネージャーが名刺を手に待っていて、スカウト合戦が繰り広げられたが、その全てを会長は袖にした。

 

 

それをハンカチを噛みながら悔しがっているどこかの副会長がいたりいなかったり。見なかったことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

A.N.M.Fの開催は大好評だった。

 

 

このフェスの模様は高度育成高等学校のイメージ改善を目的にニュース番組やバラエティ番組にも取り上げられた。

また、生徒会の依頼で芸能部が依頼した会社によってフェスの演目を収録してあり、音楽番組でその一部公開され、視聴者からの要望もあり、Blu-rayの発売も決定した。

 

 

芸能部が依頼した会社とは外村の仕事相手である三合会の関連企業で、香港にある芸能会社の熱河電影公司であったため、Blu-rayの販売に関しても製作及び販売の際に芸能部へキックバックがありで裏帳簿がまたもや厚くなった。

外村も黒川クラスから渡された260万など霞むレベルの大金に大喜びでより高級なカメラに新調していたな。

 

 

B小町の知名度もあがり、お金も増えたし、提案してくれた堀北生徒会長には足を向けて寝られないな。




夏休みのイベントって行ったら、後はプールで占って水筒にナニを突っ込むんだっけ?

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