アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」   作:ムテキング

45 / 58
体育祭への第一歩となる初投稿です。


地獄への道は善意で舗装されている

9月最初の登校日。

 

 

1年Cクラスの教室には37名の生徒が揃っています

2つの席が欠け、1つの席には居るべき人の姿がありません。

 

 

「坂柳さん、体調を崩しているって連絡あったらしいけど、どうかんがえても仮病よね」

 

「あんな放送があったんじゃね。私が坂柳さんなら恥ずかしくて学校には来れないわよ」

 

 

元坂柳派の女子生徒二人がわざと周りに聞こえるように話しています。

坂柳有栖を貶すことによって、自分たちはもう既に坂柳派閥から抜けたとアピールをしているのでしょう。

良識のある生徒達はその発言に眉を顰めるが、坂柳有栖の自業自得でもあるので諫めることを躊躇っていますね。

 

 

「だがこのまま姫、いや坂柳が欠席を続けるとクラスポイントに影響がありそうだな」

 

 

橋本くんがクラスポイントの件について言及すると、周りの生徒も困ったような顔をする。

 

 

「その事について真嶋先生に聞いてみたのですが、元々坂柳さんは先天性疾患があるので、欠席をした場合でも身体障害扱いでクラスポイントには影響を及ぼさないそうです」

 

 

私が真嶋先生に聞いた話をするとみんな安堵した表情になりました。

 

 

「美紀ちゃん、確認してくれたんだ。ありがとうね」

 

 

あかねちゃんも心配していたようなのでお昼休みに聞いてきたけど、少しは助けになれたかな。

 

今はそんな初日の午後、これから2時間のホームルームがあるそうで、私たちは担任の真嶋先生を待っています。

お昼に質問に行ったときに胃の調子がわるそうで、真っ青な顔をして保健室に寄ってから教室に行くから遅れるかもしれないのでその場合は自習をして待っているように言われています。

坂柳理事長の更迭の際に、真嶋先生の首も黒ひげ危機一髪状態だったそうなのですが、彼を解雇した場合、誰が『芸能部』の顧問を務めるかの話になり、揉めに揉めた結果、彼をクビにするのは『芸能部』のメンバーが卒業した後でも遅くはないだろうと慰留になったそうです。

ただ、彼の立場は相当苦しい物になり、職員室では村八分状態だそうです。

『芸能部』のみんなも多少罪悪感が沸いたようで、そろそろ完全に真嶋先生を『芸能部』へと引き込むべきかという議論もされています。

どちらにしろ、彼の解雇後の就職先や新しい戸籍は外村君が知り合いの伝手を使って用意しているようなので安心ですね。タイ料理は美味しいらしいですし。

 

『港町での楽しい生活。軽負担でサクッと高収入!親切丁寧な指導で面倒見のいい職場環境。中国語のレッスン無料。アットホームな明るい職場です』

 

『チームワーク抜群!やる気だけ持ってきて下さい!経験豊富な女性上司が優しく指導します。ロシア語のレッスン無料。もちろんアットホームな明るい職場です』

 

そのように書かれた就職案内のチラシを手に『どっちの職場が真嶋先生の好みでござるかな』と楽しげにしていましたね。

 

 

そんなことを考えていたら真嶋先生が来たようですね。

 

 

「今日から授業が始まったが、2学期は9月から10月初めまでの1ヶ月間、体育祭に向けて授業が増えることになる。新たな時間割を配るのでしっかり保管しておくように。それと体育祭の資料も一緒に配っていく。先頭の生徒からプリントを後ろの生徒に回してくれ」

 

 

体育祭ですか。

こんな学校ですが、そんな真面な行事もやるんですね。

みんなも意外そうにしています。

 

「また、学校のホームページでもプリント同様に詳細が公開されている。必要なら参照するように」

 

「先生。この学園祭ですが、クラスポイントに影響はある物なのでしょうか」

 

 

あかねちゃんが率先して手を上げ質問する。

その質問に真嶋先生は胃にそっと手を当てながら、「厳密に言えば特別試験ではない。だがクラスポイントへの影響はある」と答えました。

 

