ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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今回は久々にいつもよりも文量が多くなってしまいました。
読み辛かったら申し訳ありません。

また、お気に入りが700件を突破していました。
いつも読んでくださる方々、本当にありがとうございます。




裏世界の住人?

ゲヘナ郊外のとある街中、そこではこれから仕事に向かうらしき方やただぶらついている方々など様々な人の行き交う姿がありました。

流れに沿う様に一人静かに歩いていた私は袖口から携帯を取り出し画面に一瞬目を向けます。

 

そこに写っているのはとあるお店の記事。

どうやら最近郊外の一画に骨董品屋が新たに開店したらしく、折角ならば夏休みが終わる前に一度見に行ってみようと考えた私は今日こうして出かけに来たという訳です。

お茶関連の道具は百鬼夜行のお店で揃える事が多いのですが、もしかするとそこには置いていない掘り出し物があるかもしれません。

 

「それにしても、今日は何だか随分と賑やかですね...」

 

そんな少しの期待を抱きながら暫く歩いていたのですが、先程から妙に周りに活気がある事に気づいた私はその場で立ち止まると、微かにですが遠くの方から普段聞き慣れない様な音楽が流れているのがわかりました。

更に耳を澄ませているとどうやら音楽に混ざり太鼓の音も鳴っているみたいです。

 

本来の目的地はまだこの先なのですが、どうしてもその正体が気になった私は進路を変え音の聞こえてくる場所へと歩を進めていきます。

近づくにつれ音はだんだんと大きく、ついにハッキリと聞こえてくる程までになり

 

「おお、これは中々凄いですね」

 

とうとう曲がり角を越えた私の視界に映ったのは先程よりも多く密集した人の波、道の端と端には焼き鳥やトウモロコシ、綿飴などの色々な屋台が立ち並んでいました。

肉の焼ける香ばしい香りや射的などの食べ物以外のお店で賑わう声が辺りに響いており、一段と盛り上がっている様子が一目でわかります。

 

(お祭りが開催されていたとは...これなら宇治さん達も一緒に誘ってみてもよかったかもしれません)

 

まさに夏を感じさせる目の前の光景に息をつきながらも、自然と私の足はそこへ引き寄せられていきます。

そうして楽しそうに笑い合う人混みの中を通り抜けながらその一つ一つを見て回っている最中、不意に見覚えのある後ろ姿が立っている事に気づきました。

 

ローズピンク色の髪に後ろ側から見えている特徴的な二本の角、更には立派なコートを肩に羽織る様に身につけている少女。

間違いありません、彼女は陸八魔アルさんです。

 

去年自販機の前で困っているアルさんと偶然知り合って、彼女が学校へ来なくなってから会う機会は殆ど無くなってしまっていましたが、どうやら以前ムツキさんから話を聞いていた通り元気に過ごしてはいるようです。

彼女もこのお祭りへ遊びに来ていたのでしょうか?

 

「アルさん?お久しぶりですね」

 

「ひゃっ!」

 

懐かしくなった私は久々に見たアルさんへゆっくりと近づき声をかけると、彼女は突然名前を呼ばれた事に驚いたのか声を上げながらこちらに振り返りました。

 

「え、貴方は...あ!サエじゃない!久しぶりね」

 

「ええ、まさかここで再会出来るとは思っていませんでした。お元気そうで何よりです、ムツキさんからは一時期テント生活になりそうだったと聞いてはいたのですが...」

 

「うっ...ち、違うわ!ただその頃はほんのちょっと家賃の支払いが厳しかっただけで....」

 

「アルちゃーん、何かあったのー?」

 

誤魔化す様に咳払いをするアルさんと話をしているとまたもや聞き覚えのある声が辺りから聞こえ、やがて人混みの中からムツキさんが顔を出しました。

 

「あれ?お茶っ娘ちゃんじゃーん!くふふ、あの時以来だね♪」

 

「社長、どうかした?」

 

「あ、アル様...何か問題でもありましたか?」

 

やがてムツキさん以外にも彼女に続き現れたのは同じくお知り合いのカヨコさん....もう一人は見覚えがありませんでしたが、以前お話しされた時に聞いた新入社員の方でしょうか。

 

「何でもないわ、たまたま知ってる子にあっただけだから」

 

「ほんとだ。久しぶり、サエ」

 

「あ、あの、この方はアル様達のお知り合いなんですか...?」

 

「うん、アルちゃん曰くうちの未来のお得意様なんだって♪」

 

「そうでしたか...!い、伊草ハルカと申します....よ、よろしくお願いします!」

 

