続きの27話です。
「ゲヘナだと?」
「は、はい…!
その… 相手は情報部を名乗っています…」
「……………わかった。
私に代われ。
…もしもし」
『貴方が正義実現委員会の委員長?』
「人に名前を尋ねる時は自分から名乗るものだ。
ママに教わらなかったのか?」
『…失礼したわ。
ゲヘナ学園情報部の空崎ヒナよ。
改めて、貴方が正義実現委員会の委員長で良いのかしら』
「そうだ。
それで?
何の用だ、悪いがお前たちのような連中に構っていられるほど時間に余裕があるわけじゃない。
余裕があってもお前たちのために時間など割きたくもない。
早く要件を言え。
くだらないことをほざくようなその首を捻じ切り落とすぞ」
『貴方のところの男子生徒…?がアビドス砂漠で機械の化け物と戦っているらしいわ。
同僚が調査中に出会したらしくて、砂漠で遭難していた別の生徒と一緒に避難しているとのことよ』
「…お前の言うことが真実であるという保証は?」
『ないわ。
信じるも信じないも好きにすればいい。
私は、同僚の命を救ってくれた事に対する恩に報いようと思っただけよ』
「……そうか。
ちなみに、その機械の化け物というのはなんだ?」
『私も詳しくは把握していないけれど、アコ…彼に命を救われた私の同僚が言うには5〜6階建のビルと同じ程度をした直径の鯨と蛇を足して2で割ったような全身真っ白の怪物で、砂に埋もれてるせいで全長は不明、胴体部には大型のミサイル、口腔部にはビームの発射装置が搭載されていると聞いたわ』
「…なんだそれは。
ミレニアムやカイザーの連中が作り出したモノじゃないのか?」
『ミレニアムの方はわからないけれど、カイザーの人達もまとめて吹き飛ばしていたそうだから違うと思うわ』
「…そうか。
情報の提供に関しては感謝する。
願わくばソレが正しいモノであることを願うよ」
『気にしなくていいわ』
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「調月リオ、貴方に聞きたい事がある。
構わないか」
「私に答えられることであれば」
「ミレニアムで機械の化物のようなものを製作しているところはあるか?」
「機械の化物…?
具体的には?」
「5〜6階建のビルと同じ程度の直径をした鯨と蛇を足して2で割ったような全身真っ白の怪物で、砂に埋もれてるせいで全長は不明、胴体部には大型のミサイル、口腔部にはビームの発射装置が搭載されている…らしい」
「…いいえ、申し訳ないけど心当たりはないわ。
何かあったの?」
「貴方には関係のないことだから気にしなくていい…と言いたいところなんだがな。
頼みを聞いてもらった以上無碍にはしたくないというのが一つと、今現在ここで発生している私の部下をアビドス砂漠へ送り込むよう指示した一件が関わっていてな。
ややこしいんだ」
「その化物とやらがアビドス砂漠で暴れていると?
それに貴方の部下が巻き込まれている…
そんなところかしら」
「ああ、まさにその通りだ。
先程指示を出した。
これから正義実現委員会は直ちにタクマの救援へ向かう。
すまないが、貴方には真犯人を見つけて欲しい」
「無論よ。
力になれず申し訳ないわ」
「謝られるようなことではない。
こういうのが私たちの仕事だから」
「委員長!準備できました!」
「よし。
調月リオ、あとは頼む」
☆
青い炎を纏った刀身による斬撃はアビドスオオスナヘビ…もといビナーの体表をいとも容易く切り刻んだ。
タクマが独自に鍛錬して身につけた呼吸法と剣術、土壇場で覚醒した神秘。
3つが重なり合い、真にダメージを与えるまでに成長した瞬間だった。
思わぬ反撃に先程よりも激しく声を上げながら暴れ回るビナーを掻い潜りながら反撃を開始するタクマ。
両者の攻防は熾烈を極めた。
戦闘のペースは瞬く間に上がっていったが、互いに決め手に欠けたままの状態がしばらく続いていた。
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【タクマside】
〈はぁ!〉
炎を纏わせるのに成功したことで与えるダメージはさらに増した。
先程までより明確に装甲に与える傷が大きく、そして増えている。
たとえ金属の体といえど表面を焼かれるのは堪えるようだ。
呼吸は効いてる。
それは確かだ。
さっきよりも刃の通りは格段に良いしあの蛇野郎もキズだらけだし。
呼吸の精度が上がったことで攻撃の予備動作に合わせたカウンターや、付けた傷にピンポイントで追撃できるだけの冷静さと技量を身に付けることもできた俺は今や炎を纏った飛ぶ斬撃すら放ててしまった。
極限の命のやり取りの中で確実に成長している実感が湧く。
サイヤ人になったつもりはカケラも無いのだが、こうも露骨だと彼らが戦うことを楽しんでいる感覚が少しだけわかる気がする。
まあ、呼吸や剣筋の精度が極度に上昇したとて肉体の強度までが上がるわけではないので早急に決着を付けないとジリ貧になるのはこちらの方だろう。
鬼滅で言うなら土壇場でヒノカミ神楽を出せた累戦の炭治郎みたいな状態だ。
しかし、先程摂った水分や戦闘料食で持ち直した分の体力なんてとうに尽きてしまった。
騙し騙しやってたけど、もうキツいなんて次元じゃねぇ…
いい加減決着付けないとやられる前に消耗で自滅する……
ライザーソード擬きならもっとダメージを与えられるだろうけど、それをするには体力も隙も時間もない。
何か… 何かもう一手あれば……
……そういえば、アビドス砂漠でカイザーが基地作ってるみたいな話あったような…?
