SSRの黒歴史を回収する為に、ダンジョンを探索する   作:カンさん

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第29話 歓迎

「ただいま」

「……随分とあっさり帰って来れたな?」

 

 帰って来たハヤテに対して、センシは少し驚く。

 S級ダンジョン探索者たちの猛攻を振り切った彼は、追跡されない様に日本全国の上空を跳び回った。そう簡単に自分が広島に居る事はバレないだろうと当たりを付けている。

 学校で目撃された時は覚悟していたが、その日のうちに東京に行った為ギルド側も補足できていないだろうと彼は考えている。

 

「何か言われたか?」

「ん。別に何も言われていない。私と白の英雄の間に繋がりがあるとは思っていないみたい」

 

 ハヤテがそう言うのなら、そうなんだろうなとセンシは納得する。

 あれだけ苛烈に捕まえようとしていたのだ。もし彼女との繋がりが知られれば、今頃この家もバレて襲撃を受けている。しかしそう言った害意を感じれば、センシもハヤテも気付けるだろう。

 

「……犬崎はどうなるんだ?」

 

 利用されたとはいえ、犬崎は異界の使徒の力を使っていた。見方によっては人類の裏切り者として見られる。

 さらに学校でのイレギュラー(ゲート)についても、犬崎には関与している可能性がある。

 あの時、犬崎だけが冷静だった。異常事態に対してまるで知っているかのように指示を出し、何処にモンスターが現れるのかを理解しているかのように屋上に向かった。

 

 だからセンシは異界の使徒の存在に気付けた。

 

「ん。記憶を弄って異界の使徒の事は忘れさせるらしい」

 

 ヒカリには他者の記憶を操作する力がある。

 どうやら、彼女は今回の一件をもみ消すことにしたらしい。幸いにも犬崎が異界の使徒と関わりがある事を知っているのはハヤテのみで、ヒカリは彼女に金を積んで口封じをしている。

 

「臨時収入」

「それで良いのかお前は」

「ん。正直興味ない」

「あ、そう」

 

 それにしても、とセンシはギルドの強引な対応に少しだけ眉を潜める。

 犬崎のやった事は本来なら許されない事。しかし、それでも尚無かったことにするという事は、犬崎がA級だからだろうか? 

 貴重な戦力を失いたくないのがギルドの本音であろう。また、今回の遠征で被害が大きかったのも要因の一つに違いない。

 

「……まぁ、いいか」

 

 明日から犬崎はセンシに苛立ち、絡み、悪態を吐いてくるだろう。

 その時はしっかりと向き合いボコボコにしてやるか、と彼は決めた。

 

「ん? メールだ」

 

 ふとセンシはスマホにメッセージが届いている事に気が付く。

 差出人はホムラからだった。中身を確認すると、彼は笑みを浮かべてハヤテを見る。

 

「なぁ、ハヤテ」

「ん。いつでも〇〇〇〇(ピーーー)できる」

「少しは恥じらいを持て!」

 

 発情期かと言わんばかりにぶっ飛んだ発言をするハヤテに顔を真っ赤にしつつ、センシは言った。

 

「今度の土曜日空いているか?」

「え?」

 

 その誘い文句に、ハヤテはきょとんと顔を呆けさせて……期待に胸を躍らせた。

 

 

 

 

「しかし良かったのですか?」

「何がだ?」

 

 ダンジョンの空間転移機能を使い、札幌に帰ったヒカリ。しかしそこには飛鳥も着いて来ており、現在二人は執務室で向かい合っている。と言ってもお互い相手に視線を向けていないが。

 ヒカリはタブレット端末を操作して画面を見ており、飛鳥はカチャカチャと彼女が付けていたベルトのメンテナンスを行っていた。

 

「風緑ハヤテくんの事ですよ」

「……」

「彼女もまたS級ダンジョン探索者――いつか、貴女の祝福(ギフト)の力を打ち破り、改竄された記憶を思い出しますよ」

 

 ヒカリが行った記憶の改竄は犬崎相手だけではない。ハヤテにも行っている。

 

