SSRの黒歴史を回収する為に、ダンジョンを探索する   作:カンさん

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第27話 共感

 

「──ははは。はははははははははっ!」

 

 センシと同じ鎧を纏った異界の使徒は、歓喜の声を上げた。

 何だこの力は? 何だこの湧き上がる感覚は? 何だこの──全能感は?

 知らない力だが、それと同時に感じる懐かしさ。

 希望を絶望に。光を闇に。未来を過去に。全てを無に帰す──己を負かした力。

 

「そうか! そういう事か! 白の英雄、お前は──」

 

 ハヤテの視界から異界の使徒が消え、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?」

 

 隣に居たセンシを殴り付けてそのまま吹き飛ばした。

 

「センシ!?」

「やはりぼくの仮説は正しかった!」

 

 異界の使徒は跳躍し、直ぐに追いつきセンシに拳を叩き付ける。センシは受け止めるが空中故に踏ん張りが効かずにダンジョンに叩きつけられた。

 

「白の英雄! 貴様の強さの秘密はこの鎧の力だろう!」

 

 轟音が響き、瓦礫が舞い、異界の使徒はその中を突き進んで追撃をする。センシもまた応戦をするが、どうやら異界の使徒は白の英雄の身体能力すら共感(コピー)している様で、どんどん追い詰めていく。

 

「この5年間、貴様は何度もあのお方の邪魔をしていた! しかし不思議な事に力を感じなかった!」

 

 センシの拳は防がれ、異界の使徒の拳は当たる。

 

「だがこの鎧を得た今理解した!」

 

 さらに動きを見切った異界の使徒は、センシの動きに合わせてカウンターを叩き込み更なるダメージを与える。

 

「この鎧にはあのお方と同じ権能(チート)──【封印】が宿っている! 貴様はそれで力を隠していたな!」

 

 バキリとセンシの白の鎧にヒビが入り、それを見た異界の使徒は笑みを深める。

 

「だが! 学校でのイレギュラーでは、流石の貴様も力を使わざるを得なかった──ぼくの策略に気付かずに!」

 

 センシはビビの入った箇所を抑えて距離を取ろうとするが、それを異界の使徒は許さない。

 

「そして今回その鎧を纏って来たのは、ぼくを警戒しての事だろうが──悪手だったな!」

 

 逃げるセンシに追いつく異界の使徒の動きは、先程までとは比べ物にならない程に洗練されている。

 

「加えて」

 

 トンッと異界の使徒が軽く触れると──次の瞬間、センシの鎧が消えた。

 感じる力が無くなり、異界の使徒はやはり自分の考えは正しかったのだと認識する。

 

「白の英雄。貴様、この力を扱い切れていないな」

 

 異界の使徒は、封印の力でセンシの鎧を封じ込めた。

 それにより生身となったセンシに向かって彼は思いっきり拳を振り下ろす。

 

「だがぼくは違う!」

 

 ゴシヤァァアッ! と轟音が響き、突風がハヤテの元まで届く。

 

「センシ!」

『風緑ハヤテ。今は動かない方が良い』

 

 ハヤテがセンシを助けようと走り出そうとし、しかしそれをいつの間にか彼女の肩に止まっていたアルスターが止める。

 彼女は理解していた。自分は足手纏いになると。それでも大好きな人を助けたいと思うのは当然の事である。

 

「この様にぼくは共感した相手よりも、上手く力を扱える──終わりだよ白の英雄。いや、空我センシ」

「……」

 

 無言で立ち上がったセンシに、異界の使徒は高揚していた。

 彼が今使っている力は最強と言っても過言では無い。確かにこの力があれば、異界の使徒達の権能(チート)を無効化し、本来倒せない相手を倒す事ができる。

 この力さえあれば──自分は、異性の神すら倒せるのでは無いか?

 そんな考えを抱きながら、彼はセンシに向かって駆け出した。

 

「もっともっともっと! この力に共感させてくれ!」

 

 その為にはこの権能(チート)を使い熟す必要がある。そして丁度良くサンドバッグになれそうな相手が目の前に居た。

 故に異界の使徒は愉しそうにセンシに襲い掛かり。 

 

 

 

 

「ほい」

「ぶべらばぁ!?!?」

 

 頬に衝撃が走ったかと思うと壁に激突していた。

 何が起きたのか理解できなかった。何故自分は壁に埋まっている? 何時殴られた? 何故──英雄の鎧が、まるで限界を迎えたかのようにボロボロに崩れている?

