ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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誤字報告ありがとうございます。

それと、数日前から体調を崩してしまったせいでまだ続きが書けていないので次回の投稿は遅れるかもしれません。


お饅頭

「おー」

 

私は今、普段からよく宝くじを買いに来る時やバイトの時に寄る商店街を見て一人声を上げていた。

視界の先に見えるのは、制服やら私服やらの色んな格好をして並んでいる自分と同じ学生達。

 

「これは...念のため早く来たつもりでしたが結構並んでいるものなんですね」

 

私の隣に立ってたサエが目の前に並んだ長蛇の列を見て驚いた様に溜息をついている。

 

「これ程までに人が多いとなると、余程味の方が良いのでしょうか?」

 

「サエはあんまりこういう限定品とか買ったりしないの?」

 

「そうですね、私自身普段から買い慣れてるもので満足してしまう方ですし....」

 

「でも前ミオの着物買いに行った時、限定の湯呑み買ってた。湯呑みはあの部屋に沢山あるのに」

 

「そ、それは別です。あれは少し変わった形の飲み口がどうしても気になってしまって...ほ、ほら!スペースが空いたみたいですし、私達も並びますよ」

 

そう言って少し誤魔化した様子のサエに肩を押され、私達は列の後ろに並ぶ事に。

背が低いせいで前の方はよく見えないけど、それでも私達以外にかなりの人数がいるのは前から聞こえてくる話し声や大きさで何となくわかる。

 

「す、凄い人の数ですね...こんなに並んでるの見た事ない....」

 

「あっ、じゃああたしそこら辺の自販機で水買ってきますよ!見た感じ長い事立ってなきゃいけないっぽいんで!」

 

私の後ろに並んでたアサリはサエと同じく列の長さに驚いて、ある意味感心する様に前の方を見つめている。

ミオはこれからまだ時間がかかると思って水を買いに走っていった後、それから数分もしない内に笑顔を浮かべて戻ってきた。

 

「お待たせしました!はい姐...朝宮先輩!それとお二人もどうぞ!」

 

「...まだ外での呼び方に慣れてないみたいですね....ですがわざわざありがとうございます川根さん、後でお金はお支払いしますので」

 

「ありがとうミオちゃん」

 

「うん、ありがとう....冷たい」

 

私はミオが買ってきてくれた『キヴォトスの山脈、透き通る天然水』とラベルに書かれたペットボトルを口につけ中の水を喉に流し込んでいった。

 

自販機の中でかなり冷やしていたのかその冷たさに一瞬だけびっくりしちゃったけど、この暑さの中では丁度良いくらいかもしれない。

 

「川根さん、後どれくらい並んでいるかわかりますか?」

 

「えっと...さっきよりはだいぶ減ってますよ!意外とすぐ順番は回ってきそうです」

 

「ふむ、進みは順調みたいですね。後は私達の番がくるまでに買えるかどうかですが...」

 

四人の中で一番背の高いミオが見た所によると、最初の頃よりは列も少なくなってるらしい。

もうすぐあのチラシにあった饅頭を食べられると少しだけワクワクしていると

 

「あれ?もしかして朝宮さんですか?」

 

私達の後ろの方からサエの事を呼ぶ聞き覚えの無い声が聞こえてきた。

 

「その声は...阿慈谷さんではありませんか、お久しぶりですね」

 

「また会えるなんてびっくりしました!」

 

そう突然現れたのは鳥みたいな不思議なリュックを背負って、手には大きな買い物袋を持っている見知らぬ女の人。

サエの表情と話し声からその人とは知り合いの関係だとわかる、でも誰なんだろう。

 

「先輩、お知り合いなんですか?」

 

サエ達の様子に気になっていたアサリが聞くと、サエは話すのを忘れてたといったリアクションをして教えてくれた。

 

「以前、私が扇風機と除湿機を買って帰った事があったでしょう?彼女とはその時偶然出会ったんです」 

 

「はい、その時私はペロロ様のぬいぐるみを探してて...道に迷ってた時に朝宮さんが助けてくれて」

 

「まあ助けたと言うほど大袈裟なものではありませんが、それ以来たまにモモトークで話していたんですよ。あの時皆さんに渡したお土産も彼女に色々教わって買えたものなんです」

 

「あっ、前に先輩から貰った可愛いアルパカが写ったストラップですか?」

 

「あたしの場合、ペンギンみたいなキャラのやつでしたね」

 

「私は長いネコ」

 

「わぁ!ピンキーパカさんにアングリアデリーさん、ウェーブキャットさんですね!」

 

前にサエからお土産として貰った謎のストラップ、少し変わった感じのキャラクターが表面に描かれてて貰った時は驚いたけど、よく見れば可愛いとわかって今では鞄のチャック部分に全員つけてるやつだ。

 

