アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」   作:ムテキング

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本編とは全く関係ないですが、綾小路君に適度にスポットを当てた話を書いてみようと初投稿です。


青春の特権といえば、一言も以ってすれば無知の特権であろう

「綾小路、これの続きはないのか?」

 

「マリみてはまだ10巻までしか博士に借りてないんだ。俺も続きは気になっているんだが・・・」

 

 

ベッドで寝転んでラノベを読んでいた山内が続きを催促してくる。

俺もその巻の続きは非常に気になっているので博士には催促しているのだが、他の奴に貸しているらしく、俺ももう3ヶ月は待っているんだ。

 

 

「あら、マリ見てのレイニーブルーの続きなら読んだことがあるから知ってるわよ、どうなるか教えてあげるわ」

 

「「ネタバレはやめろ!」」

 

「ははは、二人とも仲良しで妬けちゃうな」

 

 

馬鹿北の恐ろしい発言に俺たちの声が見事に重なり、ホモが気持ち悪い事を言い出す。

実に何時もの光景だ。

 

 

体育祭が終わり、10月中旬。

世間では生徒会選挙があり、南雲先輩しか生徒会長の立候補者がおらず、生徒会長信任投票が行われた。

だが、過半数割れで落選してしまい、その場合は理事長が生徒会長を指名する規則になっているらしいが、新しい理事長は未だ未定の為、理事長が決まるまでお兄様の生徒会長続投が決まった。

そんな訳で、2年生では裏切り者を探すべくかなり酷い状況らしい。

だが、2年には裏切り者なんていないと思うがな。

何故なら選挙では1年は全員不信任に票を入れたから、2年生が全員信任票を入れても人数差で過半数割れするのは当然だからだ。

どうやら南雲先輩は1年など眼中にないらしく、体育祭に引き続き今回も見事に足を掬われているようだ。

 

 

どうやら各クラスのリーダー達が裏で色々と動いているようだが、俺たちにとっては全く関係ないことだ。

そんなわけで特に何もやることがなく、俺たち4人はいつも通り、俺の部屋に集まり、適度に勉強をした後はダラダラと翌朝まで過ごす日々だ。

こいつら、夏休みに俺の部屋で過ごすうちに、ついにここに居着きやがった。

本来なら4人も生活するには狭い部屋ではあるのだが、今の俺の部屋はあそこで身につけた俺の一流のリフォーム技術によって見事に倍の広さへとビフォーアフターしていた。

それというのも、隣の部屋に住んでいた生徒が夏の無人島試験で退学になり空き部屋になったためだ。

馬鹿北曰く、使っていないなら私たちが使っても問題ないわね、とのことで隣の部屋との壁を無理矢理ぶち抜いて2部屋分の広さに拡張したのだ。

そして、それぞれが私物を持ち込んで、そのまま俺の部屋に住みだしたのだ。

山内やホモはともかく、馬鹿北まで部屋まで戻るのが面倒と言って平気でここで雑魚寝するようになったのは驚きだ。

 

ポイントの節約をするため、無料の食材や日用品を共有するのには同居するのが確かに一番効率的ではあるのだが、俺のプライバシーは一体どこに消えていったのだろうか。

 

 

改めて部屋を見回してみる。

ベッドは俺の部屋と隣室側に一つずつあり、各々で適当に使っている。

大抵は隣室側のベッドで馬鹿北が寝るので、俺のベッドでは山内とホモが寝ていることが多い。

俺も最初は自分のベッドで寝ようとしたが、寝ている間にホモが布団に潜り込んでくるので、何度か撃退していたら、気配を隠して潜り込む術を身につけてきたので、最近はベッドは山内に譲ることにした。

では俺はどうしているのかというと、実は以前から密かに憧れていたコタツで寝るという事を実施し始めたのだ。

ここに来る前、あそこに居た頃から、度々文学書などで見かけたコタツというものに憧れを抱いており、何時か自由になったらコタツで寝るというのをやろうと決めていたのだ。

自由を手に入れた俺だが、ずっと金欠のためコタツを買えなかったのだが、先週、寮の粗大ゴミ置き場にコタツが廃棄されているのを発見して回収してきた。

多少壊れかけていたが、この程度の修理など、あそこで培った電気工作技術にかかれば容易いものだったな。

それからは俺は毎日コタツで寝ているのだ。

まだ残暑が厳しい季節だが、エアコンを全力運転させて温々とコタツで温まりながら寝るという贅沢は何物にも代えがたいと実感している。

そんな経緯で設置してあるこのコタツだが、他の面子にも人気なようで、今も馬鹿北とホモが一緒に温もっているのだ。

 

 