こちらを少々怪訝そうな顔で見ていた伊草さんは慌てた様子で紫の髪を揺らし頭を下げてきます。

...とは言ってもまだ彼女達に依頼をした事は無いので本当にお得意様になれるのかはわかりませんが....頼まれれば何でもこなすとの事なので、いつかお茶会に呼んでみるのもいいかもしれませんね。

 

「そういえば貴方達の方に異常はあった?」

 

「特に問題無し、今の所は普通だよ」

 

「こっちも全然、みんな楽しそうにしてるだけかなー」

 

「わ、私の方も異常ありません!」

 

私が一人そう考えていると、不意にアルさんが真面目な顔つきで三人へ何かを聞き始めます。

 

「ああ、今のは怪しい人達がいないかの確認。さっきまで見回りしてた所だったから」

 

「見回りですか?」

 

「そうそう、私たち今依頼を受けてる最中なんだよね〜。ほら、あのお神輿見えるでしょ?あれはねー...」

 

私が不思議そうな表情をしていたのを察したのか、ムツキさんがニコニコしながら事情を教えてくれました。

話を聞くと、どうやら彼女達は今回このお祭りの主催者からとある護衛依頼を受けていたそうです。

 

そのターゲットはムツキさんが指差す方に見える大きなお神輿、何でもアレはその立派な見た目通りかなり貴重なものらしく、その価値は計り知れない程だそう。

ですが、それに目をつけたあまり良くない集団が強奪の準備をしているという噂が流れ、お神輿が盗まれる事を危惧した主催者が念の為アルさん達便利屋68へ依頼を出したのだとか。

 

「ふふふ、どう?驚いたかしら?だから今はその任務の為にパトロールをしてた所だったの」

 

「でもアルちゃんさっきまで屋台の美味しそうな料理に夢中になってたけどね♪」

 

「そ、そんな事ないわよ!別にお腹が空いてた訳じゃ....」

 

成程、そういう事でしたか...そうであれば仕事のお邪魔をするのは悪いですね。

 

「わかりました、では私はそろそろお暇するとしましょう」

 

「あら、もう帰るの?」

 

「ええ、実は別の用事でこの辺りを歩いていたんです。それに依頼中のアルさん達をこれ以上引き留めるのも申し訳ないですから」

 

「そう、ならまたどこかで会いましょう。あ、便利屋68はどんな時でも依頼大歓迎よ、いつでも連絡して頂戴!」

 

ビシッと格好つけてそう宣言するアルさんの姿に苦笑しつつもペコリとお辞儀をして私はその場から離れ...ようとした瞬間

 

ババババッ!!

 

「きゃあ!」

 

「な、何事だ!」

 

突如遠くの方から銃声が鳴り響きました。

周りにいた人々はいきなりの事態に驚き慌てふためいており、アルさん達はその音にすぐさま反応し銃声の聞こえた場所へと走っていきます。

 

「お前達全員地面に伏せてろ!変な真似したら痛い目見る事になるからな」

 

「あんな馬鹿でかいやつを売れば武器も装備も買い放題だ。それにどうせこういう時しか使い道が無いんだ、ならアタシ達が強くなる為に利用する方が有意義だろう」

 

「それに美味いもんも沢山食べられる!」

 

流石に無視して戻る訳にもいきません、私もアルさん達に続き人混みを掻き分けていくと、そこには銃を上に掲げヘルメットを被った何人もの少女達が集まり高らかに宣言をしている姿がありました。

 

「そ、そんなぁ噂が本当だったなんて...このままでは莫大な損失が....」

 

良く見ると近くに主催者らしきスーツを着た恰幅の良い人物が地面に伏せながら嘆いている姿も見えます。

そうして今にもお神輿を運び出そうとしている彼女達の前にアルさん達が立ちはだかりました。

 

「ん?何だお前達」

 

「悪いけれど依頼を受けている以上そんな簡単にアレを渡すわけにはいかないわ、どうしても欲しいなら私達を倒してからにしなさい」

 

「くふふ、流石アルちゃん♪やる気満々だね」

 

「あ、アル様のご命令ならばいつでもいけます...!」

 

「見た感じそこまで強くなさそうだけど....数だけは無駄に多いね」

 

それぞれが武器を構え目の前の集団を迎え撃つ準備をしますが、カヨコさんがいう通り相手の数は彼女達の何倍もいます。

アルさん達が強いのは知っているのでそこまで心配してはいませんが、それでも万が一というのは常につきものです。

 

