「わぁ!凄く綺麗な所ですね...!」
「空気が気持ちいい」
「やっぱこういうのってテンション上がりますよね!」
車から降りた私達の目の前に広がるのは彼方まで続く青く透き通った海に、陽の光によって白く輝いている砂浜でした。
普段の学校生活では見ることの無い美しい景色に宇治さん、川根さん、狭山さんはそれぞれ目を輝かせて遠くの海を夢中になって見つめています。
「本当に綺麗な場所ですね....やはり来て正解でした。さあ皆さん、夢中になるのは良いですがまずは荷物等を運んでしまいましょう」
「あ、はい!わかりました!」
いつまでも見ていたくなる景色ですがこのままここで時間を使ってしまうのは勿体無いです。
それにコテージの管理人の方を待たせてしまう事にもなります、そう思った私は彼女達に声をかけると
予約していたコテージを目指して歩き始めました。
「予約したコテージって何処なの?」
「ここからそんなに離れてはいない筈です。調べた所この時期はかなりお客さんが来るそうなので、あまりご迷惑をかけない様に気をつけましょうね」
ここへ来る前に調べた情報ですが最近この辺りは観光事業を進める動きが強いらしく、ここから少し離れた所にあるホテルの周辺等で改装工事も行われているそうです。
今回私達が泊まるのはコテージではありますがそれでも関係が無いわけではなく、元々人気の土地というのもありかなり人が出入りする有名な場所な様ですのであまりはしゃぎすぎるのも....
「...姐御、地図だとここみたいですけど」
「あ、あれ、おかしいですね...何か人気があまりないような....」
「何だか凄く静かですね...」
と考えていた私達の前に現れたのは、明らかに閑古鳥が鳴いている様な空気が漂っているコテージ。
それらは等間隔にいくつも建てられている様ですが、その一つ一つからはまるで人の気配が感じ取れません。
...まさか情報が間違っていた?そう疑問に思っていると
「おお、もしかしてご予約のお客様でしょうか?」
少し離れた場所から物腰が柔らかそうな年配の人物がこちらに声をかけてきました。
「は、はい、予約していた朝宮サエです...あの、ひとつお伺いしてもいいでしょうか?」
「ええ、構いませんとも。きっとこんなにも人がいないのが不思議なのでしょう?」
管理人の方はまるでこちらの考えている事がわかっている様な素振りを見せると、それからゆっくりとその訳を話し始めました。
「実は本来であればお客様の想像通りここは賑やかな場所だったのですが....最近になってこの辺りにスケバンの方々がやって来ましてね、それに伴い彼女達と元々スラム街を占拠していたヘルメット団の方々が度々争う様になりまして...」
「そしてとうとう今日その二つの組織が大きな争いをするとの噂が立ってしまい、そのせいもあり近くに店を構えていた方や他に予約されていたお客様は全員来なくなってしまったのです」
そう溜息を溢しながら事情を話す管理人さんの言葉を受けて、私達は思わず顔を見合わせてしまいました。
(...確かに車の中でそんな感じの話を川根さんがしていましたが、まさからここまで大きなものになってしまっていたとは....)
「なので折角来ていただいたお客様には申し訳ないのですが、あまりご紹介できるお店等が無いのが現状でして...一応ここから少し歩いた所にはスーパー等色々とあるので、何か他にご質問があれば仰ってください」
「わかりました、お気遣いありがとうございます」
そうしてペコリとお辞儀をすると、管理人の方はニコニコと笑顔を浮かべ私達にコテージの鍵を渡すとこの場を去っていきました。
「そんなに大事になってたんですね」
「予想外」
「ですね、まあでも皆さんで海に遊びに来る事が目的でしたし、ここから離れた所にお店があると先程言っていたのでご飯の心配はしなくても良さそうです」
「安心してください!もし噂の不良達が現れてもあたしが姐御達には指一本触れさせないんで!」
「あ、あんまり揉め事は起きない方が望ましいのですが...とりあえず鍵も貰いましたし、中に入って荷物の整理を終わらせてしまいましょうか」
「そうですね、ベッドの場所も決めないといけませんし」
「私端っこが良い」
そんな事を呑気に話しながら、私達はようやく本日泊まるコテージへと足を踏み入れたのでした。