「それにしても… 随分変わった翼なのですね。 貴方のソレは。」
〈そうなんですか?〉
「翼を持つ生徒はトリニティに多く、ゲヘナにも稀に存在します。
トリニティ生徒に見られる翼は鳥類の羽根を模しており、ゲヘナはコウモリの羽根に似通った形状をしているのですが… タクマさんのものはどちらとも似ていないのです。
拡げて見せることはできますか?」
〈やってみますね… ん゛ん゛ん゛… なんか、開かないです。〉
「わずかに動いていますから力の入れ方には問題ないようですね。
すこし触ってみても?」
〈大丈夫です。〉
「それでは失礼…」
「やはり我々のものとは違うようですね。
表面は金属質で鱗のようになっています。
上手く動かないのは固着してしまっているからでしょう。
…タクマさん、一度立ち上がってみてもらえますか?」
〈わかりました。
よっこいせ…〉
「…ずいぶん大きいと思ってはいたがこれほどまでとはな。」
「身の丈以上にでかい翼は初めてみました。」
「このまま引き摺ってしまうと廊下が傷だらけになってしまいますね…
早急に表面の固着した鱗を剥がして動かせるようにして頂かなくては。」
「羽を動かすタイミングに合わせてアタシとハスミで両側から思いっきり引っ張れば剥がれ落ちるんじゃないか?」
「…ですが、掴めそうなところがないような…
刃物に転用できそうなくらい鋭いですよ。」
「防刃グローブならここにあったはずです。」
「…どうしてそんなものが保健室にあるのかはさておき、委員長の案で行こうと思うのですがよろしいですか?」
〈わ、わかりました…
現状自分じゃどうにもできないので…〉
「…よし、ハスミ。 準備は?」
「問題ありません。」
「タクマ、行くぞ?」
〈一思いにやっちゃってください。〉
「わかった。
3つ数える。
3… 2… 1… そらっ!」
「ふんッ!!」
□□□□□□□□□
【ホストside】
委員長の目論見通りでした。
お二人が両側から引っ張り、タクマさんが翼を広げると、ガラスが砕けたような音と共に表面の燻んだ色の鱗が弾け飛び、中から新しい翼が出てきました。
黒曜石のように黒く煌めき、鋼鉄のように冷たく重い鱗を纏う非常に筋肉質に発達した翼がありました。
「タクマ、どうだ? 動かせるか?」
〈……はい、ちゃんと感覚がありますしさっきよりも全然自由に動かせます。〉
「ふむ… やはり我々に生えてるものとは根本的に違うようですね。
ここまで筋肉質な翼は見たことがありません。
もしかしたら羽ばたいて空を飛べるかもしれません。」
〈え、皆さん飛べるわけじゃないんですか?〉
「個人差はありますが、多少浮かんだりすることができる程度ですよ。
それも、私くらいのサイズでないとかなり難しいですが…」
「ハスミさんは翼も大きいですが、背も高いですから。
私くらいのサイズにハスミさんのがあれば飛べるかもしれません。
もしくは小柄な体躯であれば。
ゲヘナには小柄かつ翼も比較的大きな生徒がいるようですが、それでも滑空する程度が限界でしょうね。」
「しかしこれ、翼というよりも肩甲骨あたりから生えた3本目4本目の腕と称した方がよいのでは?」
「んー、アタシもそっちに賛成。
いや、翼でも腕でもどっちでも良いし腕だからどうってことはないんだけど。」
〈腕…ですか?
あの、鏡とかあります?〉
「姿見1枚なら。」
「団長、それを持ってきてもらえますか?」
「わかりました。」
そう言って団長は事務室へ向かった。
確かに翼というよりも翼幕のある大きな腕のようにも見えますね。
それに、鳥や蝙蝠の羽というよりも…
「空想上のドラゴンのような翼… 腕…? のように見えますね。」
〈ドラゴン…ですか。〉
「私も実物を見たことがあるわけでないのですけどね…」
「見たことあったら逆にびっくりするよ。」
「持ってきました。
見えますかタクマさん。
…タクマさん?」
「鏡を見た途端フリーズしてしまいましたね。」
□□□□□□□□□
【タクマside】
ようやっと動かせるようになった翼を見て俺はフリーズした。
『自分たちのものと違う』
『金属質の鱗が生えてる』
『翼っていうか腕』
先輩方が口々にそう言うのにも納得した。
だってこれ翼で腕だもん。
まあ腕っていうか脚なんだろうけど。
これバルファルクの翼脚みたいじゃね?
なんで?
なんでモンハン?