他に隣室側に設置されている4人共用の大きめの本棚(俺が廃材を使って日曜大工で作り上げた)には、それぞれが持ち込んだ本が収納されている。

馬鹿北のお堅い小説、ホモのサッカー関連と参考書、山内のエロ本や漫画など。

各々の趣味が違うため、ジャンルがバラバラな本が混然と混ざり合い、まさにカオスな本棚となっている。

やはり金欠のため、新しい本はなかなか増えないが、馬鹿北と山内がよく資源ゴミ置き場から拾ってくるのと、たまに博士が定期的にラノベと漫画を貸しだしてくれるので、少しずつ蔵書も増えていっている。

後、馬鹿北が山内のエロ漫画を穢らわしいと罵っているが、俺は知っているぞ。たまに馬鹿北がそのエロ漫画の中で、兄妹の近親ジャンルのものをコッソリ読んでいることをな。

 

 

他にも寮のゴミ捨て場から拾ってきたものは多い。

鍋やフライパンの料理器具なども大抵は拾い物だ。

買ったはいいけど結局自炊をせずにいたのか殆ど未使用のまま捨てられているものもあった。

家電系は壊れた物を棄てていることが多く、それらを修理して使ったりしている。

テレビなど、計4台から液晶画面や内部基板など生きているパーツを継ぎ接ぎして使用しているのだ。

あそこは本当に酷い場所だったが、あの頃に培った技術は今でも俺の役に立っている。万事塞翁が馬とはこの事だろう。

 

 

最も変わり種はやはりあれだろうか。

馬鹿北がやはり寮の粗大ゴミ置き場から拾ってきた仏壇だ。

拾ってきたとき中から高育の制服を着た見知らぬ生徒の写真や位牌が数人分出てきて何やら背筋に寒気がしたが、それらは馬鹿北が容赦なく燃やしていた。

その後、馬鹿北によって色々デコレーションされ、今はお兄様の写真やぬいぐるみ等が飾られた祭壇に変化している。

つい先日馬鹿北に頼まれ、Bluetoothスピーカーを組み込み、夏フェスのお兄様の歌がエンドレスで流れるようにもなった。

時折深夜になると、そのスピーカーから苦しげな呻き声が聞こえるが、気にしない方が精神的に良いだろう。馬鹿北が斜め四十五度の角度から松葉杖でぶん殴るとその日は聞こえなくなるので、きっと組み込んだスピーカーが壊れかけていたのだろう。きっとそうに違いない。

 

 

「お、そろそろ桔梗ちゃんの配信時間じゃん」

 

 

山内がTVのチャンネルを動画配信サイトへと変更し、櫛田のチャンネルの配信を再生する。

櫛田は以前までMEMちょの配信にみーちゃんと一緒にゲストとして出演し、そこで人気が出てきたので独自のチャンネルを開いて配信を始めたようだ。

先月にはチャンネル登録者数も50万を越え、スパチャでも結構な金額を稼いでいるらしい。

本人に尋ねたところ、どうやら稼いだお金はポイントには変換できないようで「相変わらず貧乏生活だよ~」と困ったような顔で笑っていた。

 

 

「全く、あんな性格の悪い女のどこが良いのかしらね。みんなマゾなのかしら」

 

「ばっか、堀北は分かってないな。桔梗ちゃんのあの態度は事務所のキャラ付けって奴なんだよ。現に教室ではマジ天使だからな。でも桔梗ちゃんになら踏まれてもいいな」

 

 

それは同意するが、今もうっざとかきっもーってスパチャしたファンを楽しそうに罵っているあの姿は単なる演技には思えないのだがな。何にせよ、可愛ければ天使でも悪魔でもどっちでもいいか。それより幾ら貢いだら踏んでくれるのだろうか? この前コッソリと拾ってきたピンヒールが活躍する日が待ち遠しぞ。

 

 

「本当に、あのスパチャがポイントになるのなら、今の私たちの生活もこんなに苦しくないでしょうに」

 

「いや、馬鹿北。あのスパチャは櫛田のお金だから、ポイントになったとしても俺たちの生活には関係ないと思うぞ」

 

「何を言っているのかしら? 一人はみんなのためにというでしょう。誰かが大金を稼いだら、それはすべからくクラスのために供出するべきだわ。愚者がお金を持っていても無駄遣いするだけなのだから、私が管理運営した方が有意義でしょう?」

 

 

馬鹿北の前世はきっとジャイアンだったのだろう。それも映画版がない世界線のジャイアンだな。

 

 

「どっちにしろ、体育祭で結構稼いだからな。来月頭のポイントで全額払いきれるぞ」

 

「体育祭のポイントの半分はクラス貯金に回されちゃったからね」

 

「私のポイントを勝手に半分も持っていくなんて今考えても憤懣やるかたないわ」

 

 

