ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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朝宮サエの日常15 ★

海に行くという経験をした私達ですが、それからはいつも通りの日々を過ごしていました。

変わった事と言えば、まだ夏休み自体は続いているので普段よりも皆さんと茶室で一緒に過ごす時間が長いという事くらいでしょうか?

 

その事に内心嬉しく思いながら抹茶を点てていたある日、私達が雑談をしていると茶室に久々の来客がありました。

そこにいたのは万魔殿の棗さん、どうやらお茶を飲みに来たついでに何やら私に頼みたい事があるそうです。

 

私は彼女を招き入れ丁度点て終わった抹茶を差し出すと、棗さんはそれを飲みながら話を切り出しました。

 

なんでも数日前にイブキさんが花火を見たいと呟き、その話を聞いた羽沼さんがそれはもうやる気になり今度学園内で花火大会をするという計画が急遽決まったそうてす。

しかも同時に羽沼さんの偉大さをアピールする為にわざわざ花火の形を羽沼さんの顔にするというオマケ付き。

 

...相変わらず彼女の行動の速さには苦笑してしまいますが、どうやらその時花火を見に集まった他の生徒に提供するお茶を用意して欲しいとのこと。

 

まあ私達も特にする事はありませんし、それくらいなら別に負担にもならないでしょう。

何よりお茶を味わっていただけるのならこちらとしても嬉しい限りです。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

それから数日後、どんなお茶にしようかと考えを巡らせていたある日、再び棗さんが茶室を訪ねてきました。

私は先日同様に彼女を招き入れたのですが、対する彼女は何処か目を泳がせて何か言おうとするのを躊躇っている様子。

 

いったいどうしたのでしょうか?彼女のそんな態度に不思議に思っていると、棗さんは暫くして溜息をついてから口を開きました。

なんとあれから羽沼さんから、『偉大なマコト様の行動を見てもらうのだから、全員に集まってもらう必要がある』と言われ、なんと学園内にいる全員を強制参加させる事になったそうです。

 

...ん?ちょっと待ってください、確か学園に通う生徒数は数千人規模の筈....ま、まさかその数のお茶を淹れなければならないのですか!?

私が慌てて尋ねると、棗さんは申し訳なさそうな顔でコクリと頷きました。

 

これは...正直お断りしたい案件ではありますが、もし断るとあの羽沼さんの事なので何が起こるかわかりませんし、それこそ何かをやらかして巡り巡って空崎さん達や他の方に迷惑がかかってしまう可能性もあります。

 

....仕方ありません、宇治さん、狭山さん、川根さん、力を貸してください。

今こそお茶飲み同好会の力を見せる時です。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

花火大会当日。

現在私達は普段では考えられない程の速さで次々とお茶を淹れていました。

 

お湯を用意した大きめの茶釜に入れ温め、お湯が冷めない内に急須へと移し湯呑みに淹れる...永遠と終わないと錯覚してしまう程にその作業を繰り返していきます。

 

ですがその最中にも靴を踏んだなどの理由で生徒同士の喧嘩が起こったり、湯呑みの数が足りなくなり途中で食堂からコップを借りてきたりと、いくつかアクシデントがありましたが、それらを片付けながらとにかく大忙しでお茶を淹れていく私達。

 

当然流石の私や宇治さん達も額に汗をかくほど疲れてきており、本当に間に合うのか心配でしたが、それでもなんとか時間までに全員分のお茶を淹れ切ることが出来ました。

 

その事に思わず私は膝をついてしまい、安堵からか溜息が自然と溢れてきます。 

そして、色々ありつつもいよいよ花火大会が始まる合図が広場に響きました。

 

それから私達はお互いにやりきった事を讃えつつ、四人並んで静かに空を見上げたのでした。

 

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