アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」 作:ムテキング
6時間目のホームルーム開始後、茶柱先生は即座に教室を後にした。
不思議がる生徒たちを横目に、ホモが立ち上がり、教壇に立つ。
「今日のホームルームは明日の小テストに向けての作戦会議を行いたいと思うんだ。茶柱先生には許可を得ている。ホームルームの時間は好きに構わないと言って貰えた。先ずはリーダーの堀北さん、いいかな」
ホモの言葉に待ってましたとばかりに馬鹿北は躍動しながらホモの隣へと文字通り躍り出た。具体的には自席から教壇に辿り着くまでに3回ほどスピンターンしていた。よっぽどリーダーと紹介されたのが嬉しかったのだろう。
殆どの生徒は肩を並べるホモと馬鹿北にまたかとため息を吐いたことだろう。もはや毎度おなじみの馬鹿北とホモのDクラス最悪のタッグ。ここに山内が加われば最早無敵の人だろう。俺か? 俺は此奴らとは無関係を貫きたい。貫きたいのだがなぁ。世の中はままならない事ばかり。クロノくんも言っていたが、世界はいつだって、こんなはずじゃないことばっかりだよ。
夏の試験から体育祭まで痛い目を何度となく見てきたというのに、まったく生まれ変わる様子もなく、スタンド能力ならきっと成長性の所は『E』か『なし』と記載されているだろう。
『失敗したら、もう一度起き上がればよい。転んだって何ともない』とアメリカの思想家エマーソンは言っていたな。日本でいうなら七転び八起きと言ったところか。どれだけ失敗しようが何度だって立ち上がり挑戦すれば成長していくであろうと。だが馬鹿北を見る限り、どちらかというと七転八倒にしか見えない。そろそろ身の程を弁えた方が良いと思うのだが。
今の馬鹿北は未熟であると同時に、無限の自尊心を含んでいる。
それが続く限りこれからも自ら成長することはない。
恐らく馬鹿北の中では自画自賛が続いているはずだ。懸命に現実から目を背けているのだろう。
そんな馬鹿北はざわめく生徒達を前にしてふんぞり返りながら「黙りなさい!」と声を上げながら教卓へと手を叩きつける。お前は“黙れドン太郎”か。
「・・・まず始めに。過ぎたことではあるけれど一つだけ言わせて貰いたいわ」
すぐに期末テストに向けた話が始まると思っていたが、そうではなかった。馬鹿北がきっとこれから馬鹿なことを言う。全財産賭けても良い。所持金は0ポイントだがな。
俺は嫌な予感をヒシヒシと感じながら馬鹿北の続きを待つ。
「私は体育祭で不甲斐ない結果を出してしまった貴方たちを許していないわ。強い態度で臨んでおきながら、Dクラスの為に何も出来なかったことを謝って欲しいわ」
ビシッと星野を指さす馬鹿北。何を言い出すんだ、お前は・・・。
俺は思わず頭を抱えてしまった。最近多いな、頭抱えることが。癖にならないと良いが。
「私は言ったはずよ。正々堂々と正面から撃破すべきだって。そうすればDクラスが単独で1位を取り、そしてお兄様と赤組を勝利に導けたのは自明の理ね。それを目先のポイントに目を眩ませて姑息な手を使っておきながらクラスポイントを50も減らしたのよ。あれを稼ぐために私がどれだけ無人島試験で苦労したのか分かっているのかしら」
いや、無人島試験でのポイントなら、あれは俺が稼いできたポイントだぞ。お前は何もしていないだろうが。いや、黒川クラスの馬鹿に突き落とされて稼いだってことを言いたいのか? それに関しても結局証拠不十分で、どちらかと証拠の揃っている博士への暴行での賠償で稼いだポイントだぞ。それも星野達がしっかり証拠を押さえていたからだ。
それに目先のポイントと言うが、272万も稼げたのなら十分すぎると思うが。50クラスポイントの約13ヶ月分だぞ。それを一度に稼げるなら50クラスポイントのマイナスも許容範囲だろう。それに赤組敗退については上の学年の問題だ。誰が糸を引いたかは分からないが、俺たちの動きに関係なく実行されていただろう。ならば赤組は負けるべくして負けたということだ。結局1位になっていても50クラスポイントのマイナスを受けていたのには変わらない。プライベートポイントではなく他クラスからのヘイトを稼ぐだけしか出来なかったと思うぞ。
Dクラスが敗退した原因の全てを、星野へと背負い込ませようとする発言に、俺は他のクラスメイトがキレないか不安になり周りを見渡す。
案の定、みんな今にもこめかみに血管が浮かびそうな、怒りを孕んだ顔をしている。
だが、みんなはメッセージを受信したのか端末を見てから、何とか怒りを抑えようと深呼吸した。
なんだろうか。俺もクラスチャットを覗くが、相変わらず俺ら4人のチャットしか表示されていない。
だが、それでなんとか怒りを抑えたらしい小野寺がわざとらしく声をかける。