よし、カイザーを襲う。
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ビナーを鼻で嘲り中指を立てて挑発しながら砂漠をヨロヨロ飛んだところ、噂通りカイザーの基地があった。
基地と言っても作りかけで60%くらいの出来程度だったが。
たがそれだけあれば十分だし、何より求めていたゴリアテもまるで俺を待っていたかのようにど真ん中に鎮座していた。
いくら砂漠の中で基地のど真ん中とはいえ、誰かに奪われるかもしれないという可能性を考慮していないのだろうか。
危機管理能力が0なのは頂けない。
まあこれから俺がゴリアテを頂くのだが。
〈蛇さんこちら!
手の鳴る方へ!
人一人まともに倒せない図体ばかりでかくなった胡桃みたいな脳しか持ってねえ哀れで惨めな蛇さんこちら!〉
[…gggggGAHHHHHHHHHHH HHHHHH HHHHHH HHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!!!!!]
〈アイツやっぱり俺の言葉を理解してるな?〉
こんな子供みたいな挑発にブチギレてて草。
顔真っ赤じゃん。
顔どころか体中真っ白だけど。
そのままカイザーの基地に向かって一直線。
後からごちゃごちゃ言われるかもしれないが、どうせカイザーの言うことなんて誰も真に受けないし、言われないように記憶が無くなるまでぶん殴れば良い。
そもそも人の自治区に勝手に基地作ってるような奴らが何文句言ってんだって話だ。
よし、このまま突っ込むか。
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【とあるカイザー兵士side】
その日は朝から慌しかった。
なんでもアビドス砂漠なんて偏屈なところに基地を建てた理由そのものが暴れ回っているらしい。
ビナーとかいう巨大な機械らしいそれを打ち倒すための前線基地としてここは建造されたらしい。
まあ、そのビナーとやらが出現するの自体はそう珍しくもないらしいがアビドス砂漠は広大で、基本的にこの辺りには姿を現さないらしい。
らしいのだが…
「オイ! さっきから遠くで聞こえてる爆発音はなんだ!?
どんどんこちらに近づいているぞ!」
「少々お待ちください!
現在観測中で… あ…
ビ、ビナーです!
ビナーが何者かと交戦しながらこちらに向かって一直線に突き進んできています!」
「なんだと!?
クソッ…!
理事がいないタイミングでこんな…!
最悪だ…!!!」
「ど、どうしましょう…!?」
「理事の帰還を待っていてはこちらが持たない!
私が指揮を取る!
動けるものは全員外へ出て戦闘準備!
お前は引き続き理事への連絡を続けろ!」
「は、はい!」
ああ、今日はおそらく最悪な1日になるだろう。
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「撃て! 撃てー!
一歩も引くな! 撃ち続けろ!」
「で、ですがこのままではビナーと交戦してる者にも当たりますよ!?」
「知るかそんなこと!
自分たちのことだけ考えろ!
どうせこんなところでビナーと一騎打ちしてるようなやつは碌な奴じゃあない!
それに私達はアレとビナーの戦闘に巻き込まれてるんだぞ!
纏めて倒しまえ!」
「りょ、了解!」
無理だ。
勝てるわけがない。
いくら対策用のゴリアテを用意しているとはいえたった一機、あんなサイズの化物相手にどうすりゃいいってんだ。
まして、そんな化け物と生身で戦ってるアレも普通じゃない。
…これが終わったら別の仕事に就こうかと真剣に思った。
そんな折、ビナーと交戦している何者かが一気に急降下してこちらに向かって飛んできた。
アイツまさか俺達にヘイト押し付けようとしてるんじゃあないか…!?
「クソ…!
ふっざけんなっ……!」
「オイ! 今すぐここから離れろー!」
一心不乱に引き金を引く俺たちの必死の叫びを嘲笑うかのようにソイツは一直線に向かってきた。
いや、実際にニヤつきながら飛んできている!
…?
男…?
男!?
男の生徒… 噂じゃ聞いたことがあったがまさか実物を目にするとは…
そんな思考を置き去りにするようにその男は一瞬でこちらまで飛んできた。
…まさか!?
「ゴリアテだ!
あの男ゴリアテを狙っているんだ!
追い払え!
ゴリアテを守れー!」
俺の叫びを聞くや否や、ゴリアテの周囲を固める仲間たちだったが、相手の方が上手だった。
〈気付いたところでもう遅えよガラクタ供がよぉ!〉
仲間たちは一瞬で蹴り飛ばされ、腰に差した刀でゴリアテの両腕を切り落として持ち去っていった。
普通のゴリアテならまだ別だが、今この基地に配備されていたのは試作型でサイズを小さくしたパワードスーツタイプのものだった。
まさかこんなことになるなんて…
そんなことを考えながら俺は意識を失い地面に叩き付けられた。
こんな土地、来るんじゃなかった………
前書きでもお伝えしましたが前話より5カ月もお待たせしてしまい申し訳ありません。
実は4月から仕事場が変わったのですが、ブラックではないのですが自分とあまりにも合わなくて執筆する時間をうまくとれていませんでした。
そんな中ゲヘナ編だったりオデュッセイア編が来たりで多少構成を弄っていたらこんな時期になってしまいました。
エタったつもりではない(当社比)ので、引き続き書いていくつもりです。
本当は今回のお話でビナーとの決着を着けようと思っていたのですが、支店の変更とかが多いと読みづらいな…となったので分けました。
次回こそ決着です。
これからもよろしくお願いいたします。