第10話
【ハスミside】
「ところで… お二人はどういう関係っすか?
タクマが私達以外の人といるのってあんまり見たことないんすけど。」
〈見たことないっていうか初だもん。
朝ご飯食べに出かけたらたまたま相席になって、そのまま友達になって買い物してた。〉
「ふーん。
つまりはデートってわけっすね?」
「タクマが… デート……」
「えっと… あはは… そんなところでしょうか。」
タクマが私達以外の生徒と交流を持ったことは嬉しいですが、デートまでしているとは……
なんでしょう。
なんか、モヤモヤしますね。
弟のように可愛がっていた存在が急に彼女を連れてきたような感じでしょうか。
いや、そもそもタクマは弟でもないですしハナコさんもタクマの彼女というわけではないのでしょうが。
「妬けちゃうっすねぇ。
私達はこうしてあくせく働いてるのに。」
〈仲正さんは昨日お休みだったでしょ。
その間俺もあくせく働いてたよ?〉
「じょーだんすよじょーだん。
それにしてもずいぶん学園から離れたところにいたけどどこに行ってたんすか?」
「郊外にある喫茶店に行った後に私のお買い物に付き合ってもらってたんです。
○○○○って喫茶店なんですけど、知っていますか?」
「ああ、聞いたことあるっす。」
「確かそちらはジャンボパフェが有名なところでしたっけ。」
〈ジャンボなのはパフェだけじゃなかったですけどね。
パフェも美味しかったですよ。
ねー?〉
「うふふ… とても美味しかったですよ。
学園周辺の店舗よりも少し値は張りますが、それに見合うだけのクオリティとボリュームだったので、普段あまり食べる方ではないのですが完食してしまいました。」
「そんなにですか…
そこまで言われると気になりますね。
イチカ、次の休みに行ってみましょうか。」
「賛成っす!
お二人もどうっすか?
4人もいたら色々シェアとか出来そうですし。」
〈いいですね。
めっちゃメニュー多いからそれでも制覇するまではしばらくかかりそうですけど。〉
「あ、えっと………
お気持ちは本当に嬉しいのですが……………」
「イチカ、ハナコさんにも予定がありますしあまり無理を言ってはいけませんよ。
申し訳ありませんハナコさん。」
「いえ!
誘っていただけたのは本当に嬉しいので…
タイミングがあったらまた誘ってくれると嬉しいです…」
「もちろん!
あ、それじゃあモモトーク交換しましょうよ!
ほら、ハスミ先輩も!」
彼女…浦和ハナコさんの立場を考えれば仕方のないことだ。
こうしてタクマと共に卓を囲んだということすら驚きなのに。
こればっかりは私達や彼女自身でもどうすることはできない。
「よし!
これでいつでも連絡できるっすね!」
「……ありがとう、ございます。」
「あれ? なんかめっちゃ嬉しそうっすね。」
〈仲正さん、浦和さんてボッt「えい。」ガッッッッッッッッッ!!!!!!〉
何か余計なことを言おうとしたタクマの喉をチョップして黙らせるハナコさん。
会ったばかりのはずですが、相性は悪くないようで良かったです。
「ふふふ… ガッッッッッッッッッ!!!!!!って…
すごい変な声っす…」
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「タクマさんも大丈夫みたいですし、私はそろそろ行きますね。
〈また遊びましょ。
今度は仲正さんも連れて。〉
「…ええ、その時を楽しみにしています。」
「そうっすね。
私もショッピングに付き合ってもらうっす。」
「…ハナコさん。」
「はい?」
「もし何か困ったことがあったら、遠慮なく頼ってくださいね。」
「…ありがとう、ございます……」
こうしてハナコさんは保健室を後にした。
一応、二人にも話しておいた方がいいでしょう。
彼女の友人であるなら…
「二人とも、少しお話があります。」
「「OHANASHI……?」」
「違います。」
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何から話したものでしょうか。
彼女…浦和ハナコさんは貴方達と同学年でありながら、非常に聡明です。
…待ってください。
私の言い方が悪かったです。
別に貴方達を馬鹿だと言っているわけではありません。
……コホン。 話を戻します。
彼女は年齢にそぐわぬ頭脳を持ち合わせています。
中学1年生でありながら高等部の問題を難なく解答できるほど勉学に精通し、非常に豊富な知識を有しています。
頭の回転も凄まじいものらしく、チェスでも相当な腕前だとか。
そして、そんな彼女だからこそティーパーティの高等部の者達は目を付けたのです。
これは又聞きでしかないので真偽の程は定かではありませんが、各派閥が彼女を自陣に引き入れようとすでに暗躍しているそうです。
タクマがこの前あった現ホストは覚えていますか?
