ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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モモフレンズ

ここはゲヘナ郊外の中でも比較的大きな店舗が並ぶ通り、そこに一人の人物がキョロキョロと周りを見渡しながら立っていた。

 

「あうぅ...ど、どうしましょう....」

 

背中には鳥の姿を模したリュックを背負い、学園の校章が入った制服を身につけている少女。

トリニティ総合学園に所属する阿慈谷ヒフミはそう独り言を呟きながら困り果てていた。

 

彼女が何故この場所にいるのか、それは彼女が大好きなモモフレンズというキャラクターブランドに登場するペロロと呼ばれるぬいぐるみを手に入れる為。

 

どこを見ているのかわからない目、半開きの口から飛び出た舌...見る人によっては散々な評価をされているキャラクターだが当のヒフミはその大ファンであり、そのぬいぐるみが売られていると噂を耳にすれば一人飛び出してここまでやって来るのも頷けるだろう。

 

「この辺りの筈なんですが....」

 

しかも今回のペロロ様のぬいぐるみは限定品、頭に小さな可愛らしい角と尻尾の生えた小悪魔スタイルなのだ、何としても逃すわけにはいかない。

 

だが肝心な事に売られている場所の詳細は明言されておらず、あくまでこの近くだという曖昧な情報しか無かった。

その為意気揚々とやって来たまでは良かったのだが、結局店を見つけられず時間だけが無駄に過ぎ今に至る。

 

「ここまで来てペロロ様を諦める訳にはいきませんし....かといって学園に迷惑をかける訳にも...」

 

ヒフミがそう悩んでいた時だった。

 

「あの、どうかされましたか?」

 

「へ?」

 

突然自身の背後から声をかけられ驚いた彼女は急いで振り返ると、一人の着物を着た少女がこちらをじっと見つめていた。

 

「何かお困りの様に見えたので声をかけたのですが...」

 

「あ、ご、ごめんなさい、びっくりしちゃって...」

 

いきなりの事に驚き返事が出来ないでいると、目の前の少女は不思議そうに首を傾げる。

ヒフミは初対面の彼女にわざわざ相談するのも迷惑かと一瞬考えるが、ここで一人悩んでいても事態は好転しないだろうと思い直し正直に話し始めた。

 

「私は阿慈谷ヒフミといいます、実はトリニティからここへ買い物に来ていたんですが肝心のお店が見つからなくて...」

 

「成る程、トリニティの方だったんですか....でも何故わざわざゲヘナまで?トリニティには色々と買い物が出来る場所はあると思うのですが」

 

「えっと、私が手に入れたいものがこの辺りのお店でしか扱ってないらしく...このぬいぐるみ何ですが...」

 

ヒフミはそう言って自身の携帯の写真フォルダを開き目の前の少女に見せた。

そこに写っていたのは限定品の小悪魔ペロロ様。

 

「このキャラは一体...」

 

「モモフレンズのペロロ様です!今回その小悪魔バージョンが限定販売されてるそうで何とか手に入れたいんです」

 

彼女はモモフレンズ自体を知らなかった様だが、写真をマジマジと見つめ小さく呟いた。

 

「...可愛いですね、確かにこれなら欲しくなるかもしれません」

 

「っ!」

 

そんな小さく発せられた言葉をヒフミは聞き逃さなかった。

少女の呟きを聞いた瞬間ヒフミは彼女の手をガシッと掴みブンブンと振ると、目を輝かせながら矢継ぎ早にペロロ様の魅力を語り出す。

 

「わかりますか!そうなんです!良いですよねペロロ様!つぶらな瞳に可愛いお口、そしてなんと言ってもこの凛々しい姿!それに今回は小悪魔イメージで小さな角としっあまでついて元からあった可愛さも更にアップしてるんです!しかも....」

 

「あ、阿慈谷さん、出来れば落ち着いていただけると....周りの方達も驚いてますし...」

 

「はっ!ご、ごめんなさい!ついペロロ様の良さをわかってくれた事が嬉しくて...」

 

あまり周りにモモフレトークを出来る人がいないのもあり、つい興奮してしまったヒフミは少女に言われ自分達が注目を集めているのにようやく気がついた。

その事に少し恥ずかしそうに顔を伏せたヒフミを見ながら目の前の少女は言葉を続ける。

 

「そうですね...では私も一緒に探すのを手伝いますよ」

 

「えっ!そ、そんな悪いです!」

 

「実は私も買い物に来ていた途中だったんです。ついでというのもありますし、ここで出会えたのも何かの縁ですから、是非手伝わせてください」

 

そう言って彼女はヒフミに微笑んだ。

 

「あ、ありがとうございます!えっと...」

 

「ああ、私はゲヘナ学園に通う朝宮サエです。では行きましょうか?」

 

「はい、よろしくお願いします朝宮さん!」

 

 

 

 

 

それから数時間後、商店街の通りには荷物を抱えた二人の少女がいた。

 

「朝宮さん、今日はありがとうございました」

 

「いえ、大丈夫ですよ。私の方こそ買い物に付き合わせてしまってすみません」

 

「いえ!お陰でぬいぐるみも買えましたし、私も楽しかったですから」

 

ヒフミは目当てのぬいぐるみやその他に買った商品の入った大量の袋を大事そうに抱えながら、サエは扇風機と除湿機の箱を両手で持ちながらお互い並んで歩いていく。

 

「ほう、トリニティには紅茶部があるのですか」

 

「はい、皆さんでお茶会をするのが基本の様ですが...」

 

「いいですね、私も少しですが学園内のイベントで紅茶を淹れた事もあったので....いつかその方達の紅茶を飲んでみたいですね」

 

時間も経ち自然と打ち解けた二人はそんな雑談を交わしながらバス停までの道を進んでいく。

やがて目的地に着くと、タイミング良く遠くの方からヒフミの乗るバスが向かってくる所だった。

 

「朝宮さん、改めてありがとうございました!」

 

「私の方こそ感謝します、あの子達に良いお土産も買えましたしね」

 

そう言ってサエは袖に入れてあった巾着袋を取り出し、その中からいくつかストラップを手に取った。

彼女が取り出したそれにはモモフレンズ達の絵が描かれており、ぬいぐるみが売っていた店でたまたま見かけた際にサエが購入したものだった。

 

「私もモモフレンズを好きになってくれた人が増えて嬉しいです!また今度色々お話ししましょうね!」

 

「ふふ、楽しみにしています」

 

それからやってきたバスに乗り込んだヒフミが見えなくなるまで手を振り見送ったサエ。

こうしてゲヘナとトリニティの少女達の出会いは幕を閉じたのだった。

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