ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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不安の元

新学期初日から盛大に遅刻を披露してしまった私でしたが、それからは流石に遅刻する事なく特に変わらない日々を過ごしていました。

 

今日も私は他の生徒達と一緒に、第二校舎の窓の外から聞こえてくる風紀委員と不良生徒達の喧騒を耳にしながらBDによる授業を受けています。

 

やがて外の争いの決着と同時に授業も終わりお昼休みに入ると、すぐさま食堂へ向かう生徒もいれば教室にそのまま残る生徒等各々が自由に動き始めました。

 

私は普段昼休みは茶室で過ごしているので、いつも通り席を立ち教室を後にします。

しかし、丁度廊下を歩いていた時でした。

 

「ねえ、〇〇の所は入部希望者来た?」

 

「昨日2人来たよ、私が先輩って呼ばれるの何か凄い新鮮だった」

 

別の教室から漏れていた話し声に、私はついつい立ち止まり聞き耳を立ててしまいます。

 

(新入部員ですか....)

 

彼女達の話を聞きながら、私は自分の同好会の事を思い返します。

 

それを立ち上げた当初、私以外に人が集まらなかったため部としての認可は降りませんでした。

それは今でも続いていますが、もし今後正式に認めてもらえても部として何か成し遂げたいといった目標等は特に考えていません。

それに加え、静かな空間が好きな私としては今更積極的にメンバーを増やそうという気もありませんでした。

 

....いえ、少し嘘をつきました。

1人で落ち着いてお茶を楽しめるあの空間が好きなのは本当です...ですがその静けさの中に身を置いていると寂しい気持ちが芽生えないか、と言われればそれは否定できません。

 

ですから校舎の隅の方に同好会のポスターをこっそり掲示する程度ですが勧誘は行っています...勿論それで誰かが来てくれる保証はありませんが。

 

(いけません、早く茶室に行ってこの気持ちを落ち着かせましょう)

 

余計な事を考えずに、今はとにかく頭を休めようと歩みを再開させ

 

「そういえば聞いた?あの美食研究会に1年生が入ったんだって」

 

その話が耳に入ってきた瞬間、私の足は再び動きを止めてしまいました。

 

「え、本当?また何か起こらないといいけど...」

 

(何と...何という事なのでしょう...!)

 

私は廊下にいる事も忘れその場で頭を抱えました。

先程少し沈んだばかりの私の心はその話題により余計に深く沈み込んでしまいます。

 

美食研究会...その名の通り主に美食に関する事柄を評価・探求する事を目的にハルナさん率いる3人で構成されていたグループであり、このゲヘナ学園の中でも1位2位を争う程危険な集団です。

 

彼女達の美食への追求を邪魔するものや食を冒涜するものへは容赦ない粛清を行い、それは学園内に留まらず外にある店や人物だろうと関係ありません。

 

そうした事から他の学園からも彼女達は危険視されており、その姿はまさにテロリストといって差し支えないでしょう。

 

ある時『最高級の茶葉を使用したお茶を飲んでみたいですわ』と言って遠方からわざわざ茶葉を強奪してそれを渡された事がありました。

またある時は『こちらの料理に合うお茶を用意して欲しいのです』と言って数えきれない程の料理分のお茶を無理矢理淹れさせられた事も....私自身、過去何度か襲撃に遭ったことがあるため彼女達に対しては少々苦手意識を持っています。

 

一応私の淹れたお茶を飲んだ時はその都度丁寧に感想を語ってくれる為、完全に嫌いという訳では無いのですが.....

 

(これまでたった3人だったのにも関わらずあれだけの被害、それが4人に増えたのだとしたら...?)

 

私は軽く目眩がしてとうとう壁に寄りかかってしまいました。

 

....これからの学園生活が一気に不安になってきましたが、今の私にはどうする事も出来ません。

 

(...せめて私が巻き込まれる事がありませんように....!)

 

そう祈りながら、私は重い足取りで茶室のある部室棟へと向かって行ったのでした。

 

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