その言葉に運動が苦手な一部の生徒が嫌そうな顔をしています。

このクラスは他のクラスと比べ優秀な生徒が多く配属していますが、運動が苦手な生徒も居ないわけではありません。

それに、勉強面はともかく、運動面に関してはあくまでそつなく出来るというレベルで、龍園クラスのように全体的に運動能力が高い生徒が多いわけでもなく、また、一芸特化の堀北クラスの須藤君のような突出した生徒もいません。格闘技の得意な鬼頭君はそれなりに身体能力は高いですが、須藤君や山田君相手だと純粋な身体能力では勝てないでしょう。

かくいう私も運動はちょっと苦手です。

 

船上試験では圧勝であかねちゃんの初陣を飾れましたが、今回の試験は他のクラス相手ではちょっと分が悪いかもしれません。

 

一之瀬クラスも運動は無難に出来るでしょうし、何よりチームワーク能力が高いです。

龍園クラスは運動が得意な方が多いし、堀北クラスは夏前からブートキャンプをしているようで運動能力の向上がめざましいと聞いています。

 

もしクラスごとに順位で争うなら、龍園クラスと堀北クラスがトップ争いをし、私たちは一之瀬クラスと3位争いをする形でしょうか。

 

前の生徒からプリントが回ってきたので確認しましょう。

 

 

「既に目を通して気付いている者も居るだろうが、今回の体育祭は全学年を赤組と白組の2つの組に分けて勝負する方式を採用している。このクラスは白組となり、Bクラスと味方になる」

 

「先生、何故Bクラスと何ですか? 正直あのクラスと上手くやれる気がしないんですが」

 

 

龍園くんとのクラスと組むの聞かされ、町田君が嫌そうな顔をしながら抗議気味に質問する。

 

 

「体育祭では各クラスの実力が十分に発揮できるように“公平性を重視している”。そのため組み分けについても一番優秀なAクラスと逆のDクラス、そして中間のBとCクラスという組み合わせになっている。これについては変更は出来ない。敵対しているクラスと時には手を取り合い戦うことができる柔軟性や交渉力なども実力者には必要とされる」

 

 

紅白戦ですか、体育祭ではよくある形式ですね。

でもそうなるとやはり厳しいですね。

あかねちゃんも難しそうな顔をして悩んでいるのが分かります。

 

 

たしかに町田君が言うとおり龍園クラスと組むのはリスクが大きいです。

ですが運動能力の高い龍園クラスと組めたことは幸運と言えます。

上手く交渉して手を取り合うことができるのであれあ赤組に負けることはないでしょう。

ですが、それはあくまで1年生だけの話。

私はあかねちゃんから上級生の話をよく聞いているのでしっていますが、3年生はAクラスが非常に優秀で3年間トップを維持し続けているそうです。

そして2年生は元々Bクラスだったのを現在の生徒会副会長、『駄々滑りのMIYABI』こと南雲雅さんが辣腕を振るい下剋上を果たし、全てのクラスを完全支配しているそうです。

そうなれば、3年と2年はAクラスの所属する赤組が勝つ可能性が高い。

1年だけ白組が勝っても、全体的に赤組の勝利となるでしょう。

 

 

そうなれば、プリントに記載された罰則を受けることになります。

 

 

・体育祭におけるルール及び組分け

全学年を赤組と白組の2組に分けておこなわれる対戦方式の体育祭。

内訳は赤組がAクラスとDクラス。白組がBクラスとCクラスで構成される。

 

・全員参加競技の点数配分(個人競技)

結果に応じて1位15点、2位12点、3位10点、4位8点が組に与えられる。

5位以下は1点ずつ下がっていく。団体戦の場合は勝利した組に500点が与えられる。

 

・推薦参加競技の点数配分

結果に応じて1位50点、2位30点、3位15点、4位10点が組に与えられる。

5位以下は2点ずつ下がっていく(最終競技のリレーは3倍の点数が与えられる)

 

