俺は皆と同じようにヘイロー持っているのに皆よりもクソザコなので、人よりも多く訓練しないと冗談抜きで死んでしまう。
より早く敵を倒さなければそれだけ被弾する確率が上がるし、回避率を上げるためにも体力や敏捷性の底上げが必須である。
攻撃が通らないくらいに頑丈な翼はあるものの、目視できなければ反応できないので基本的には前方以外を防御するのは難しいし、何よりもデカいので防御に回すと自分自身の視界も遮られてしまう。
翼で弾丸を弾き飛ばせたりできればいいのだがそんな曲芸じみたことができれば苦労しない。
つまるところこのまま戦場に出てもカモにされるだけなのだ。
ただの喧嘩ならいくらでもやりようはあるけどここは銃社会。
〈さながら気分はコビーかな…
コビーほどの志もないけどさ…〉
ちなみにONE PIECEの世界ではないので覇気なんてものはない。
まあ、この前ホストが話していたように先天的に武装色でも纏ってるのかよってくらい頑丈な生徒もいるらしいけど。
…覇気か。
ONE PIECEの世界に転生してたなら覇気の練習とかも出来た…出来たかな。
出来なさそう。
師匠とか多分いないし。
ちなみにこの世界にはチャクラも霊圧もない。
図書館とネットで調べたけどそんなものは全くヒットしなかった。 というかそもそも作品からして存在してなかったわ。
詰んでね?
まあ期待はしてなかったけどさ。
地道に訓練するのは別に良い。
けど、人よりも劣ってるから人以上に訓練するのだけに時間を使うのは嫌だ。
せっかくの学生生活が訓練だけで終わるなんて溜まったもんじゃない。
なんかあるかな強くなる手段…
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昨日はそのまま考え込みながら訓練場で寝落ちしかけてしまった。
1日経って考えを少し整理した。
昨日思い付いた覇気もチャクラも霊圧もその作品固有の能力だ。
この世界の生徒はヘイローを持つことによる恩恵があるが俺にもそれがあるのかはわからないので、不確かなものを頼りにするのはよろしくない。
その時、唐突に閃いた。
鬼滅の刃に出てくる呼吸の概念は作品固有の能力っぽいけど元を正せば人間が行う普通の呼吸法だ。
もしも真似できるとしたらそれしかない。
中学生男子である以上刀へのロマンも止めることなどできないし、ないと分かってるモノに期待するよりあるかもしれないものをワンチャン期待する方がよっぽど良い。
問題点を挙げるとすれば、俺が呼吸法の練習の仕方を知らないことと、銃社会のキヴォトスで刀剣がどれほど役に立つのかだ。
とりあえず俺は普段の訓練と並行してやり方もわからないまま呼吸法の練習を始めることとなった。
昼間…は時間ないし、夜しかないか…
秘密の特訓みたいでワクワクしてきたな。
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その後2ヶ月ほど経ったが…
〈いやーキツイっす。〉
漫画読んでたとはいえ方法が事細かに書いてあるわけじゃないので習得とか普通に無理だった。
肺はおそらく強くなったと思うけど、○○の呼吸とか全集中、その上の常中とか出来る気がしない。
全集中とかやろうとしてもただの深呼吸にしかならん。
ただの呼吸のはずだと思ってたけど作品固有のpower(流暢な発音)だったか…
ちなみに、わからないなりに呼吸の練習してたからなのか体力は物凄く付いた。
「夜遅くに外を出歩く生徒がいると聞いて来てみましたが、やはりタクマでしたか…」
〈んぇ? あっ羽川先輩。
お疲れ様です。〉
「お疲れ様ですではありません。
何をしているのですかこんな夜遅くまで。」
〈自主練ですよ自主練。
俺はみんなよりヨワヨワですから普段の訓練だけじゃ足りないと思って。〉
「それにしたって限度があるでしょう。
もうすぐ日を跨いでしまいますよ。」
〈あれ… もうそんな時間だったんですか…
戻らないとですね… イテテテ……〉
「まったくもう。
ほらタクマ、手を。」
〈あはは、ありがとうございます…〉
「いつもこうなんですか?」
〈まあ、そうですね。
流石にこんな遅くまではそうそうありませんけど。〉
「どおりで貴方1人成長スピードが早かったんですね。
…あんまり無理をしないでください。
貴方はまだ中学1年生なんです。
これから強くなれるタイミングはいくらでも来ますから。」
〈んー、そうかもしれないですけど。
せっかくの学生生活を全部訓練で消費するのは勿体無いです。〉
学生生活を謳歌してる最中にキヴォトスに来てしまったわけだし。
「それは…そうかもしれませんが。
もう少し、肩の力を抜いても良いのではないでしょうか?
それとも、周りを信用するのは気が引けますか?
