まさかこんな日が来るとは思ってもみませんでした。
開かれた襖の所に立っていたのは昨日偶然出会ったばかりの後輩の姿。
そして私の耳がおかしくなっていなければ、先程彼女は私の同好会に入りたいと言った筈....
突然の事態に思考が追いつかなかった私は、なんとか意識を現実に戻すと彼女を茶室に招き入れます。
それからお互い無言の時間が続きましたが、意を決してここへ来た理由を尋ねてみると、彼女は緊張しながらも答えてくれました。
彼女が言う事を纏めれば、もし自分がこれから何か始める事になるのならば私の元じゃないと駄目だ、今まで色んな人と出会った中でそう思えたのは私が初めてだ、だからここで一緒に色々学ばせて欲しい...との事。
...私って彼女からそう思われる程の事をしていましたっけ?
どうにも昨日会ったばかりの私の存在を過大評価し過ぎている様な気もしますが、まあ特に彼女を拒む理由もありませんので私は快く返事をしました。
ひとまず万魔殿の所で入会希望の紙を提出してからもう一度来てほしいと宇治さんに伝え、この場を去っていく彼女を見送りました。
....そうでした、溢してしまったお茶を拭かなくては...
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今日はフウカさんが私の茶室に遊びに来ています。
私の淹れたお茶をゆっくりと飲みながら安心するかのように一息つく彼女をこっそりと観察してみると、以前食堂で話した時よりも元気そうな姿に内心ホッと胸を撫で下ろします。
そんな私の心を見透かしていたのか、彼女はあれから少しずつ自分の体調を気にかけるようになったと話してくれました。
...もしフウカさんが倒れてしまったら悲しいのは勿論ですが、おそらくゲヘナ中でお腹を空かせた生徒達が暴動を起こしてしまうでしょうから....。
その後はついに入会希望者が来てくれた事や取り止めのない雑談をしたりと、とても和やかな時間が茶室を流れていきます。
やはり友人とダラダラ過ごす時間は良いものですね....とすっかり気が緩んでいた頃、突然フウカさんがこちらに誰か近づいてくると言い出しました。
この茶室は部室棟の1番奥に位置するためここまで人が来ることは珍しいのですが...
等と考えているうちに部屋の扉からガチャりと音が聞こえると襖が開かれ、そこに私がよく知る3人...いえ4人が現れました。
空腹なのか、小さくお腹を鳴らしているアカリさん。
何か形容し難いものを口に運んでいるイズミさん。
キョロキョロと興味深そうに周りを見渡しているジュンコさん。
そして、私達2人を見て満面の笑みを浮かべるハルナさん....今この空間で最も遭遇したくなかった美食研究会の4名がこちらを見つめていました。
ああ...私達が一体何をしたと言うのでしょうか。
彼女達はそれぞれ縄を手に持ちながら、ジリジリとこちらに近寄ってきて......
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私がハルナさん達に攫われた日から数日、宇治さんが改めて茶室を訪ねてきました。
あの日の内に必要な書類を提出しようとしたそうですが、丁度その時万魔殿の担当者が休みで対応が遅れてしまったため、結局提出出来たのは今日の朝だったとの事。
少し間は空いてしまいましたが、本日から正式にお茶飲み同好会のメンバーとなった宇治さんはやる気満々な様子で私に挨拶をしてきます。
そこまで気合いを入れるような活動はしないのですが、変に訂正して宇治さんのやる気を削ぐのも悪いですし、何よりここまで真剣にお茶について学ぼうとしてくれる姿勢が素直に嬉しかった私は早速お試しとしてお茶を淹れて貰う事にしました。
軽い説明だけを済ませ宇治さんに全てを委ねると、彼女は初めての作業に緊張し手を震わせながらお茶淹れの工程を進めていきます。
湯を沸かし、温度を下げ、急須に移し、お茶を淹れる....そうして出来上がったお茶を飲んだ彼女はなんとも言えない様な微妙な表情を浮かべていました。
私にも淹れて欲しいと頼むと彼女は他の人に飲ませる程じゃないと慌てて断ろうとしていましたが、私が一向に退かない事に根負けすると、もう一度淹れたそのお茶を恐る恐る差し出してきました。
確かに変に苦味が強くお茶としては不十分かもしれませんが、彼女がお茶を淹れたのはこれが初めてです。
上手くいかないのは当然、これから練習していけば良いだけの話です。
私は宇治さんにそのような事を伝えると、彼女は目を輝かせ先程と変わらぬやる気に満ちた声で返事をしてくれました。
...これからの生活が少し楽しみですね。