お茶飲み同好会のメンバーは前回までに登場した川根ミオを入れて四人となりましたが、現段階はこれで全員と考えています。
ただ元ネタ的にあと一人オリ生徒は登場させたいと思っており、彼女が出てくる場面も考えてはいますが、暫くはこの4人で進めていこうと思っています。
風紀委員会の執務室、そこでは今日もカリカリとペンが走る音が響いていた。
「ヒナ委員長、こちらの書類は全て記入し終わりました」
「そう、ご苦労様」
中にいるのは委員長の空崎ヒナと行政官である天雨アコ、彼女達は机に山分けにされた書類の束をただひたすらに処理し続けていた。
その内容はここゲヘナ学園で起こった被害の報告書の整理であったり、その他細かい議事録や申請書の確認など多岐に渡るがその大半が万魔殿から回された...正確には押しつけられたものであり、次々と新たな束が送られてくる為終わりが見えない。
だが全体で見れば以前よりはマシと言える量にはなっている。
その理由は何故かはわからないがここ最近不良生徒の活動が妙に減っているからだ。
勿論それで完全に治安が良くなったかと言われればそんな事は無いのだが、それでも彼女達が暴れた事による報告書の枚数が普段よりも少ないと実感できる程であるのは確かだった。
「....アコ、何か知らない?」
不思議に思ったヒナは自身の斜め横に立っていたアコにそう尋ねると、彼女は手元の端末を操作しながら情報部から上がった報告を読み上げていく。
「...最近あった報告ですと、近頃不良生徒達の間である噂が流れているそうです」
「噂?」
「何でもゲヘナ郊外でそこそこ有名だった不良グループが解散したそうです」
「別にそれくらい普通の事でしょう?」
「はい、ですがその原因はたった一人の少女のようでして....百人程居た不良グループを傷一つなく制圧した等の噂が」
確かにそれが事実なら噂になるのも頷ける、解散したグループがどれ程の実力だったかはわからないが現にその噂を信じてうちの不良生徒達の活動が減っているのは事実。
もしそんな人物が本当にいるのなら警戒対象に入れておく必要があるだろう。
「成る程ね、それ以外には何かある?」
「えっと、これはその噂に纏わるものなんですが...その少女というのがどうやら着物を身につけていたそうで」
「......ん?」
アコの言葉を聞いた瞬間、ヒナの頭の中には一人の人物が浮かび上がる。
それはこのゲヘナ学園の中でも珍しく着物に下駄を履いた和服姿の少女、最近ではヒナ自身彼女と話す機会も少なくない。
(....まさかね)
確かにその特徴は彼女に当てはまるものだが、あの穏やかな子が不良グループを壊滅させる姿は想像できない。
「後、食堂前で着物を着た少女が一人の生徒から姐御と呼ばれている目撃情報があった様です」
「.......」
いや、まさか、流石に考えすぎだろう。
だがもしもその可能性があるのなら風紀委員としては流石に見過ごす事は出来ない....。
「...アコ、悪いのだけど少し席を外して貰える?」
「え、は、はぁわかりました...では連絡いただければすぐに戻って来ますので」
頭に疑問符を浮かべながらもヒナの指示に従い部屋を出て行くアコ、そんな彼女を見送った後ヒナは部下の一人を呼び出し”例の少女”をここへ連れてくる様手配した。
「失礼します」
それから十分程経った頃、部屋にはヒナがよく知る人物...朝宮サエが丁寧な仕草で入室してきた。
「ごめんなさい、急に呼び出してしまって」
「いえ大丈夫ですよ、特に忙しくありませんでしたし....それで、私は何故ここに?」
呼び出された理由がわからず不思議そうに首を傾げている彼女にヒナは答える。
「単刀直入に聞くわ...貴方、もしかして秘密裏に不良を従えたりしているの?」
「......はい!?」
彼女は驚いた表情でヒナの事を見つめ、慌てた様にそう聞き返してきた。
「わ、私がですか!?何故!?」
「今不良生徒達の中で広まっている噂に出てくる子の特徴が貴方みたいだと思ったからよ。それに、この前一年の子に姐御と呼ばれていたそうね?」
「そ、それは...」
目を泳がせるサエをヒナはただじっと見つめ続けていたが、その圧に耐えきれなかったのか彼女は溜息をつくと噂の真相を語り出した。
「そう、そんな事が....」
ヒナは彼女の話を聞き終えると深く溜息をついた。
「....貴方も随分苦労してるのね」
「誤解が解けた様で何よりです...私も驚きましたよ、まさかその噂が治安維持に一役買っていたなんて....」
「彼女達の中には噂になってる得体の知れない人物を怖がっている子達もいるんでしょう、何せ貴方が偶然にも関わったそのヘルメット団が解散しているのは事実だもの、噂が真実だと考える子が多くても不思議じゃないわ」
「まあ私達からすれば仕事が減って助かっているからそのまま信じてくれる方が都合が良いのだけれど」
「あはは...それもそうかもしれませんね」
「...とりあえず貴方がそういう悪い方面に関与してない事がわかって安心したわ、ただでさえ厄介な子達が多いのにこれ以上問題事が増えたら大変だもの」
ヒナはホッとした様子で再度息をつく。
その後彼女達は少しの間雑談を挟み、それからヒナはアコを呼び戻し、サエは後輩達の待つ茶室へと戻りお互いいつも通りの日常へと戻っていったのだった。