…こればっかりは私たちではどうしようもないですが、唯一の男の子である貴方が肩身の狭い思いをしているのは認識しているつもりです。
もし、それが原因だとするなら私には謝ることしかできません。」
〈ああいやそういうわけじゃないです。
いや肩身の狭い思いをしているのは確かにそうなんですけども。
さっきも言いましたけど、俺はヘイローがあるのに皆よりも頑丈さが遥かに劣ってます。
だから少しでも強くなってそれをカバーできるくらいにならないと足引っ張っちゃいますし。〉
「そんなつもりは」
〈周りがどう思ってるかじゃなくて、あくまでも自分の決意表明みたいなもんですよ。
…でもまあ先輩に心配かけるのは申し訳ないので、自主練は程々にします。〉
「…そうしてくれると助かります。
後輩が無理をしているのを黙って見ているしかできないのは、心苦しいです。
まして、それが貴方なら尚更です。」
〈うっ… 善処します。〉
「ふふっ… それはしないというお約束ですか?
さて、帰りましょう。」
〈ウッス。〉
【ハスミside】
ここ最近、トリニティ内で消灯時間を過ぎた後に外で人影を見たという報告がポツポツと上がってきていました。
毎日のように報告が上がってくれば如何に無害といえど一般生徒たちに不安が広がるとの判断が下り、正実へ捜査依頼が届くのにそう時間はかかりませんでした。
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私たちがその人影の正体を見破ることは困難を極め、人目につかないところにいるのかトリニティ中をくまなく探索してもその正体どころか手がかりすら見つからなかったにも関わらず、捜査の隙間を縫うかのような場所で目撃例が上がっていたりと我々の頭を悩ませていました。
初めて報告が上がってから数ヶ月経ち、無害ゆえにそういうモノだと認識され始めたため捜査依頼の取り下げが決まりましたが、私には一つ気がかりなことがありました。
トリニティ…いやキヴォトス唯一の男子生徒であるタクマのことです。
入部した直後こそ息も絶え絶えでついていくのも精一杯といった具合だったのに、ここ最近劇的に改善されており、リコイル制御などを始めとした技術面や体力・足腰が比べ物にならないくらいに強化されていたのです。
…正実の訓練は他よりもキツイですが、そんなにも早く改善されるものでしょうか。
日中の訓練以外にも自主練をしているのだろうと思ったが、意外と忙しい私たちにそんな余裕は基本的にありません。
夕食の後の自由時間や消灯後を除けば… の話ですが。
生傷の絶えない体に急激に改善された体力と技術、彼が入部して少ししてから発生した人影の噂。
既に捜査は取り下げられましたが、私は一人で宿舎の外へ繰り出しました。
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やはり私の考えていた通りだったようで、そこにいたのは間違いなくタクマでした。
けれど、私の目に映る彼の姿は全く想像しないものでした。
見たことのないステップを刻みながら舞うように踊る姿はとても美しかった。
どれほど見ていただろうか、気付いたらタクマは息を切らしながら横たわっていた。
「夜遅くに外を出歩く生徒がいると聞いて来てみましたが、やはりタクマでしたか…」
【タクマside】
「そういえば、ここ数ヶ月消灯後に人影を見掛けるという噂を知っていますか?」
〈あー、なんとなくは。〉
「それ、貴方のことかもしれませんね。」
〈やっぱり俺でしたかね…?〉
「状況証拠的には、ですが。
そこそこの人員が割かれて探索が行われたのですが、どうやってその目を掻い潜ったのですか?」
〈そんなつもりは一切なかったんですけど、なんとなく人が来そうにないところを転々としてただけですよ。〉
「貴方にはそういう能力があるのかもしれませんね。
時折いるんですよ。
私の同級生のツルギはわかりますか?」
〈剣先先輩ですか?〉
「はい。
彼女の戦闘能力は群を抜いたものがありますが、その中でも一際目立つのは彼女の再生力です。
怪我をしても瞬く間に傷が治っていくんです。」
〈そんな超能力みたいな。〉
「実際にありますよ。
まあ詳しいことは私も知らないんですけどね。」
〈得意な能力か…
隠密…とかですかね?〉
「かもしれませんね。
そうそう、明日委員長に報告に行きますからね。
自主練をしていたのは素晴らしい心がけですが、消灯後に抜け出していたのは良くないことですから。」
〈クゥーン〉
「タクマ。」
〈はいタクマです。〉
「さっきの舞(?)、また見せてもらってもいいですか?」
〈まだ人に見せられるほどのクオリティじゃないので…
本物はもっともっと凄いですし…〉
「では、見せられるくらいになったらで構いませんので。」
〈そういうことなら…〉
そんな簡単に会得されたら困りますので…
いずれ習得はする予定ですが、技を出したりとかの予定はありません。
ちなみに主人公君が宿している神秘の正体(?)はもう決まっています。
そして主人公君の自主練が見つからなかったのは隠密的な能力によるものではありません。
それではまた次回。