第2話です。
よろしくお願いします。
なんだこれ…
寝る前の自分には当然翼なんて生えてなかったし、ましてやヘイロー?と呼ばれるようなものも浮いてなかった。
羽川さんが東京を知らなかったことや、俺がトリニティ総合学園という学校を聞いたことがない以上、この世界は異世界みたいな扱いになるんだろう。
おかしいな… こういうのってトラックに轢かれたり死にかけたタイミングで行くもんじゃないのか?
神様なんて会ってないから特殊能力なんて貰ってないし…
「どうされましたか?」
〈あの… この羽とヘイローってなんなんですか…?〉
「ふむ… やはり記憶が混濁しているのかもしれませんね。
私たち生徒には時折、翼や尻尾、角や獣の耳を持っている生徒がいます。
なぜそんなものがあるのかはわかりません。
物心ついた時から当たり前にあるもので、周りにもそういう人がいましたから。
そしてヘイローはキヴォトスの生徒なら誰もが持っています。
…ただ、先ほども言いましたがほぼ全ての生徒は自分や他人にヘイローがあることは認識できても、その形や色などを判別することはありません。
タクマは鏡で自分のヘイロー見ていましたが、私たちが鏡で自分のそれを確認することも基本的には不可能です。
そうですね… タクマにもわかりやすいように言い換えればヘイローを呼吸と思ってみてはいかがでしょう。
誰もが当たり前のように行なっていても、目で見て空気の流れや吐息の色を確認することはできない…みたいな感じでしょうか?」
〈は、はぁ… なんとなくわかりました。
あと、さっき言ってたキヴォトスってなんですか?〉
「……思ったより重傷かもしれませんね。
キヴォトスというのは私たちが住まうココのことです。
連邦生徒会を中心に、数千の学園が自自治区を管理して成立している学園都市です。
…何か思い出しましたか?」
〈すみません、さっぱり…〉
羽川さんの中で俺は記憶喪失になったどこかの生徒だと思われているようだ…
記憶喪失じゃなくていきなり知らない世界に来ましたなんて言われても信じられないだろう。
俺とて同じことを言われても〈何言ってんだこいつ〉と思うのが関の山だ。
それにしてもキヴォトスね…
所謂中学2年生なので神話の本などを読み漁っていたりするのだが、キヴォトスってギリシャかどっかの地名じゃなかったっけ…?
トリニティってのも三位一体とかだったはず…
知らない世界でも知ってることがチラホラしてるな。
羽川さんも日本人っぽい名前だし…
やっぱりこれ知らないうちに異世界転生しちゃったのかな…
〈!? ど、どうしたんですか!?〉
「あ、すみません… なんだかかなり思い詰めていたようなので、落ち着くかなと思いまして…
嫌でしたか?」
〈嫌ではないです!!!! ないですけどちょっとびっくりしただけです!!!!〉
「なら良かったです。」
考え込んでいたら羽川さんに頭を撫でられていた。
年上のお姉さんに頭を撫でられるなんて役得すぎる。
…元の世界に戻ったら友人に自慢してやろうか。
「落ち着いてくれたみたいで何よりです。
とりあえず、今はゆっくり休んでください。」
〈ありがとうございます…〉
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【ハスミside】
ここキヴォトスでは銃を撃っても痛いで済む。
だからこそ皆当たり前のように銃を保持している。
けれど私はその子のことをその当たり前という認識ごと撃ち抜いてしまった。
彼の体を銃弾が貫通した時、取り返しのつかないことをしてしまったと思った。
私が人を殺してしまったかもしれないという自分勝手な罪悪感、そしてそれ以上に彼が死んでしまうかもしれないという大きな焦り。
救護騎士団に運び込まれた彼を待つ私に出来ることはただただ無事を祈ることだけでした。
正実の皆が慰めてくれる声が聞こえます。
“貴女は悪くない“
“ヘイロー持ちの人間に撃っても傷付かないのが常識だったから仕方ない“
“許されなくてもちゃんと謝ろう“
罪悪感で心が張り裂けてしまいそうでした。
「人を撃っておきながらそんな自分勝手なことを思うなんて」と耳元で囁く自分もいます。
「とりあえず、処置は終わりました。
幸い当たりどころが良かったようで命に別条はありませんでした。
ありませんでしたが重傷であることに変わりはないので彼の身柄はこちらで預かります。
我々はティーパーティに報告に行かねばなりませんので、貴女が彼を見ていてください。
ミネ、行きますよ。」
「私もですか?」
「患者が気になるのはわかりますが、ただ報告に行くだけですから時間は取らせませんよ。」
「…わかりました。
ハスミさん、よろしくお願いします。」
「わかりました。」
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そこから3日が経った。
