【タクマside】
あれから数日、スチームブレード(仮)を体に慣らすために呼吸の練習も兼ねてひたすらいじり倒していたおかげでだいぶ慣れた。
動きに違和感があったのは剣術をメインにした動きで無理矢理銃を使っていたからで間違いなかったようで、見違えるほどに動きやすくなった。
あとは呼吸を完成させるだけとなったが、こちらはやはり
まあ、今更ここまできておきながら出来ないからと諦めるのは勿体無いしそんな気もないので完成するまで鍛錬は続けていくつもりである。
さて、そんなわけで数日ぶりに剣先先輩に訓練をつけてもらう事になったのだが、俺が無謀なことをしていることを聞きつけたのか高等部の先輩方がチラホラと見える。
呼吸の鍛錬を長く続けていたからなのか戦闘訓練を積み重ねてきたからなのかはわからないが、最近人から向けられる視線というか思念の種類が何となくわかるようになってきた。
高等部の先輩方から向けられるソレは傍観・心配・嘲笑など様々な思いが入り混じっている。
なんだかこんなことを言っているとまるでニュータイプにでもなったのかと錯覚してしまいそうになる。
おかしいな…
宇宙になんて出たことなんてないはずだし勘違いかもと思ったが、俺自身戦う心持ちになった時だけ感覚が鋭敏になっている。
ニュータイプは人と人が誤解なく相互理解をするための指標だったと思うが、これではサイコミュを動かす方のニュータイプみたいだ。
いや両者に大した違いはないのかもしれないけど。
そんなことを考えながら、視線に乗せられた感情を振り払って目の前の剣先先輩と向き合う。
さあ、戦いだ。
【ツルギside】
あれは…なんだ?
棍棒…じゃないな。
百鬼夜行で稀に見られる刀とかいう刃物か?
ナイフにしてもかなり大ぶりだ。
ウチじゃほとんど見ない得物だな…
確かに先日武器が合ってないみたいな話はしたが、銃から別のものに変えた程度でそこまで変わるのか…?
まあ、なんでもいい。
使える手は全部試すに越したことない。
「行くぞ、タクマ」
〈はい!〉
始まった瞬間、刀を振りかぶったタクマが目と鼻の先まで迫っていた。
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【タクマside】
やっぱり呼吸は銃より刀の方が合うな。
前じゃ剣先先輩の意表を突くことなんてできなかった。
まだ呼吸が完成してない以上ボロを出さないように短期決戦に持ち込むしかない。
振り下したスチームブレード(仮)はSGで受け止められる。
それを握る手に向けて左脚で蹴りを放つもバックステップで躱されたので、その蹴りの軌道を変えて地面に放ちコークスクリューの要領で回転しながら左手のARで追撃をかける。
剣先先輩はソレを避けるまでもなく受け止め、一転攻勢に出てくる。
SGの攻撃を翼で受け流す。
この翼硬いからこういう時便利なんだけど前が見えなくなるんだよな…
体を覆っていた翼を思いっきり広げて風圧で剣先先輩を吹き飛ばし、そのままの勢いで地面を駆けて肉薄する。
牽制するように放たれた弾丸をスチームブレード(仮)で弾き飛ばす。
握る右手がビリビリして超痛え。
流石に弾かれるとまでは思ってなかったのか、剣先先輩の顔に驚愕の色が走る。
いや、俺もまさか出来るとは思わなかったんですってやってみたらたまたま上手くいっただけで…
ARの弾をばら撒きながら全速力で駆け寄る。
走りながら撃つとリコイル制御が無茶苦茶になりがちだが、こういう組織にいる以上必要なスキルだろうと普段の訓練から練習していたので今となっては造作もない。
まあうん、キヴォトス人だし剣先先輩だからARの弾とかじゃ大してダメージにはならないよ。
知ってた。
となるとやっぱり、スチームブレード(仮)に頼るしかないよね…
【ツルギside】
速い。
今のタクマの動きに対して素直に思った感想だった。
この前の訓練で初めてタクマの独特の動きを見た時に武器が合ってないという話はしたが、まさか武器を変えただけでここまで変わるものとは思いもしなかった。
今の動きの方がしっくりくる。
あの動きは最初から銃をメインにした動きではなく刀を使う前提のものだったのだろう。
大きな翼を交えた流れるような連撃を捌きつつ考える。
今の実力なら万が一にも負けることはないが、一方的にやられっぱなしなのも先輩としては情けない。
しかし、戦いの流れは間違いなくタクマにあるし、本人的にはまだ完成には程遠いらしいこの独特のテンポから繰り出される、踊るような攻撃を崩すのも意外と難しい。
…これでまだ未完成なのか。
末恐ろしくもあるし、今後が楽しみだ。
