ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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すみません今回シズコ視点なのですが、彼女の口調にあまり自信が無く間違っている部分があるかもしれません。
万が一気になる場合はご指摘いただけると助かります。


百夜堂

「お待たせいたしました!こちらご注文の苺大福セットです!」

 

百鬼夜行に位置する喫茶店、『百夜堂』。

その店内では元気に注文の品を運ぶ少女の声が響き渡っていた。

 

彼女は百鬼夜行連合学院お祭り運営委員会所属の委員長兼、ここ百夜堂の看板娘兼、オーナーの河和シズコである。

 

常に笑顔を絶やさず、真摯に接客するその姿はまさに看板娘の名に偽りなし。

 

「す、すみませんご主人様!すぐにお持ちしますので....!」

 

たまに注文の品を間違えて届けてしまう等のミスをする事もあるが、その時の表情や恥ずかしがる彼女の姿はひとつのおっちょこちょいイベントとして客からは楽しまれている。

 

曰く、『モジモジと照れる姿が堪らない!』

 

曰く、『笑顔が可愛い、素敵!』

 

曰く、『まさに天使!』

 

と言ったように彼女の人気ぶりは言わずともわかるだろう。

 

(ふふふ、今日も大成功ですね〜)

 

だがそんな彼女のおっちょこちょいな一面は仮の姿。

声のバランス、仕草、それらがどれ程客の心を掴むかを計算と経験から導き出し披露する彼女の作戦なのだ。

 

しかしその理由は客に楽しんでもらいたいという純粋な思いからくるもの。

シズコは可愛らしさをアピールし、客はそれを見て心を癒される、まさにwinwinの商売だ。

 

そんな百夜堂にまた新たな客が来店したのに気づいたシズコは急いで入り口へと向かうと笑顔で歓迎する。

 

「おかえりなさいませ、ご主人様!」

 

そこに居たのは二人組の少女だった。

1人は薄緑色の着物に下駄を履いている少女。

もう1人は制服に身を包み、頭には白い花のヘアピンを留め後ろから長い尻尾が生えた少女。

 

(見覚えがないですね...あの尻尾からするとゲヘナ学園の生徒さんですかね?)

 

基本的に来店してきた客の事は全て頭に入れているシズコだが、彼女は初めて見る2人の少女に軽く驚いていた。

それがわざわざゲヘナ学園からやって来たとなるとその驚きも大きい。

 

(ここは華麗に対応して他校での評判アップを目指しましょうか!)

 

「それではご主人様方、お席の方へご案内いたしますね!」

 

シズコはいつになくやる気を増して、その2人を席へと案内していく。

 

「...先輩、凄いですね...」

 

「ええ...これがプロの店員という事なんでしょう」

 

(良し良し、第一印象はバッチリみたいですね)

 

背後からシズコの接客に関心する少女達の声が聞こえてくると、彼女は上手くいった事に内心ガッツポーズをしていた。

 

「こちらメニューになります!」

 

シズコは引き続き笑顔を絶やさず接客し続ける。

だがその2人は初めての来店というのもあってか、中々決められない様子。

 

(こういう場面でもフォローするのも店員の務め!シズコ、頑張りますよ!)

 

「もしよろしければ、おススメの苺あんみつはいかがでしょうか?あんみつと苺の甘さが良く絡み合ってお口の中に広がるとお客様からは評判なんです!」

 

「成る程...では折角なのでそちらをお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「わ、私も先輩と同じものをお願いします!」

 

「ありがとうございます!それでは苺あんみつセットをおふたつですね?少々お待ちください!」

 

シズコは注文を確認すると、急いで厨房へ商品を伝えに戻る。

 

(順調です順調です!ならそろそろアレをかます時ですかね)

 

早速作戦を実行に移すべく彼女は敢えて別の品を乗せた皿を運び、先程のテーブルへとそれを置く。

 

「あれ、あんみつではないようですが...」

 

「え、あ、す、すみません!他のテーブルと間違えてしまいました!うぅ...申し訳ありません...」

 

(決まった!これは完璧なドジっ子ムーブです!この可愛い姿にきっとこのお2人も....)

 

そう考えチラッと2人の方を見てみると

 

(え、何でこちらの子はそんな無言で凝視してくるんですか!?何か怖いんですけど!)

 

制服姿の少女はシズコの作戦通り癒されている様子、だがその向かいに座る着物の少女は全く動じる事なくひたすら無表情でシズコの事を見つめていた。

 

「す、すぐに替えを持って来ますので少々お待ちください!」

 

(まさかドジっ子ムーブが効かない!?まずい、まずいですよ...もしかしたら怒らせてしまったかも....)

 

まさか自身のおはこであるドジっ子芸が通用しない事に動揺してしまったシズコだったが、すぐに気持ちを切り替えると苺あんみつを運びに厨房を出る。

 

(な、何か凄い頷かれているんですけど!?どこにそんな頷くようなポイントが!?)

 

が、あんみつを運びにテーブルへ向かうと、先程あれだけ反応の無かった少女が今度はこちらを見ながら何かに関心するかのように首を縦に動かしていた。

 

(わかりません...このお客さんの考えている事が全然、まだまだ看板娘としての力量が足りてないという事なんですか....?)

 

当の着物少女はただシズコのプロ意識に関心していただけなのだが、変に動揺してしまった彼女は珍しくそれを見抜く事ができずにいた。

 

「お、お待たせいたしました!こちら苺あんみつとなります!それではごゆっくりどうぞ〜」

 

「わぁ!美味しそうです!」

 

「ふむ...それではいただきましょうか」

 

そう言ってそそくさとテーブルから離れたシズコだったがどうしても2人の反応が気になってしまい、彼女達があんみつを食べる様子をこっそりと遠目から確認しようと顔を覗かせた。

 

だがそんなシズコの心配は徒労に終わる。

彼女の目には2人の少女が笑顔を浮かべながらあんみつを楽しんでいる姿が映っていたからだ。

 

(良かった....またお客さんを笑顔に出来た...)

 

目の前の光景を見て先程まで自信が無かったシズコも思わず笑みをこぼす。

穏やかな気持ちに浸っている中、別テーブルから呼ばれた彼女は注文を受けるべくいつもの可愛らしい笑顔を浮かべながら駆け寄っていった。

 

 

帰り際に件の着物少女から、『大変素晴らしい味でした、あのセットを考案した方に是非お礼を伝えておいてください』とやけに真剣な顔つきで握手され少々困惑したシズコだったが、彼女は最後までプロとして笑顔を絶やさなかったという。

 

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