ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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タイトルだけのものは、★がついた日記風の中にある話を掘り下げたものです。
それぞれの話を掘り下げたら次の★へ、といった感じで進めていく予定です。


2年生

小鳥達の小さな囀りが外から聞こえてくる。

窓に備え付けられたカーテンの隙間からは、気持ちの良い陽の光が丁度私の顔に当たる位置に差し込んでいました。

 

私は目を擦りながら身体を起こすと、ぐぐっと背筋を伸ばして眠気をとります。

 

「....今日から私も2年生ですか」

 

寮の自室にてそんな独り言が私の口からこぼれました。

 

私が去年入学したゲヘナ学園。

キヴォトス3大学園と呼ばれる程の規模を誇る学園ですが、肝心の学内の治安は悪く喧嘩や争いは日常茶飯事、それに巻き込まれる事も少なくありません。

 

ここに温泉が埋まってるんだ!と言って第一校舎の教室を半壊させる程の爆発を引き起こすヤバい集団がいたり、食に対する礼儀がなって無いと言って入店した飲食店を爆破させる集団がいたり....殆どテロ活動と変わらない様な事態も度々起こる事もありますが、それらはゲヘナ学園に通う生徒達にとっては最早風物詩のように認識されていました。

 

私も初めは驚き何度学校を辞めてやろうと決意を固めたことか....そう思いつつも結局今日までの1年間を過ごしてしまった訳ですが、気付かぬうちに私も他の子と同じで慣れてしまったという事でしょうか。

 

(今日から入学してくる後輩はどんな子達なのでしょう...)

 

正直学園内の生徒は例外を除き、その大半はまともではありません。

みんなどこかしら個性的な人が多く、そんな学園に入学してくるとなれば....

 

私は押し寄せる不安やストレスから胃が痛むのを感じます。

 

「....新学期の初日から遅刻する訳にはいきませんね」

 

ここでいつまでも余計な考え事をしていては授業に遅れてしまいます。

ですが壁にかけられた時計を見てみると、思ったよりもまだ時間には余裕があるようでした。

 

「なら一度茶室に寄るのも良さそうですね...」

 

軽く朝食をとりながらそう呟いた私は諸々の準備を終えると早速服を着替え始めました。

 

寝巻きを脱ぎ普段から着ている薄緑色の着物を身につけ帯を締めると、白い花模様の簪を用いて髪を夜会巻きにまとめます。

白足袋を足に通してから部屋の玄関に向かい下駄を履いた私は寮を出ると、道ゆく生徒の流れに身を任せながら第二校舎ではなく部室棟本館を目指し歩いて行きました。

 

やがて辿り着いた部室棟内の奥側にある部屋の扉を開けると現れたのは一枚の襖。

私はその場で一度お辞儀をしてから襖を開くと、そこには見慣れた六畳程の茶室が広がっていました。

 

下駄を脱ぎ畳に足を踏み入れた私は早速真ん中に置かれた茶釜に水を入れ湯を沸かし始めます。

勿論こんな室内で直接火を用いる訳にもいかないので茶釜の下には電気コンロが置かれていますが、特に気にする事もないので沸騰するまでの間私は目を閉じ静かにただ待つのみです。

 

やがてゴボゴボと音が聞こえてからコンロを切り茶釜を持ち上げます。

湯冷まし用の入れ物に2回ほどお湯を移して温度を下げてから、茶葉を入れておいた急須にお湯を注いでいきます。

 

1分程茶葉が開いてお湯に浸出するのを待ち、そこから数回に分けて湯呑みに出来上がった煎茶を淹れれば完成です。

 

湯気が立ち上る湯呑みを口元まで運んだ私はゆっくりとそのお茶を啜ります。

 

「.....ふぅ」

 

口内に広がる煎茶の調度良い苦味や後味に私は時間も忘れて耽ってしまいました。

それから何杯かお茶をおかわりしつつ、そろそろ教室に行こうと携帯を取り出し時間を確認してみると

 

「.....!?」

 

そこに表示されていた時刻は既に授業開始の2分前を指していました。

 

 

先程までの穏やかな気持ちはどこへやら、一気に顔が真っ青になった私は茶室の後片付けも忘れ大急ぎで部室棟を飛び出して行きました。

 

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