私事になってしまいますが少し前に目を怪我してしまい、それにより画面を見ての作業が少々難しい状況になってしまいました。
その為これまで以上に投稿間隔が空いてしまうかもしれません、ご了承いただけますと幸いです。
どこかぼんやりとした意識の中、私は徐に目を開きました。
「これは...?」
身体がふわふわとしている様な、そんな感覚を覚えながらゆっくりと道なき道を進んでいきます。
ここはどこなのでしょうか...視界に映る景色は曇りガラス越しに見た時の様にぼやけており、現実感がありません。
「もしや明晰夢というものでしょうか?」
たまに自分の意思で夢を夢だと自覚し動くことが出来ると聞いたことがありますが、これがそうなのでしょう。
『今日は初夢を見る日ですからね、しっかり夜更かしせずに眠りましょう』
『そういえばそうですね、でも毎年良い夢が見れないんですよね....』
『私はあまり夢自体見れない』
『あたしは姐御が見られる様に願いながら寝ます!』
(...確か寮に帰ってくる前に皆さんと初夢の話をしましたが....その影響かもしれませんね)
そんなことを考えながら、夢の中を歩いていた私でしたが...
「先輩!」
「ん?」
突然背後から声が聞こえてきました、何となく声の主に察しがつきつつも振り返ると
「やはりアサリさんでしたk.....えっと、その格好は?」
そこには予想通りアサリさんが立っていたのですが、その格好は何とも奇抜なもので、茄子の着ぐるみを着ていました。
マスコットキャラの様なモコモコとした素材に、上の部分だけ穴が空いておりそこから顔を出しているようです。
「どうかしたんですか?」
目の前のアサリさんはまるで何事もない様にこちらを見て首を傾げています。
(まあ夢ですからね、普段と違っていても不思議ではありません)
「いえ、大丈夫ですよ。それにしてもこれは三茄子といっても良いんでしょうか...一応茄子ではありますが」
「サエ、見つけた」
茄子姿のアサリさんを前に、初夢で見ると縁起のいいものとしてカウントして良いものかと考えていると、またもやよく知っている声が聞こえてきました。
どこから現れたのか、再び声の方へ顔を向けるとそこには
「今度はキョウカさんですね....成る程、これはまた...」
やはりその人物はキョウカさん、しかもアサリさんが茄子の着ぐるみだったのに対し彼女は一見普段と変わらない様に見えました。
しかしよく頭の方に視線を向けてみると、富士を模した被り物がちょこんと乗っているのがわかりました。
「今度は一富士ですね。初夢で2つも縁起物を見られるとは運がいいです」
「お腹すいた、お菓子持ってる?」
「...夢の中でもそこは変わらない様ですね」
そのことに苦笑いを浮かべていた私でしたが
「姐御!」
「...来ると思っていましたよ」
ここまで立て続けに2人が現れたのです、であれば彼女も現れると考える事は簡単でしょう。
私は確信を持ったまま振り返ると、案の定そこにはミオさんが立って.....いませんでした。
「と、飛んでる...」
「?何かありましたか姐御?」
確かにミオさんはそこにいました...正確には鷹のコスプレをした状態で数メートル上で飛んでいるというのが正しいでしょうか。
...夢ですから、むしろこういうことに驚く方がおかしいですね。
「でもこれで一富士二鷹三茄子が全て揃ったことになりますね...縁起自体は文句も無い程良いということで間違い無いでしょう」
「先輩、お茶の用意が出来ましたよ」
「お茶菓子も完璧」
「姐御!さあどうぞこちらの座布団に!」
これも夢だからなのか、先程まで何も無かった場所に突然あの茶室が現れ彼女達の手にはお茶の入った湯呑みやお茶菓子の袋、更に座布団も人数分用意されている徹底振り。
折角なのでありがたく使わせて貰いましょう、私は頷くとそのまま茶室の畳に足を踏み入れ彼女達を前にゆっくりとお茶を飲み始めたのでした。
──それからどれほど経ったでしょうか
「この前、お茶について話してる動画を見つけたんですけど....」
「姐御!おかわりどうですか?次はあたしが...」
「絶対に稼げる手段を思いついた、今度上手くいったらサエ達も...」
夢の中で皆さんとお茶をし色んな話を聞いていた私でしたが、唐突に背中を掴まれる感覚を覚えたと同時に勢いよく目の前の景色が遠ざかっていきます。
アサリさん達の姿が見えなくなるほど小さくなっていくのを感じながら、襲ってきた深い眠気に従い瞼を閉じ....