「や、やっぱり負けたのは堀北さんがリーダーをやってなかったからだよね。やっぱりリーダーは堀北さんじゃないと」
「そうだぜ、堀北。俺も寛治も対して役には立てなかったからな」
可哀想な人を見るような目をしながら、それでも須藤は馬鹿北を褒め称えようとする。
「勝敗を決めることもそうだけど、謙虚な態度で有れば許されることと、そうじゃないことがあるわ。少なくとも体育祭での星野君に評価すべき点は全く無いわね。やはり私がリーダーをやるべきだったわ」
そう言った後、馬鹿北は見下すように星野の顔を見た。それは恐らく『星野より優位にたったこと』以外には何も考えていなさそうな間抜け面であっただろう。その気持ちを星野が汲めないはずはない。少しだけ嘲笑しそうになりながらも、星野はその表情を隠すように頭を下げる。
「ふん。素直に頭を下げたことで謝罪はここで一度終わりにしてあげるわ。次の小、期末テストに向けて私はリーダーとして全力で挑むわ。クラス全員がどれだけ使えない人間だろうが、私が指揮する以上、この程度の試練は軽く乗り越えられると思っているわ」
「アー、ソレハ理解デキルノダケドー、対策トカー打ちようってアルワケー? えっと、ペアの決め方トカー、分かってんのー?」
端末を見ながら思いっきり棒読みで篠原が質問するが、馬鹿北はそれに気付かずに勿論よと返答する。
それにしても篠原は池と付き合いだしてから落ち着いてきたな。以前までの彼女なら堀北に猛然と食ってかかっていただろう。
小野寺や須藤、篠原だけでなく、他の生徒達も内心はともかく口に出していないことから自制心が大分鍛えられているように見える。
「ペアの決定方法は小テスト後に茶柱先生が説明してくれるわ。ならば今、私たちがやることは一つ。全力で小テストに挑むだけよ。愚問だわ。ホモ田くんお願い」
サポート役へと回ったホモが合図を受け黒板に小テストへの取り組みについて書いていく。
小テストへの取り組み方
全力で挑む!
日 平田
それだけかよ。全く何も考えてませんって全力で馬鹿をアピールしているようなものだぞ。
見てみろ、みんな笑いをかみ殺しているぞ。櫛田なんて腹を押さえて笑い転げてやがる、キャラ崩壊も良いところだ。
「これが小テストにおける作戦よ。シンプルでしょう?」
「お、おおーっ。これが小テストの作戦か。よく考えついたな堀北! すげえぜ!」
「この程度も気付けない貴方たちが愚かなのよ。それに大切なのはここからよ。以上のことからもわかるように、成績下位の人は今から寝ないで勉強しなさい。人間死ぬ気になればなんだって出来るわ。そして全員で100点を取るのよ。そうすれば確実に期末テストでも100点を取って勝利を手にできるわ」
池の馬鹿にしたような発言にも気付かないようで、更に馬鹿なことを気分良く喋り散らかしている。多くの生徒は気付いているが、馬鹿北に指摘することはない。以前に比べれば分かりやすいヒントだというのに、馬鹿北は何故こうも学習しないので有ろうか。これまでの失敗経験を全く活かせていないからこそ今どのように思われているのかすら気付けないのだ。
ほぼ確実に、クラスのみんなは馬鹿北を体の良い生け贄としての神輿として担ぎ上げている。
今後Dクラスには、敵対相手の龍園からの様々な嫌がらせが殺到するだろう。
それらを全て馬鹿北へと集中させることによって、本命の星野達の動きやすい環境を作り上げている。
現に、星野から俺にメッセージが届いている。馬鹿北に小テストで最高得点を出させること。そして山内に白紙で出させること。
この二つが俺のこの試験での最初の仕事になるようだ。
恐らく、祭り上げた馬鹿北に期末テストの問題作成も押しつけるのだろう。デコイとして。
それを龍園にわざと流出させて、星野達が作り上げたテストを本命として提出するって感じか。
きっと俺も馬鹿北に問題作成を手伝わされるんだろうな。どうせデコイだし、適当にネットで調べて丸コピーで出しておくか。
今も、「ベーコンよ。今回の期末は帰納法で蘇ったフランシス・ベーコンで勝利を掴むの!」と息を荒げている馬鹿北を見て、俺は憂鬱な気分になった。
そうか、これが“憂鬱”という感情か・・・。
年末に入るので今後の予約投稿済みの年内更新予告を置いておきます。
12月23日 第54話 niceboat.が待ってる
12月24日 第55話 ロアナプラへようこそ
12月25日 第56話 徐々に奇妙な冒険 龍園翔は砕けない
以降は年内未定です。
書けたら更新します。
皆さん、よいお年をお迎えください。
モチベ維持の為にも感想、評価お待ちしております。
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