あの方はフィリウス分派のトップですが、彼女自身がそういう指示をしているわけではないみたいですよ。
これは貴方達も知っているとは思いますが、ティーパーティの派閥は基本的に険悪ではありませんが友好的な関係でもありません。
相互不干渉とでも言いましょうか。
そんな派閥がこぞって彼女を取り込もうとするものだから、相互不干渉であるはずの派閥間で若干の不和が生じ始めています。
…ええ、イチカの言う通りです。
ただ一人の少女のために、です。
さらにはそこにシスターフッドも介入しようとしているという噂まであります。
シスターフッドはその成り立ちや普段の行動が基本的に詳らかにされていない組織です。
彼女達の動きが読めない以上派手に動くことができないため互いに牽制しあっている程度で済んでいるといったところでしょうか。
…ああ、私たちにはそういう動きはありませんよ。
正実は治安維持のための組織ですので、彼女の持つ能力は無くても困らないですから。
もっとも、彼女が正実で活躍できるほどの実力を持っていたなら話は変わっていたでしょうけど。
形式上ティーパーティ傘下という位置付けではありますが私達は所謂無派閥ですから、政には基本的にノータッチです。
…ええ、
私も先輩から聞いただけですからここまで念押しされている理由は分かりませんけどね。
いずれわかるとだけ言われたので。
少しだけ話が逸れましたね。
色々な派閥から声を掛けられ勧誘されているのです。
それも上級生である高等部の方達から。
…その反応が返ってくるだけで十分です。
会ったこともない見知らぬ上級生からいきなり自陣に勧誘されてその頭脳を使ってくれなんて言われても彼女に取っては迷惑以外の何物でもないでしょう。
しかも、ここはトリニティです。
この意味がわかりますよね?
少しでも自陣に引き入れる確率を上げるために他派閥に対する根も葉もない噂話やありもしない悪義をでっち上げたりと悪い方向に話を傾けて認識を歪めようとしている人達がいることも報告に上がっています。
自ら望んだわけでも無く、自らの人格が望まれているわけでも無く。
その能力を支配下に置こうとする者達とトリニティの汚い部分を否応無しに見せ続けられれば彼女の心はやがて擦り切れてしまうでしょう。
…だからこそ、頭脳ではなく浦和ハナコという個を見て接した貴方達に心を開いたのだと思います。
二人とも、これから彼女に接する時は正実としてではなく緋翠タクマ、仲正イチカという個人として接してあげてください。
私は彼女ではないので全てを理解することはできませんが、それだけできっと彼女の心は楽になると思うのです。
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〈羽川先輩、一つ質問なんですけど。〉
「なんですか?」
〈今話したこと、別に羽川先輩に言われるまでもなく友人として付き合っていくつもりではありましたけどそれはそれで問題だったりしません?
3つの派閥とシスターフッドから勧誘されている生徒がどこの派閥にも属さない正実の人間とばかり付き合いがあるって。〉
「あ、それ私も気になったっす。
私もタクマもそんな気は一切ないでしょうけど、端から見たらハナコさんは正実を選んだとかありもしないこと言われたりしないっすかね…?」
「敢えて言わずに黙っていましたが…
そこに辿り着けるなら問題ないでしょう。
直接会ってというのも頻繁には難しいと思いますが、先ほど交換していたモモトークでなら人目を気にせずお話できますから、多少はハナコさんも楽になるんじゃないかと思います。
…ハナコさんからしたら、余計なお世話かもしれませんが。」
「その辺りはやってみないとなんとも言えないっすよね〜。
まあ、迷惑だと突っぱねられない限りはしていくつもりですけど。
私は友達だと思ってるんで。」
〈右に同じですかね。
…俺たちとの付き合いを突っつかれて浦和さんに迷惑かかるなら離れるしかないのは辛いですけど、それが浦和さんのためなら仕方ないですし。〉
「……友達のためにそこまで頭を悩ませられる人が後輩で、私は誇らしいです。
これが杞憂で済めばそれが1番なんですけどね。
…さて、イチカ。」
「はい?」
「さっき私を笑いましたよね?」
「」
「お話、しましょうか?」
「ちょっ! 待って欲しいっす!
なんでタクマは対象外なんすか!?
タクマだって笑ってたじゃないですか!?」
「?
怪我人にそんなことするわけないでしょう?」
「それは確かにそうっすけど!!!!!」
「では行きましょうか。
タクマ。」
〈はっはい。〉
「よく頑張りましたね。
ですが、無理はしないでくださいね。
しっかり養生してください。」
〈あ、はい。〉
「よろしい。
イチカ、行きますよ。」
「うわああああ〜〜!!!!!
なんでーーーーーーー!!!!!!!!囧」
調べた限りではハナコの中学時代の話とかなかったので実はその頃からこんなこともあったんじゃないかなという話です。
というか私の作品ではそういうことにしておいてください。
ハナコの心情についてはまたいずれ書こうかなと。
一応年内最後の更新になります。
拙い文章ではありますが楽しんでいただけたのなら幸いです。
年明けに一つ番外編を投稿する予定です。
次回の番外編は現在書いてる本編の時間軸ではない、原作開始後のお話になります。
元日のシャーレについて書いておりますのでお待ちいただけると幸いです。
今年は拙作を楽しんでいただきありがとうござい案した。
来年もよろしくお願いいたします。
良いお年を。