ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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お茶っ娘ちゃん

「〜♪」

 

商店街の通りを一人の少女が鼻歌を歌いながら歩いていた。

白く長い髪に赤と黒を基調とした服装、後ろ手には大きなバッグをぶら下げながらキョロキョロと周囲を見渡しながら人混みを進んでいく少女、浅黄ムツキ。

 

『久々の依頼よ!!!』

 

『お〜良かったじゃん♪』

 

『す、素晴らしいですアル様!』

 

『それで、何の依頼なの?』

 

上機嫌に歩く彼女は数時間前にあった幼馴染とのやり取りを思い返す。

彼女は幼馴染のアルにカヨコ、ハルカの二人と一緒に便利屋68という所謂何でも屋を営んでいた。

....営むといっても最近は今の家賃でさえギリギリという状況の為正確にはなんとか食い繋いでいるというのが正しいのだが、今回は久々にうちに依頼が届いたのだ。

 

(まあ、猫探しだけどねー)

 

正直アルが目指すアウトローからは程遠い依頼内容ではあるが、今の自分達は依頼を選り好み出来る立場ではない。

それはアル自身もわかっている様で何としてでも成功報酬を貰う為に彼女もいつも以上にやる気に満ちていた。

 

このままではいつかの様に公園でテント暮らしもあり得る...ムツキは別にそれでも良いとは思っているが.....。

 

そういう訳で彼女とハルカが猫缶やマタタビの買い出しにやって来たのだが、つい先程ハルカが『あ、アル様の為に急いで買ってきます!』と言って飛び出して行ってしまった。

 

彼女も一緒について行こうと思ったが引き止める間も無く去ってしまった為、一人ポツンとその場に取り残されたムツキ。

後で連絡を取ればいいだろうと考えた彼女は気を取り直し、もしかしたら猫が見つかるかもしれないという思いで商店街を歩き始め今に至る。

 

そんな経緯で依頼人が話した特徴を持つ猫の姿を探しながら歩いていた時

 

「ムツキさん?」

 

突然彼女の名を呼ぶ声が背後から聞こえてきた。

自分を知ってる人物がいるとは...まさか風紀委員?

流石にここまで追ってくる程に目をつけられているとは信じ難いが、少し警戒しながら振り返る。

 

だがそこに居た人物を見た瞬間、ムツキは思わず呆気に取られてしまった。

 

深緑色の髪に薄緑色の着物、足には下駄を履いている少女がこちらを懐かしそうな顔で見つめていた。

 

「あれ〜お茶っ娘ちゃんだ♪」

 

「そ、その呼び方は慣れないのでやめてください」

 

「くふふ♪ごめんごめん。サエちゃん久しぶり〜」

 

ムツキは久しぶりに出会った友人をからかいつつも挨拶を交わす。

 

彼女は去年、お金を忘れたアルが自販機の前で困っていた時に出会いそれから度々絡む様になった子だ。

ムツキ自身も当時『未来のお得意様よ!』とアルに紹介されたのだが、その時彼女が浮かべた何とも言えない表情を今でも覚えている。

一見真面目な彼女だが、意外に抜けてる所もあり案外からかい甲斐がある為ムツキも気に入っていた。

 

「お久しぶりですね、アルさん達が学校に来なくなってから中々会えませんでしたから」

 

「そうだね〜風紀委員の子達がしつこいから困っちゃうよ、お茶っ娘ちゃんは何でここに?」

 

「...はあ、もうそれでいいです。私は定期的に開いてるお茶の交流会の打ち合わせに、ムツキさんの方は?」

 

「私は依頼の準備中〜、一緒にもう一人来てたんだけどその子は今買い出ししてるから待ってるの」

 

「そうでしたか、ムツキさんは室長?でしたっけ、便利屋稼業の調子はいかがですか?」

 

「うーん、まあぼちぼちって感じかな?あと少しでテント暮らしになるかもしれないけど♪」

 

「全然成り立ってないじゃないですか....」

 

そう言って苦笑いを浮かべるお茶っ娘ちゃん、だがムツキはそれでも諦めて辞めるつもりは一切無い。

幼馴染が理想を追い求めて奮闘している以上、それについて行くのは当然の事だ....というよりかはよく空回りするその姿を傍で見たりからかったりするのが楽しいというのが理由の大部分であるかもしれないが。

 

サエもそれがわかっているのか、手を引けなどの言葉は一切言わずに仕方ないという様にやれやれと溜息をついている。

 

「最近そっちはどんな感じ?」

 

「...万魔殿に呼び出されたり美食研究会に拉致されたり....最近では部屋の前の敷地を温泉開発部が爆破させた事もありましたね。まあいつものゲヘナと言えばそれまでですが」

 

「あははっ!楽しそうで何よりだね〜♪」

 

「私からすれば堪ったものではありませんけどね...ああそれと、同好会仲間が二人増えました」

 

「えっ本当?」

 

「ええ、どちらも一年生でやる気に満ちた...可愛い後輩です」

 

そう話すお茶っ娘ちゃんの顔にはどこか嬉しそうな笑みが浮かんでいた。

それからお互いの近況等を話して暫くすると不意に彼女が慌て出した、どうやらそろそろ打ち合わせの時間になりそうとの事らしい。

 

「ばいばーい、頑張ってね〜」

 

「はい、ムツキさん達も身体にはお気をつけて」

 

そう最後にこちらに言い残して、お茶っ娘ちゃんはパタパタと走り出して行った。

 

「か、買ってきました!」

 

「あ、ハルカちゃんおかえり〜」

 

私がそんな彼女の後ろ姿を見守っていると、丁度そのタイミングでハルカちゃんが戻ってきた。

彼女の両手には猫缶やらマタタビが一杯に詰められた袋がぶら下がっている。

 

「おお〜沢山買ってきたね〜」

 

「は、はい!これだけあれば絶対に見つかるかと....!」

 

「うんうん♪お疲れハルカちゃん、じゃあ早くアルちゃんの所に帰って猫探ししよっか」

 

そう言ってムツキはハルカから袋を一つ受け取ると、そのまま事務所を目指して歩き出した。

 

 

.....その後猫は無事見つかったのだが、最終的に依頼料と猫を探す為に買った猫缶やマタタビ代がトントンという結果になり、アルが白目をむき、ハルカが謝り、カヨコがいつもの事に溜息を吐き、ムツキがそれを見て笑う事になるのだが、それは別のお話。

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