新年から少しばかり経ちましたが、郊外の方はまだ活気に満ちている様でした。
「やはりこういう空気は良いものですね」
周りにはお正月特有の商品が並べられた棚が立ち並び、それらを見て買うか悩んでいるお客が集まっています。
今日の私もそんなお客の1人、何か茶室に置くのに丁度良いものが無いかと郊外の商店街にやって来ていました。
邪魔にならず、室内を彩れる何か....そんな希望を思い描きながら歩くこと30分。
「おや、あれは...?」
ふと視界の端に"それ"が映り、私は思わず引き寄せられる様に近づいていきます。
そこにあったのは、長机の上に置いてある大きく真っ赤な袋....所謂福袋と呼ばれている商品でした。
年始の初売りで色々なものが袋に詰められ、何が入っているのかを想像しながら中身を開封する...ある意味イベント的な存在です。
袋はかなり大きいのですがお値段は意外とお手頃なもの、実はこれまでこういった商品に手をつけたことがなかった私はかなり目の前の品に惹かれていました。
「...折角ですからね、試してみるとしましょう」
好奇心が勝った私はそれから福袋を1つ購入すると、
ふむ、確か今まではこういった品に手をつけてきませんでしたが、一度くらいは購入してみたいと思っていたのも事実....今年こそ試してみるのも良いかもしれません。
思い立ったが吉日、私はそのお店へ近づき大きめな福袋を1つ購入すると、それを抱えて学園へと帰ったのでした。
「ただいま戻りましたよ」
「あ、お帰りなさい!」
暫くして、私はゲヘナ学園内の茶室へと戻っていました。
室内へ足を踏み入れるとそこにはすでにアサリさん達の姿が、どうやら先にお茶を淹れていたようです。
「それ何?」
「こちらですか?ふふ、ついつい見つけてしまいましてね」
「福袋ってやつですよね?結構デカいもんですね」
私は抱えて来た袋を畳の上に下ろすと、彼女達はそれを見て驚いていました。
...改めて見てみると本当に大きいですね、重くは無かったので小物が沢山入っているという感じなのでしょうか?
「では開封しましょうか」
「わくわくします!」
私は3人の視線が袋に注がれる中、丁寧に袋の入り口を開くとそこに手を入れて中身を取り出そうとします。
(これは...何でしょうか?表面がツルツルしている?それに平たい様な)
不思議に思いながらもそれを掴み引き上げます、するとそこには...
「...お面?」
何やら変なお面がありました、顔の部分はお寿司のお皿の様なものが描かれています。
...何でしょうか、私が知らないだけでテレビなどで有名なキャラクターなのかもしれません。
まあまだありますから、次にいきましょう。
私はそのお面をかぶったキョウカさんを見ながら再度袋に手を入れていきます。
今度手に伝わってきたのは柔らかい感触、掴み取るとそれはパーカー。
白くシンプルに見えるデザインに見えますが、手触りは中々のもの、これは当たりかもしれません。
「あっ、先輩裏に...」
「裏?」
何かに気づいたアサリさんの言葉にパーカーを裏返すと、そこには明らかに見覚えのあるマスコットキャラクターがプリントされていました。
それは、いつぞやに阿慈谷さんから教えてもらったモモフレンズでした、確かペロロという名前の筈です。
(そういえば、最近彼女とお話しできていませんね...)
そう思った私は畳に広げた上着を写真に撮ると、阿慈谷さんのモモトークに送信しました。
それから数分もしないうちに既読がつくと同時に、明らかにテンションが高いのが伝わってくる文章が返ってきました。
『朝宮さん!それペロロ様パーカーですよ!ペロロ様のパーカーは色々種類があるんですが、それは初期にペロロ様のデザインでミスがあって途中から販売中止になったものなんです!まさか実物があるなんて!』
流石モモフレンズ博士の阿慈谷さん、こちらが思っている以上の熱量で説明してくれました。
「...これは今度あった時にプレゼントしましょうか」
「そうですね」
「凄く喜びそう」
それからもいくつか品が入っていたのですが
「何故カップラーメンが...?」
「激辛ナマズ味だそうです、流石にこれを食べる勇気は....」
よくわからない味のカップ麺が出て来たり。
「うわっ!...ああ、クッションでしたか」
「変なデザインですけど、これ凄く気持ちいいですよ!」
これでもかと色を使ってカラフルになった丸いクッションが出て来たりと、開封するごとに何故これが入っているのかという疑問が浮かんでくるものばかりでした。
売れなかったものが入っていたとしても、ジャンルが違いすぎて困惑しかありません...まさか他の福袋も似た様なものなのでしょうか?
そうしてるうちに中身はもう残り僅かに、最後の望みをかけて底にあるものを掴みました。
「これは....」、
私の手に握られたもの、それは可愛らしい数個のストラップでした。
それぞれは梅や南天などの花の形を模しており、その全てがどれも精巧な作りをしていました。
「綺麗」
「凄くリアルですね!」
「そうですね、それにお誂え向きにもしっかり人数分あるようですよ」
入っていたストラップは全部で5個、私を含め彼女達は何も言わずに各々自分の分を手に取ります。
「この1つはシズクさんにあげましょう」
私はいつもの変装をしているシズクさんの姿を思い浮かべ、小さく笑いながらそのストラップを小袋に入れ袖にしまいました。
「さて、では開封も終わりましたし私もお茶をもらいましょうかね」
「あ、じゃあ私淹れますね!」
そう言って棚から取り出した茶葉を手に茶釜へお湯を入れる様子を見つつ、私は福袋を買ったことをどこか良かったと思いながら、今日も皆さんと一緒にお茶の時間をまったりと過ごしたのでした。