ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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朝宮サエの日常8 ★

今私はゲヘナ郊外の商店街に訪れています。

同好会としての活動...という程大したものではありませんが、実は去年の中頃からこの地域に住む住民の方向けにお茶について良く知ってもらう為の説明や、実際にお茶を淹れて飲む等の体験会を定期的に開いていました。

 

今日はその日程や内容についての確認の為にやって来たのですが、そんな中遠くの方に見覚えのある少女が歩いているのを見つけました。

あの方は...浅黄ムツキさんですね。

 

彼女は一年の頃にアルさんを通じて交友を持ったのですが、今は確かそのアルさんと一緒に便利屋を営んでいる筈。

最近は学校にいないのもあり殆ど会う機会もありませんでしたし、折角なので挨拶しておきましょうか。

 

そう思い彼女に声をかけるとムツキさんはこちらを見て少し驚いた後、ニヤニヤと彼女らしい表情を浮かべて挨拶を返してくれました。

どうやら現在依頼をこなす為の準備をしているらしく、その買い出しの最中との事。

便利屋稼業自体は少々苦しく、一時期は公園にテントを張って生活していた事もあったのだとか。

 

それでも全員辞めずに続けているのは、アルさんの人望や彼女の事をとても大切に思っているからなのでしょう、それだけの信頼関係を築けているのであれば私が心配するのも野暮というものですね。

 

それから少しの間彼女と雑談を交わしていましたが、私もそろそろ商店街の会長さんとの話し合いの時間が迫っていたので、体調には気をつける様にとだけ最後に伝えて彼女と別れました。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

以前に話し合いをして迎えた体験会の当日、私は街の一角に集まった住民の方々と一緒に各自淹れたお茶を飲んでいました。

 

といってもそこまで大規模なものではなく、あくまで十数名程が集まりそこにテーブルと椅子を設置して行う軽い交流会の様なものです。

ですがこの場にいる全員が楽しそうにお茶を飲みながら話している姿を見ると、本当にやって良かったと毎回この様な会を開く度に思う事ができます。

 

私も彼らとの会話に花を咲かせていたのですが、そんな時突然辺りに銃声が鳴り響きました。

驚いて周囲を見渡してみると、通りの方にヘルメットを被った集団が暴れている姿が見えます。

 

やがて彼女達はこちらに気がついた様で私達に銃を向けながら駆け寄ってきました。

彼女達が言うには『この辺りはトゲトゲヘルメット団が仕切る事になった、だから早く金目のものを置いてここから出て行け』との事。

 

当然そんな命令に従う道理はありません。

私は住民の方達を背に庇いながら説得を試みますが彼女達は一向に聞く耳を持ってくれず、挙句の果てには脅しとして威嚇射撃をしてくる始末。

 

彼女達が手当たり次第発泡した事で背後にいた住民の方に当たりそうになり、私が用意していた急須や湯呑みは粉々に砕け中に入っていたお茶や破片が辺りに散らばってしまいました。

 

何をしているんです!住民の方に怪我をさせるつもりですか!

それにあれは彼らの為に私が用意したものです、人の物を壊し皆が楽しんでいる場を滅茶苦茶にするなんて.....

 

....え、従わないのが悪い?たかが入れ物なんかに大げさ?そんな事どうでもいい?

 

......

 

.........

 

.................

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ヘルメット団の方々の暴動があった日から数日、私はあの日の事を思い出しながら大きく溜息をついていました。

 

一般の方に危害を加えようとした挙句、大切に思っているお茶の事まで馬鹿にされとうとう堪忍袋の緒が切れてしまった私は、自分でも驚く程正確な射撃でリーダーらしき少女ともう一人を気絶させてしまったのです。

 

そこからは残った少女達にひたすらに説教...説教...更に説教の繰り返し。

いかに彼女達がやっている事が不誠実か、彼女達が馬鹿にしたお茶がどれ程素晴らしいかをこれでもかと教え込むと気づけば数時間も経ってしまっていました。

 

ヘルメット団の方達は涙目になりながら謝り走り去っていきましたが....改めて思い返すと彼女達にも申し訳ない事をしたと考えてしまいます。

勿論彼女達が悪い事をしたというのは事実ですが、それでも少々大人気なかったと反省する部分も多々あるのです。

 

まさか自分があそこまでやってしまうとは....この学園に通っている以上、やはり私も他の方達と同じ立派なゲヘナ生なのかもしれません。

 

何故か宇治さんと狭山さんは私の話を聞いて怒っている姿を見てみたかったと仰っていますし...勘弁してください、私もあの時の事は出来るだけ忘れたいんです....。

 

...ん?来客でしょうか...誰かが扉を強くノックしている音が聞こえてきます。

 

私は立ち上がり扉を開けると、そこには見知らぬ少女がどこか緊張した面持ちで立っていました。

 

黄檗色の髪に、頭には赤い角が生えています。

その少女は鋭い目つきで私の顔を見ると

 

 

「あ、姐御!あたしを弟子にしてください!」

 

 

頭を思い切り下げ、廊下に響き渡る程の声量でそう言い放ったのでした。

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