「そうなれば、白の英雄の我々に対する印象は悪くなるだけですよ」

 

 ギルドは、上層部は――ハヤテが白の英雄(センシ)と繋がりがあるのを見抜いていた。

 故に彼女には自分たちの行動を伝えて、彼らを動かした。

 ヒカリの予想通りにダンジョンから出て来た所を抑えられたが、やはりセンシの力は規格外だった。

 

「元々、対英雄の戦力として数えていないからな。当然の措置だ」

「しかしですね……」

「ふん。見逃してやっているんだ。もし文句があるなら直接来るだろう」

 

 しかしそうなってもヒカリは直接叩きのめすだろう。彼女にはそれだけの力を有している。

 それに、ギルド側が白の英雄が広島に居ると気が付いている事を向こうが知ればどうなるか。確実に言えるのは、ヒカリにとって好ましくない展開になるのは確実だ。

 

「手札はすぐ切るよりも、状況を見据えて使うべきだ」

「やれやれ。やはり貴女は外道で、悪魔で、魔王だ」

「失礼だな――(オレ)は、ただの恋する乙女だ」

「……貴女が?」

 

 思わず顔を上げて、まるで化け物を見るような目でヒカリを見る飛鳥。

 しかし彼女は鼻で笑うだけで、彼に視線は返さなかった。

 ただの質の悪い冗談か、と飛鳥はベルトの調整を行う。

 

「そういえば、お前は広島には帰らないのか?」

 

 ふとヒカリは顔を上げて飛鳥に尋ねる。

 

「此処の所忙しくてですね。違法ダンジョン探索者の検挙も多く、さらにあの件もありますし」

「はぁ。(オレ)も人の事を言えないが、ワーカホリックになるな。まだ若いのだから」

「年下の貴女に言われましても」

 

 飛鳥は困った様に苦笑する。

 S級ダンジョン探索者兼警察官である彼は、未だに16歳の少女であるヒカリが寝る間も惜しんで働いている事実に思う所があると常日頃から口にしている。

 

「大人に頼ってください」

「分かっている。だからこうしてドレスの調整を任せているんだからな」

 

 飛鳥が現在弄っているのは、ヒカリが戦闘時に使用しているベルト型のマジックアイテム――【Dress《ドレス》】。

 Dungeon(迷宮探索における)Reality(現実的で)Effect(効果的な)Support(補助探索)System(機構)。アルファベットの頭文字より、そう呼ばれている。

 名付け親は水無月シスイだ。

 

「まぁ、君の祝福(ギフト)の力はかなり特殊ですからねぇ」

ドレス(これ)のおかげで戦える。感謝しているさ」

「僕の祝福(ギフト)は皆さんと比べて単純かつ弱いですからね。創意工夫をして支えないと、S級だなんて名乗れません」

 

 何処か卑屈に語る飛鳥に、フッと鼻で笑うヒカリ。

 

「その割には、妹分や弟分の前では恰好を付けているらしいな」

「それはもちろん。あの子たちが僕の事を兄として慕ってくれるのなら、応えない訳にはいきませんからね」

 

 と、言いつつも飛鳥はハァッとため息を吐いた。

 どうやらその子ども達に対して悩みがあるらしい。ヒカリは、ドレスの調整をして貰っている手前そのままスルーできず、彼に問うた。

 

「どうした?」

「いえ。僕が不在の間に弟分がダンジョン探索者になったようで……」

「それは、ご愁傷様としか言えないな」

「それに妹分がかなり傷ついたようで。今は何とか落ち着いているようですが……。

 僕も仕事が落ち着いたら顔を見せに行こうとは思っています。しかし、彼らが賢い分それに甘えている様で、嘆かわしい限りです」

 

 保護者からも信頼されているだけに、飛鳥は現状を良く思っていないらしい。

 

「まだ高校生だから、僕としては青春を謳歌して欲しいのです。

 妹分は優秀な祝福(ギフト)を得ただけに、かなりギルドに使われている様ですし」

「なら、有給でも取って広島に行くが良い。手遅れになる前にな」

「……そうさせて貰います」

 