ホモの補足説明に馬鹿北が憤るが、体育祭の収入は俺ら3人の稼ぎであって、お前のポイントではないのだが・・・やはり言っても無駄だろう。

月頭の収入もある程度はクラス貯金にされるが、それでも来月には4人で約10万程の収入だ。4万を貯金で取られても十分払い終わっておつりがでる計算だ。

これで0円生活ともおさらば出来るので、今からあれこれと欲しいものが浮かんでくる。包丁代わりに無人島で入手した黒曜石のナイフを使っていたが、そろそろ本物の包丁が欲しいとこだ。調理器具は毎日使うものだし、どうせ買うなら長持ちするように良いものを買おう。

 

などと皮算用しながら櫛田の配信を見ていたのだが・・・。

 

 

『あ、“春樹”くん、今日もまた赤スパありがとう! 毎日赤スパくれるけど、お金は大丈夫? ちょっと心配だな。でも嬉しいからまた明日もお願いね』

 

 

櫛田が赤スパした人にレスをしたのだが、この“春樹”というファンには何故か態度が柔らかく、それとなく明日の赤スパも催促している。

ところで、春樹ってどこかで聞いたことがある名前なのだが。

 

 

俺だけでなく、馬鹿北やホモも気付いたようで、3人でベッドにいる山内の方を振り返ると・・・何故か端末を握りしめて満面の笑みでガッツポーズを取っている山内の姿があった。

 

 

「おい、山内。ちょっと聞きたいのだが、もしかしてお前、スパチャとかしてないよな?」

 

 

俺の問いかけに山内はビクリと肩を震わせ、目を泳がせ始める。

 

 

「な、なんの事かなー。全く話が理解できないぜ」

 

 

しらばっくれながら手に持った端末をポケットにしまおうとした山内を、ホモが素早く羽交い締めする。

俺は動けなくなった山内から端末を奪い取り、山内の誕生日4桁をパスコードに打ち込んで端末のロックを解除する。

 

 

するとそこには櫛田の配信が映し出され、履歴を見ると毎日赤スパ、5万を投じていることが分かった。

 

 

「ざっと、50万は使っているわね。ちょっと聞きたいのだけど、このお金は一体どこから手に入れたのかしら?」

 

 

馬鹿北が背筋が凍るような笑顔で詰め寄ると、山内も観念したように白状する。

 

 

「いやぁ、俺たちポイント全部没収されたじゃん。それで何も買えなくなってキツいからって桔梗ちゃんに相談したら貸してくれたんだよ。50万ポイント。利子も無しで良いって、マジ天使だよな桔梗ちゃん」

 

 

その言葉に俺たちは絶句する。

 

 

「そんときに桔梗ちゃんの配信の話になってさ、貸したお礼にみんなに紹介して欲しいってさ」

 

「それで、何故スパチャを?」

 

「いやー、1回ぐらいはお礼としてスパチャしようと思ってさ。そうしたら俺にだけすっげー優しいレス返してくれてさ。俺、どうやら桔梗ちゃんに惚れられちゃったみたいでさ。きっと教室じゃ恥ずかしくて言えないから、こうして配信越しに俺にメッセージを送ってくれてるんだって思うと、もう毎日スパチャ投げるしかないじゃん」

 

 

山内が櫛田に借りたときの借用書を確認したが、連帯保証人の所に何故か俺のサインが入っていた。そういえば、打ち上げでカラオケに言ったときに櫛田に何かの紙に名前を書いてくれって言われたっけ。あの時はカラオケルームが暗かったのと、カラオケに浮かれてよく確認せずにサインをしてしまった。どうやらあれがこれだったようだ。

 

 

「櫛田さんに50万借りて、その50万を櫛田さんにスパチャで投げるなんて・・・」

 

「あ、50万なくなったらまた貸してくれるってさ。マジで桔梗ちゃん優しいよな」

 

「それ、絶対騙されてるぞ。50万貸すと100万になって還ってくるなんて闇金も真っ青な利息だ。ボロい商売だな」

 

「お金持ちは働いて稼ぐのではなく、お金を生み出すシステムを作り出すと聞いたことがあるけど、まさにそれね」

 

 

結局、俺たちの借金が更に50万追加され、山内の端末は俺らが取り上げることに決まった。

何時になったらこの借金生活から抜け出せるのだろう。




なんだかんだで原作よりはお気楽で楽しそうな綾小路君達でした。
本来なら坂柳理事長が解任された後に月城さんが来るのでしょうが、今は学校の状況が悪いので来ていません。もし来ていたら体育祭の支出の件で早々にクビが飛んでいたでしょう。

今回のサブタイトルは三島由紀夫さんの名言になります。
無知無謀な生活ですが、これがこの4人の成長の糧になることを祈りましょう。

モチベ維持の為にも感想、評価お待ちしております。

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