・赤組対白組の結果が与える影響

全学年の総合点で負けた組は全学年等しくクラスポイントが100引かれる。

 

 

つまり、この体育祭で100点引かれてしまうのはほぼ確定でしょう。

 

 

真嶋先生がプリントの内容を重要項目をピックアップして伝えてくれている。

 

 

そのほかにも赤組白組の勝敗だけではなく、学年別の順位もクラスポイントに影響してくることが書かれている。

 

 

「学年別の順位が与える影響だが、総合点で1位を取ったクラスにはクラスポイントが50与えられる。2位なら変動無し。3位は50ポイント引かれ、最下位だと100ポイント引かれることになる。つまり仮に白組が勝利したとしても、Cクラスが最下位なら100ポイント引かれることになるので真剣に取り組むように」

 

 

白組の負けは必至、ならば現実的な最終点数は学年3位でマイナス150点、若しくは4位でマイナス200点。これは大きすぎるマイナスですね。

 

現在のクラスポイントは、こうなっているから・・・

 

一之瀬クラス 703

龍園クラス  600

黒川クラス  400

堀北クラス  298

 

堀北クラスはMEMちょさんの夏フェスでの活躍で50ポイント増加したそうですので、点差はたったの102点。

仮に堀北クラスが2位でクラスポイントに変動がなくても、私たちは3位であろうが4位であろうがDクラスに落ちるのは確定ですね。

あかねちゃんの足場を固めるなら今回の体育祭でDクラス落ちは避けたいところですが・・・。

 

それにしてもこの体育祭、あからさまなポイント回収行事ですね。

夏に大盤振る舞いして予算が厳しいのでしょうか。

 

他にも個人競技の報酬で高順位を取った生徒にはプライベートポイントか次回の筆記試験での点数が貰えるそうです。

1位になると5000プライベートポイントなので、運動が得意な生徒がちょっとやる気を出しています。

また最優秀生徒には10万プライベートポイントが貰え、学年別でも高得点を取った3人は1万プライベートポイントが貰えるそうですが、こちらについては私たちには関係ありませんね。順当にいけば須藤君が取るでしょうし。

どちらかというと『学年内で下位10名にペナルティがある』という方に注意しないといけないですね。

 

あかねちゃんも同様に考えたのか下位生徒のペナルティについて真嶋先生に質問したところ、次回の筆記試験の点数減点だそうで安心しました。10点だけ引かれるようです。

堀北クラスのような勉強も運動もどちらも出来ないという生徒が多いクラスなら危ないでしょうが、私のクラスですと大丈夫そうですね。

 

真嶋先生の説明を聞きながらプリントを読み進めていきますが、種目ついての所で目を見開いて驚きました。

 

全体参加種目だけで9種目、そこに推薦参加種目が4種目追加され、全体で13もの種目を1日で行うそうです。

明らかに多過ぎでしょう。体力のない生徒だと後半バテバテになってしまいそうです。少なくとも春までの私だと倒れていましたね。

『芸能部』での早朝練習のおかげで体力はそれなりについてきたので、参加するだけなら問題ないかもしれませんが、それでも後半はあまり実力を発揮できるか不安です。

 

更にこれらの競技の参加表は、全種目とも参加順番も含めて自分たちで決めないといけないようです。

締め切り日までに提出して、締め切り日以降は変更ができないとのこと。

提出しなければ全てランダムになるので、忘れないようにしないといけませんね。

もし運動能力が高い人が同時に走ったら無駄になってしまうでしょうし。

後注意すべきは他のクラスに参加表を見られないことでしょうか。

もし知られると運動能力が高い生徒に低い生徒をぶつけて、などで調整されてしまいますからね。

あかねちゃんに伝えると、彼女も想定していたようで、この体育祭は情報戦が大事になると言ってきました。

やはりあかねちゃんは頼りになりますね。

でも頼り過ぎてしまい思考の停止に陥るとあかねちゃんに何かあったときに対応出来なくなるので注意しないと行けません。

自分でもちゃんと考えるようにしないといけません。

ああ、これは確認しないといけないですね。

 

 

「先生、質問があるのですがよろしいでしょうか」

 

「なんだ山村。言ってみなさい」

 

「参加表提出後には変更できないとありますが、もし当日怪我や病気で参加できない場合はどうなるのでしょうか? 例えば二人三脚など、片方が欠席した場合は他の方と組めたりしないのでしょうか?」

 

 

その質問に真嶋先生が胃に手を当てながら口を開きます。別に負担をかける質問ではないですよね? あの仕草、もう癖になっているのでしょうか?