 ヒカリの言葉に、飛鳥は素直に従い再びドレスの調整の手を進める。

 

「ただ、妹分から面白いメールが来て安心はしました」

「安心?」

「ええ。どうやら新しい友達が……いや、恋のライバルが出来たのかな?」

 

 クスリと笑って、飛鳥は――ホムラからのメールの内容を思い出した。

 

 

 

 

 ハヤテは頬を膨らませていた。

 

「「「風緑ハヤテさん! これからもよろしくー!」」」

『なにこれ』

「なにって、お前の歓迎会だよ」

 

 土曜日の学校にて、普段授業で使っている教室を貸し切って行われるパーティー。

 しかし今回の主役であるハヤテはかなり不服らしく、いつにもまして無表情だった。

 それには理由がある。山よりも深く、海よりも高い理由が――つまりかなりくだらないという意味。

 

『デートだと思った』

「う゛。だから悪かったって」

『すけこまし』『ホスト』『純情を弄ぶヤリチン』

「そこまで言うか!?」

 

 しかしセンシも悪かった。自分に好意を抱く相手に、あのような誘い方をし、待ち合わせ場所と待ち合わせ時間を決めるのだから。

 そうなればハヤテでなくても勘違いするだろう。彼女は気合を入れて服を伸長し、美容院に行き、そして勝負下着をしっかりと着用して来た。

 そのまま学校の中に入った時は、センシはマニアックな趣味をしているなと思った。

 教室に入った時にクラッカーと共に出迎えられた時に彼女は全てを察した。

 ただのサプライズだった。ハヤテはキレた。

 

「ウケる」

『淫乱女』

「勘違い女」

「……!」

 

 美味しそうにジュースを飲むホムラだが、今日は珍しくハヤテに口で勝っていた。それが尚更にハヤテのストレスを上げていく。

 今日はハヤテの歓迎会の筈なのに、何故か主役者が苦しめられている。かなり謎だが、だいたい悪いのはセンシである。

 

「もう一度言うが、空我はデリカシーが無いな」

「ハヤテちゃんが可哀そうだよ~。あんな恰好までさせてさ。空我くんって意外とドSだよね~」

「なぁ!? これオレが悪いのか!? サプライズ仕掛けようってみんなで決めたじゃないか!」

 

 だからと言ってデートだと思わせるのはどうなんだ? とクラスメイト達の冷たい視線が突き刺さる。センシ自身はそんなつもりは全く無かったのだが。

 

「でもちょっと同情するかも」

『何故』

「……アタシも昔似た事あったから」

 

 その時の事を思い出したのか、ホムラは重いため息を吐いた。

 そう、あれはクリスマスだった。

 クリスマス数日前に、突如センシからクリスマスは空いているかと尋ねられたのだ。当然ホムラは空いていると即答し、その日の為に色々と準備をした。期待もした。でも年齢的に早いかな? と思った。いやイケる。イケねーよ。

 

 地域のボランティアだった。児童施設のクリスマスパーティーのスタッフとして呼ばれただけだった。

 ホムラは脱力した。泣きたかった。でも子ども達の笑顔で癒された。

 お礼にクリスマスケーキを貰った。美味しかった。色々と。

 

「空しいわよね」

「ん?」

 

 ハヤテは引っ掛かる部分を感じつつも、これ以上話を広めない事にした。また暴走して破廉恥な事を叫ばれても困るからだ。

 それにしても。

 彼女は意外に思っている。今回の歓迎会にホムラが参加している事に。勘違いでなければホムラはハヤテを敵視している筈だ。

 

「ホムラちゃんね、今回の準備すごく頑張ってくれたんだよ?」

「ちょっ!?」

 

 ハヤテの考えている事を察知したのか、シオンが囁く。

 ホムラはバラされると思っていなかったのか、慌てて止めようとするももう遅い。

 

「ホムラちゃんって普段憎まれ口叩いているけどツンデレさんなんだ~。お菓子とかもわざわざ空我くんから聞いて、風緑ちゃんが好きそうなのを買ってきているし」

「シオン!!!」

 