彼は穏やかな寝息を立てている。
それにしても、男子生徒とは…
キヴォトスにおいて人間の男性とは都市伝説のような扱いを受けている。
目撃例がほとんどないからだ。
過去には一応いたらしいが、歴史書に一文のみ記載がある程度しか情報がない。
…今後、彼はどうなるのだろう。
自分を撃った人間がいる学校に保護などされたくないだろうし、トリニティは外聞こそ取り繕っているものの権力闘争の絶えない学校だ。
加えて、彼が男子生徒である以上それを何かしらに利用しようと考える連中も少なくはないと思う。
かといってゲヘナの連中など論外だし、アビドスにはそんな余裕があるとはとてもじゃないけど思えない。
彼のいた学校から連絡が入ればそれが1番だが、数千とある学校からトリニティを特定するのは非常に難しい。
…ミレニアムに預けることになるのだろうか。
彼を撃ってしまった罪悪感、彼がこの先目覚めなかったらという不安、彼の行末への憂鬱。
彼にとって何をしてあげるのが1番の幸せになるか。
最近はこのことで頭がいっぱいだ。
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それからさらに4日が経過した。
救護騎士団に方々が命に別状はないと太鼓判を押したのだから信用はしているが、ここまで目覚めないとやはり不安になる。
授業の合間を縫って保健室へ向かうのが日課になりつつある。
彼は目覚めているだろうか… ずっとそんなことを想いながら毎回保健室の扉を開いているのだが────
いつもと中の雰囲気が違うことに気付いた。
普段は聞こえてこない衣擦れのような音。
まさかと思いベッドへ歩み寄ると、今まで見ていた寝顔とは違って目をしっかり瞑り何かに怯えるように縮こまる彼がいた。
「…! もう、大丈夫なのですか…?」
どの口で… と自分でも思う。
彼にこんな傷をつけておきながらその心配をするなど…
体を強張らせていた彼はゆっくると目を開けると、彼は珍しいモノでも見たかのように私をじっと見つけている。
頭の上からベッドで隠れた膝のあたり、私の羽根など目に映る部分をくまなく。
…そんなに変だろうか。
確かに私は同年代の子たちよりも身長は大きいし、羽根に関しては先輩方の誰よりも大きい。
それに
〈うおデッカ…… あっやばっ〉
それに………… なんでも、ありません。
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緋翠タクマと名乗った男の子は一つ下… 中学一年生の男の子でした。
彼はここに運び込まれる前までの記憶がなかったらしく、私は記憶喪失を疑ったがどうやらそういうわけでもなさそうだ。
自分の名前ははっきり覚えているし、今日目が覚める前まで何をしていたかや自分の出身地などもはっきりと覚えていた。
肝心の出身地については全く聞き覚えのない土地だったから収穫はないに等しかった。
彼はまるでキヴォトスについて何も知らないようだった。
自身にも翼が生えているというのに私の翼を変なものを見たかのように質問してきたり… あとは、私のヘイローをしっかりと認識できていることには本当に驚いた。
キヴォトスに住まう生徒は皆等しくヘイローを持っているが、自他ともにヘイローを確認することはできない。
故に自分のヘイローを視認できる人はその人にとって運命の人であるという言い伝えがある。
所詮言い伝えでしかなかったが… 実例が目の前にいるため信じざるを得ない。 まあ、自分でも自分の物を確認できないからタクマがデタラメを言っている可能性もなくはないがキヴォトスについて知らない彼がそんな言い伝えをピンポイントで知っているわけがない。
そもそもそんな嘘をついたところで彼にメリットがあるとも思えない。
だから多分、彼には本当に私のヘイローが見えているのだろう。
…どうしましょう、そう思うととても恥ずかしくなってきました。
〈羽川さん、なんか顔赤いですけど大丈夫ですか?〉
「…大丈夫です。
すこし話過ぎましたね。
貴方が目覚めたら救護騎士団の方々をお呼びしなければいけないことを忘れていました。
すこしだけ待っていてもらってもよろしいですか?」
〈あ、はい大丈夫です。〉
「すぐに戻りますので。」
タクマにそう告げ、私は足早に救護騎士団の元へ向かった。
こんばんは。
というわけで第2話でした。
主人公君の状況説明していたら心情描写(?)が多くなってしまいましたね。
これからはもっと減っていくはずですので…
最近よく見るヘイローを認識できる人=運命の人説を取り入れてみました。
とても良い概念だと思います。
自分が知らないだけで設定として開示されていたら申し訳ないのですが、トリニティを中高一貫の学園という設定で行きます。
次のお話も順次投稿できたらと思います。