アクア「MEMちょのために高校を紹介したら彼女も着いてきた件」 作:ムテキング
外国語研究会でも160万ほど稼げた俺たちは買い出しに向かうことにした。
途中、ボードゲーム部部室の側で杖をついた小柄な銀髪の女の子が「なんで! 月初めなのに! すっからかんなんですか!」とプンスコ怒っていた。あかね曰く、同じAクラスの坂柳有栖で、担任の真嶋先生にポイントの支給額などや購入可能な範囲について質問していた切れ者らしい。彼女もボードゲーム部を鴨にするために来たのだろう。絡まれると面倒なので気付かれる前に回れ右して別の方向から出ることにした。
高育には巨大なショッピングモールがあり、そこには多種多様なお店があり、敷地内で必要な物が大抵手に入るようになっている。もし置いていない物でも取り寄せが可能とのことだ。ただ取り寄せるぐらいならアマゾソでお急ぎ便配送した方が早いが。何しろ都内なのでお急ぎ便なら大抵の物は当日中に受け取れる。
実店舗で購入するメリットは現物を実際に手に取って比較することが出来る事だろう。特にサイズ感については実際に触ってみないと掴みにくい。以前にも持ち運び用ラジカセと記載があったので小型なのだろうと考えて買ったら欧米人の考える持ち運べるサイズだったため、黒人が肩に担いでいるような巨大ラジカセが届いて難儀した覚えがある。
そして俺たちはモールにある大型電気店に入ろうとしたら、同じタイミングでゴザル博士と鉢合わせた。
「やあ、外村君だっけ。君もここに来ていたのかい」
「おや、同じクラスの星野殿ではないでござるか。おなごをたくさん連れていて羨ましいでゴザルよ」
「いやいや、彼女達は元々の知り合いだったからね。君は何か買いに来たのかい?」
「この学校ではパソコンの持ち込みダメでござったので買いに来たのでゴザルよ。でも良い物はやはり10万ポイントでは足りなくて出直そうかと」
「と言うことは外村君はパソコンに詳しいのかい? ちょうど僕たちも今後の勉強で使うからってみんなでポイントを出し合ってパソコンを買おうと思っていたんだけど僕たちはあまり詳しくなくてね。色々教えてくれるなら足りない分を貸したり出来ると思うよ」
この男、嘘つきである。
星野アクアもMEMちょもパソコンに関しては一家言あると言っても良いぐらいの知識量を誇る。
だが彼が携帯端末を支給されて早々にハッキングしていたのを盗み見ていたため、彼を仲間に引き入れるために誘ったのである。
「おお、それはありがたいでゴザル。パソコンに関しては小生に任せて欲しいでござる。ここは品揃えがシリコンバレー並みに良いでござるから自作でポイント消費を抑えることも可能でござるよ。何しろ500万近くするAI解析用グラフィックボードが普通に棚に置いててびびったでござるよ。万引きされないか心配でござる」
「あはは、流石にそれは買えないね」
「いやはや、あれを買っても使いこなせる教員や生徒がどれだけ居るのでござるかね。ではパソコン売り場に案内するでござる」
そう言ってゴザル博士は階段を上っていく。途中でチラッと見たフロアマップではパソコンフロアは8階だ。階段の近くにはエレベーターも有ったがそれを素通りして人気が無い階段を登っていく。俺はあかねに目配せして警戒を促す。
3階まで上がったところでゴザル博士はスタッフオンリーと書かれた扉の電子錠を難なく解除して中に入る。中は会議室のようだが今は誰も使用していないようで、ゴザル博士は平然と会議用テーブルの椅子に座る。
「心配しないでいいでござるよ。監視カメラはこの店に入ったときから偽装済みでござる」
「・・・・・・・・・どういうことかな、外村君」
「いい加減そのうさんくさい話し方はやめてほしいでござる。そんな良い子ちゃんな真似を続けられるとついついアクアマリン君と呼んでしまいそうになるでござるよ」
