ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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朝宮サエの日常9 ★

突然謎の少女が訪ねてきました...待ってください、今何と言いました?

 

姐御?な、何故そんな呼び方をするんですか!?

敬意を込めて?憧れだから?...すみません、全く話が見えてきません...

 

とりあえず茶室に迎え入れて彼女の話を聞いてみると、彼女...川根さんは以前からビッグな存在?に憧れているとの話をし始めました。

その夢の実現について悩んでいたある日、私が郊外でヘルメット団と話している場面を目撃したそうです。

え、貴方はあそこに居たのですか!?

裏に隠れてた...はぁ、そうですか....

 

そこで私が住民の方達を守る姿や彼女達を圧倒する姿を見て感動し、是非自分を弟子として学ばせて欲しいとの事。

....いや、私がしたのは彼女達へのお説教くらいなんですが...川根さんは目をこれでもかとキラキラ輝かせてその時の事を武勇伝の如く語っています。

 

やめてください...私はそこまで言う人物じゃありませんから...う、宇治さんも狭山さんも賛同しないでください!

 

と、とにかく私は貴方が目指す程立派な人間では....え、今日はその気持ちだけ伝えに来た?また明日?ちょ、ちょっと待っ...!

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

次の日、宣言通り川根さんがやって来ました。

彼女は満面の笑みを浮かべて相変わらず私の事を姐御と慕ってきますが、一体どうしたものか....。

 

それとなく断りを入れながら彼女に話してみますが、川根さんの意思は強く全然引いてくれません。

まあきっとそのうち諦めてくれるでしょう、それまでの辛抱ですかね。

 

.....と思っていた所、不味い事になりました。

どうにもあの時起こった出来事が不良生徒達の間で妙な噂になっているようです

 

曰く『着物を着た少女が一人で武装した百人程の集団を拳銃一つで壊滅させた』

曰く『その少女は一切傷を負わずに凶悪な暴徒を地に沈めた』

曰く『武器を使わなくても圧だけで相手を震え上がらせ従えさせる事ができる』....等、もはやどこの超人ですかと言いたくなる様な内容と化しています。

 

更に間が悪い事に私が外にいる時に偶然出会った川根さんから姐御と呼ばれてしまいました。

噂の発端となった人物が私だとはバレていない様ですが、そんな噂がある中で私が姐御呼びされればどうなるか...周りにいた何名かの生徒がこちらを見てヒソヒソと小声で何かを話しているのがわかります。

 

急いで彼女の腕を掴んで茶室へと戻った私は噂を流したのかどうかを問い詰めますが、どうやら川根さんは何もしていないそうです。

とするとあの時のヘルメット団から他の不良生徒達へと伝えられる過程で変な尾ひれがついてしまったのでしょう...何にせよ私にとっては中々厄介な話です。

 

これ以上噂が広まるのもそうですが何より彼女に外で姐御と呼ばれる訳にもいきません。

そうすれば噂話と紐づけられて発端が私であると周りに気づかれてしまい、あらぬ誤解を生む可能性があります。

 

最終的に私は、万が一彼女がこれ以上事態を加速させないようにという思いも込めて私の弟子になる事を許可しました。

 

ただし姐御と呼ぶのは茶室の中か、周りに私か宇治さん、狭山さんがいる時だけである事。

他の子がいる時はむやみやたらに呼ばない事を絶対条件として固く約束させました。

 

彼女は私の話を聞いて初めて会った時以上に目を輝かせ、頭がめり込むのではと思う程畳に額を擦り付けてお礼を言っています。

.....まあ、これ以上無理矢理突っぱねるのも可哀想ですし、彼女がそれで満足するのなら良しとしましょう。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

私は目の前でプルプルと震えながら正座をしている川根さんを見守っています。

彼女が弟子になって数日、より私の近くで学びたいと言った彼女はあれから入会届を持って改めて茶室を訪ねて来ました。

 

....私の同好会に入ってくれたのは嬉しいですが、正直ここで学べるのはお茶に関する事だけで川根さんが思っている様な事は教えられないのですが...

まあそれでも真剣に私の話を聞いてくれてはいるので悪い子ではなさそうです。

 

そう思いながらお茶淹れの基礎について教えていると、不意に扉が誰かに叩かれました。

何とも既視感のある事態に恐る恐る開けてみると、そこに居たのは風紀委員の制服を見に纏った少女。

 

私を呼び出しですか?はあ、わかりました....。

不思議に思いつつも彼女に着いて行くと、部屋には何かの書類を見ながら椅子に座っている空崎さんの姿がありました。

 

一体何の御用でしょうか...え、私が不良を従えてる?少女に姐御と呼ばれている姿を見た情報があった!?ご、誤解ですよ!

 

私はここで誤魔化しても意味がないと考え、必死にこれまでの経緯や噂の真相について全て話し終えると、空崎さんの誤解は解けたようで彼女は大きく溜息をつきました。

 

何でも最近不良の方々の活動が以前より見られなくなったそうで、それに伴い風紀委員としての仕事も僅かにですが減少したのだとか。

 

空崎さんが疑問に思っていると、例の噂話が耳に入りもしかすると私が何か関与しているのではという可能性が浮上し今回呼び出したとの事。

 

まさかあの噂が意外な形で治安維持に貢献しているとは...私としては不本意ではありますが、空崎さん達が少しでも楽になれたのなら噂された甲斐がありましたかね....そう思う事にしておきましょう。

 

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