ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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前回タイトルに17の数字が抜けていたので追加しておきました。


変わらぬ時間はまた今日も

部室棟までの道のりを慣れた様子で歩く一人の少女、愛清フウカ。

夏休みを終えて数日、今日は珍しく時間に余裕ができたという事でお茶を飲みながら色々話そうと考えた彼女は、久しぶりに友人の茶室へと歩を進めていた。

 

「サエー、入っても良い?」

 

「ええ、どうぞ構いませんよ」

 

部室棟の奥にある部屋、フウカはそこの扉をノックし声をかけると中からサエの声が聞こえてくる。

早速中に足を踏み入れると、そこにはいつも通りお茶を淹れているサエの姿があった。

 

「一応定期的に会ってはいましたが、なんだか凄く久しぶりに感じますね」

 

「そうね、本当色々あったから...時間の感覚が麻痺しちゃってるのかも」

 

夏休みであっても食堂を閉める訳にはいかない為、基本的に給食部はほとんど毎日活動していた。

そのせいもあってかフウカにとってはまるで休みという感覚は無く、こうした自由な時間は久しぶりだった。

 

「どうぞ、最近新しく仕入れた茶葉を使ってみました」

 

そんな少々疲れ気味のフウカにサエは完成したお茶を彼女へそっと差し出す。

それを受け取り口に含んだフウカはその味と香りに僅かばかり目を開いた。

 

「結構さっぱりする感じね」

 

「最近では私の方も色々とありましたから、少し香りが強く疲労回復に効くものを淹れてみました。お口に合えば良いのですが...」

 

「大丈夫よ、美味しいから」

 

フウカはニッコリと微笑みながら残ったお茶もゆっくりと味わい飲んでいく。

そんな彼女の姿にサエも嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 

それから二人だけの時間が室内を占め、自然と会話の内容が夏休みの頃の話へ。

 

「サエ達は海に行ったんだっけ?」

 

「ええ、彼女達もとても楽しんでくれたのであれは良かったです。ただその間に色々とありましたが....まあ結果的に見れば良い思い出ですね」

 

「私は最初の頃ジュリと一緒に調理器具を新調しに行った時が楽しかったかな。フライパンとかお皿とか他にも色々良いのがあったんだけど、見るだけで1日終わったからびっくりしちゃった」

 

「やはり好きな事の為に何かしていると時間を忘れますよね、私も昔のことですが茶葉選びで時間をかけすぎてお店の方を困らせてしまった事があります」

 

それぞれの楽しかった思い出を語り合う中、当然それだけでは済まずに徐々に溜息が混じる様な話も溢れ始める。

 

「最近また給食部の部費が削減されちゃって、そのせいで他の子達がやれ味が薄いとか、やれもっと食べたいとかもう本当に大変だったの!しかも買い出しの予定だった時に限ってハルナに書き置きだけ残してトラックを持ってかれちゃうし....確かその時は海で美食を研究してくるとか書いてたけど何か知らない?」

 

「...もしかすると私達が海に居た時の話かもしれませんね、というかやはりあのトラックはフウカさんの許可を貰ってなかったんですか....」

 

「まああの時は珍しく傷とかも何も無いまま返ってきたから良かったけど...それが普通な筈なのに逆に驚いちゃった」

 

若干遠くを見つめる様な顔でお茶のおかわりを受け取り飲んでいるフウカ、もう彼女達の行動にすっかり慣れてしまっている自分がいる事に気づきつい溜息が漏れる。

 

「私の方も最近変な噂に悩まされてまして...何故か不良の方々の間で私が一大勢力のトップだと認識されてしまっているんです」

 

「えぇ...今度は何勘違いされる事したの?」

 

「いえ、今回は何もしていない筈なんです。ただ海に行った時にそういう方達と偶然バーベキューを一緒に食べただけで...」

 

「....なんか、お互い大変ね」

 

最初の楽しげな思い出語りはどこへやら、若干空気が重くなってしまった様な気がするが何とか話題を切り替え再び穏やかな空気が戻りつつあった。

 

「あ、もうこんな時間。そろそろ食材の準備をしなくちゃ」

 

「おや、もうそんなに時間が経っていたのですか?全然気がつきませんでしたね、なら私も宇治さん達を迎える準備をしなくては」

 

それから暫くしてそれぞれ予定が迫りつつある事に気づいた二人は立ち上がり入り口まで歩く。

 

「今日はありがとう、楽しかった。今度もし良かったらジュリも連れてきていい?」

 

「勿論構いませんよ、今から楽しみです」

 

「そう言ってもらえると嬉しいわね、じゃあ次に時間が取れた時また連絡するから」

 

そう言って笑いながら扉に手をかけ茶室を出ようとするフウカ、そして彼女がそのまま帰ろうとした瞬間...

 

「あら、丁度いいタイミングですわね♪」

 

「......え」

 

扉の前の廊下、そこには腕を組みニコニコと良い笑顔を浮かべている少女の姿があった。

 

「は、ハルナ...ここで何をしてるの?」

 

震える声で目の前の少女に声をかけるフウカ、そんな彼女に尋ねられたハルナはよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに話し始めた。

 

「実はとても良いニュースがありまして...なんとあの伝説のタケノコがついに見つかったのですわ!」

 

「タケノコ...それって前に貴方達が探してたやつのこと?」

 

「ええ、長いこと見つからなかったのですがその悲願がとうとう達成されたのです」

 

「うふふ♪、もう楽しみすぎて早くもお腹が空いてきちゃいました〜」

 

「うなぎジュースと合わせたらどんな味がするのかな?」

 

「絶対それ駄目だからね!」

 

しみじみと語るハルナの横から聞こえてきたそれらの声にフウカは反応し、少し離れた所に視線を向けるとそこにはやたらと大きなタケノコを抱える三人の姿があった。

確かにあれだけの大きさがあるタケノコは見たことが無い...というかよく見ると大きすぎて既に部室棟の壁に擦って傷をつけてしまっている。

 

「それで....一応聞くけど何でここに?」

 

「それは勿論、フウカさんに絶品のタケノコ料理を作っていただく為に決まっていますわ」

 

「やっぱり....」

 

もう想像通り過ぎる展開にもはや呆れてしまうフウカ、きっと彼女達に何を言ってもこの運命からは逃れられないのだろう。

 

「さあ、そうと決まれば早速場所を移さなければ。あ、サエさんも私達と一緒に来ていただきますのでご準備を、聞いた話によればタケノコの皮を使ったお茶があるそうなので是非お願いしますわ」

 

「えっと、これは強制なのですか?これから私も活動が....あ、はいわかりました...」

 

そうしているうちに当然の様にサエまで巻き込まれ始めたのを既にロープで拘束されていたフウカはまたもや遠い目をしながら聞いていた。

 

「うふふ。さあ皆さん、今日も美食の探求を始めましょうか」

 

「ちょ、これ大きすぎて出るの難しいんだけど!?」

 

「あ、窓傷つけちゃった」

 

....なんだか前にもこんな展開あったなぁと内心考えながら、縛られた二人はタケノコと共に彼女達に運ばれて行くのだった。

 

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