「報告が遅れてしまい申し訳ありません。
先ほど例の男子生徒が目を醒まされました。」
「そうですか、とりあえず最悪の事態は免れたようで良かったです。」
「…私のせいで、申し訳ありません。」
「それはもう言わない約束ですよ。
キヴォトスの住人は銃弾程度で傷つかないというのが世間の常識ですし、例外があるということにすら思いが至らないのは仕方のないことです。
人よりも弱いのを責め立てるつもりはありませんが、かといって貴方に責任があるとは思ってません。
…と、おしゃべりはこのくらいにしておきましょう。
今ホストを呼びます。
その間に彼のところへ行きましょう。」
「!?
なっなぜティーパーティを…!?」
「ハスミ、落ち着け…」
「委員長まで…!?」
「彼… お前が撃ち落とした生徒はキヴォトスでもほとんど目撃例のない人間の男だ。
こちら側が負傷させたとはいえ身元不明の人物であることに変わりはないからな。
それに、下手に部下と面会させて話がこじれたりしたら面倒くさいから自分が出向くと言って聞かないんだよ。
相変わらず豪胆というか…」
「は、はぁ…」
「付き合わされるこっちも身にもなってほしいものだが…
私とて女子高生なんでな。
男子生徒なんていう都市伝説が実在するなら見てみたいというのも事実だ。」
「い、意外とミーハーなんですね…」
「失礼だな、花の女子高生だよ。」
□□□□□□□□□
「タクマ? ハスミです。
入りますよ。」
〈本当にすぐでしたね…
えっと、後ろの二人が救護騎士団…?の人ですか?〉
「私と同じようなセーラーを着ている方は正義実現委員会の委員長で、ナース服のような制服の方が救護騎士団団長です。」
「どうも。」
「初めまして。予後良好みたいで安心しました。」
〈あー、治療してくれたのって貴方だったんですね…
ありがとうございました。〉
「いえ、これが私のお仕事ですから。」
「あー、起き抜けで非常に悪いんだが…
これから君にはうちのトップと話をしてもらう。」
〈え…〉
「悪いようにするつもりはない… と思う。」
「彼女が何を話すつもりなのか、私達も知りません。
アドバイスなどは出来かねますのでご了承ください。」
〈いきなりそんなこと言われても…〉
コンコンと扉をノックする音が聞こえる。
委員長が扉を開けると、ティーパーティの現ホストがそこに立っていた。
□□□□□□□□□
【タクマside】
なんでいきなりトップが…
いやでもトップって言っても学校のトップだから校長…?
校長なら普通か。
自分の学校にいきなり身元不明の誰かが運び込まれてたらそりゃ気にもなるわな。
あれでもさっき羽川さん連邦
連邦政府とかじゃないの普通。
都市の運営自体学生がしてるってことは学校のトップも生徒会長なのか?