 あり得ない。何故ならこれは異界の神と同じ力だ。それが砕かれるなんて事は起きない。あってはならない。あり得ない!!

 

「さっきからゴチャゴチャ言ってるけどよ」

 

 混乱する異界の使徒に、センシは決定的な言葉を叩き付ける。

 

「その鎧──オレが世界を救った後に押し付けられた呪いの装備なんだよ」

「──は?」

 

 異界の使徒の呆けた声が響く。

 

 

 

 

『そもそも。厳密には彼はこの世界の人間では無いんだよ』

 

 ハヤテと会って暫くして。

 彼女はアルスターからセンシの秘密を少しだけ聞いていた。

 

「ん。少しおかしいと思ってた。センシ、私と同じ年なのに()()()()()()最下層に落ちたって言ってた」

 

 ハヤテは5年前、11歳の時に災害に遭い、センシに助けられて、そして最下層に辿り着く力を得た。

 しかしセンシの言っている事が正しければ、時系列がおかしくなる。

 5年前に世界を救った後に、ダンジョンに落ちて力を得た事になるからだ。

 

『彼の発言に嘘偽りは無いよ。確かに彼は長野県の遺跡から事故でダンジョンの最下層に落ちた』

「ん。長野県にダンジョンは無い」

『彼の世界にはあったのさ。そして、そこから始まったんだ──空我センシの英雄譚が』

 

 センシは星の意志が作り出した7つのダンジョンを全て攻略し、その身に祝福が与えられた。本来なら、この世界のように大勢の人類に付与される筈だった祝福を。

 さらにセンシはその後、異界の神が開いた巨大な(ゲート)を破壊し、世界を救った。人知れずに。

 

 しかしセンシは──強くなり過ぎた。

 

「追放?」

『ああ。ある日突然世界から弾き出されたんだ。おそらく世界にとって都合が悪かったんだろうね、センシの存在が。それだけの力を彼は持っているのさ』

「……酷い」

『ああ。確かに酷い。だから世界は彼をこの世界線に送り込んだのさ。

 本来よりも早く異界の神が、この星に目を付けて。

 本来よりも早く我々がダンジョンを作り出し。

 本来よりも早く星と神の戦いが始まり──彼が存在できる世界にね』

 

 そしてセンシは、この世界のもう一人の自分と入れ替わる形で現れた。

 この世界のセンシはダンジョン災害で既に死んでいたが、センシが入り込む事で蘇生された。

 その後彼は世界の混乱を察知し──白の英雄として知られる事となる。

 

 

 

「馬鹿な! そんな! ならあの英雄譚は何だ!? あの力で7つのダンジョンを踏破したのでは無いのか!?」

「アルスターが自分好みに改竄してんだよ。謂わば二次創作。どうも生身で戦っているよりも、白の英雄の方がカッコいいらしい」

 

 その結果、異界の使徒は勘違いしてしまった。センシが強いのはあの鎧のおかげだと。

 しかし実態は──。

 

「で、ではあの鎧は……?」

「オレって手加減が死ぬ程苦手なんだ」

 

 センシが思い出すのは、ハヤテと初めてダンジョンに潜った時と模擬戦をした時。

 彼自身なるべく気を付けていたが、何度も彼女を転ばせてしまっている。センシが少し力を入れただけで周りに被害が及んでしまうのだ。

 

 強過ぎるから。

 

「だから人を助ける時に便利なんだよねソレ」

『空我センシはしっかりと権能(チート)を使っているよ。思いっきり動いても周囲に影響が及ぼさない様にね』

 

 つまりセンシの身体能力、及びそれに生じる現象を抑える為に鎧の力は扱われている。全力で。

 特に5年前と今日の学校では酷使されており、もし鎧に感情があれば泣いているだろう。何なら異界の使徒の方が正しい使い方をしている。

 

 しかしセンシの力には耐える事ができず、時間が経つと崩壊してしまうのが玉に瑕だ。

 

「……だったら!? これまで使わずあのお方の邪魔をしていたのは!?」

「周りに被害与えないから手加減する必要ないし、後あいつへの嫌がらせだよ」

「──あ、あり得ない」

 