あれに描かれてたキャラクターの名前はわからなかったけど、ペロロの子が少し興奮しながら話してくれたおかげで知る事が出来た。

 

「ところで阿慈谷さんは何故ここに?」

 

「実は最近またペロロ様の限定グッズがあると聞きまして!ほら、今回はウェーブキャットさんみたいに身体が伸びた姿を模した抱き枕なんです!」

 

「ほう、これは中々いい感じですね」

 

「ですよね!普段のペロロ様は丸みを帯びた身体つきなんですけど、この伸びた姿もまた可愛くて....」

 

「....な、何か凄く情熱的な人みたいだね」

 

「うん、凄い説明量」

 

「姐....朝宮先輩、ああいう感じのキャラが好きなんですかね?ならあたしも色々勉強しないと...」

 

私達は未だにペロロという鳥の魅力を語り続けている子と、頷きながら満足そうにそれを聞いているサエを見ながらそんな事を話していた。

 

それからまた時間が経ったが、私達は最初の頃よりも明らかに前の方に進めていた。

ただじっと待つだけだったらきつかったけど、あれからペロロの子と色々話をしていたお陰で暇な時間がくる事も無く意外と楽に待つ事が出来た。

 

そもそも何故自分達が並んでいるのかを聞かれて答えてたり、今度海に出かける事を話したら向こうも同じ様にトリニティの海に遊びに行く事を教えて貰ったり...そんな色んな事を話す内にようやく目的だったお店の看板が視界に入る。

 

サエ達もようやく見えてきたお店の外観に笑顔を浮かべていたけど

 

パンッ!パパパパッ!!!

 

そんな時突然前の方から何発も銃の音が聞こえてきた。

 

「な、何事ですか!?」

 

ペロロの子もいきなり響いた発砲音に驚いてキョロキョロと周りを見渡してる。

 

「あ、おい!私が先に並んでたんだぞ!」

 

「あんたこそ電話してて足が止まってたんだから!進まないなら入ってもいいでしょ!」

 

「駄目に決まってるだろ!ここは私の場所だ!」

 

「さっきから聞いてればうるさいな、喧嘩するなら退いてくれない?早く前行って欲しいんだけど」

 

「お前は関係ないだろ!」

 

「はぁ?関係あるでしょ!何その態度!」

 

銃声と共にギャーギャーと前から聞こえて来る怒声が大きくなり、その喧嘩の合間に再び何発もの銃弾が飛ぶ音が聞こえてくる。

 

「あわわわわ!た、大変です!」

 

「さっきまで何も無かった場所でも喧嘩が起こってるみたいです!」

 

「きっと皆さん長時間待って疲れていた事も原因なのでしょう...」

 

「た、大変じゃないですか!このままじゃ他の店の人達にも被害が....」

 

サエ達が状況を分析していく間も聞こえてくる喧嘩の声は無くなるどころか、もっと大きなものになっていく。

 

「サエ、どうするの?」

 

私はそんな状況に思わずサエを見上げて尋ねてみると、そこには溜息をついて目を閉じながら何かを考えているサエの姿があった。

 

「.....仕方ありません、目的はただの買い物でしたが今はそんな事を言っていられないですね。他のお店にも被害が出るのはいけませんし....宇治さん」

 

「そうですね...関係ない人達が巻き込まれるのは駄目です」

 

サエに呼ばれたアサリはそう言って腰に身につけてたサブマシンガンを手に持った。

 

「川根さん」

 

「姐...朝宮先輩がやるなら勿論あたしもお供しますよ!」

 

ミオはやる気満々の様子で背中に背負ってたショットガンを取り出した。

 

「狭山さん」

 

最後にサエは隣りの私を見つめてくる。

 

「うん、私もやる。お腹空いてたから食べ物の恨みは恐ろしいって事を教える」

 

私はそう答えてから腰にぶら下げていたハンドガンを構えた。

 

「わ、私も協力します!このまま喧嘩を放っておく訳にもいきませんから!」

 

この騒ぎにペロロの子も協力しようと、肩から下げていたピンク色のアサルトライフルを装備する。

 

「阿慈谷さんまで...ありがとうございます」

 

サエはそんな私達を見て微笑むと、自分も着物の袖からハンドガンを取り出して口を開いた。

 

「では、行きましょうか」

 

 

 

 

その日、近くの住人の話によれば、ゲヘナの商店街からは二十分以上に渡り銃声が鳴り響いていたとの事。

 

残念なことに今回の様な騒ぎがまた起きたら困ると判断した店側は、翌日以降限定品の販売を中止するとその場で話したそうだが、最後にこの騒ぎを鎮めようと尽力してくれた人達にお礼として残っていた饅頭をあげたそうだ。

 

それを受け取った一人の少女は、とても幸せそうな顔で饅頭を頬張っていたという。

 

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