いや厳密にはバルファルクじゃねえわ槍翼5本あるし。
アンイシュワルダの翼脚に槍翼無理やりくっつけたみたいになってるし、こうしてみるとマジでデカい腕だな。
ていうか、重いなこれ。
さっき起き上がれなかったのこれのせいかよ。
これからこんな重いもの背負って生活してかなきゃいけないの…?
やだなぁ…
「あ、なんだかとてもげんなりし始めましたね。」
「委員長、最近ではシナシナになると言うらしいですよ。」
「どっちでも良いってそんなこと…
タクマ大丈夫か?」
〈え、ええ… まあ…
確かに掴むところがないくらい鋭いですね…
背中から凶器生やして生活してかなきゃいけないのかと思うと嫌になりまして…〉
「そういえば今までの記憶があやふやなんでしたね。」
「…タクマ、剥がれた鱗借りていいか?」
〈別に良いですけど何に使うんです?〉
「ちょっとな。
ハスミこれ持ってろ。」
「わかりました。」
「ちょっと待ってください委員長。
まさかとは思いますが私がいるのに保健室で銃をぶっ放そうとしているわけではありませんよね?」
「あ…
すまん。
外でやってくるわ。 ハスミ行くぞー。」
「は、はい。」
〈…あの、さっきの羽川さんの発言といい気になってたんですけどトリニティって射撃が有名なんですか?〉
「トリニティでは…というよりもキヴォトスの生徒は誰もが銃を持ち歩いていますよ。
撃たれたところで痛いで済みますからね。」
〈え…〉
「ちなみに銃を持たずに出歩くことは街中を裸で歩くよりも恥ずかしいこととされています。」
〈えぇ…〉
治安組織で射撃訓練てなんか警察みたいだな…
「だからこそ、ヘイローを持っているのに弾丸で大怪我を負った貴方の存在が不思議なんです。
体の頑丈さにも個人差があります。
スナイパーライフル程度までは耐えられる方やハンドガンで精一杯な方、こちらはかなり数が限られますが戦車の砲弾等も無傷な方とか。
その理由まではわかっていません。
ヘイローがなんらかの加護を与えているから体が頑丈なのかもしれませんが、私たちがヘイローについて知っていることなど極々少ないですから。」
〈ハンドガンで精一杯って言っても、俺みたいに貫通したりはしないんですよね?〉
「はい。
めちゃくちゃ痛い程度です。」
〈痛覚は普通にあるんだ…〉
「精一杯と言っても死んでしまうわけではありません。
血も出ますし青痣になったり気絶したりはしますよ。」
〈そう言われると、やっぱり俺って普通とちょっと違うんですね。〉
「前線に立つだけが仕事ではありませんから。」
〈既に何かしらの仕事をさせられる前提で話してません?〉
委員長と羽川さんが戻ってきた。
委員長はなんだか少し興奮したような様子で俺たちに話しかけてきた。
「コイツの鱗、アタシの銃弾を受けても傷一つつかなかったぞ!
ほれ!」
「あら… 本当ですね。」
「へぇ…」
〈俺の鱗ってそんな硬いんだ。〉
「タクマ、お前ウチに来いよ。
そんでスナイパーやれ!
アタシの銃弾で傷付かないなら大抵の物は効かないし、前衛にも立たないから比較的安全だぞ!」
「良いと思いますよ。
正実はどの派閥でもない中立だから軋轢は生まれにくいですし。
まあ便宜上ティーパーティの部下扱いにはなりますが。」
「救護騎士団(ウチ)じゃないのは残念ですが、それが1番丸く収まるでしょう。
それに委員長(アナタ)の元にいる人間にちょっかいかけるような人はそうそういないですし。」
「タクマ、どうだ?」
〈そういうことなら… ぜひお願いします。
あと多分想像はついてると思いますけど銃を打つのも体力も全部素人以下だと思うのでお手柔らかにお願いしますね…〉
こうして流れるように正実の所属となった。
(そういえばサラっと翼に触ってまいましたね…)
(そういえばサラっと翼掴んじゃったな…)
(そういえばサラっと翼を握ってしまいましたね…)
(そういえばサラっと翼に触れてましたね彼女達)
((((まあなんも気にしてなさそうだしいいか………))))
主人公君の翼は厳密にはバルファルクの物ではなく、あくまでソレに非常に近しい形状というだけでモンハン要素はありません。
主人公君がパッと見でそう見えただけということです。
このキヴォトスでは翼や尻尾や角は基本人に触らせることはないようなものという設定で行きます。
便乗しました。
サツキの実装が予告されましたが今から楽しみですね。