「……キヒッ」
【タクマside】
やべ、剣先先輩が笑ってる。
副委員長とかが「ツルギは本気で戦い始めると笑う」って言ってたの間違いなくコレのことだよな。
いや怖。
目つきが。
けど、本気にさせるくらいの実力は付いてるって事だよな…
銃だけじゃなく刀メインにしてるからか、体が物凄く暖かくて今までで1番調子が良い。
調子はいいけどガス欠だ。
始まってからおおよそ1時間近く、ずっとフルパワーでペースを考えずに派手に動き過ぎた…
勝てるだなんて烏滸がましいことは思ってないけど、だからと言って負けるつもりはサラサラない。
どうせなら一矢報いたい。
弾切れになったARを目眩し代わりに投げつけ、それを跳ね飛ばした瞬間を見計らって…
剣先先輩目掛けて全速力で踏み込んだ。
【ハスミside】
前々からツルギがタクマに稽古をつけていることは知っていました。
いつも見学しに行こうと思っているのですが、任務と重なっていたり、そうでない日も何かしら用事があったりとついぞ今日の今日までソレを見ることは叶わず…
ようやく、ようやく今日になって少し時間を確保できたので大急ぎで訓練場へ向かっているのですが、どうやらイチカが場所を取っておいてくれていたようで先ほど連絡が来ました。
本当に勿体無いほど出来た後輩です。
訓練場に辿り着いた私が見たのは、タクマがツルギのショットガンを弾き飛ばした光景でした。
「そこまで!」
□□□□□□□□□
弾き飛ばしたショットガンを奪い取りツルギに突き付けたタクマだったが、体力が尽きたのかそのまま崩れるように膝をつき武器を地面に置いて降参のポーズを取る。
委員長の合図を聞いて、
「タクマ!」
思わず私は駆け出してしまった。
こんなにも頑張った後輩を労いたくて。
〈ん… 羽川先輩?〉
「ハスミ? いたのか」
「つい先ほど。
ツルギ、タクマの訓練に付き合っていただきありがとうございます」
「気にするな。
私はコイツの強くなりたいという思いに答えただけだし、私も楽しんだ」
「タクマ、よく頑張りましたね。
まさかツルギから武器を奪えるほどに強くなっているとは思いませんでした。
最近忙しくて貴方のことを見てあげることができなくて申し訳ありません」
〈いやぁ… 気にしないでください。
それに、今回は上手くいっただけですって。
初見殺しに近い感じでしたし、次はこう上手くはいかないです〉
「初見殺しでも私から武器を奪ったのは事実だ。
謙遜するな。
それに、お前はソレを初見殺しに収めておくようなタイプじゃないだろう」
〈それはまあ、そうですけど〉
「なら、良い。
今日は帰って休め。
あとは…そうだな。
コレから大変だぞ」
〈?〉
「いずれわかる。
ハスミ」
「なんでしょう」
「タクマを救護騎士団に連れてってやってくれ」
「わかりました。
行きますよタクマ。
ツルギはどうしますか?」
〈ちょっ待〉
私はそのまま彼の膝裏に腕を入れて抱え上げた。
所謂お姫様抱っこというものだ。
される前にすることになるとは思わなかった。
「私も後から行く」
そう言いながらツルギは私達に右手の甲を見せつけた。
そこにはザックリと刻まれた刀傷があった。
□□□□□□□□□
私達が保健室へ向かう最中、お姫様抱っこをされていたタクマは顔を真っ赤にしながら腕の中で縮こまっていました。
かわいいですね。
傷だらけのタクマと抱える私、右手に大きな刀傷を付けたツルギを迎え入れた団長は酷く困惑していました。
確かに端から見れば珍妙に映るかもしれません。
どこからともなく現れたミネとその後輩のセリナさんは慣れた手つきでタクマの治療を始めました。
……いや、なんというかかなり手馴れてませんか?
それになんだかとても仲良くなってる…
ミネからタクマの治療を担当することになったと直接話は聞いていましたが、まさかこんなに親しくなっているなんて…
そんなことを思っていると団長がツルギの手を引いてこちらにやってきました。
何事かと思ったのですが、どうやらタクマが付けた刀傷が普通ではあり得ない状態とのことらしい。
【タクマside】
「これ、ツルギちゃんの傷。
よく確認してみたら傷の跡と全く同じ場所にヤケドの跡もあるの」
「ああ… いつもの傷よりもジクジクすると思ったらそういうことだったのか…」
「銃創じゃなくて刀傷だからそう言ってるのかと思ったんだけどね、そうじゃなかったの。
タクマくんの使ってる武器がめちゃくちゃ高温になってて、ソレで斬られてついたとしか説明がつかないんだけど…
タクマくん、これってどういうこと?」
〈えっと…… いや、わかんないんすけど………〉
いや、なんでだ?