 絶望の表情で膝をつく異界の使徒。

 勝てると思っていたが、そもそも間違いだった。彼の力の根幹は、異界の使徒が感じ取れる次元に無かった。だから普段の彼の力量を理解できなかった──強過ぎる故に。

 使徒は、彼を睨みながら叫ぶ。

 

「手加減していたのか!? 今まで!」

「は?」

「初めから鎧を脱ぎ捨てれば、ぼくを殺せたのに何故それをしない!」

「──さっきも言ったじゃねぇか」

 

 5年前も、学校でも、そしてハヤテといるこの時も。

 

「この鎧は、誰かを全力で守る時に便利なんだよ。オレはそういう時に使っている」

「……」

「それ以上でもそれ以下でも無い。そもそもこの力を誰かを傷付ける理由で使った事は──一度も無いんだよ」

 

 故に。

 

「それを理解(共感)できないお前が、オレに勝てる訳ないだろ」

「──黙れ!!!」

 

 ズズズッ……! と異界の使徒の身に変化が起きる。

 

「ならば今度は、貴様のその力を奪って(共感して)やる!」

 

 徐々に体が縮んでいき、犬崎の獣人の姿からセンシの肉体サイズまで縮小していき……。

 

「結局話は変わらない! お前を殺すのはお前の力だ! それができるのはぼくの権能(チート)だけだ!」

 

 しかし。

 

「──ガッ!?」

 

 グニャリ、と変化していた体が崩れて元の獣人の戻る。さらに体から魔力が火花の様に吹き出し、バチバチと音が鳴る。

 

「な、何が……!?」

『どうやら無理だった様だね、彼の力に共感するのは。でもそれも当然だ。何せ我々もアイツも理解していないのだから』

「馬鹿な……!」

 

 理不尽。超越。別次元。

 空我センシを表す言葉は様々だが、そのどれもが当て嵌まらない。

 故に彼は世界から弾き出されてしまった。強過ぎるから。

 

「このぼくが共感できないだと! そんな事!」

「──お前は何も共感できてねぇよ」

 

 苦しみ悶え、喚き散らす異界の使徒の元へゆっくりと歩み出すセンシ。

 

「犬崎は確かにオレを嫌っているし、憎んでいる。そして上手く行かなくて苛立ち、果てにはお前に利用された」

「あ、ああそうだよ! だからぼくはそれに共感して──」

「いいや。してない。お前はアイツの苦しみも怒りも苛立ちも──何も共感していない!」

 

 センシの言葉が、異界の使徒の言葉を遮る。

 

「本当なら! 己の行いに苦しみ、反省するか、それとも足掻くのか! アイツには選ぶ権利があった! その先に再びオレに突っかかるのなら受けて立つつもりだった! 

 オレは犬崎じゃない。オレはアイツの事を全て理解してやれる訳じゃ無い。それでもできる事はある。殴り返してやる事ができる。言い返してやる事ができる!

 それをテメェは奪った! 己の悪意の為に犬崎を利用した!」

「わ、訳が分からない! 何故お前が犬崎を庇う!? 何故お前が犬崎を気に掛ける!? コイツの事が気に入らないだろう? コイツは嫌われる様な人間だろう? だったらこのまま見捨てろよ! それが人間だろうが!」

「人間はそこまで愚かじゃ無い。それに」

 

 怯えて動けない異界の使徒の前に立ち、固く固く拳を握り締めるセンシ。

 

「犬崎は──同じ学校で、同じクラスメイトで、そして……これからはダンジョンで助け合う探索者仲間になるかもしれないだろう? コイツを見捨てない理由なんて、それで十分だ」

 

 まぁ受け売りだがな、とセンシは苦笑し。

 

「異界の使徒。今回はお前の負けだ。さっさと帰るんだな」

「クソ──クソォオオオオオオ!!」

 

 異界の使徒は苦し紛れにセンシの影から刃を出すが、

 

「犬崎には及ばないな」

 

 踏み付ける事で簡単に砕く。そして振り上げた拳を構え、

 

「アルスター! ハヤテを守れ!」

『やれやれ』

 

 アルスターが全力でシールドを貼ったのを見届けると、彼の拳は異界の使徒を捉え。

 

 

 

 そのままダンジョンごと破壊した。

 

 

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