ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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すみません、来月の頭くらいまで忙しくなるので投稿が遅れるかもしれません。
時間がとれたらいつも通り投稿します。


風紀委員長

ゲヘナ郊外のある地域にて、1人の少女が連絡を取っていた。

 

『ヒナ委員長!ご無事でしたか?』

 

「うん、平気。そっちは?」

 

通話越しの人物からヒナ委員長と呼ばれた彼女は、ゲヘナ学園風紀委員会の委員長である空崎ヒナ。

 

彼女の周りには何人ものヘルメットを被った少女達が気絶し山の様に積まれた光景が広がっていた。

 

『こちらも特に問題ありません、今からお帰りになられますか?』

 

「さっき言ってた案件は片付いたからそのつもりよ」

 

『わかりました、では....え、訓練場で喧嘩?』

 

突然通信の向こうで何やら不穏な会話が聞こえた瞬間ヒナはまたかと思いながら小さく溜息を吐いた。

 

「...何か問題?」

 

『い、いえ!ヒナ委員長のお手を煩わせる程ではないので....』

 

「いいから教えて頂戴」

 

『そ、それが...どうやら射撃訓練場の使用権を巡ってどちらが先に使うかの争いが発生したそうで....』

 

「はぁ....わかったわ、とりあえず今すぐ戻るから」

 

相変わらず些細な事で問題を起こす生徒達に呆れつつ、通信を切ったヒナは銃を担ぎ急いでゲヘナ学園へと向かった。

 

 

 

 

「ここはアタシたちが先に使うんだよ!」

 

「いいや、元々私達の方が先に使う予定だった!」

 

「アタシだってあんたより先に使おうと思ってたんだから!」

 

連絡のあった射撃訓練場に近づくにつれ、複数の少女達の騒がしい声が聞こえてくる。

 

(...面倒くさい、早く終わらせましょう)

 

遠目から見た限りその数は20人以上、自分にとっては大した数ではない。

 

(ん?....あの子は...?)

 

だがその時彼女達の中に1人だけ着物を着ている少女の姿を見つけた。

見たところ彼女はオロオロと動くばかりで、特に争いに参加している様子も無いためおそらく運悪く彼女達の喧嘩に巻き込まれてしまったのだろう。

 

(着物...確かお茶飲み同好会の子がそんな格好をしていたかしら)

 

たまたま以前在校生徒の名簿を確認する機会があり、その時の写真にあの少女が写っていた筈だ。

 

ならひとまず彼女を避難させよう。

そう思っていたヒナだったが、争う彼女達が投げたグレネードがその少女の近くに落ちそうになっている事に気づくと、急いで少女の元へ駆け寄っていく。

そうしてギリギリの所でグレネードと少女の間に滑り込んだヒナはその少女の身を守るように翼を広げた。

 

瞬間、目の前では大きな爆発が発生し強烈な爆風が辺りを襲う。

ヒナは爆発で生じた砂埃に軽く目を押さえつつ背後の少女の様子を確認すると、少女は頭を抱え目を閉じているが特に怪我等はしていない...どうやら無事守る事が出来たらしい。

 

「...あれ...?....え!?」

 

少女はようやく自身の存在に気がついたのか、目を丸くしてこちらを見つめている。

 

「何だ?....げ、ふ、風紀委員長!」

 

「え、嘘!今は出かけてる筈じゃ!?」

 

争っていた彼女達も突然現れたヒナの姿を見て流石にまずいと慌てふためいている。

 

「....貴方達、覚悟しなさい」

 

「に、逃げ....」

 

先程までの威勢はどこへやら、一斉に蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した彼女達だったがそれを見逃す程ヒナは甘く無い。

物凄いスピードで1人、また1人と彼女達を気絶させていき、最終的に彼女は10秒そこらでこの場にいた全員を鎮圧してしまった。

 

(ふぅ...無駄に疲れた)

 

そろそろイオリ達もやってくるだろう、後の処理は彼女達に任せれば良い。

そのヒナの予想通り遠くからはゾロゾロと風紀委員の部隊がこちらに向かって歩いて来ていた。

 

ヒナは先程自身の背後に居た少女の方を振り返ると、彼女は状況がまだ飲み込めていないのかぼうっとした様子でこちらの顔を見つめている。

だが目立った外傷などは無いためとりあえず大丈夫だろう、そう判断した彼女は風紀委員会の部室に戻るため足早にこの場から退散していった。

 

 

 

 

部屋の中ではカリカリとペン先を走らせる音が響いている。

 

「......」

 

あの騒ぎから数日、現在ヒナは机の上にある報告書や万魔殿から押し付けられた書類を無心に捌いていた。

相変わらずこちらへの嫌がらせ目的で送ってきたであろう書類の束を前に、流石のヒナも溜息が止まらない。

 

「...ヒナ委員長、そろそろ休まれた方が....」

 

「...別にこれくらい慣れてるから平気よ」

 

「駄目です!流石にそろそろ休んで貰わないと、仮眠もろくにとれていないんですよね?」

 

隣に座るアコの指摘にここ数日を振り返ってみるが、確かに彼女の言う通り殆ど休めていなかった気がする。

だが寝ようとするとどうしても余計な事を考えてしまい上手く眠れない...それを紛らわす為に仕事をする...その負のループにヒナは囚われていた。

 

「失礼します」

 

そんな時、誰かが扉をノックする音が聞こえ部屋へ入ってくる。

 

「担当区域の見回り終了しました!」

 

「そうですか、ご苦労様です....おや、そちらは?」

 

「実は先程ヒナ委員長にこれを渡して欲しいとある生徒に頼まれまして...」

 

「委員長に?」

 

そう言って彼女は自身の机の上に何かが入った瓶とメモ用紙を置いた。

 

「なんでもこの前ヒナ委員長に助けて貰ったお礼との事で....中身は乾燥させたゴボウだそうです」

 

「ご、ゴボウ?」

 

「はい、こちらを使用してお茶を飲めば疲労回復に良いと話していました。淹れ方のメモもここに...では私はこれで!」

 

そう言い残し彼女は去って行った。

残されたのはヒナとアコ、そして先程置かれたゴボウ入りの瓶ひとつ。

 

「....アコ、お湯を用意してもらえる?」

 

メモ用紙をまじまじと見ていたヒナは、アコにそう伝える。

 

「だ、大丈夫なんですか?もしかしたら誰かの嫌がらせかもしれませんよ?」

 

「別に変なものは入ってないと思うわ...それに何となくだけど送り主は想像つくから、だからお願い」

 

「わ、わかりました」

 

ヒナの言葉に従いお湯を沸かし始めるアコ。

 

「......」

 

ヒナはお湯が沸くまでの間、何となく手に取ったメモ用紙を見つめ続けていた。

 

 

 

 

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