 顔を真っ赤にさせたホムラが叫ぶ。

 

「うむ。我が宿敵(とも)は優しい娘だ。わたしが遠征に行っている間、毎日安否の確認のメールを送ってくれていた。正直励みになった。ありがとう、ホムラ!」

「何でみんなの前でバラすのよ!!」

「ホムラちゃんそんなあざとい事してたんだ。イメージ通りだけど」

 

 他のクラスメイト達は、シオンと同じ考えなのかホムラに生暖かい視線を送りながら頷く。

 シスイの追撃により言い逃れできなくなったホムラは目をグルグルとさせて、そして自分をジッと見ているハヤテの視線に気づき……。

 

「う、うるさい……」

「ホムラちゃん可愛い~」

 

 顔を真っ赤にさせて俯くホムラを、シオンがニヤニヤしながら揶揄う。

 いつもの光景だった。シスイの真っ直ぐな言葉にホムラが照れて、その反応にシオンが笑って茶化す。

 センシはそんな彼女たちを優しい目で見て、そんな彼を見ているハヤテが尋ねる。

 

「そんなに大切なの? あの娘が」

「ん? ああ。昔色々あって笑わなかったんだアイツ」

 

 高校に入学した時は酷かった。シオンとセンシ以外には全く心を開く事無く、常に関わるなオーラを出していた。犬崎が空気を読まずに絡みに行っていた時は、教室は地獄のような空気だった。

 それを変えたのは、シスイたちクラスメイト達である。

 

「お前も何となく分かると思うけど、此処の奴らはノリが良くて、優しくて、人を放っておけない奴らばかりなんだ」

「それは……」

 

 彼の言葉には心当たりがある。ハヤテは、センシ以外と話すのが面倒だと言ってスマホを使ってコミュニケーションを取っているが……実際の所は少し違う。

 彼女の生い立ちはかなり特殊であり、それ故にハヤテは他者と関わるのを恐れている。

 理解されないから理解しない。愛されなかったから愛さない。悪意を向けれればその場を離れる。

 ハヤテはずっとそうして生きて来たし、そうする事ができた。

 

「無理にとは言わないけど、もう少しみんなと仲良くしてみてくれ」

「……ん。センシがそう言うなら」

 

 彼の言葉に、何処か戸惑いながらそう答えると、まるでタイミングを見計らった様にシスイがやって来た。彼女がやって来た方向を見ると、揶揄われ過ぎてキレたホムラがシオンを追い掛け回していた。

 

「ふっ。先日は助力感謝する風緑ハヤテ」

「……」

「しかし、流石はS級ダンジョン探索者だ。咄嗟に私の動きに合わせて連携する技量には感動すら覚える」

「……」

「故に――惜しい」

 

 なんか語り出した。

 

「貴様の奏でる風の戦慄は美しいが、それと同時に冷たい。聞く所によると、クラスメイト達との交流が何処か乏しいらしいな」

 

 センシは思わずため息を吐いた。

 

「風緑ハヤテ。孤立と孤高は違う。確かに戦場で最後に信じられるのは己なのかもしれない。だからこそ、日常の象徴とも言える愛すべき隣人――友の存在は、我々にとって必要不可欠だ」

 

 ハヤテはジッとシスイを見ている。

 

「――貴様の過去は詮索しない。こういう世界だ。人には人の物語がある。それを悪戯に吹聴するのは無粋だ。故に風緑ハヤテ――わたしの宿敵(とも)となり、これからの未来を切り開いていかないか?」

 

 そう言ってシスイはキメ顔でハヤテに手を差し伸ばす。

 ハヤテはその手を見て、隣のセンシを見て、最後にシスイの顔を見て。

 

『あなた』『だれ』

 

 今まで見た事がない人種に警戒し、スマホの音声で問い掛けた。

 センシは、せっかく説得したのに台無しにしやがった厨二病女を睨み付ける。シスイが言った事は既にセンシが今さっき伝えた事である。

 それを分かり辛い言い回しで、恰好を付けて、二番煎じに語る姿は痛々しかった。

 

