ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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書きたい事を纏めるのが下手すぎて、いつもよりも長くなってしまいました。
読み辛かったら申し訳ありません。


思い出

ベッドが並ぶ寝室にて、窓に取り付けられたカーテンの隙間から暖かい一筋の陽の光が差し込んでいました。

 

太陽の角度が丁度私の顔を照らす様に傾き始め、瞼の裏に明るい光を感じた事で私の意識はようやく目覚め始めます。

 

「...んんっ......」

 

ベッドから身体を起こしまだ若干寝ぼける頭を落ち着かせてから枕元に置いてあった携帯の画面を覗き込むと、そこに表示されていた時刻は既に十時過ぎ....念の為目覚ましをかけていたのですが、あまり意味をなさなかったみたいです。

 

「...すっかり寝過ごしてしまいましたね」

 

普段滅多に寝過ごす事はないのですが、きっと遊んだ疲れが相当溜まっていたのでしょう。

コテージに戻ってベッドに寝転んでからの記憶がありませんし、どうやら昨日はあのまま寝てしまったようです。

 

今日の夕方には学園の方へ戻る予定ですので、今のうちに荷物の整理をしてしまいましょうか。

 

「...でもまずはこの髪を何とかしなければいけませんね」

 

私は少しばかりボサっと崩れてしまった髪を撫でながら、一人浴室へ向かうのでした。

 

 

 

 

髪も乾かし寝巻きから私服に着替え終えた私が再び寝室に足を踏み入れると、そこにはそれぞれのベッドで静かに寝息を立てる三人の姿が。

 

「宇治さーん...狭山さーん...川根さーん....朝ですよー」

 

私は音を立てない様彼女達の眠るベッドに近づき小声で三人に呼びかけますが、余程深く眠りについているのか中々目を覚ましてくれません。

今度は毛布を軽く揺すりながら先程同様に声をかけ続けていると、そこでようやく反応が返ってきました。

 

「うぅ...」

 

「宇治さん、おはようございます」

 

「....?...っ!え、せ、先輩が何でここに!?」

 

まず最初に目を覚ましたのは宇治さん。

彼女は目を細めながらぼんやりとこちらを見つめた後、何故か驚いたかの様に飛び起きました。

 

「あ、そっか...私先輩達と海に来て...す、すみません、てっきり自分の部屋だと勘違いしちゃって...」

 

「ん〜....」

 

慌てて謝罪をする宇治さんの声に反応したのか、先程まで毛布の中に包まっていた狭山さんがモゾモゾと動き出し、こちらに頭だけを覗かせています。

 

「おはようございます狭山さん」

 

「....ご飯?」

 

「まあそれもありますが、今のうちに帰る準備を終わらせておいた方がいいと思いまして」

 

「わかった、起きるから五分待って...」

 

「その言葉は大抵二度寝の合図なのですが...」

 

そう言って再び毛布の中に潜り込んでしまった彼女を宇治さんに任せ更に奥のベッドへ近づくと、そこに寝ていた川根さんは豪快に毛布を蹴飛ばし寝息を立てていました。

 

「川根さんもおはようございます」

 

「んむ...あれ、姐御...?も、もしかしてもう朝ですか!?しまった、一番に起きて姐御達に挨拶する予定が....それにこんなみっともない姿を見せてしまうなんて...」

 

「だ、大丈夫ですよ。私は全然気にしていませので....ひとまずこれで全員起きましたね、では時間も勿体無いですし、皆着替え終わったら準備を始めましょうか」

 

 

 

 

 

 

「先輩、残りはここに纏めちゃっても大丈夫ですか?」

 

「構いませんよ、ありがとうございます」

 

ようやく全員が眠気から解放された後、部屋で荷物を纏めた私達はコテージの外で昨日使用したバーベキュー道具の片付けを進めていました。

が、持ってきた椅子やテーブルを畳みコテージ周辺の掃除もそろそろ終えそうという所で、何かが入った籠を背に歩いてくる管理人さんの姿が視界に入ります。

 

「おはようございます、管理人さん」

 

「ああお客様方、起きていらしたんですね。丁度よかった」

 

「ええ、昨晩コテージを使わせていただきありがとうございました...えっと、何か私達にご用でしたか?」

 

「いやぁ大した事ではないんですがね。ほら、昨日この付近で抗争があってろくにお客様をおもてなし出来なかったのがずっと申し訳なく思っておりまして。そのお詫びと言ってはなんですが、こちらをどうかなと」

 