ポカンとしていると真っ白な服と翼をを携えた女性がこちらへ歩いてきた。
「初めまして。
私はトリニティ総合学園ティーパーティ所属の☓☓☓☓です。
現ホストです。」
〈あ、はい。
初めまして緋翠拓真と申します。
それでその、ホストっていうのは…?〉
「私達トリニティは生徒会長が3人おり、持ち回りでトップを担当しているのです。」
〈あっ… そ、そうだったんですね…〉
「さて、回りくどいのはあまり好きではありませんので単刀直入に聞かせてもらいますが…
タクマさん、貴方は自分の身分を証明できるものを何かお持ちではありませんか?」
〈あー… スゥー… ない、ですね……〉
「ふむ… それは、困りましたね。
では、ご自分の出身地や所属している学校名などは分かりますか?」
〈あ、それはさっき羽川さんに調べてもらいました。
けど、何もヒットしなかったみたいで…
なので…… もしかしたら記憶が混乱してるのかもしれないなって…」
「…ハスミさん。
合ってますか?」
「は、はい…」
「ハスミ、お前そういえばこの子が自己紹介する前に名前呼んでたよな?」
「保健室に入る時、バッチリ呼んでましたね。
それに、普段なら5分程度で戻ってくるのに今日は30分ほどかかってましたね。」
「へぇ…
私、その報告は受けていませんね。」
「あ、あの…… 皆さん、どうしてこちらににじり寄ってくるんですか?」
「タクマさん。」
〈はい?〉
「私達、ちょっとばかりハスミさんとお話をしてまいりますので少しだけお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
〈だ、大丈夫です…〉
「そんな… タクマ、ちょ… たすけ…」
羽川さんは現ホストさんと委員長さんと団長さんに引き摺られて保健室を出ていった。
何だったんだろうアレ。
有無を言わさぬ圧力を感じたから思わず送り出してしまったけど…
□□□□□□□□□
「申し訳ありませんタクマさん。
お待たせいたしました。」
〈いえ、自分は大丈夫です。〉
10分ほど経っただろうか。
なんだか少しやつれたような羽川さんと対照的にホクホク顔の3人が戻ってきた。
なんだか羽川さんから少しばかり恨みがましい視線を感じるような気がするが、多分気のせいだろう。
「話を脱線させてしまい重ねて申し訳ありません。
先ほどの話の続きなのですが、キヴォトスにおいて身分証が無いというのは戸籍がない状態と言っても過言ではありません。」
〈……マジすか?〉
「マジです。
身分証というか、学生証ですね。
ご自身の物をお持ちでなく、また所属校の存在が現状確認できない状態にあると思っていてください。
学生証がない場合、スマホなどの契約審査や銀行口座を持つことができない上に病院などでも十分な医療を受けられない可能性があります。」
〈わァ…あ…〉
「泣いた…」
「泣きましたね。」
「そこで貴方に提案があります。
貴方さえ良ければこのトリニティに入学してみてはいかがでしょう?」
「そんなことだろうと思ったけど…」
「まさかその通りとは。」
「本気で言っているのですか!?」
「無論本気ですよ。
お二人の様子を見るにすでに和解は済んでいるようですし、そのあたりの蟠りは解消できているのでしょう?」
〈俺自身、撃たれた記憶がなくて気付いたらここのベッドだったんで…
わき腹は確かに痛いから撃たれたのは事実なんでしょうけど、記憶がないことに対してあんま怒れないし別にいいかと思って。〉
「そう言ってくれると上司である私達も気が楽になります。
もしもそのあたりが解消できていないのであれば、顔を合わせる可能性も考慮して別の学校という案もありましたが…
そちらの案は必要ありませんね。」
〈ちなみになんですけど、学籍がない人ってどうやって暮らしているんですか…?〉
「そうですねぇ… ブラックマーケットと呼ばれる地域でチンピラや不良として不安定な生活をしています。
もしくは非合法の企業に身を寄せている者もいると聞きますよ。」
〈それ断れないやつじゃないですか……〉
「いえいえ、私達は貴方の選択を制限する理由も権利も持ち合わせてはいませんよ?」
ココで断ったところでこの人たちは何かリアクションするということはないだろう。
ブラックマーケットにゴロツキが一人増えるだけだし。
羽川さんだけやたらとアワアワしているけど、俺にとってもここで断るデメリットもない。
〈…トリニティに入ります、俺。〉
「…ふふ、では契約成立ということでよろしいですね?
ああ、契約と言っても別に貴方に何かを強要しようということではありませんよ?
トリニティの生徒として入学することを認めます。」
「ウチに来たなら歓迎するぞ。」
「救護騎士団も歓迎しますよ。」
〈あはは… 普通の生徒じゃダメですかね…?〉
「ふふふ、何処の部活に所属するもしないも貴方の自由です。
好きに決めてしまって構いませんよ。」
というわけで第3話でした。
最初にハスミと出会って救護騎士団に救護された段階でお気づきの方もいたと思いますが主人公君はトリニティ所属となります。
どの陣営に入るのか、または入らないのかは次回以降のお話で。
それでは。