 しかしシスイはそれどころではなかった。

 

「なに……? わたしを知らないだと……!」

「……?」

 

 本当に見覚えがなさそうである。それにシスイはショックを受けていた。

 

「ハヤテ。こいつは水無月シスイ。お前が出迎えた遠征チームの一人だ」

「……あ。一番後ろでうるさくて邪魔だった人」

「う、うるさ!?」

 

 バッサリと言葉で斬り捨てられてショックを受けるシスイ。

 どうも二人の間で認識にすれ違いが起きている。ハヤテ自身、シスイの技量には注目していたのだが、如何せんそれを吹き飛ばす出来事が続いた。

 故に。

 

『ごめんなさい』『覚えていない』『です』

「――」

 

 シスイは目立ちたがり屋である。人に注目される事が大好きで、その厨二病の言動からも中々忘れる事が難しい人種だ。

 だからこそハヤテに【覚えていない】と言われて、これまでに無い感覚を抱いた。

 

「そ、そんな筈はない! あんなに絶妙な連携を取った我々が!」

「……?」

「なんでだ!?」

 

 珍しいものを見たな、とセンシは内心思った。コミュニケーション能力の高いこの厨二病少女が、ここまで取り乱すのは珍しい。

 

「うう……! ちょっとこっちに来てくれ! 思い出させるから!」

「ん。別に構わない」

 

 ハヤテはセンシの言いつけを守る為なのか、シスイに着いて行った。

 ……シスイの問いかけに「分からない」「知らない」「興味ない」と答えるハヤテに、悲しそうな悲鳴が響いていた。かなりカオスだな、とセンシは見送った。

 

「ちっ。くだらねぇ」

 

 一方、一応参加していた犬崎は居心地悪さを感じたのか、早々に立ち去って行った。

 それをセンシは見送るが、言葉は掛けなかった。今はそっとしておくべきだ。

 

「よう親友。相変わらず見せつけてくれたな」

「お疲れ様空我くん。風緑さんを連れて来てくれてありがとう」

「白上。黛」

 

 いくつかのお菓子とジュースを手に、センシの元に来る友人二人。

 先生の金が用意したからか、結構良い物を持っている。

 センシは二人から貰ったお菓子とジュースを食べて飲みながら、一息吐く。

 

「お前らも準備ありがとうな。全然手伝ってなかったのは申し訳ない」

「別に良いよ」

「まぁ、貸しにしておいてやるよ。A級になって稼いだら奢ってくれ」

 

 そんな白上の言葉に、センシは少し驚く。

 

「オレ、A級目指すって言ったっけ?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「聞いてないね」

「そうか? なんか勘違いしたか?」

「いや。元々理由あって目指している」

 

 ジュースを飲みながらセンシは答えた。元より隠すつもりはなかった。

 

「へぇ。金が欲しいのか?」

「金じゃないけど、欲しいのはあるな」

 

 黒歴史だが。

 

「そうか。でも一攫千金を狙うなら良い話があるぜ」

「良い話?」

「ああ。今日の朝さ……」

「ちょっとユウマくん。それはC級ダンジョン探索者には言ったらダメな話だよ」

 

 意気揚々と語り出そうとした白上を黛が止める。

 止められた白上は、しまったと言わんばかりに表情に出す。

 ダンジョン探索者には専用のスマホが支給されているのだが、そのスマホにはギルドから様々な秘匿情報が公開されている。そしてその情報には階級毎に格差があり、中には共有してはいけない物もある。

 

「すまん空我。忘れてくれ」

「別に良いが……」

 

 何処か釈然としないながらも、センシは追及する事は無かった。

 そもそも彼はそこまで金銭に貪欲ではない。

 

「そのうち一般公開されるから、その時まで待っていてくれ」

「はいはい」

 

 その後、センシは友人たちと楽しい時間を過ごしていた。

 遠目に見ていたが、ハヤテもなんだかんだ楽しんでいるようで、センシは安心する。このクラスに馴染むのもそう遅くないだろう。

 

 ハヤテの歓迎会は、そのまま穏やかに終わった。

 

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