そう言って管理人さんが背中から取り出したのは丸々と大きく育ったスイカ、それもどうやら一つではないらしく、籠の中には同じ様なスイカがいくつも積まれています。

 

私達としては十分楽しませて貰っていたので何だか逆に申し訳無く遠慮していたのですが、管理人さんがどうしてもと譲らなかった為これ以上断るのも失礼だと思い、最終的にスイカを受け取る事となりました。

 

「うぅむ、どうしましょうか...」

 

しかし管理人さんが去った後に改めて貰ったスイカを見てみますが注目すべきはその大きさと数です、流石にこれを全て食べ切るとなると四人では厳しいでしょう。

 

「あ、じゃあ折角なんでスイカ割りしません?やっぱ夏にスイカといえばスイカ割りですよ!」

 

目の前に転がるスイカに頭を悩ませていると、川根さんがそんな提案をしてきました。

成る程...確かに良いかもしれません、良い思い出にもなりますし、それに多少残った分には車で持ち帰る事が出来るので何とかなりそうです。

 

「いいですね、やってみましょうか」

 

「なら叩く棒が必要ですね...ちょっと探してきます」

 

「じゃあ使わなかったタオル持ってくる」

 

私以外の二人もやる気になったようで意気揚々と駆け出していき、それから少しして狭山さんは目隠し用のタオルを、宇治さんは海岸沿いに落ちていた手頃なサイズの木の棒を持ち帰ってきました。

 

「よし、じゃあ早速あたしからいかせていただきます!」

 

一番手は提案した当人である川根さん、早速タオルを目元に巻き気合を入れてその場で何回転か回り終えると、彼女はその勢いのままこちらが指示を飛ばす前に一気に走り出して行きます。

 

「は、速いっ!」

 

「もらったぁ!!!」

 

既に彼女の中では勝ちを確信しているのか迷う事なく腕を振り上げると、そのまま地面に向けて思い切り棒を叩きつけました。

 

バァンッと力強い音が響き、その衝撃で辺りには砂が飛び散ります。

そうして川根さんが自信満々にニヤリと笑みを浮かべ目隠しを取ると...

 

「...あれ?」

 

そこにあると予想していた筈のスイカはどこにも無く、残念ながら彼女の数メートル後方に綺麗な状態で残っていました。

 

「惜しいですね、通り越してしまったみたいです」

 

「そ、そんな....」

 

「じゃあ次私やる」

 

二番手は狭山さん、ガックリと肩を落とした川根さんから棒と目隠しを受け取ると先程同様に何度か回転してヨロヨロと進み始めます。

 

「キョウカちゃん、少し右ー!」

 

「いい感じです、そのまま真っ直ぐですよ」

 

「あ、もうちょい左にズレてください!」

 

私達の言葉に耳を傾けゆっくりと歩を進めていた狭山さん、ですがスイカまでの距離が残り半分程度まで近づいたかと思うと、フラフラとその場に座り込んでしまいました。

 

「狭山さん、大丈夫ですか!」

 

慌てて彼女の元に駆け寄ると、狭山さんは息を切らしながらこちらを見上げ

 

「....さっき回ったので酔った...無念」

 

そう一言呟くとそのまま砂浜に寝転んでしまいました。

 

「サエ、仇をとって」

 

「いえ、仇も何も狭山さんの場合まだ何もしていないような....まあそろそろ一つ目を割らないと帰るまでに時間も足りなくなってしまいますからね、お任せください」

 

「先輩、頑張ってください!」

 

震える手を伸ばす狭山さんからタオルと棒を受け取りスタート地点に移動すると、私は小さく息を吐いてその場で回り始めます。

 

(こういう時は心を落ち着かせれば意外とすんなり上手くいくものです。そう、まさに普段あの部屋でお茶を淹れている時のように....)

 

そう自身に言い聞かせた私は砂を踏み締めながら、一歩一歩着実にターゲット目掛けて歩いていきます。

 

「先輩、そのまま直進です!」

 

「あともう少し」

 

「良い調子ですよ!」

 

少し離れた所から聞こえてくる宇治さん達の声を頼りに距離を縮めていくこと数十秒、ついに待ち望んだその瞬間がやって来ました。

 

「先輩、後は思い切り振るだけです!」

 

その言葉を聞いた私は手に持った棒を改めて強く握りしめ、空高くまで持ち上げてゆきます。

目隠し越しに感じるスイカの面影、それを想像して背中を反らせて一気に棒を振り下ろし.....