お力になれるかはわかりませんが、出来るだけ早く周りにいる人達の安全を確保するという意味でも人手は多い方が良いでしょう。

そう思った私は袖口からハンドガンを取り出しながら彼女達の元へと進んでいきます。

 

「え、貴方何で...」

 

突然横に並んだ私に驚くアルさんに私は先程の考えを伝えると、彼女は頷き十分気をつける様にと私に伝えて改めて銃を構えました。

 

「へっ、それだけの人数でアタシ達とやろうってのか?しかも弱そうだ、よしお前ら!運ぶ前の準備運動の時間だ!」

 

「「「おおおお!!!」」」

 

たった五人しかいない私達を見て勝てると踏んだのか、リーダーらしき人物が号令をかけると彼女達もまた銃をこちらに向け始めます。

まさに一触即発の状態...どちらが先に動くのか周りも固唾を飲んで見守る中、不意にヘルメットの少女達の内の一人が口を開きました。

 

「...あれ?」

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、なんかあそこにいる奴に覚えがあるというか...」

 

そう言って指を私達の方へ向けて他のメンバー達とヒソヒソと何かを話しています。

....ん?ちょっと待ってください、何か主に私の方を見ている気がするのですが...

 

「あ、思い出した!アイツ、前にこの周辺の地域を牛耳ろうとしてたヘルメット団を潰したやつだ!」

 

「え?」

 

「前って...トゲトゲヘルメット団って奴らの事?いつも装備を見せびらかしたりして嫌な奴らだったけど、確かに最近見なくなったな」

 

「まさかたった一人で構成員全員を数発で地に沈めた着物女がいるって噂は本当だったのか...」

 

「えっと、あの、少々...というか大きく誤解があると思うのですが....」

 

「それに噂じゃアラバ海岸にいた他のヘルメット団とスケバン集団を手玉に取ったって話もあるそ」

 

「いがみ合ってた二つの組織を武器も使わずねじ伏せて一つに纏めて巨大勢力を作り上げたらしい」

 

「待ってください!それは完全に語弊がありますよね!?」

 

前者はリーダーともう一人を気絶させて少しお説教をしただけですし...後者に至ってはただ数人とバーベキューを一緒に過ごしただけです。

明らかに噂が別物になってしまっています、というかその噂を流したのは誰なのですか!?

 

「うわぁ、お茶っ娘ちゃんって結構やる子なんだね♪」

 

「大人しそうに見えるけど、意外」

 

「いえ事実は全然違いますからね!?間に受けないでくださいよ!?」

 

ムツキさんは揶揄う様に笑いながら、カヨコさんは少し感心する様に....って、アルさん?何故そんなに目を輝かせてこちらを見ているのですか?というか先程までアルさんの隣に居た伊草さんが見当たらないのですが...

 

「どうする、逃げた方が良いんじゃ...」

 

「いや、ここまで来て諦められるか!ついでにソイツも倒せばアタシ達の名声もうなぎ登りだ!」

 

「そうと決まればお前達!全員攻撃開s.....」

 

リーダーらしき人物がそう指示を出そうとした瞬間、ドンッ!と大きな銃声が彼女の背後から聞こえ、件の彼女は目を回して気絶しました。

 

「...さない」

 

倒れた彼女の後ろから現れたのは、いつのまに移動していたのかショットガンを構えてどこか身体を震わせている伊草さんでした。

 

「な、何だこいつ!」

 

「許さない許さない許さない!...アル様を弱そうと言うなんて絶対許しません...!!!」

 

「ひぃぃぃ!あ、あのままだと神輿に傷がぁ!」

 

混乱する少女達に囲まれながらまるで呪詛の様に言葉を吐き続ける伊草さんは、一心不乱に銃弾を浴びせていきます。

そのせいで神輿に弾が当たりそうになるのを見て主催者の方は叫びますが、彼女にはまるで聞こえていない様子。

 

「あちゃーハルカちゃんすっかり暴れちゃってるねー。でもこうなったらしょうがないか♪ほらアルちゃん、早く依頼終わらせちゃおうよ」

 

「はぁ...まあ仕方ない、とりあえずあの子達を捕縛するのが先」

 

「...っは!そ、そうね。んん...それじゃあ貴方達、行くわよ!」

 

ようやく正気に戻ったアルさんは咳払いをし、キリッと目を細め改めて指示を飛ばすと二人と共に不良少女達の元へ飛び込んで行きました。

 

そんな彼女達を見ていた私は後で絶対誤解を解こうと決意しながら、ハンドガンを手にして三人を追う様に駆け出していったのでした。

 

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