ゲヘナに漂うお茶の味   作:Mrふんどし

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朝宮サエの日常19 ★

もうすぐ十五夜の時期、確か去年の今頃は特に何も変わった事もなく寮の自室で一人窓から月を眺めお茶とお団子を味わっていた筈です。

 

ですが、出会い方は皆違えど私の同好会に入ってくれた宇治さん、狭山さん、川根さん....折角であれば今年は彼女達と一緒に楽しみたい、そんな風に考えていた私はある日彼女達に声をかけました。

 

十五夜の夜、よければ一緒にお月見をしませんか?

そう提案してみた所結果は三人とも快諾、その事に私も内心喜びで少々興奮してしまった部分もありましたが、そうとなれば早速準備をしなければなりません。

 

夜中の外出許可は寮長さんから『火器の使用はしない事』に同意する形で了承を貰い、お昼の内に郊外でお団子を購入、残るは夜に彼女達と寮の前で待ち合わせするだけとなりました。

 

そうして時間は流れ日が落ち月の淡い光だけが暗闇を照らす中、私は一足先に寮の前に立っていました。

 

ただ皆さんとお茶を飲みお団子を食べ過ごすだけ....単純なことですがそれがどこか特別なもののように感じられ私の頬が自然と緩むのがわかります。

 

それから私はどこか浮つく気持ちを抱えながら彼女達が来るまでの間、一人満月を静かに見上げるのでした。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

今私は宇治さんと二人で郊外にある骨董品店を訪ねていました。

 

というのも先日宇治さんの誕生日を皆さんと一緒にお祝いし、その際に何か欲しいものなどはあるかを尋ねてみた所、彼女は今度の休みの日に私と一緒に買い物に行きたいと言ってきたのが理由です。

 

勿論そのお誘いを受け当日学園の前で彼女を待っていたのですが、やって来た宇治さんはなんと着物を身に纏っていました。

彼女が言うには一度私と一緒にこの姿で買い物をしてみたかったらしく、そのなんとも微笑ましい理由に私は微笑みながらも二人で目的地へと向かいました。

 

そうして骨董品店に着いた後、様々な湯呑みや急須を楽しそうに吟味している宇治さんを見て、私は不思議と彼女と初めて出会った頃を思い出していました。

最初の頃は少し内向的で、お茶の事も全くわからず慌てる姿が多かった彼女....それが今ではよく笑うようになり、おまけにお茶にも詳しくなって良い意味で変わったのがわかります。

 

それから暫く彼女と共に色んな品を見て回り良さげな湯呑みを四人分購入した帰り道、もう少しで学園へ着くといった所で不意に宇治さんがどこか緊張した様子で声をかけてきました。

 

彼女のそんな態度に首を傾げていた私でしたが、それから意を結した様な宇治さんの口から告げられたのは....私にこれからは名前で呼んで欲しいといったお願いでした。

 

...そんな思いもよらない発言に私は思わず固まってしまいましたが、実は前から私がフウカさんやハルナさん達を名前で呼んでいたのが少しだけ羨ましかったとの事。

私としては別に距離を置いているという訳では無かったのですが、彼女にとってはほんの僅かにそういった気持ちがあったようです。

 

....そうですね、確かに宇治さんとはもう長い付き合いですし、私としても親しい間柄だと思っているので彼女からそう言ってくれたのであれば何も断る理由はありません。

 

一瞬目を瞑った私は、ゆっくりと顔を上げると彼女の顔を見つめ、”アサリさん”と口にしました。

 

私の言葉を聞いたアサリさんは目をパチパチさせていましたが、その後とても良い笑顔をこちらに見せてくれたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

後日、折角であればお二人もこれから名前にしようと思いキョウカさんやミオさんと呼んでいたのですが、そんな私を見てアサリさんがどこか頬を膨らませていたのが印象的でした。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ある日の休日、いつものように部室棟を目指し歩いていた所目の前に空崎さんの姿を見つけました。

風紀委員会はいつも忙しなく活動しているイメージですが、今の彼女からはそれとは反対にどこかリラックスしている雰囲気が伝わって来ます。

 

少し様子が気になり声をかけてみると、こちらに気づいた空崎さんは挨拶を返してくれた後その訳を話してくれました。

彼女が言うには今日は珍しく仕事が少ない日らしく、それを利用して郊外へ出かける予定だったとの事。

 

そんな話を聞いている途中突然空崎さんの名前を呼ぶ声が後ろから聞こえてきたのでつられて振り返ると、そこには元気に手を振り笑顔を浮かべている夜桜さんが立っていました。

その隣には鞄を肩に抱えている旗見さんの姿もあり、どうやら空崎さんは以前から彼女達に誘われていたカラオケに向かうとの事で今はその待ち合わせをしていた所だったのだとか。

 

成る程、空崎さんがカラオケですか....興味が無いと言えば嘘になりますが、そう言う事でしたらここで彼女を引き止めるわけにはいきませんね。

ではごゆっくりお楽しみください、私はこれで......え?折角なら私も一緒にどうか?

 

い、いえ歌うのはあまり得意ではないので....それに元々三人でのお約束のようですし...問題ない?むしろ人が多い方が楽しい?

あ、あの、でも私は.....あ、ちょ、肩を押さないでください...!?

 

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