 

「あら、何だかとても楽しそうな事をしていらっしゃいますね?」

 

不意に遠くから聞こえてきた聞き覚えのありすぎる声に動揺した私は、バンッ!と明らかにスイカでは無い乾いた音を鳴らしてしまいました。

 

つけていた目隠しを取り下を見てみると、やはり今私が叩いたのは地面の砂....その僅か数センチ横には未だに綺麗な形を保っているスイカが置いてあります。

 

最早見なくとも誰かわかる程に聞いてきた声の主に当たりをつけて顔を上げると、そこにいたのはやはり昨日の昼間に出会ったばかりの美食研究会の四人...

 

「...っ!?ど、どうしたのですかその格好は!?」

 

ですが、四人の予想外の姿に私は思わず驚きの声をあげてしまいました。

彼女達の服はまるで爆発に巻き込まれたかの様に所々黒く焦げており、誰が見ても確実に何かが起こったとわかる状態になっています。

 

「昨日ぶりですわねサエさん。あら、そちらの方々はあの時言っていた後輩の方々でしょうか?どうも、黒舘ハルナと申します」

 

「あ、ど、どうも....」

 

「いえハルナさん、挨拶よりもその姿が気になり過ぎて話が入ってこないのですが...」

 

「ああこれですか?実はつい先程風紀委員と戦ったばかりでして、見事にやられてしまいましたわ」

 

「あの風紀委員長ホントに強すぎ、あんなの反則でしょ」

 

「流石はヒナさんでしたね〜」

 

成る程、風紀委員会を相手にしていたのですか。

それならその負傷具合も納得.....

 

「ちょっと待ってください、空崎さん達もこの海岸に来ていたのですか!?」

 

「ええ、どうやら今年はサエさん達の反対側のエリアで毎年恒例の合宿訓練を行っていたそうです。私達以外にも不良の方々がいらっしゃったので、今は彼女達の追跡をしている所だと思いますわ」

 

「もう、折角沢山稼げると思ったのに誰も買ってくれなかったし!」

 

「持ってきたトウモロコシもさっきの戦いで殆どポップコーンになってしまいましたしね〜」

 

「でも美味しいから大丈夫だよ!」

 

まさかそんな事が隣であったとは...確かに時々遠くの方から銃声が聞こえていたので不思議には思っていましたが...となると昨日会った彼女達は風紀委員の方にやられて逃げていた最中だったということなのでしょう。

 

「...先輩、何だか私達が知らない内に大変な事態が起こってたんですね」

 

「全然気づかなかった」

 

「多分その時あたし達、呑気に寝てましたね...」

 

「まあ話を聞く限りどうやら既に事態は収まったようですので、そこは一安心ですかね」

 

ハルナさん達も特に大怪我は負ってはいないようで、どこか余裕そうな佇まいで腕を組んでいます。

 

...そういえばすっかり忘れていましたがスイカ割りの途中でしたね、結局まだ一つも割れていないのですが....ん?

 

「....ハルナさん達はこれから少し時間はありますか?」

 

「ええ、特に予定はありませんわ」

 

「でしたらご一緒にスイカ割りをしませんか?まだ始めたばかりですし、こんなに美味しそうなスイカを私達四人だけで食べるのは勿体ないですから」

 

私の言葉に目をパチパチとさせながら一瞬固まるハルナさん。

 

「それは嬉しいお誘いですが...そうすると折角のサエさん達の休暇をお邪魔してしまうのでは...」

 

「わ、私は大丈夫です...!」

 

「問題ない」

 

「姐...朝宮先輩が言う事ならあたしはオッケーです!」

 

珍しくどこか遠慮がちな彼女でしたが、宇治さん達の好意的な反応に目を丸くさせ驚いています。

 

「....本当によろしいのですか?」

 

「ええ、あんなに美味しいトウモロコシを貰ったお礼もしたいですし、その...友人と一緒に夏休みを過ごすというのも大切な思い出ですからね」

 

「....うふふ、そこまで言っていただけるのであれば参加しない訳にはいきませんわ。トウモロコシの探求は出来ませんでしたが、皆さんと食べるスイカはどんな素晴らしい”味”を魅せてくださるのでしょうか」

 

「トッピングなら任せて!なまこソーダにピーナッツバター、チョコも沢山あるよ!」

 

「ねぇ、本当に食べていいのよね?遠慮しないからね!」

 

「確かに先程まで運動していましたし、小腹に丁度良いですね〜」

 

 

 

こうして同じ時間を共有し始めたサエ達とハルナ達、見事に割れたスイカを囲んで座る少女達の楽しそうな談笑はそれから日が暮れるまで続いたのだった。

 

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