 

 

「『全員参加』の競技においては必要最低限の人数を下回る形で欠員が出た場合は続行不能とみなされ失格となる。二人三脚だと片方が欠席した時点で失格だ。また他にも騎馬戦なども同様だな。ああ、仮にだが騎馬が一人でも肩車で戦えるなら問題ない。一昨年の体育祭で堀北生徒会長が騎手を肩車して・・・いや正確にはジャイアントスイングして相手騎馬を軒並みなぎ倒して勝利していた。そういう特殊な場合は許可できる。騎手が死なないならな。あの時の振り回されていた藤巻は見ていて不憫だった・・・あ、胃が・・・」

 

 

よろめきながらも教卓に手をつき、そして真嶋先生が「だが・・・」と話を続ける。

 

 

「救済処置として“特例”もある。体育祭の花形でもある『推薦競技』に関しては代役を立てることが許される。しかし代償としてプライベートポイント10万が必要となる」

 

「“特例”ということは、通例もあるのですよね。『推薦競技』に関しては特例として代役を立てるのに10万ポイントで代役を立てることが許される。では『全員参加競技』に関しては幾ら必要なのですか?」

 

 

あかねちゃんが真嶋先生に質問すると真嶋先生は顔を青白くさせる。

 

 

「やはり気付いたか・・・そう、記載はしていないが、『全員参加競技』の場合も代役を立てることは可能だ。その場合に必要なプライベートポイントは1万になる。ただし補充できるのは公平な勝負になるように同学年で一番人数の多いクラスと同数まで。また、『全員参加競技』の場合、代役を立てたとしても得られるのは順位によるクラスの点数だけ。プライベートポイントや個人の点数は得られないので代役として多く出てプライベートポイントを集めたり、最優秀生徒に選ばれるという事はないので注意するように」

 

「先ほど先生がおっしゃったように“公平性を重視している”のであれば、クラスの人数差が大きく影響するこの体育祭でその差を埋める方法があると考えました。・・・・・・・・・うん、これで光明が見えてきたかも。あと一つ、質問良いでしょうか?」

 

「ああ、出来ればもう少しマイルドな質問に・・・」

 

「100メートル走などの順位はどのように判定しますか?」

 

「それについてだが、例年では最新の順位測定用カメラを購入していたが、今年は予算削減の関係で体育の先生が審判をすることになった。そのせいで体育の先生から何度も愚痴を言われたよ」

 

「可哀想に・・・なんで真嶋先生がそんな仕打ちをうけるのでしょう」

 

「貴様が言うか・・・」

 

 

真嶋先生を案じるあかねちゃんはやはり優しいな。

それにしても豪華客船の件とか無人島の件など色々とお金の使い方が酷い件も『深掘れワンチャン』で取り上げられていて社会人を中心に凄い反響だったけど、その影響で色々と予算が削減されているみたいだね。

教師のボーナスも今年は大幅にカットされると真嶋先生ぼやいていたなぁ。

大人は大変そうです。

真嶋先生、頑張ってください。私たちの卒業まで頑張ればもっとお金が稼げる仕事に転職できますよ。

 

 

その質問後、あかねちゃんは誰かと頻繁に端末でメッセージのやりとりをしていたようだけど、良い案が浮かんだのかな。

 

 

私も少しは協力できるように頑張ろう。




山村美紀さんの視点でお送りしました。
なんかキャラが違うと思った方、彼女は最早オリジナルと思ってください。

モチベ維持の為にも感想、評価お待ちしております。

アンチヘイトタグをつけた方が良いか?

  • 必要
  • 不要
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。