ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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立場は違えど

「熱っ...美味っ....!」

 

「こっちにもタレ頂戴!」

 

「こんなに柔らかい肉食べたの久しぶりだ...」

 

「あ、それアタシが目をつけてたやつだろ!」

 

「違う、ウチが先に狙ってたやつだ!」

 

コテージ前にはお肉や野菜が焼かれる音と共に、それらを夢中になって頬張っている少女達の声が響いています。

 

「焦らなくともまだ食材はありますから、喧嘩せずにゆっくり食べてくださいね」

 

つい先程までは体力の限界を迎え明らかに弱っていた彼女達、ですがいざ調理されたお肉を口に含んだ瞬間目の色を変えて食べ始め、今ではすっかり元気を取り戻していました。

 

「お前達、姐...朝宮先輩が折角焼いてくれてるんだから大人しくしろ!」

 

「まあ余程お腹が空いていたみたいですし、そこまで気にしなくても大丈夫ですよ。ほら川根さん、こちらもいい感じに焼き上がったので川根さんもどうぞ」

 

「え、あ、ありがとうございます!」

 

「美味しい、いくらでも食べられそう」

 

「きょ、キョウカちゃんもう少し野菜も食べないと...」

 

私は彼女達の声に耳を傾けながら次々と食材を取り出し鉄板の上に乗せていきます。

 

その作業の合間に何度か自分の分をつまんでみますが、いつも食べている食事と比べて何だか独特な美味しさを感じる事ができました。

やはり普段とは違う特別な雰囲気というのが影響しているのでしょうか....。

 

そんな事を一人考えつつ暫く時間が経った頃

 

「はい、このトウモロコシも美味しいよ」

 

「あ、あざっす宇治さん!」

 

「資金が足りないなら宝くじを買えば良い、最近は当たる傾向が読めてきた気がするから」

 

「本当か!それならうちの団ももっと大きく...いや、気がするだけなら駄目なんじゃ...」

 

「なあ、あんたも最近まではウチらと同じクチだったのか?何か雰囲気が似てるような気がするんだけど」

 

「ん?ああ、あたしの場合はちょっと違うけど、まあ元々郊外ではぐれもんだったのは事実だな」

 

やはり一緒に食事を楽しみ同じ時間を共有すればどんな人であろうとそれなりに仲良くなれるもので、あれ程警戒していた彼女達も今では宇治さん、狭山さん、川根さんの三人と楽しそうに会話をしていました。

 

「なあ、さっきのお茶ってまた飲めるのか?」

 

「まだ茶葉には余裕がありますし大丈夫ですよ、もう一杯飲まれますか?」

 

「...アンタが良いなら頼む」

 

「ならアタシの分も良い?」

 

「ふふ、お安い御用です。では少々お待ちください」

 

そんな彼女達を見守る中、私はバーベキュー台の隣のテーブルでお茶を淹れていました。

正面から興味深そうにこちらを見つめる彼女達の視線を受けつつ、持参した茶道具を用いてきっちり二人分のお茶を作り彼女達に差し出します。

 

「すご...なんかこういう本格的なの初めて見た...」

 

「ウチも、いつも水か自販機で買ったもんしか飲んでなかったから...朝宮さんはこういうの詳しいのか?」

 

「ええ、お茶の事に関してはそれなりに勉強していますからね。お二人が少しでも喜んでいただけたのなら何よりです」

 

「....なあ朝宮さん、アンタは何でアタシらがここにいるとか聞かないの?」

 

私はヘルメットを外した少女と、サングラスを身につけている少女の二人がお茶を飲み終わるのを静かに見つめていると、突然目の前に座る彼女からそんな事を尋ねられました。

 

「アタシらが言うのも変だけどさ、自分達みたいなどこの馬の骨だか知らない奴に普通はこんな対応しないだろ。もっと理由を問い詰めるとか....」

 

「...今日ヘルメット団とスケバンの抗争があったとは一応噂で聞いていましたし、それが貴方達の事だとは想像つきますが...私は貴方達に何か問い詰めたりするつもりはありませんよ。争ったのも何かしら事情があったのかもしれませんし、それを部外者である私が尋ねるのは失礼でしょうから」 

 

「それに、食材を多めに買ってしまって困っていたのは事実ですからね。私からすれば貴方達が来てくれて助かりました、ありがとうございます」

 

「「.......」」

 

私がそう言うとお二人は黙り込み、その後お互いに視線を合わせるとどこかバツの悪そうな顔をして徐に口を開きました。

 

「....なんかあんなにウチとアンタらがやり合ってたのが馬鹿らしくなっちまった...悪かったな、ウチらは一ヶ月くらい前に別の海岸であった勢力争いに負けちまってここに流れ着いたんだ、そのせいでむしゃくしゃしててついアンタのとこにちょっかいかけちまって」

 

「いや、アタシ達こそ変に挑発してた部分もあったから別にそっちだけが悪い訳じゃないさ」

 

なんだか色々と彼女達の間にあったという事が聞こえてくる話から伝わってきますが、何はともあれ無事険悪な関係が改善されそうで良かったです。

 

「先輩、トウモロコシってまだありますか?」

 

「ええ残っていますよ。待っててください、今そちらに持っていきますから」

 

 

 

  

「でも結局あの連中にはボロ負けだったよな、アタシらもまだまだって事だ」

 

「ならここは手を組まないか?あっちもまさかウチらが協力するだなんて思ってもないだろ」

 

「いいね、丁度あの一番厄介な奴が居ないらしいし。散々痛めつけてくれた借りを返してやろう」

 

....ん?今何か変な事を二人で話していた様な気もしましたが...気のせいでしょうか?

 

 

 

 

 

「ふぅ....もう食べられない...」

 

「こんなに腹一杯に食べたのはほんと久しぶりだ....」

 

バーベキューを始めてから一時間程経過し、用意した食材もハルナさん達に貰ったトウモロコシ以外は無事全て使い切る事ができました。

お腹もいっぱいになり、宇治さん達を含めて全員が満足そうな顔を浮かべているのが見て取れます。

 

「その...少しの間だけどアンタらには世話になったな、助かった。結局こっちがご馳走になっただけになっちまったし」

 

「いえ、私達も楽しかったので気になさらないでください...この後はどうするのですか?」

 

「昼間に逸れちまった仲間の所に向かうつもりだ、それに色々と話し合わなきゃいけない事もできたしな」

 

「朝宮さん、アンタのおかげでアタシらはもっと強くなれそうだよ。よしお前ら、さっさと戻るぞ!」

 

「おお!」

 

「バーベキュー、美味かったっす!」

 

「また何処かで会ったら今度はウチらがお礼するんで!」

 

最後に彼女達は私達にそうお礼を告げると、ここに来た時とは比べものにならない程に意気揚々と暗闇の中を歩き去って行きました。

 

「.....いやぁ、結構面白い奴らでしたね!」

 

「私も色々話せて楽しかったです」

 

「人は見かけによらない」

 

どうやら三人の様子を見る限り、予想外の始まり方をしたバーベキューは大成功に終わったようです。

...途中で彼女達がしていた会話内容が若干気になる所ですが....何もない事を祈りましょう。

 

「私達もそろそろコテージに戻って休むとしましょうか、明日は帰る準備もしないといけませんし」

 

「そうですね、ふわぁ....そう思うと何だか急に眠くなってきちゃいました...」

 

まるで今までの疲労が一気に押し寄せてきた様な感覚に襲われた私達は、四人で今日の感想を言い合いながらコテージの寝室へと向かい、そのまま倒れる様に眠りについたのでした。

 

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