「.....」
次の瞬間、目を開けた時には見覚えのある天井が私の視界に映り込みました。
ここは寮の自室、どうやら目が覚めた様です。
「...何とも不思議な時間でしたね」
私は身体を起こしぐぐっと背中を伸ばしてからカーテンを開け朝日を浴びます、目に入り込んでくる仄かな光で頭をスッキリさせるとそれから朝の支度を進め茶室へ向かう準備を始めたのでした。
数時間後。
「お、おはようございます...」
「おはようございます!姐御!」
「おはよう」
軽くBDによる授業を終えた私が茶室で待っていると、やがて襖が開き元気な声が耳に届きました。
「皆さんおはようございます、昨夜は眠れましたか?」
私はそう尋ねながら3人分の座布団を敷くと、着替えを終えた彼女達と共にお茶を淹れ雑談を始めます。
「眠れたんですけど...あたしは残念ながら何も見れませんでした、無念です...!」
「まあ夢というのは必ず見られる訳ではありませんからね、そういうこともあるでしょう」
「はい...折角寝る前に姐御の写真を枕の下に置いたんですが....あたしの念がまだ足りなかったみたいで」
「待ってください、今聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたのですが」
「私は見たよ」
今すぐミオさんに問いただしたい案件が出来たのですが、そこに割り込む様にキョウカさんが口を開きました。
「そうなのですか?」
「うん、凄くお金持ちになる夢」
「ああ...成る程」
何ともキョウカさんらしい内容に私は頬を緩めてしまいます。
「夢だって気づいたから残念だった....でも正夢かもしれないし、今度同じの買ってくる」
「あんまり無駄遣いはしては駄目ですからね?....それはそうと、アサリさんは何か見ましたか?」
その時ふとアサリさんが茶室にやって来てから一言も発していないことに気づき、不思議に思った私は彼女にそう声をかけました。
「.....」
「アサリさん?」
「っ!え、あ、ああ!す、すみません!少しぼーっとしちゃってて、あはは...」
彼女は慌てて手をパタパタと動かしそう答えますが、何だか焦っている様な、何かを誤魔化している様にも感じます。
「アサリは今朝会った時からこんな感じ」
「そうなのですか?もしかして体調でも悪いとか...?それならあまり無理はしない方が...」
「だ、大丈夫ですよ!元気ですから!夢ですよね?えっと...そ、そんな話すようなものでは無かったので....あ、お茶おかわり淹れますね!」
「は、はい、構いませんが...」
いかにも焦っている様な素振り、頬を赤くさせ目をあまり合わせないことから恥ずかしがっているのでしょうか?
「アサリ、何か変な夢見たの?」
「うぇ!?み、見てないよ!」
「キョウカさん、あまりそういうのは聞かないものですよ....そういえばこの前百鬼夜行に行った時新しいお茶菓子を仕入れていたんです、良ければ食べましょうか」
「あ、ならあたし持って来ますね!」
「やったー」
「うぅ...」
そう提案しミオさんが立ち上がり棚の方へ向かう中、恥ずかしそうに顔を俯かせるアサリさんと目をキラキラさせているキョウカさんを横目で見ながら、私は変わらない部屋の空気に小さく笑い湯呑みを傾けたのでした。