これが本物の呼吸が出来てるなら赫刀とかの可能性はあるけど、あれって日輪刀だけで起きる現象だったはずだし、たとえ日輪刀だったとして俺がそこまで鍛え上げられているとは思えない。
赫刀以外の可能性だと…
日の呼吸とか?
まさか、そっちの方があり得ない。
確かに参考にしてたのは炭治郎が1番使ってて描写も多かった日の呼吸だけど、その程度で会得出来てたまるか。
けど、そうじゃなければなんなんだ?
だいぶ前に羽川先輩が話してた時々生徒に発現する特殊能力とかだろうか…
スチームブレード(仮)の刀身に発熱機能なんてないからそれくらいしか説明つかないけど、そもそも俺にそんな能力があるとはとてもじゃないけど思えない。
あり得ない可能性を排除していって最後に残ったものが真実だとかなんとかそんなセリフがあったような気もするけど、最後に残ったものもあり得ない可能性だった場合どうすればいいんだろう。
「その感じだと本当にわからないみたいだね」
〈えっと…まあ…
あり得ない可能性を排除していって残ったものもあり得ないものだったので…〉
「ふぅん?
ちなみにどんな可能性が残ったのか聞かせてもらっても良いかな?」
〈羽川先輩、前話してくれたことって覚えてます?
キヴォトスの生徒には時々超能力じみたものを持っている人達がいるって〉
「ああ、ツルギの再生力とかの話ですか?」
〈はい、それです。
ソレかなと思ったんですけど、とてもじゃないですけど自分にそういう能力があるとは思えなくて…〉
「なるほど、そういう関連の話だったのね。
さっき言ってたようにツルギちゃんのソレとかみたいに実在はしてると思うよ。
君たちよりも先輩だからね、そうと説明されなきゃ納得できないものとかも多々見てきてる。
どういう条件で発現するのか、発現している人の共通点とかもわからないし人によってまちまちだから何もわからないってのが現状だけどね。
そもそも誰かが研究してるなんて話も聞いたことないかな。
だから、もしかしたらタクマくんが自覚できてないだけでそういう能力が眠っているのかもしれないよ?」
〈はあ……〉
「あ、納得してないなー?」
〈まあ… はい…〉
「タクマ、貴方が夜こっそり抜け出して鍛錬をしていた際のことも考えたら別におかしくはないと思いますよ。
私の時みたいにやたら見つけづらい所にいたのと今回の発熱ではまったく起きている現象は違いますけど…」
「そんなこともあったんだ。
たまたま人通りの少ないところに居ただけのような気もするけど、今回の件も踏まえたらソレも君の能力かもしれないね。
それに、だ。
君は自分のことを特別な存在だとは思っていないようだけど、十分特別…いや特殊だと私は思うよ。
このキヴォトスにおいてほとんど遭遇例のない男子生徒であり、我々トリニティやゲヘナの生徒のものとも全く違う異形の翼…
君を特殊たらしめる要素は意外と散らばっている」
〈そんな人を珍獣みたいに…〉
「珍獣というか珍種?」
〈俺にイマジンブレイカーみたいな能力はありませんよ?〉
「ごめん、ソレはよくわからない」
遅くなってしまい申し訳ありません。
ようやく近接武器を獲得しました。
武器側ない感覚はこれでクリアしましたが肝心の呼吸が上手くいかない件に関しては後々解決します。
まあそもそも使っているのが本当に呼吸なのかどうかも定かではありませんが。
ブルアカ4周年おめでとうございます。
自分はまだ始めて半年ほどですが今ではすっかり生活の一部です。
本当にもっと早く始めておけばとばかり。
さて、前回行ったアンケートの結果ですが時系列順の方が票数が多かったので時系列順に投稿していこうと思います。
投票してくださった方本当にありがとうございます。
それはそれとして序章がもう少ししたら終わる(予定)ので、番外編として先日トリミレイベントを多分投稿すると思います。
おたのしみに。
次回は現在執筆中なのでまたしばらくお時間いただきます。
それでは。
追記
2話と3話の半分に間違ってる部分と抜けている部分がありましたのでそれぞれ修正・追加しました。