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本日は見事な快晴で、上を見上げれば素晴らしい青空が視界に広がっていました。
トラックのスピードにより気持ちの良い風が前から吹きつけられ、流れる髪を押さえながらその涼しさを存分に堪能します。
「やはり今日は絶好のお出かけ日和ですわね.....お二人もそう思うでしょう?」
「んんんっ!んーーーっ!」
「むぐぅ...!」
「うふふ、賛同いただけてる様で何よりですわ♪」
私は振り向きながらトラックの荷台に座っているフウカさんとサエさんに尋ねてみると、お二人とも元気に身体を揺らして答えてくれました。
身体はロープで縛られ口元はガムテープで塞がれている為少々伝わりづらい部分もありますが、きっと喜んでいただけている事でしょう。
「ねぇ、あとどれくらいで着くの?」
「お腹すいちゃったー」
「大丈夫ですよ、目的地まではもう少しですので」
ジュンコさんとイズミさんの問いに答えつつ、私はこれから行う事に思いを馳せます。
「アカリさん、確認しますが食材の方は?」
「バッチリです★ちゃんと人数分持ってきてあります♪」
「楽しみー!」
「フウカさんとサエさんも協力していただけるんです、きっと上手くいきますよ」
フウカさんは給食の提供中、サエさんは後輩の方達と作業をしている最中でしたがどちらも快くご同行いただけました。
そんな彼女達の思いに応える為にも成功させ良い食事にしなければ。
「んんんんんんっ!」
「んむぅ、むぅぅ!」
「うふふ、お二人ともやる気満々ですわね」
後ろから聞こえてくる彼女達の声援を受け止め、私達はお借りした給食部のトラックを走らせていきました。
「さあ、着きましたわ」
あれから暫く道を進み私達がやって来たのは辺りが木に覆われている半分森の様な場所。
「では早速...っとその前にフウカさんとサエさんのガムテープとロープを外さなければ」
私は三人に指示を出し彼女達の拘束を解かせると、お二人は大きく息を吸い込みながらキョロキョロと周りを見渡しています。
「な、何故私達をこんな場所に?」
「ぷはぁっ!こ、ここは何処!?ハルナ、あんた今回は何をする気なの!?」
「お二人とも落ち着いてください、これからちゃんと説明しますので」
私の返答を聞きフウカさんはいつものジトっとした目を、サエさんはどこか疑う様な視線を向けてきます。
そんな彼女達に私は今日の活動の詳細をお伝えし始めました。
「そう、あれは私が美食を求めて郊外を歩いていた時の事です」
「え、何か振り返り始めたけどそんなに長い話なの?」
「いつものように街を歩き美食を追求するに相応しいお店を探していたのですが、そんな時偶然お魚屋さんを見かけたのです」
「あのハルナさん、それとこの場所の関係は...?」
「特に欲しいものも無かったのですが、ついついそこに並べられていた魚達を眺めていた所出会ったのです...そう、一匹の魚に」
「それは何の変哲もないごく普通のサンマでした、今の時期に売られているのも少し驚きましたがやはりサンマといえば秋、そう考えていた私はそこである疑問に思い至ったのです」
「サンマは秋の味覚、であれば今の時期に食べるサンマには決して秋を感じることは出来ないのか...と」
「食す環境をしっかりと整え味わえばそれは可能なのではないか、それを確かめてみたいのです!」
私は手を天に掲げ、そう熱弁します。
「「......」」
私の話を聞いたお二人は口を開けたまま固まっています...ふふふっ、どうやら感動で声も出せない様ですわね。
「それでは説明も済んだ事ですし準備を....」
「ちょ、ちょっと待って!」
「どうかされましたかフウカさん?」
「まさかそれだけの為にこんな所まで連れてきたって事!?」
「ええ、そうですわ」
「そ、そうですわって....というかそもそもここで私に何をしろっていうの?」
「それは勿論調理です。アカリさんはクーラーボックスを、ジュンコさんは炭を、イズミさんは七輪と網をこちらに」
「はいはーい!」
「んしょっ、ここに入れればいいんでしょ?」
「1、2、3....うん、ちゃんと全員分ありますね♪」
フウカさんに完璧な調理を行なっていただく為の道具が次々とセットされていきます。
「フウカさんにはこちらの道具とサンマを使って炭火焼きを作って貰いますわ」
「あの....」
すると隣に立っていたサエさんがおずおずと声をかけてきました。
「今の話を聞く限り、私に出来ることが特に無いように思うのですが」
「あら、そんな事ありませんわ。勿論サエさんの為に用意したものもあります」
私はトラックに乗せていた数枚の畳といくつかの箱、その箱の中から各種道具を取り出しサエさんの前に広げていきます。
それによりこの場には彼女が普段過ごしている茶室と同様の空間が出来上がりました....流石に周りを壁で覆う事は難しかった為あの茶室の完全再現とまではいきませんでしたが、彼女は目の前の光景を見て目を見開き驚いていらっしゃいます。
「焼き魚は煎茶との飲み合わせが良いとの事でしたので、こちらにその茶葉と普段サエさんが使われる茶道具と同じものをご用意させていただきました」
「ほ、本気なのですね....確かに畳など何に使うのかと思ってはいましたが...」
「ええ勿論、我々は食に関する事に手を抜いたり嘘や偽りをするつもりはありませんわ」
「ねーねー、この辺りに撒いてもいいの?」
「ああそうでしたわね。この周囲の地面と木にお願いします」
「一体何を...?」
イズミさんは私の指示を聞いて、私達が立つ周囲の地面に大量の紅葉の造花を敷き詰めていきます。
他のお二人もそれぞれ袋から紐で繋げられた造花を取り出しそれらを木に巻き付けていくと、一気に立派な秋模様を感じられる場へと変貌を遂げました。
「....わざわざここまで用意してるだなんて、相変わらず凄いわね」
「うふふ、私達はそれぞれが思う美食をとことん追求したいだけですわ」
私のその返答にお二人は顔を見合わせ小さく溜息をつくと、首を振って口を開きました。
「.....しょうがない、どうせ断っても引き下がってくれないんでしょ?」
「それに帰る手段もありませんしね...」
「フウカさん、サエさん、感謝いたしますわ。さあ!それでは始めましょうか!」
「「「おー!」」」
「「はあ.....」」
結果、秋を感じられる味というのはそもそもどの様なものなのかを知らなかった為今回上手くいったのかはわかりませんでしたが、その日皆で食べたサンマのお味はとても素晴らしいものであったのは確かでした。
(今度はどんな美食を探求しましょうか)
十分満足のいく食事をする事が出来た私達は、とても穏やかな気分のまま再びトラックを走らせていきました。