感想の方にありましたが、主人公が1番得意で普段淹れているのは緑茶系統ですが、一応抹茶や青茶、紅茶等も淹れることができます。
(そのため、いつになるかはわかりませんが例のお嬢様学校とも関わる事になるかもしれません)
それは突然の事でした。
「あ、あの!私もこの同好会のメンバーに入れてください...!」
声をうわずらせながらそう言い放った人物は私が昨日出会ったばかりのあの少女。
確か名前は...宇治アサリさんでしたね。
(いえ、そんな呑気に考えている場合じゃありませんよサエ!彼女は何と?同好会のメンバーに?)
「えっと、宇治...さん?私の勘違いでなければこの同好会に入りたいと、そう聞こえたのですが...」
「は、はい、その通り...です」
宇治さんは私の問いに当然と言わんばかりに答えます。
(ほ、本当に!?ついに私の同好会に希望者が来たのですか!?)
その事実に私の頭はショートしてしまい、暫くの間無言の時間が続きます。
「あ、あの朝宮先輩、大丈夫ですか?」
「....っ!すみません少し驚いてしまって...あ、どうぞこちらに座ってください」
「は、はい!し、失礼します!」
ようやく意識が戻った私は立ちっぱなしにさせるのも酷だろうと、宇治さんを茶室へと招き入れます。
彼女はまだ緊張しているのか、ぎこちない動きで足を踏み入れると恐る恐る私の対面へ座りました。
そこから再びお互い無言で見つめ合う時間が続き、流石に何か話さなければと思い私は口を開くと
「宇治さんはどうしてこの同好会に入ろうと?」
「えっ!えっと...それは....」
私の質問に彼女は少し躊躇うように口をモゴモゴと動かしていましたが、やがて意を決した様に話し始めました。
「...私、今まで何かに熱中した事とか、これをやってみたいって思える様なものが無かったんです」
「この学園に入学した時は充実した高校生活を送りたいって思って...だからそのために自分を変えれる何かを見つけられたらって考えてたんですが...結局何も上手くいかなくて」
「でも昨日先輩と会って、色々話をして、お茶を頂いて...勿論そんなに長い間居たわけじゃ無いですけど、それでもあの時間は私の中で凄く印象に残るものだったんです」
「それで今日偶然同好会のポスターを見つけたら先輩の顔が頭に浮かんできて...もしこれから何か始めるなら先輩と一緒がいいな、先輩が好きなものをもっと知りたいなって...初めてだったんです!そういう風に思った事なんて今まで無かったから....だから先輩の元で一緒に学ばせて欲しいんです!」
「そ、その、迷惑じゃなければ...ですけど....」
宇治さんはそう言うと恥ずかしそうに顔を俯かせてしまいました。
(....え、めちゃくちゃ真面目な理由じゃないですか!)
そんな彼女の話を聞いていた私は、内心の驚きを顔に出さないよう必死に抑えていました。
(いやぁこの子凄い真面目です、どうしてゲヘナ学園に来てしまったのかと思うくらい...というかこの子の中で私という存在が大きくなり過ぎているように感じるのですが....私、彼女にそこまで大した事はしてませんでしたよね...?)
私がした事と言えば、落ち込んでいた彼女の話を聞いた事と、ここでお茶をご馳走した事...大きく分ければその2つの筈。
ですがそこまでの思いを持ち訪ねて来てくれたんです、私自身同好会仲間が増えるという事にとても期待しているのも事実でしたので、断る理由はありませんでした。
「わかりました。そういう事でしたら、是非よろしくお願いします」
私の返答を聞いた宇治さんはキラキラと目を輝かせて顔を上げました。
「ですが宇治さんが正式に同好会へ入る為には申請書を書いてもらわないといけません。なので今日は一度戻って、万魔殿の方にそれを提出してから改めて訪ねて来てもらってもいいでしょうか?」
「わ、わかりました!えっと....あ、ありがとうございました朝宮先輩!それじゃあまた...!」
そう言って頭を下げた宇治さんは大急ぎで茶室を飛び出して行きます。
「....ついに私の所にも後輩が...ふふっ」
そんな彼女の後ろ姿を静かに見守っていた私は、気づかないうちに自然と笑みを浮かべていました。
「...あ、そういえば拭くのを忘れていましたね」
私はそこで先程湯呑みから溢してしまったお茶の存在を思い出し下を向きます。
しかし時既に遅し、そこにはお茶が染み込み既に乾いてしまった跡が残った畳があるだけでした。
私は手遅れになってしまった畳の姿を見て、小さくため息をついたのでした。