「・・・・・・・・・学校に提出している名前は星野アクアにしてあったはずだけどな」
「学校側はともかく国のデータまでは偽装出来ないでござろう。出生届から星野殿の“母親”の件まで丸っとお見通しでござる」
ゴザル博士、外村秀雄はこんなことはどうとういうものではないと気軽な調子で話してくる。だが、口調とは裏腹に目つきは先ほどまでのおちゃらけた様子からは想像が出来ないほどの鋭い目つきになっていた。
「一体、いつから俺たちのことを探っていた」
「おお、やはりそっちの方がイメージとあうでござるよ。・・・そうでござるな。先ずは自己紹介をやっているときに佐枝ちゃん先生のアカウントを拝借させていただいたでござる。そこでクラスの生徒の情報を見ているときに既に星野殿とMEMちょ殿のポイントが0になっていることに気付いて、購入履歴を調べていたでござるよ。星野殿、気をつけた方がいいでござる。ポイントの履歴は何を買ったかまでも教員には筒抜けでござるよ。銃刀法で捕まらないように卒業時には海にでも投げ捨てるのをオススメするでござる」
そこで、外村はあかねのことを見る。
「そして、ついでにその際にポイントを受け渡していた黒川殿の事も芋づる式に分かり、面白そうなので暇つぶしに色々調べさせて頂いたでござる。後はポイントの推移なども。ボードゲーム部と外国語研究会で巻き上げた720万は黒川殿が受け取っていて正解でござるよ。佐枝ちゃん先生にバレると来月には色々面倒くさいことになりそうでござったから」
「つまりこの学校のシステムにも気がついているって事だな」
「気がつくも何も入学前の調査でしっかり把握しているでござる」
「なのにDクラスか。そのハッキング能力があればAクラスも可能だったんじゃないか」
「卒業特典には元々興味がないでござるよ。そもそもここに入ったのは少々火遊びが過ぎたのでほとぼりがさめるまで身を隠すためでござるから。それに卒業後はラングレー行きが既に決定済みでござる」
「ならクラス闘争には」
「面倒なのでバカを装って退学しない程度にてきとーに流す予定でござる。実際アニメやエロゲーが三度の飯より好きなキモオタなのは本当でござるから」
「そうか。だがそのアニメやエロゲを楽しむにはそれなりのポイントが必要なはずだ。当然今月末に発売の『萌えキュン巫女巫女お姉ちゃん』は買うのだろう? 初回限定版には巫女巫女お姉ちゃんの等身大おっぱい枕が付いてくる。あれは良い物だぞ」
「うっ・・・確かにそれは欲しいでござる・・・」
「他にも『学園アイドルシスター』と『ナカダシクリエイティブ』も今月末に発売だ。どれも初回限定版はかなり豪華だぞ。更にショップごとの特典も全部揃えないとな。俺はポイントに余裕が有るからな。全部購入する予定だ」
「愚愚愚・・・予算が・・・予算が・・・いっそのこと所持ポイントの書き換えを・・・いや流石にそれは・・・」
外村は頭を抱えている。
「そこで提案だ。それらの購入費用を工面する代わりに俺たちに協力して貰えないか。勿論目立たないように裏方で構わない」
「はぁ・・・しょうがないでござるな。ただし本当に裏方でござるよ。ここは色々と危ないでござるから、変に目を付けられて路地裏とかで額に新しいケツ穴をこしらえるのは勘弁でござるからな」
よし、これで情報戦でかなり有利になる。
俺は交渉が上手くいき、笑みを浮かべて後ろの皆へと振り返った。
鬼がいた。
「アクアくん。さっき話していたゲームについてちょっと聞きたいことが有るんだけど良いかな?」
もう一度回れ右したが、あかねにがっしりと肩を掴まれる。
外村は既に部屋の壁に顔を付けて直立不動で息を潜めていた。
「オハナシ。しようか」
母さん、もしかしたら今日そっちに行けるかも。
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追記 茶柱先生の名前を間違えていたので修正しました。