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*同じ話が投稿されていたので1つを削除しました。
あの過酷な石階段を登り降りし震える足の疲れを癒した後、私達はゲヘナへ戻ろうと帰り道を歩いていました。
初詣やおみくじ、更には軽く観光まで出来ましたしもうやることはやれたでしょう。
そう思い車を目指し進んでいたのですが...
「....お腹すいた」
唐突にキョウカさんがそう呟き、それと同時にお腹の虫が鳴る音が聞こえてきました。
「...もしかしてお腹が減ったのですか?ちなみにアサリさん、ミオさん、彼女は先程の屋台巡りでどれくらい食べましたか?」
「え、えっと...大体全部の屋台を2周はしてましたね...」
「すげー食べてましたよ!」
「うん、美味しかった。でも階段で疲れてお腹減った」
「そ、そうですか....」
どうやらあの短時間で摂取したカロリーを全て使い果たしてしまったようです。
とても彼女の小柄な体格からは想像できないほどの消化スピードですが、まあ確かに少しだけ小腹が空いているのも事実ではあります。
「そうですね、では折角百鬼夜行へと来ましたし百夜堂へ向かいましょうか」
そう皆さんに提案した後、それから私達は道を変更してお店の方へと歩いていくのでした。
「おかえりなさいませ!にゃんにゃん♪....あっ!お久しぶりです〜!」
そうして百夜堂へと到着した後お店へと足を踏み入れると、早速こちらを出迎える声が聞こえてきました。
その声の主は案の定河和さん、彼女は私達に気がつくと笑顔で駆け寄ってきます。
「すみません、4名でお願いします」
「はい!勿論です!...それにしても、この間はありがとうございました!いや〜あの時は大盛況でしたよ、大盛況!」
「....正直動くのに精一杯であんまり実感はありませんでしたけどね」
私はあの時、河和さんのお店を手伝う為に1日店員となった時のことを思い返します。
...あの時は本当に大変でした、正直注文を運んだりするのよりも羞恥心の方がキツかったのが事実ですが....
「ですが、河和さん達の力になれたのならよかったです」
「本当助かりましたよ〜特にあの恥ずかしそうな接客!百夜堂の十八番を完璧にマスターしてましたからね!」
「い、いえ、あの時は必死だっただけでしたから...」
そんな風に私と河和さんが話をしていたのですが、
「?あの先輩、この前って何かあったんですか?」
ふと背後に立っていたアサリさんが不思議そうに尋ねてきました、その隣に立つキョウカさんとミオさんと同様に首を傾げています。
(そうでした、彼女達にはまだ話してませんでしたね....まあ私としても出来ればこのまま知られずにいた方が助かるので、ここは誤魔化して早く席に向かいましょうか)
「とりあえずお腹も空きましたし、席に行きましょう。河和さん、案内を....」
そう彼女に頼むために声をかけようとしたのですが、何故か先程まで立っていた場所に河和さんがいませんでした。
(あれ?)
私の頭に疑問符が浮かんだのと同時に
「それでですね〜、こちらがその時の朝宮さん何ですよ」
「え、こ、この写ってるのが先輩なんですか!?」
「可愛い格好」
「へー、やっぱり姐...サエ先輩は何でも似合いますね!」
背後から何かで盛り上がっている4人の声が聞こえてきました。
嫌な予感がしつつ後ろに振り返ると、そこにはいつの間にか移動していた河和さんがアサリさん達に"何か"を見せている光景が....私は目を細め彼女が持つ"何か"をよーく見てみると....
(って!それはあの時の写真じゃないですか!?)
そう、そこに握られていたのはいつ撮ったのかわからない写真...つまりこのお店の服を着てぎごちない笑顔を浮かべて接客している私が写った写真だったのです。
「まままま待ってください河和さん!?何故その写真があるのですか!?」
「これですか?実はフィーナが撮っていたものをプリントしてたんですよ!いやぁうちの従業員の可愛い瞬間だったのでつい」
「そ、そう言う問題では無いと思うのですが!?と、とにかく駄目です!それは没収です!」
私は慌てて河和さんから写真を取り上げると、着物の袖へとしまいます。
「大丈夫です先輩、すごくお似合いでした」
「うん、可愛いかったから大丈夫」
「自信持ってください!姐....サエ先輩が魅力的なのはあたしが保証するんで!!」
恥ずかしさで顔が赤くなる私に、アサリさん達は次々とそんな慰めを言ってくれました。
(む、むしろ恥ずかしさが増すので全然大丈夫では無いのですが...!?)
3人の曇りなき眼から発せられる視線、嘘偽りのない言葉、それが余計に私の羞恥心を倍増させていきます。
「あ、そうです朝宮さん!もし良かったらまたお手伝いしてくれませんか?実はこの前のが一部で好評でして、ゆくゆくは百夜堂の新たな名物に....」
「アサリさん、キョウカさん、ミオさん、行きましょうか!いやぁ、お腹が減ったので楽しみです....!」
河和さんの口から漏れた言葉を全力で聞かなかったことにした私は、逃げるように奥のテーブルへとその場から早足で去ったのでした。
「お待たせしマシタ!」
それから10分後、席へと座った私達のテーブルに注文した品が運ばれてきました。
店員である朝比奈さんがニコニコと品を置いていくのを見ながら、私は疲れから溜息をこぼします。
(うぅ...失態です、まさかあそこまで取り乱してしまうとは....)
私は先程の自分の行動を反省し項垂れます、ついつい恥ずかしさから大声を出してしまいましたが...他のお客のご迷惑になっていないよう祈るばかりです。
「こちらサービスになりマス!」
注文した品を全て置き終えた朝比奈さんでしたが、それからそう言ってもう一つのお皿を真ん中に置きました。
「これは...」
「ハイッ!部長からのお詫びデス!さっきはちょっとおふざけし過ぎタって言ってマシタ、抹茶のあんこのケーキだそうデス!」
お皿の上に載っていたのは、朝比奈さんが言う通り抹茶色のふわふわとしたケーキ、軽く割ってみると、そこにはたっぷりとあんこが詰まっていました。
「...ありがとうございます、私からもお詫びを伝えておいてください。お店の中でうるさくして申し訳なかったと...」
「わかりまシタ!デハごゆっくり!」
朝比奈さんは笑顔で頭を下げると、また別のテーブルの方へとかけて行きました。
そんな後ろ姿を見送りながら、私は早速そのケーキを一口分取り口へと運びます。
ふわふわと溶けるような柔らかい感触に、甘いあんこが混ざり濃厚な味わいが口の中に広がるのを感じ、私は目を瞑りながらそれに感嘆の息を漏らしました。
「ふふ、先輩凄く幸せそうな顔ですね」
「そうですか?....ほら、皆さんも食べましょう」
「了解です!」
「おかわりしていい?」
隣に座っていたアサリさんからそう言われついつい笑ってしまった私は、それを誤魔化す様に彼女達へ促しながらもう一度ケーキに木のフォークを伸ばしたのでした。